2004年2月2日「しんぶん赤旗」
小泉首相が、教育基本法「改正」について、「国民的な議論を踏まえ、精力的に取り組む」(施政方針演説)と、本腰を入れる構えを示しています。
教育基本法は、教育の目的に「人格の完成」をおき、「平和的な国家及び社会の形成者」の育成をかかげています。また、国家権力による「不当な支配」を排除しています。
これらの民主的な理念や原則は、戦前の教育が、侵略戦争を支える「人づくり」「兵士づくり」の場となったことへの反省から生まれたものです。
小泉首相が教育基本法を「改正」するというのは、憲法にもとづく民主的教育の理念や原則の改変を意味します。
「再び戦争する国にするな」と、憲法と教育基本法の改悪に反対する運動が起こっているのも当然です。
教育基本法改悪の重大な中身の一つとして、国が「教育振興基本計画」をつくり、教育内容にまで踏み込んで統制することがねらわれています。このことは、国家権力による「不当な支配」の排除という教育基本法の命ともいうべき原則への挑戦です。
国が、教育内容に介入すれば子どもと教育にとってどんな悪影響を招くか。学習指導要領の押し付けなどが教育現場の矛盾をいっそう深刻にしてきたことをみても明らかです
政府・自民党は、教育をめぐる矛盾や困難の原因を教育基本法にあるかのように言って改悪を進めようとしています。しかし、見直しには道理も根拠もありません。むしろ、政府が民主的教育の理念を踏みにじってきたことこそが重大です。
「人格の完成」を教育の根本目的におくというのは、子どもの成長と発達を何よりも大事にするということです。ところが、自民党政府が長年つづけてきた世界でも異常な競争主義の教育、管理主義の教育は、子どもの心と成長を深刻に傷つけています。一月末に、国連・子どもの権利委員会が日本政府にたいしておこなった勧告でも、?過度に競争的な教育制度によって、子どもの身体及び精神的な健康に悪影響が生じている?と厳しく批判しています。
家計の教育費負担が重いことも見過ごせません。日本は国と地方の学校教育への支出がOECD(経済協力開発機構)三十カ国のうち、GDP(国内総生産)比で最低である一方、家計の教育費は四番目に高く、国立大学の学費は一番高くなっています。これでは「教育の機会均等」が保証されているといえません。
教育基本法は行政の任務として第一〇条で、国による「不当な支配」の排除とともに、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備」を明記しています。いま、政府が行うべきは、教育の中身に口を出すことではなく、お金を出すことです。
全国の二百十九自治体で「教育基本法の理念を生かす」意見書が採択されていますが、義務教育国庫負担金制度堅持や国の責任による三十人学級の実現などを求めています。
自民党は昨年の総選挙の政権公約で「教育基本法改正」をかかげています。自民、公明の与党協議では、今年に入り、協議機関の名称に「改正」を加え、「教育基本法改正に関する協議会」とするなど改悪への動きを一段とつよめています。
教育基本法改悪が日程にのぼっているいま、改悪に反対する国民的なたたかいを広げていくときです。