2003年3月14日 日本共産党政策委員会
一、国の責任で「三十人学級」の実施を。自治体からも「少人数学級」へのとりくみを
二、自公政権による「義務教育費国庫負担金制度」の廃止・削減を中止する
四、私学助成の拡充
八、不登校・「ひきこもり」など、急増している多様な問題への相談・支援を広げる
いま、各地で「国がやらなくても地方独自で『三十人学級』に足をふみだそう」「国のいいなりではなく、子ども中心の教育をすすめよう」など、教育をめぐる新しい流れがおきています。この背景には、学力の問題や十年間で倍増した不登校をはじめ、教育の問題をなんとかしたいという国民のつよい思いがあります。
この国民の思いにこたえて、政治がとりくむべき緊急で重要な課題の一つに、学校などが子どもの人間形成をたすけるという本来の仕事に専念できるよう、環境や条件を保障するという課題があります。
教育基本法は行政の任務について次のように規定しています。
「第十条 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。(2) 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」
ところが、自民党政治は、本来やるべき「諸条件の整備確立」にはまともな責任をはたさないまま、学習指導要領や「日の丸」「君が代」の強制など、やるべきでない教育への「不当な支配」に熱中してきました。
小泉首相は「米百俵」―幕末の戦乱で荒廃した長岡藩が、貴重な財産を山分けすることをがまんし、将来を考えて学校建設に使った逸話―をよくもちだします。しかし、首相は国民に「痛みをがまんせよ」と言うときに「米百俵」をもちだすだけで、肝心の、教育へお金をまわすことはしませんでした。来年度の国の教育予算案は五年ぶりにマイナスというありさまです。地方でも、大型開発のつけ回しで教育予算が削られています。
その一方で小泉内閣は、教育基本法の全面「改定」の作業さえはじめました。しかし、今日の教育が荒れている問題を教育基本法に求める根拠はまったくありません。教育基本法は、教育の目的に「人格の完成」をおき、「平和的な国家及び社会の形成者」の育成をかかげ、子どもの成長と発達を何よりも大事にする教育の実現をめざしたものです。今日の教育の問題はむしろ、この基本法の精神を、歴代の自民党政治がふみにじってきたことに要因があります。いま大切なことは、基本法を改悪するのでなく、その精神を教育の立て直しにいかすことです。
以上の立場から、国と地方の教育行政が、緊急にとりくむべき教育条件の整備について、つぎのとおり提案するものです。
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一人ひとりの子どもに行き届いた教育をするために、少人数学級を実施することは国民のつよい要求であり、財政負担を含めて国の責任で「三十人学級」にふみだすべきです。
ところが文部科学省は、算数など特定の科目だけその都度「少人数授業」にするから、もともとの学級定数は変えないで「四十人学級」を将来も続ける、という姿勢です。「少人数授業」でのやり方はクラスが解体される、一日に何回も教室を移動するなどの弊害があり、そんなことより「少人数学級がいちばんいい」というのが関係者の声です。サミット参加国の学級編制は二十五人前後です。国の責任で「三十人学級」の全国的実施をはかることを強く求めます。
二〇〇一年度から、都道府県の判断と財政負担によって、自治体独自に少人数学級を編制することが可能となりました。これまでに二十一もの道県で、少人数学級がはじまり、好評です。この新しい条件をいかして、現時点でも、自治体で少人数学級実施のとりくみをすすめることも大切です。
小泉内閣は「義務教育費国庫負担金制度」の廃止を検討し、来年度は二千百八十四億円を削減しようとしています(うち八分の一が新たに自治体負担になる見通し)。
この制度は、財政力のない市町村に住んでいても全国と同じ条件で教育がうけられるように、教員の給与など義務教育にかかる費用を国と県が半分ずつ分担することにしたものです。憲法に明記された「国民が義務教育をうける権利」を国が保障するための根幹をなす制度にほかならず、それを投げ捨てることは許されません。
