2004年7月5日「しんぶん赤旗」
小泉首相は六月二十九日、任期中に教育基本法を「改正」する意向を明らかにしました。与党は六月半ばに基本法の「全部改正」を合意しており、来年の国会に法案がでてくる可能性が強まっています。
今回の参議院選挙は、教育基本法の改悪を許さないためにも大事な選挙です。
自民、公明がねらう「改正」は、国家が教育を全面的に支配できるようにするものです。
教育基本法は、政府などが教育を支配することを禁じ、教育行政の任務を「条件整備」に限定しています(第一〇条)。自民、公明は、政府が「教育振興基本計画」をつくるという形で、中長期的な教育の目標を定めたり、教育のあり方を決める権限を政府にあたえようとしています。これは国家支配そのものです。
さらに、教育の目的(第一条)に「愛国心」を加えることをねらっています。小泉首相は「だれでも国を愛する心というのは当然持っている」といいますが、愛国心は本来、国民一人ひとりの見識や社会の自主性にゆだねられるべきものです。それを法律に書き込んで、国家が方向付けをしたり強制することは、民主主義社会とは相いれません。
強制の教育を徹底したのが、戦前の軍国主義教育でした。その過ちを二度とくりかえさないと、教育基本法は国家による教育支配を禁じ、「人格の完成」を教育の目的にすえました。教育は国家のためにおこなうのではなく、子ども一人ひとりのためにおこなう、それでこそ社会に貢献する人間にもなる、という転換でした。それを「国家先にありき」の教育にもどすことは許されません。
重大なことは、基本法「改正」の動きが、改憲の策動のつよまりと軌を一にして、おきていることです。
改憲のねらいは、第九条を改悪して、日本をアメリカとともに「海外で戦争をする国」にすることです。改憲派の西村真悟衆議院議員(民主党)は、自民、民主の議員でつくる教育基本法改正促進委員会の総会で「お国のために命を投げ出しても構わない日本人をうみだす」と述べました。改憲が「戦争をする国」づくりであれば、基本法改悪は「戦争をささえる国民」をつくろうというものです。自民、民主が改憲を競い合い、改憲の危険が現実のものになりつつある今、日本の進路の根本にかかわる重大問題になっています。
自民党と民主党の間では、憲法や消費税と同様、教育基本法でも違いが見えません。民主党は「創憲と連動して新基本法の創造」(六月十六日、党教育基本問題調査会声明)という立場です。西村議員のように改悪の先頭にたつ議員も少なくありません。基本法改定を自民党と競い合うというのでは、基本法改悪に立ち向かえないことは明らかです。
いまやるべきことは、子どもと教育の危機を克服することです。そのためには教育基本法をかえる理由はありません。むしろ、長年自民党政府が基本法の精神を投げ捨て、世界にも例のない「競争と管理」の教育体制をつくってきたことこそ、教育荒廃をうんだ原因の一つです。基本法の精神を生かして、教育の現状をかえることこそ、必要なことです。
日本共産党は「教育基本法の改悪に反対し、基本法を教育に生かす」を政策にかかげ、草の根でもそのために奮闘している政党です。子どもと教育を大切にする一票を日本共産党にぜひおよせください。