小泉内閣はいよいよ「大増税路線」に踏み出そうとしている。〇五年度と〇六年度の二年間で定率減税を縮小・廃止して三・三兆円の増税をおしつけ、さらに〇七年度には消費税増税を実施に移すというシナリオにもとづいて、二〇〇五年度予算案には定率減税の半減が盛り込まれている。〇五〜〇六年度の負担増は、定率減税の縮小・廃止だけではない。年金課税強化、フリーター課税強化、中小零細業者にたいする消費税徴税強化、年金・介護・雇用保険料の値上げなど、国民生活の隅々まで及んでおり、これらの合計は七兆円にのぼる。
小泉首相は「財政健全化のため」といっているが、この「大増税路線」にはまったく道理がない。一九九七年の「九兆円負担増」は家計の所得が伸びているなかでおこなわれたが、それでも大不況の引き金となった。その結果、税収が大幅に落ち込み、かえって財政悪化を招いた。今回は、庶民の所得が減りつづけているときに強行される、まったく無謀な大増税であり、国民の暮らしや経済と景気にたいする破壊的影響は計り知れず、いっそうの財政悪化という悪循環をまねく道である。さらに、大型公共事業のむだ使いを復活・継続するとともに、史上最高の利益をあげている大企業や高額所得者にたいする大幅な減税には手をつけないで、もっぱら庶民につけ回しするものである。日本共産党は、「大増税路線」の中止を断固として要求する。
〇五年度予算に求められていることは、「大増税路線」を中止し、年金、介護など必要な社会保障の拡充、災害対策の強化、雇用、中小企業、農業の危機打開などのために予算を重点的に配分し、暮らしと日本経済をまもることである。平和をまもるために、イラクから自衛隊を直ちに撤退させ、自衛隊の海外派兵体制づくりを中止して、軍事費を大幅に削減することも差し迫った課題になっている。
日本共産党は以上の立場から、政府予算案について、次のような組み替えをおこなうことを要求する。
<「大増税路線」は暮らしにも、経済・景気にも大打撃>
小泉首相は、定率減税の縮小・廃止について、「来年一月から千八百億円。景気に配慮している」とのべた。しかし、これは幾重にも国民を欺くものである。第一に、定率減税を一気に廃止するとしても、二年かけて廃止するとしても、三・三兆円の庶民増税に踏み出すことに変わりはない。
第二に、家計の収入が大幅に減っているという事実を無視している。雇用者報酬は毎年数兆円の規模で減り続けている。平均的なサラリーマン世帯の実収入は、九七年から〇四年の間に七十八万円減っている(総務省「家計調査」)。このときに定率減税を縮小・廃止することは、家計にとって「過酷な負担」以外の何ものでもない。
第三に、政府は定率減税の半減だけを切り離して、小さく見せようとしている。定率減税の半減による増税額は一・六四兆円だが、定率減税の全廃や社会保険料の引き上げ等を含めた〇五〜〇六年度の負担増は、合計で七兆円である。平均的なサラリーマン世帯(〇四年、実収入六百三十六万円)の場合、小泉内閣のもとですでに実施された負担増は十万円にのぼっている。さらに定率減税の縮小・廃止、雇用保険料の引き上げなど今後の実施予定分を合わせると、約二十万円という重い負担になる。
第四に、負担増が「雪だるま」式にふくらむことである。たとえば政府は、高齢者の住民税非課税限度額を廃止するとしているが、これによって、少なくとも百万人の高齢者が、住民税が非課税から課税になる。しかも、非課税から課税に変わることによって、国民健康保険料や介護保険料も連動して値上げになる。
このように家計収入が大幅に減っているもとで、「負担増の累積」が重くのしかかり、国民の消費購買力を奪って、経済と景気を破壊することは明らかである。
<むだな公共事業、軍事費、大企業・金持ち減税の「聖域化」をやめ、社会保障、災害、雇用、中小企業対策の強化など必要な財源を確保する>
政府は、国民にこれほどの負担増を押しつけておきながら、無駄な大型公共事業を復活・継続している。「公共投資の重点化」という名目で、「三大都市圏環状道路、中枢国際港湾、大都市圏拠点空港」の三つの分野での大型開発は、予算削減どころか、大幅拡大となっている。総額一兆円規模の関西国際空港二期事業では、〇五年度から新たに滑走路などの建設を開始し、これに三百億円の予算を計上している。関空は現在、一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力を持っているが、実績は十万回しかない。需要が増える見通しもないのに、二本目の滑走路をつくるというのは、無駄そのものである。政府はまた、採算の見込みがたたないために道路公団が建設できない高速道路を、道路特定財源をつぎ込んで建設する「直轄高速道路」に、〇五年度だけで二千億円もつぎ込もうとしている。いまこそ、むだな公共事業に大胆なメスを入れなければならない。
