2003年4月16日「しんぶん赤旗」
文部科学省の「不登校問題に関する調査研究協力者会議」が、十一年ぶりに報告を発表しました。その間に不登校の子どもの数は二倍の約十四万人となっています。不登校の子どもへの支援に何が大切か、報告の成果と問題点から考えます。
十一年前の協力者会議報告は、「不登校は問題のある特別な子どもの非行」という以前の見方を「どの子どもにも起こりうる」と正し、学校が「心の居場所」にと訴え、この分野での転換点となりました。
ところがこの間文科省は、関係者が求めてきた「管理と競争」の教育の是正や「三十人学級」などを怠ってきました。そして今回、不登校に「歯止めがかからない」ことに業を煮やし、「未然防止」「早期発見・早期対応」を協力者会議に求めたのです。この性急な姿勢に、父母らは「不登校の子どもを追いつめるのでは」と警戒感をつよめ、多くの意見が同会議に提出されました。
こうした父母の意見もあり、協力者会議は、「どの子どもにも起こりうる」という前回報告を支持し、「不登校を『問題行動』と決め付けるかのような誤解を避けるため、『不登校問題』という語の使用を控える」としました。文部科学省は、これを機会に、不登校を校内暴力と同列に扱うなど、不登校を「問題行動」視する残りかすをいっさいなくすべきです。
文部科学省は、報告のポイントを“「ただ待つ」から「早期の適切な対応へ」”とスローガン化しました。しかし「早期」ばかり強調すれば、性急な登校の強要ともなりかねません。「不登校の解決の目標は、子どもの社会的自立に向けて支援すること」という報告の基本的立場にもそった、子どもの気持ちを大切にした、ていねいな対応こそ、奨励されるべきです。
報告は行政施策について多岐にわたり提起しました。(1)自治体の「適応指導教室」の整備・拡充と地域のネットワークづくり?学校全体での対応のためのコーディネーター的な担当教員の明確化や養護教諭の複数配置(2)公的機関と民間施設との積極的連携?高校の長期欠席や「ひきこもり」への対応の必要性などです。
大事なことは、国や自治体がこうした施策の保障のため、教員定数の改善、「適応指導教室」への専任職員の配置など諸条件の整備にとりくむことです。また「親の会」など民間施設との連携の強調をうけ、子どもを支えてきた民間団体への公的支援に多様な形でふみきるべきです。
不登校の背景にある社会や教育のあり方に目を向けることも大切です。報告は、文科省の姿勢もあり、この問題へのふみこんだ言及はありませんでした。しかし、不登校の広がりを考えれば、不登校を生み出し続けている社会や教育のあり方にメスを入れることが欠かせません。
長時間労働は、家庭生活のゆとりや親子のふれあいを削っています。生活の忙しさは、子どもの生活から遊びや子ども同士の結びつきを奪っています。国連・子どもの権利委員会からは「競争的な教育制度が子どもの発達をゆがめている」との異例の勧告もおこなわれています。不登校は、こうした子どもの成長や発達の基盤を崩してきた社会への警鐘といわなければなりません。
日本共産党は、報告を契機に、不登校の子どもたちへの支援とそのための条件整備を本格的にすすめることを強く訴えるものです。