(2002年7月17日「しんぶん赤旗」)
日本共産党は十六日、「地域金融の活性化に関する法律案」「中小企業等協同組合法等の改正案」を参院に提出しました。同法案は、地域経済を支える中小企業に必要な資金を供給する体制を保障するものです。大銀行による貸し渋りや貸しはがし、相次ぐ信用金庫・信用組合の破たんなどで地域金融の機能が低下しているなか、その再生と活性化をめざします。
法案は第一に、国、地方公共団体、金融機関のそれぞれの責務を明記しています。地域の住民、事業者の金融上の要望にきめ細かに対応することを基本理念に据えています。
第二に、地域の住民や事業者などによる地域金融活性化委員会を設置します。委員会は金融機関の地域経済への貢献度などを評価し、公表するとともに、金融庁と都道府県を通じて必要な改善を金融機関に求めることができます。さらに、金融機関に対する預金者・取引先の苦情処理なども委員会でおこなえるようにします。
第三に、信用金庫、信用組合の監督・検査権限を金融庁から都道府県に移します。大銀行と同じ金融検査マニュアルを信金・信組にも当てはめる現行のやり方を改め、地域の現状をふまえた監督・検査・指導体制を確立します。
2002年7月6日 日本共産党
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(目的)
第一条 この法律は、地域金融の機能が低下している現状にかんがみ、国、地方公共団体及び金融機関の地域金融の活性化に関する責務を明らかにすること、都道府県が講ずる地域金融の活性化のための施策を定めること等により、地域金融の活性化を図り、もって地域経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関」とは、預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関をいう。
(基本理念)
第三条 地域金融については、地域の住民、事業者等の金融上の要望にきめ細かに対応し、地域経済の健全な発展に貢献する重要な機能を有するものであることにかんがみ、利用者の利便の増進が図られ、地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金が十分に供給される等その活性化が図られなければならない。
2 地域金融の活性化を図るに当たっては、地域経済の重要な担い手である中小企業者の事業活動に必要な資金が安定的に供給されるよう特に配慮されなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(次条及び第六条において「基本理念」という。)にのっとり、地域金融の活性化に関し必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。この場合において、地域金融の活性化に関する都道府県の意見を参酌するとともに、地域金融に係る業務を行う金融機関が地域経済において果たすべき役割の重要性を考慮し、その経営の安定に十分配慮しなければならない。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、地域金融の活性化に関し、国の施策に準じた施策を講ずるとともに、地域経済の発展に向けて自主的かつ主体的に取り組むべき見地から、その地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(金融機関の責務)
第六条 地域金融に係る業務を行う金融機関は、金融業務の公共性にかんがみ、基本理念にのっとり、利用者の利便の増進を図り、地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金を十分に供給する等地域金融の活性化に寄与するように努めなければならない。
2 地域金融に係る業務を行う金融機関は、基本理念にのっとり、地域の中小企業者の事業活動に対する信用の供与に関して、均等な機会を保障すること、十分な説明を行うこと、貸付条件を正当な理由なく変更しないこと等中小企業者の事業活動に対する必要な資金の安定的な供給に特に配慮しなければならない。
(地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価)
第七条 都道府県は、当該都道府県の区域内に営業所等を設けて地域金融に係る業務を行う個々の金融機関について、当該金融機関から提出される報告書に基づき、当該都道府県の区域内における地域金融に係る業務の運営に関し、次に掲げる事項の調査を行い、その結果に基づき、毎年一回、地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価を行うものとする。
一 地域の住民及び事業者に対する信用の供与の状況に関する事項
二 地域の産業の振興等地域の振興に貢献する業務の状況に関する事項
三 営業所又は事務所その他の施設の設置の状況、利用者の金融上の要望の把握の状況等利用者の利便の増進を図る業務の状況に関する事項
四 その他地域金融の活性化に対する寄与の程度を評価するために必要な事項
2 前項の調査及び評価に必要な事項は、政令で定める基準に従い、条例で定める。
(評価報告書の作成及び公表)
第八条 都道府県は、毎年、前条第一項の調査及び評価の結果を記載した評価報告書を作成し、条例で定めるところにより、公表するものとする。
(苦情の処理)
第九条 都道府県は、当該都道府県の区域内における地域金融に関する事項につき、金融機関の利用者等からの苦情の処理を行うものとする。
(金融機関等への要請)
第十条 都道府県は、第七条第一項の調査及び評価又は前条の苦情の処理に関し必要があると認めるときは、地域金融に係る業務を行う金融機関、関係行政機関その他の関係者に対し、地域金融の活性化に関する事項について必要な要請をすることができる。
(地域金融の活性化に関する審議会)
第十一条 都道府県は、条例で定めるところにより、地域金融の活性化に関する審議会その他の合議制の機関(以下「地域金融の活性化に関する審議会」という。)を置くことができる。
2 地域金融の活性化に関する審議会は、第七条第一項の調査及び評価に関する事項、第九条の苦情の処理に関する事項その他地域金融の活性化に関する重要事項を調査審議することができる。
3 地域金融の活性化に関する審議会の組織及び運営については、地域の住民、事業者、金融機関等の意向が適正に反映されるように配慮されなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、地域金融の活性化に関する審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
附 則
この法律は、平成十四年十月一日から施行する。
理 由
地域金融の機能が低下している現状にかんがみ、地域金融の活性化を図り、もって地域経済の健全な発展に寄与するため、国、地方公共団体及び金融機関の地域金融の活性化に関する責務を明らかにすること、都道府県が講ずる地域金融の活性化のための施策を定めること等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
2002年7月16日 日本共産党
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第一条 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)の一部を次のように改正する。
第百十一条第六項中「区域を」の下に「超えない区域をその地区とする信用協同組合及び第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会並びに都道府県の区域を」を加える。
(協同組合による金融事業に関する法律の一部改正)
第二条 協同組合による金融事業に関する法律(昭和二十四年法律第百八十三号)の一部を次のように改正する。
第七条の見出しを「(権限の委任等)」に改め、同条に次の一項を加える。
3 都道府県の区域を超えない区域をその地区とする信用協同組合及び信用協同組合連合会については、第一項の規定により金融庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
(信用金庫法の一部改正)
第三条 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)の一部を次のように改正する。
第八十八条の見出しを「(権限の委任等)」に改め、同条に次の一項を加える。
3 都道府県の区域を超えない区域をその地区とする金庫については、第一項の規定により金融庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
(金融機関の合併及び転換に関する法律の一部改正)
第四条 金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第三十条の見出しを「(権限の委任等)」に改め、同条に次の一項を加える。
3 存続金融機関若しくは新設金融機関又は転換後の金融機関が都道府県の区域を超えない区域をその地区とする信用金庫又は信用協同組合である場合におけるこの法律に規定する内閣総理大臣の権限(第一項の規定により金融庁長官に委任された権限に限る。)に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部改正)
第五条 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。
第百九十四条の三十の見出しを「(権限の委任等)」に改め、同条に次の一項を加える。
2 都道府県の区域を超えない区域をその地区とする信用金庫及び信用協同組合については、前項の規定により金融庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
附 則
この法律は、平成十五年四月一日から施行する。
理 由
地域金融の活性化を図るため、地域金融の重要な担い手である信用協同組合及び信用金庫に対する監督検査等が地域の特性に応じたものとなるよう、その監督検査等に関する内閣総理大臣の権限に属する事務の一部を都道府県知事が行うこととするための措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。