2003年9月24日 日本共産党国会議員団
小泉内閣の二年半で四万をこえる企業が倒産に追い込まれました。中小企業は、不況による売り上げの落ち込みのうえに、貸し渋り・貸しはがしや金利引き上げなど、金融の道を断たれて次々と倒産や経営難に追い込まれています。大不況のさ中に、金融の道を断たれたら、中小企業はひとたまりもありません。
すでに大銀行を中心に三十三兆円もの公的資金が投入され、日銀の「超金融緩和」策で銀行には、ジャブジャブといわれるほど潤沢な資金が供給されています。ところが、その資金が銀行から先にまわらず、地域経済の担い手である中小企業は、正反対の「超金融引き締め」状態になっています。小泉内閣が、経済の動向も経営の実態も無視して、乱暴な不良債権処理を強行しているために、“経済の血液”である金融を「収縮」させてしまったからです。
小泉・竹中流の不良債権処理策によって、あおり立てられた銀行は、不良債権処理をしながら自己資本比率を維持しようとしています。貸出金を減らしながら、利益をあげようとするため、貸し渋り・貸しはがし、金利引き上げ、各種手数料の値上げにはしっているのです。
小泉内閣の発足前とくらべ、日銀から銀行への資金供給は五兆円から三十兆円へと六倍にもなっているのに、逆に金融機関から企業への貸し出しは五十兆円も減少しています。小泉内閣は、不良債権を処理すれば資金があらたな成長分野にまわり経済が活性化すると言ってきました。しかし、この二年間ではっきりしたのは、小泉・竹中流の処理策をすすめればすすめるほど、かえって世の中にお金が回らなくなったということです。
昨年十月末、銀行の資産査定の「厳格化」、自己資本比率の算定方法の「見直し」など、銀行に、不良債権処理をもっと加速させる、いわゆる「竹中プラン」(「金融再生プログラム」)が決められました。この間違った金融政策によって、中小企業が倒産させられる、という事態が今後さらに大規模にひろがろうとしています。
昨年度、大手銀行は、不良債権の残高を六兆円減らすために、十二兆円もの処理をおこないました。これは不良債権の新規発生がどんどん増えているため、その倍の規模で処理をしないと、目標が達成できないからです。今年度は、金融庁から課せられた目標達成のために、大手銀行は、不良債権残高を約五兆円減らそうとしており、十兆円規模の不良債権処理が行われようとしています。大手銀行は「昨年度は大口先を整理してきた。今年度、処理が残っているのは中小企業だ」と異口同音に語っています。つまり、来年三月までに中小企業が十兆円、数にすれば数万社以上の規模で、整理、回収に追い込まれる危険性が迫っているということです。
要管理債権を含む大銀行の不良債権の残高は、小泉内閣発足時にくらべ二・二兆円も増加しています。この不況下での処理の強行が、かえって不況と「デフレ」を悪化させ、新たな不良債権の発生をまねいているからです。処理しても処理しても残高が減らない、まさに不良債権処理そのものも「いたちごっこ」におちいっています。
「竹中プラン」は、企業への貸し出しという銀行が本来果たすべき金融の機能を根底から崩壊させ、大量の中小企業の倒産、失業をまねき、国民のくらしと日本経済をさらに悪化させようとしているのです。
中小企業に必要な資金をきちんと供給し、不況のなかを生き抜いていけるように応援する、まともな金融と金融行政にするためにも、「竹中プラン」をただちに撤回し、以下の四つの緊急措置をとるよう強く求めます。
(1)中小企業を大量倒産に追い込む、不良債権処理の「二年・三年ルール」など機械的な強行スケジュールを撤回する
小泉内閣は、「二年・三年ルール」――既存の不良債権は二年以内で、新規発生分は三年以内で最終処理する、「五割・八割ルール」――新規発生の不良債権は、一年目に五割、二年目で八割処理し、三年目で完全になくす、「不良債権比率の半減」――不良債権が貸出金にしめる比率を、二〇〇四年度までに昨年十月時点の半分以下にするなど、機械的なスケジュールを強引に押しつけています。
この厳しい不況の中で、どうしてわずか二、三年で中小企業の経営が立て直せるでしょうか。こんな実態を無視した機械的な不良債権処理は、中小企業からみれば、倒産、RCC(整理回収機構)送りのスケジュールにほかなりません。そもそもこの深刻な不況をまねいたのは政府の失政です。自分たちの責任を棚にあげて、大量の中小企業を整理回収に追い込むなど許されるものではありません。
金融庁のモノサシでは不良債権に区分されていても、景気さえ回復すれば、本業も立ち直り借金の返済のメドもたつ中小企業はたくさんあります。まず、この無理無体な強行スケジュールを即時撤回するようもとめます。
(2)「資産デフレ」による担保価値の目減りを切り離すなど、企業経営の実態を反映した資産査定に切り替える
