日本共産党

2004年11月17日「しんぶん赤旗」

国民の税金をきちんと教育に

義務教育費国庫負担金の存続は国民的課題


 国が教員給与の半分を負担する「義務教育費国庫負担金制度」が、「三位一体」改革()で危機にひんしている。制度を守ろうと、日本PTA全国協議会、全教や日教組などの教職員組合、各種の全国校長会など数多くの団体が立ち上がり、全国紙の意見広告には、ノーベル賞の小柴昌俊さん、ユニセフ親善大使の黒柳徹子さんも登場した。もちろん日本共産党は制度の存続、拡充を主張している。

 政府内では、文部科学省は制度存続、総務省は廃止、と「対立」がある。全国知事会は削減を決めたが、少なくない知事が反対を表明した。来年度どうなるのか、緊迫した局面が続いている。

義務教育無償の原則/憲法規定の国民的要求

 この状況を、一部マスコミは「予算をめぐる省庁の綱引き」と描く。たしかに、総額二・五兆円の予算を手もとにおき、その配分で地方ににらみをきかせたい、と文科省は考え、逆に二・五兆円を自分の側にという地方サイドの思惑もあるだろう。しかし、この問題は、そうした思惑をはるかに超えた、国民的課題である。

 問題の核心は、「われわれの税金をきちんと義務教育に使え」という国民的要求にある。

 憲法第二六条は、「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を宣言し、「義務教育は、これを無償」とした。人が人として生きていくためには学習・発達が欠かせない。だから教育は、すべての人々がもっている人権とされ、国家は「無償の義務教育」の提供を約束した。憲法で「無償」が決められているのは、あとにも先にも義務教育以外ない。

税源移譲しても四十道府県は減額に

 憲法に明記されている事業に、国が負担金を出すことは当然すぎるほど当然である。現実的には、国の負担をやめれば、財政力が弱い地方(そういう所はコストのかかるへき地の学校も多い)の義務教育は大きなダメージをうける。この点からも国の負担の必要性は明らかだ。世界の流れも国の負担で、フランス、ドイツ、イタリア、韓国などは、教員給与の全額を国が負担(連邦国家だと州政府)、アメリカ、イギリスも国の負担は50%、75%である。なお、だからといって日本のように「金を出すのだから口もだす」というのは間違いで、何の必然性もない。実際、全額国負担の国でも、日本と比べ物にならないほど教育の自主性がある。

 さて、国の負担をへらせば、地方の負担がふえる。そのお金はどうするのか。それが「税源移譲」(国税の一部を地方税に移す)なのだが、うまくいかない。試算によれば、税源移譲をしても四十道府県はくるお金がへる。八県は四割、五割の減だ。知事会は、この不足を交付税で補うことを求めているが、「三位一体」は交付税の削減をかかげている。地方借入金は十年で倍と、自治体は火の車だ。くるお金がへって、どうやって義務教育費を維持できるだろうか。

 要するに「税金がきちんと義務教育に使われなくなる」のである。「三位一体」と難しい言葉で国民をけむに巻き、その実は、教育や福祉に使う税金を削る――こんな「改革」は、国民や地方との矛盾をひろげざるをえない。広範な人々と語り合い、共同をひろげることが求められている。

(藤森毅・党文教委員会責任者)


  「三位一体」改革=国から地方への補助金削減と税源移譲、地方交付税の見直しの三つを一体に実現するという小泉内閣の方針。補助金の七割は、義務教育費国庫負担金など教育、福祉に使われています。


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