2003年10月13日しんぶん赤旗
中央教育審議会が新学習指導要領の「改善」を答申しました。実施二年もたたない指導要領の見直しは異例のことです。しかしその内容は「改善」にはほど遠いものでした。
答申は、「新学習指導要領の更なる定着を進め、そのねらいの一層の実現」を審議の「結論」といいます。要するに、“問題は指導要領にはなく、徹底されていないことだ”ということでしょう。
しかし、教育現場で問題になっていたのは「幹をたおして、枝葉を残した」といわれるように、新指導要領が基礎的な学力にとって必要な部分を削り、不必要な部分を残したことなどです。答申はこうしたことを不問にして、指導要領に書いてあること以上に教えてはならないという「歯止め規定」はなくすと、お茶を濁しました。これで教科書の自由がある程度拡大することが期待されますが、根本は何も変わりません。
しかも重大なことは、学校の授業の仕方について口出しを強めようとしていることです。とくに「習熟度別学習」を一律にやれと言わんばかりに小学校用の指導要領に書き込ませるとしたことは見過ごせません。
すべての子どもに基礎的な学力を保障するため、さまざまな授業方法を認めることは当然です。例えばグループ学習もその一つでしょう。しかし、個々の授業方法はあくまで数多くある方法の一つであり、教員が実情を考えていちばんいいと思うものを選んでこそ効果があがります。
とくに「習熟度別学習」は、答申も認めるように「児童生徒に優越感や劣等感を生じさせたり、学習集団による学習内容の分化が長期化・固定化するなどして学習意欲を低下させたりする」危険があります。それを指導要領で特別な位置を与え、現場に機械的に押し付ければ、子どもの学力も人間形成も心配です。
新指導要領の原案作成の責任者・三浦朱門氏が、“新指導要領の狙いは、できない子にかけていた労力をできる子にまわすこと”と発言したように、「できない子」を切り捨てようとする選別教育の底流が政府・財界のなかにあります。
こうした方向ではなく、すべての子どもの人間的成長を大切にして、子どもの実情にあった多様で積極的な創意工夫を重ねることこそ、父母や教員の願いです。
新学習指導要領の実施により、学校現場ではさまざまな混乱がひろがっています。新指導要領の欠陥に加えて、「総合的学習の時間」「少人数指導」など新たなことが、まともな教員増なしで行われたためです。
ある中学の英語では三学級を五つにわけての少人数授業がきめられましたが、英語の教員は二人です。あとの三つのグループは別の教科の教員がお守りをしているだけでした。
政治や行政がなすべきは、現場の困難や矛盾に心をよせ、教育条件の整備によって学校の努力を支えることではないでしょうか。必要な教員の配置、「三十人学級」の全国実施などに直ちにとりくむべきです。
文科省が密室で子どもの教育内容をきめて、それを学校に押し付ける−−こんな、学習指導要領の体制はもうやめるべきです。
日本共産党はこの体制にかわって(1)二十一世紀にふさわしい学習内容の大綱を学者や教員、父母らの国民的な英知をあつめてつくる(2)大綱はあくまで目安にとどめ、学校・教員が自主的に教育課程を編成するものとする−−ことを主張します。
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