日本共産党

2004年4月5日「しんぶん赤旗」

主 張 

 国歌・国旗と学校

命令・強制やめる国民的合意を


 「それにしても、東京都教育委員会のやり方は、強引にすぎる」(「東京」一日付社説)「処分という脅しをかけて強制するのは行きすぎ」(「朝日」二日付社説)――「君が代・日の丸」を卒業式に強要し、その命令に従わなかったとして、三月末に百七十六人もの教職員を処分した東京都教育委員会に社会的批判がひろがっています。

民主主義の原則は

 国歌国旗が法律で定められているということは、国が公的な場で「国の象徴」として公式に用いることを意味するものであり、国民への強制は許されていません。この原則は、「君が代」「日の丸」が好きな人でも嫌いな人でも、守ることができる、民主主義の当然のルールです。

 政府も、一九九九年の国会答弁で「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化が生じることはない」(小渕恵三首相・当時)と表明してきました。

 同時に政府は、この原則に反して、教育は別だと、学校現場での国旗国歌強制を正当化する態度をとっています。しかしそのなかでも、国歌斉唱をするかどうかは生徒の「良心の自由」であり、強要できないと国会でも答弁してきました。

 ところが、都教育委員会は、「政府答弁がまちがっている」と、常軌を逸した強制にのりだしました。各学校がきめるべき卒業式のやり方に、「国旗は舞台壇上正面に掲揚」など事細かな指示を出し、その命令に従わない教職員は処分するとしました。ついには、子どもがきちんと「君が代」を歌っていないと、担任の先生を処分するとまで表明しました。教育行政の教育への不当な介入を禁じた教育基本法も、子どもの思想、良心の自由を規定した子どもの権利条約もふみにじる暴挙です。

その結果、何がおきたでしょう。

 卒業生と先生が対面しながら互いの思い出をかみしめあうフロア形式は、「国旗に正面に向かなくなる」と禁じられました。卒業生みんなで作った壁画を舞台に飾ることも「国旗が正面にかかげられない」と禁じられました。式場には、教育委員会の役人が、命令どおりに行われているかどうか監視するために配置されました。「先生が処分されてはかわいそう」といつもより大きな声で「君が代」をうたった生徒もいました

 これまでも都内の多くの学校は、文部科学省の強制もあり、国歌国旗をともなっていました。しかし、そのもとでも「子どもたちのために、どんな卒業式にしようか」と校長先生と先生たちが立場をこえて話し合い、心づくしのさまざまな工夫をこらしてきました。

 今回の都の命令・強制は、こうした「子どものために」と話し合う教育の場らしい余地すら根こそぎ奪おうというものです。

子どもが被害者に

 子どものために何がいいかを話し合えてこそ、教育の場です。それを口ごたえを許さない命令―服従の関係でゴリ押しすれば、学校は教育の場でなくなります。卒業式がそうなれば、次には他の教育活動も同様の命令的なものになっていくでしょう。いちばんの被害者は、命令―服従の最後にいる子どもたちです。

 教育の条理に反する強制や命令から教育をまもることは、「君が代」「日の丸」への立場や態度をこえての、国民的な課題となっています。日本共産党は、そのことが国民的な合意となるよう、全力で奮闘します。


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