ガソリンや自動車に課税されている道路特定財源は、地方分を含めて五・八兆円の巨額にのぼっている。これらの財源の使途を道路関係に限定するという時代遅れの制度は、むだな道路・公共事業の「自動膨張装置」の役割を果たしてきた。与党道路族議員の「縄張り」となり、利権と政治腐敗の温床にもなっている道路特定財源制度は廃止し、一般財源化すべきである。当面、国税分について直ちに一般財源化し、年金国庫負担をはじめとした社会保障などの財源にも充てられるようにする。
九五年の事故いらい運転を停止していた高速増殖炉「もんじゅ」には、すでに八千億円が投入されているが、政府は無謀にも、これを百七十九億円もかけて改造・再開し、毎年百五十億円の維持費を払い続けようとしている。見通しのない高速増殖炉「もんじゅ」の改造・運転再開は、きっぱり中止し、核燃料サイクル政策を根本的に転換すべきである。
自衛隊のイラクからの撤退、危険な海外派兵体制づくりの中止などで軍事費を大幅に削減する。
国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は廃止する。組織ぐるみの不正支出である警察の捜査報償費など税金のむだ使いを根絶する。特殊法人の数自体は減っているが、形を変えて「独立行政法人」として残されたものが多く、これらを合わせると、政府の財政支出は減るどころか、むしろ増えている。こうした特殊法人、独立行政法人などの浪費をきびしく削減する。
政府は、庶民に大負担増を押しつけながら、大企業や高額所得者にたいする大幅な減税には指一本ふれようとしていない。九七年度から〇四年度までにおこなわれた大企業・高額所得者向け減税は、五兆円にのぼる。一方、庶民向けには、五兆円の増税である。さまざまな名目で押しつけられた庶民への増税は、そっくり大企業・高額所得者減税の穴埋めに使われたことになる。これでは「財政健全化」になるはずがない。
財務省「法人企業統計」によれば、資本金十億円以上の大企業(金融・保険を除く)の経常利益(〇三年度)は二十一兆円にのぼっている(〇四年度は半期だけで十三兆円)。九七年度の経常利益十五兆円と比べて、実に六兆円も増えているのに、法人税・法人住民税は一兆円足らずしか増えていない。高額所得者の所得税・住民税も、九七年当時と比べて約五千億円も減税になっている。
もともと、大企業・高額所得者向け減税は、「担税力」に応じた負担という税の公平に逆行するものだったが、少なくとも大企業の「景気回復」が明らかになった以上、法人税率を下げたまま、というわけにはいかない。大企業向け減税と高額所得者向け減税の見直しをおこなうべきである。
〇五年度予算案は、海外派兵を初めて自衛隊の「本来任務」と位置づけた新防衛大綱、新中期防衛力整備計画のもとで、それを最初に具体化するものとなっている。アメリカの無法な先制攻撃に加担する国づくりをやめさせるためにも、関連する軍事費は計上せず、軍事費を大幅に削減するよう求める。
新中期防は、海外への輸送・展開能力を抜本的に強化するため、「空中給油・輸送部隊」の新設を決めた。〇五年度予算は、その中心となる四機目の空中給油機(二百四十八億円)を導入するとともに、新型輸送機の開発をすすめようとするものである。国内外に緊急に展開するための「中央即応集団」(約五千人)も、新中期防で設置することが打ち出された。そのため〇五年度は、この部隊を教育する施設づくり、ヘリの導入などが開始されようとしている。これら海外派兵体制づくりはただちに中止し、予算を削除すべきである。また、戦車、火砲などについても徹底した削減をおこなう。
〇五年度予算案は、アメリカの核戦略の一翼をになうミサイル防衛システムの開発、導入を広範囲におこなおうとしている。これは、アメリカと共同で参戦することを意味しており、あらゆる研究、開発、導入をとりやめるべきである。
在日米軍への「思いやり」予算と「SACO関連経費」は合わせて、二千六百四十一億円にも達している。イラク・ファルージャでの大量虐殺に在日米軍がかかわっている事実にみられるように、在日米軍の基地建設を日本の費用でおこなうことは、一般市民にも銃口を向ける米軍を支援することであり、絶対に許されない。
自衛隊のイラク派遣費用は百四十六億円が計上されており、開始以来の総額で六百四十八億円になった。イラクでは、一時期三十七ヵ国となっていた軍隊派遣国が、イラク情勢の悪化のもとで、二十ヵ国になろうとしている。選挙をへて新しい政府、新しい憲法をつくるプロセスのなかで、米軍・多国籍軍の撤退をもとめる声はさらに広がりつつある。自衛隊はただちに撤退し、イラクの人びとが真に自分たちの手で国づくりをできるよう、国連中心の支援への枠組みの転換が必要である。
