日本共産党

2004年3月11日「しんぶん赤旗」

主 張

児童虐待防止 法改正とともに人と予算増を


 児童虐待にかかわる法律(児童虐待防止法など)の改正が国会で審議されます。児童虐待の相談件数は増え続け、痛ましい事件も後を絶ちません。児童虐待を防止し、子育てを支援するため、何が求められているのか、改めて考える時です。

貧弱な日本の体制

 虐待の防止は保護者の生活や子育てへの支援から、危険な状況から子どもを救うことまで多岐にわたる仕事です。しかし、どの分野をみても日本の体制はあまりに貧弱です。

 専門家の研究によれば、イギリスでは、子ども担当のソーシャルケースワーカーが一万三千四百人、一人年間二十件のケースを受け持っています。ところが、人口が倍の日本では、同様の職員である児童福祉司の数はたったの千六百二十七人(二〇〇二年)しかいません。あまりの激務に現場からは「五年も仕事を続けたら心身がもたない」という声もあがっています。

 大阪の岸和田市で中三生が監禁され餓死寸前状態になっていた事件では、児童相談所の対応が批判されましたが、「虐待かもしれない」と聞いた職員は、二百件の相談をかかえ、虐待課の専任職員はたった二人で五市四町、六十万人の地域を受け持つなど、深刻な人手不足問題もありました。

 法改正とともに、人と予算を抜本的に増やすことが、つよく求められます。

 日本共産党は、当面の条件整備として、次の点を主張します。

  1. 児童相談所の児童福祉司の人数を「人口五万人に一人」と倍以上にし、専門職採用を徹底する。
  2. 里親制度を抜本的に拡充し、子どもに家庭的な環境を保障する。
  3. 児童福祉施設は小規模で家庭的な雰囲気のあるものにし、居室の改善、学習費の保障などをおこなう。
  4. 満杯状態の児童相談所の「一時保護所」を拡充し、生活にふさわしい場にする。
  5. 青少年を対象とする自立援助ホームへの国の補助金を小規模児童養護施設並みにひきあげる。

 児童虐待防止法は、与野党の協議により改正案がまとまることになりました。

 日本共産党の主張もふくめて、▽虐待が子どもの人権侵害であることを明記▽条件整備にたいする国、自治体の責務をより積極的なものにする▽保護者に対する支援を位置づける▽「虐待を受けたと思われる」疑いでも虐待通告の対象にするなど、前向きな内容といえます。

 同時に、虐待防止にとりくんでいる団体から「もっと現場の要求を聞いてほしい」と安全確認や保護者指導に家庭裁判所が関与することなどの要望がだされています。

 子どもの生命にもかかわる問題であり、今後とも、現場の要望をできるかぎり生かすために、力をつくしたいと思います。

社会全体でとりくみを

 児童虐待の背景には家庭がおかれている困難な状況があります。孤立無援でゆとりのない心境にある保護者が、高まった緊張をより弱い立場の子どもに暴発させるとき、児童虐待になると指摘されています。核家族化や地域社会の希薄化、長引く不況、忙しい保護者のくらし、競争をあおる社会。虐待はどんな家庭でも起こりうるといっても過言ではありません。

 虐待防止を特定の家族の問題という冷ややかな見方でなく、すべての家族の幸せを追求する課題の一つとして位置づけ、社会全体であたたかくとりくもうではありませんか。


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