2004年2月14日「しんぶん赤旗」
国連・子どもの権利委員会による日本政府への勧告が一月末行われました。条約批准国は、五年ごとに国連の委員会から勧告を受けることになっており、今回は二回目です。
第一回の勧告は、「高度に競争的な教育制度により子どもが発達障害にさらされている」という、大変厳しいものでした。
これにたいし、今回、日本政府は、国連の委員会に「十五歳人口の減少などで教育の競争的な性格は緩和されている」「高校入試も改善されている」と、この間の教育改革の「成果」をアピールしました。
一方、日本の子どもたちは、国連の委員たちを前に涙ながらに訴えました。「受験のため、すべての教科をただ機械的に暗記し、記憶するだけの授業が毎日のように続いていた…私たちは常にだれかと競争し、だれかをけ落とし見下すことでしか、自分の価値を見いだせなくなってしまった」「定時制高校の大規模な統廃合に反対する活動をしています…定時制高校は学校や社会の中で傷つき問題を抱えた子どもたちの最後の受け皿になっているから」
結局、委員会は、前回の指摘が「十分フォローアップ(追跡)されていない」「教育制度の過度に競争的な性質が、子どもの肉体的及び精神的健康に悪影響を及ぼしている」と、再び改善を求めました。さらに定時制高校の閉校の再考など、具体的な問題にも踏み込みました。子どもの声が国連を動かしたのです。
政府は、自らの教育政策を根本から反省し、子どもを含む国民の意見を聞き、勧告にそった改革にまじめにとりくむべきです。
今回、政府は「子どもに対する社会の伝統的態度により…子どもの意見の尊重が制限されている」とも指摘されました。
委員会は、(1) 子どもに影響を与えることについて、子どもの意見の尊重と参加をすすめ、子どもがこの権利を理解できるようにする (2) 社会全体に子どもの権利の周知徹底をはかる (3) 子どもの意見がどれだけ考慮されたかを定期的に吟味する (4) 学校や子どものかかわる施設で方針を決める会合などに子どもが参加するようにすることを勧告しました。
政府はこれまで「子どもの意見の尊重」という条約の精神を正面から受け止めてきませんでした。勧告の直後、小泉首相は、高校生が武力によらないイラク復興支援を求める署名を提出したことに、内容も読まずに「先生はイラクの事情を生徒に教えるべきだ」ときってすてるように言いました。この態度が政府の姿勢を物語っています。政府はこれまでの態度を改め、勧告の実行に責任をもつべきです。
今回、このほかに (1)子どもの政治活動への制限や体罰・持ち物検査などの見直し (2)学校や施設での不服申し立ての仕組みづくり (3) 障害のある子どもの教育やサービスの向上?婚外子、女の子、障害をもつ子ども、韓国・朝鮮人その他の少数者グループ、移住労働者の子どもなどへの社会的差別とのたたかい (4)児童養護施設最低基準の改正 (4)少年法の刑罰年齢引き下げの見直しなど、多岐にわたる勧告がされました。
日本共産党は、子どもの権利条約を重視し、子どもを守るための社会の自己規律の確立や、子どもの意見表明権の尊重と保障などをよびかけてきました。今回の勧告を力に、さらに、子どもの声を大切にして多くの人たちと手を携え、温かく力強い輪を広げていきたいと思います。