すでに全国知事会、全国市長会など自治体関係団体がこぞって「反対」を表明し、五百をこえる地方議会で反対決議があがっています。国庫負担金制度の廃止・削減はただちに中止し、教材費を補助の対象に戻すなど、その拡充を求めます。
この間、国の公立学校施設費が以前の半分ちかくに減らされ、「ボロボロ校舎」など深刻な実態がひろがりました。日本共産党は各地で実態調査にとりくみ、住民と協力して校舎の改修やトイレの改善、学校耐震化の促進などで積極的な役割をはたしました。これは地元密着型の公共事業としても歓迎されました。公明党などは「ボロボロ校舎などデマだ」といいましたが、その主張は事実の前にもろくも崩れています。
学校耐震化の推進……学校は、子どもの生命を守るとともに、地域の防災拠点に指定されている施設です。ところが、多くの老朽校舎が放置され、最近の内閣府の調査では54%の校舎が「耐震性に疑問」とされています。(1)耐震診断は、国庫負担などで早急に実施する、(2)「学校耐震化年次計画」を自治体の優先課題として策定する、(3)耐震化工事への国庫補助率をアップすることを提案します。
学校施設など教育諸条件の整備……「ボロボロの校舎」、「臭くて汚いトイレ」などを急いで改善するとともに、必要な教室へのクーラー設置、老朽化がはげしいスポーツ施設・用具の改善、学校給食の拡充、学校安全などの条件整備をすすめます。
障害児学校などの整備、拡充……障害児学校・普通学校双方で、障害児教育の施設・人員を拡充すること、全国的に足りない夜間中学の公設・拡充、在日外国人の子どもの母語を含む教育の保障などを重視します。
学校図書館、公立図書館の充実……この四月から十二学級以上の学校では「司書教諭」を必ず配置することになります。ところが「司書教諭」が専任・専門でなかったり、「配置」を理由に現在いる「学校司書」を削るなど、かえって条件が悪化する場合が見られます。国と自治体が策定することになっている「子どもの読書に関する基本計画」を、職員配置、図書費増額など条件整備のための計画にします。公立図書館がない市町村は約半分もあり、早急な改善が求められます。国の補助を拡大し、図書館の拡充を推進します。
私立学校は、高校で生徒数の三割を占めるなど、わが国の公教育を支える大切な役割をはたしており、私学への公的助成は国と自治体の責任です。それにもかかわらず、私学助成は低く抑えられたままで、教育条件や父母負担の公私間格差は歴然としています。
ところが、国庫補助金の割合はピーク時(一九八一年度)の8.6%から4.5%(二〇〇〇年度)に下がり、県の補助金も、「財政難」などを理由に「八年連続単価を据え置き」(大阪府)などの抑制や見直しの動きがひろがっています。
今日の不況のなかで「三ヶ月以上の学費滞納が一校あたり13.5人にのぼる」「父親の失踪、父親のリストラによる家計急変、家庭崩壊」(全国私教連調査)など実態は深刻です。私学助成の抑制・削減をやめ、次の方向で拡充をはかることを提案します。
(1)国と都道府県の責任で、経常費にたいする二分の一助成を早期に実現する、(2)授業料直接補助を制度化する、(3)倒産、失業、災害など保護者の急変にともなう授業料全額免除制度をつくる、(4)校舎の増改築・新築など施設にたいする助成を拡充する、(5)補助割合が二十年前の半分以下、12.5%にまでおちこんでいる私立大学補助を抜本的にふやす。
全国で高校統廃合が進められようとしています。すでに三十の都道府県で教育委員会として再編計画をきめ、残りの十七府県でも公式の検討に入っています。
ところが、その計画は、生徒や教職員、住民の意見をよく聞かずにすすめられ、「百校ある夜間定時制高校を五十五校に減らす」(東京都) 「離島の生徒が通える学校がなくなる」(佐賀県)など、たいへん乱暴なものです。生徒や卒業生が「愛する母校がなんの説明もなく廃止されるのは納得できない」と立ち上がっていることは当然です。