本業は黒字で、借金も計画通りに返済しているのに、「資産デフレ」による担保価値の急減によって「不良債権」扱いにされ、一括返済や利上げを要求され倒産に追い込まれる中小企業が急増しています。
これほど理不尽で、不合理な話があるでしょうか。いまの金融行政が、経営の実態からかけはなれた「机上の空論」に陥っているために、「黒字倒産」などという悲劇がおきているのです。
たとえ「担保割れ」があったとしても、本業で倒産の危機に直面していないなら、不況を生きぬくために支援することこそ金融機関の本来の役割ですし、金融機関の経営にもプラスになるはずです。企業を「査定」する基準から、担保にかかわる「資産デフレ」の影響などを完全に切り離し、モノづくりの技術力や開発力の評価を含めて、あくまで企業経営の実態で判断するようにすべきです。
(3)いまこそ「借り換え保証制度」や政府系金融機関の中小企業融資を拡充する
小泉内閣になってから、政府系金融機関の保証債務残高は四十一・二兆円から三十三・四兆円へと約八兆円も減らされています。この「金融の収縮」状態のなかで、政府系金融機関・公的信用保証制度の果たす役割を強化することこそ必要です。
今年二月から実施された「借り換え保証制度」の利用は、二十三万件、三兆五千億円(九月現在)にのぼり、企業倒産の増加に歯止めをかける大きな役割を果たしています。制度を来年以降も実施し、保証枠を十兆円以上に拡大、新規保証を含め据え置き期間を二年以上にすることをもとめます。
また、せっかく制度ができても、周知が不十分なことや、銀行や保証協会が制度の利用を渋ったり、新規融資を断るなどの事例も生まれています。政府は、各金融機関、保証協会に「借り換え保証制度」に積極的に対応するよう指導すべきです。中小企業金融を拡充するため、信用保証協会の基金の上積みなどの必要な措置を講ずるとともに、今年四月から0・3%引き上げた保証料をもとに戻すことをもとめます。
政府系金融機関は、銀行からRCC送りにされた中小企業に対する特別融資制度を創設するなど、再生できる企業への支援を行うべきです。
(4)ヤミ金融をはじめ、高利貸し、暴力金融の被害を根絶する
金融機関から運転資金の融資すらうけられず、「ヤミ金融」業者の餌食にされる中小事業主が急増しています。「ヤミ金融」被害者は、この半年で十六万人にものぼり、警察にたいする金融事案の相談も小泉内閣になって二倍近くに増加し、「借金苦」を理由にした自殺者も増え続けています。
先の国会で成立したヤミ金融規制法を活用し、警察、金融庁など監督当局が取り締まり強化と被害の防止、被害者の救済に全力であたるべきです。銀行とヤミ金融業者や暴力団関連企業との取引を絶つために、融資先や口座などもきびしく取り締まるべきです。
公的資金の投入をうけた銀行が、中小企業には貸し渋りをおこなう一方で、サラ金業者には低金利で融資し、そのサラ金業者が高金利で中小企業を苦しめています。そしてサラ金大手は軒並み一千億円をこえる経常利益を計上しています。金融機関の公共的使命、社会的、道義的責任からもこういう事態を放置することは許されません。
これまでも、サラ金、商工ローン、システム金融、ヤミ金融など、高利貸し・暴力金融が手を替え品を替えて登場し、庶民と中小零細業者を食いものにしてきました。いつも大きな社会問題になりながら、悲劇が繰り返されています。日本の金融システムと金融行政が、高利貸しを野放しにする大きな欠陥を抱えているからです。
フランスやドイツでは、高金利が法的に規制され、高金利被害そのものがありません。高利貸し、暴力金融の被害を根絶するためには、当然、高金利貸付そのものを禁止すべきです。少なくとも「出資法」の上限金利29・2%をただちに「利息制限法」なみの15%〜20%に引き下げ、超過利息にたいし懲罰、罰金を科すようにすべきです。「出資法」の上限金利をこえる違法契約を押し付けた場合は、その契約自体を無効とし、金利はもちろん元金も返済する必要がないなどの強い措置をとる必要があります。
日本共産党は、小泉内閣の「不良債権の早期最終処理」が、倒産と失業を増大させる危険なものであることを、発足当初からきびしく批判してきました。また、国会で、地域経済と中小企業を支える「地域金融活性化法案」を提案するとともに、各関係団体のみなさんと力を合わせて、金融庁に「金融検査マニュアル・中小企業版」をつくらせ、セーフティーネット融資、借り換え保証制度を創設させるなど、中小企業の救済と支援に力をつくしてきました。
この大不況のなかで、必死でがんばっている中小企業にとって、金融行政がどの方向に向くのかは死活問題です。日本共産党国会議員団は、中小企業のみなさん、関係団体のみなさん、多くの国民のみなさんとの大きな共同の力で、中小企業を生かす金融行政への転換を実現するために、さらに奮闘する決意です。
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