高校統廃合は、何より子どもの教育にとってよいものかどうかをきちんと検討する必要があります。さらに、「地域を支えるはずの若者が、高校がなくなると地域から出て行く」など地域づくりの点からも問題があります。再編と称して、いわゆる「いい学校」にだけ財政面で極端に優遇するなども道理がありません。
生徒、住民無視の高校統廃合に反対し、生徒や教職員、父母や地域の声に根ざした学校づくりを応援します。
長引く不況からいちばん守られなければならないのは、子どもや青年です。ところが、日本はこの問題を、家庭や本人まかせにしてきました。不況は子ども、青年を支えてきた家庭そのものを破壊し始めています。いまこそ、政治が役割をはたすべき時です。
国の奨学金改悪を中止し、国・地方の奨学金制度を拡充する……「世界一高い学費」と、欧米に比べてあまりに貧困な奨学金制度。ところが、政府は国の奨学金制度を改悪しようとしています。申込者が急増し、現在十二万人以上が利用している高校生向け奨学金を廃止して地方に押しつける、大学院生の返還免除制度を抜本改悪する、奨学金をうける学生から新たに「保証料」を徴収できるようにする(文部科学省の試算では年額二万四千円から三万六千円)などがその内容です。これらの改悪を中止し、国、地方双方の奨学金制度の拡充をはかることを提案します。
不況だからこそ教育扶助・就学援助を拡充する……就学援助対象の児童生徒は、この五年間で約二十五万人も増加しています。ところが昨年度、政府はこの不況下で就学援助の補助金を六億円も減らしました。「総額の二分の一」と定められている国の補助率は、実質25%にすぎません。教育扶助・就学援助の拡充、高校授業料の減免の拡大が急務です。
昨年四月から、完全学校週五日制がスタートしました。しかし、勤労者の週休二日制がひろがっていないうえに、子どもが安心してすごせる場所が少ないなど問題が山積しています。勤労者の労働条件の改善とともに、環境の整備にとりくむことを提案します。
子どもの多様な居場所を地域に……生活圏内に安心して遊べる自然空間、児童館、中高生の居場所、スポーツ・文化施設、スケボー広場などをふやします。施設の建設・運営への子どもの参加や専任職員の配置を重視します。関連NPOへの支援をつよめます。
学童保育の整備……全国の約四割の市町村で学童保育そのものがなく、あっても補助金が貧弱です。さらに、自治体によっては全児童向けの「放課後支援事業」の実施を理由に、学童保育を閉鎖するという逆行もうまれています。こうした状態をあらため、学童保育の整備をすすめます。
障害をもつ子どもの居場所への支援……障害をもつ子どもは放課後や休日に行き場がなく、家族らの献身的な努力で支えられているのが実態です。完全五日制となり、その負担はいっそう重くなっています。学童保育への入所条件の改善、「障害児のための学童クラブ」への公的助成の拡充など支援をつよめます。
不登校やいわゆる「ひきこもり」など新たな問題が増えています。不登校は十年間で二倍に急増し、「ひきこもり」の青年は数十万人以上という推計もあります。「ひきこもり」期間は十年単位の長期にわたる場合もあり、本人の苦しみ、家族の悩みは深刻です。
これらには、第三者のかかわりや支援が必要だと指摘されています。子どもの自立をささえる社会環境の整備とともに、相談・支援のしくみを広げることが急務です。
公的な相談・支援の体制……児童相談所、教育相談所、保健所、医療機関など公的な専門機関を拡充し、誰でも安心して相談できるようにします。人間関係の形成や就労援助など、子ども・青年の人間的自立を支援するための公的な体制を確立、拡充します。
「親の会」など民間のとりくみへの公的支援……教育の現状に問題を感じ、子どものために行動する様々な人々のとりくみが、いま輝いています。学校での子どもを中心にしたとりくみを励ますと同時に、フリースクール、フリースペース、「親の会」、本人や家族の要求にこたえるNPOなどへの公的支援をつよめます。不登校の子どもの教育を公的に保障する立場にたって、多様な支援策を拡充します。
以上
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