国民生活が深刻になっている今こそ、くらしをささえる社会保障制度の役割は重大であり、予算配分の重点を思い切って社会保障に移すことが必要である。
〈基礎年金国庫負担をただちに二分の一に引き上げ、年金「改革」をやり直す〉
政府が昨年強行した年金制度の大改悪は、負担増と給付減という激烈な「痛み」を国民に押しつける一方で、国民にたいする十年来の約束である基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げについては、〇九年度まで先送りするものである。しかも、政府はその財源という口実で、年金受給者への増税につづき、定率減税の廃止、消費税の増税など庶民への増税をすすめようとしている。
国民の八割が反対の声をあげている年金大改悪は実施を中止すべきである。そのためにも、道路特定財源の一般財源化など歳出の浪費をなくす改革によって二・七兆円の財源を確保し、国庫負担を二分の一へただちに引き上げて年金財政の改善をはかり、年金保険料の引き上げは凍結する。いまも将来も安心できる年金制度の構築にむけて「改革」論議をやりなおし、全額国庫負担による最低保障年金制度のすみやかな実現をめざす。
〈介護保険の負担増を中止し、減免制度実現、サービス基盤拡充などをすすめる〉
今年は介護保険の五年目の見直しの年である。政府が計画している、特別養護老人ホームなどの入居者の居住費、食費を保険の適用対象外として利用者負担にする改悪は中止する。介護保険のさまざまな矛盾を改善するためにも、国庫負担をただちに五%引き上げて三〇%とし、低所得者を対象にした、国としての保険料・利用料の減免制度の創設など、必要な改善をはかる。特養ホーム建設など基盤整備にたいする国庫支出の削減をやめ増額して、全国で三十四万人にものぼる特養ホーム待機者の解消をはかる。
〈医療保険制度の窓口負担の軽減などの改善〉
サラリーマンの医療費の窓口負担を二割に引き下げる。老人医療費の自己負担を軽減する。国民健康保険の国庫負担を増額し、低所得者を中心に窓口負担と保険料負担の軽減をはかる。
〈障害者福祉、生活保護など社会保障の改悪中止・拡充〉
これまで所得に応じた負担が原則とされてきた障害者福祉に、一割の利用者負担(「応益負担」)を導入する負担増は、障害者の命綱を奪うものであり、中止すべきである。障害者が地域で安心して暮らせるように、サービスの基盤整備や支援費制度の予算を拡充する。政府は、生活保護の老齢加算を廃止にむけて段階的に削減しているうえに、〇五年度からは母子加算まで削減しようとしているが、これらの加算措置は基本給付の低さを補う措置であり、削減は中止する。
阪神・淡路大震災から十年を経たものの、被災者の自立支援の遅れは、新たに深刻な社会問題になっている。政府や地方自治体では、被災者を対象にした「災害援護資金」の強制的回収をはじめ、災害公営住宅からの追い出し、中小業者向け融資の返済猶予を打ち切るなど、震災十年を機に、これまでおこなってきた支援策を切り捨てる動きを強めている。こうした無慈悲な態度をあらため、実態に合わせて、生活と地域経済の再建への支援を継続、強化すべきである。
この十年間のあいつぐ地震や風水害などの状況を踏まえて、国の制度として、住宅本体の再建への公的支援の制度をつくることが緊急の課題となっている。野党三党が共同で提出した被災者生活再建支援法の改正案の一日も早い成立をはかり、当面、住宅本体の建築や補修を支援の対象に加え、全壊の場合、支給金額の最高額を三百万円から五百万円に引き上げ、世帯収入の制限を緩和して八百万円以下にすべきである。新潟中越地震でも改めて大きな問題となっている、住宅と一体の宅地の改修にも支援が求められている。
災害に強いまちづくりと、防災体制の強化は不可欠である。大規模な地震や風水害への備えが急がれている今日、住宅の耐震診断と補強の促進、無秩序なまちづくりを防止することが必要である。学校や病院など重要施設の耐震化、住宅の耐震診断と補強、河川堤防の改修などは遅々としてすすまず、消防力の強化も立ち遅れたままになっている。これらの対策を抜本的に強化する。昨年の水害の経験で、ダムだのみの水害対策の限界が明らかになった。いま求められていることは、ダム建設の推進ではなく、堤防と排水設備の強化である。
防災のために不可欠な観測体制についても、全国二千七百三十八ヵ所に設置されている震度計のうち六二%で設置環境の改善が求められているのに、政府は財政的支援をしようとしない。また、阪神・淡路大震災当時一〇七ヵ所あった測候所が、これまでに四八ヵ所も廃止され、さらに〇五年度にも五ヵ所が廃止されようとしている。しかも政府は、中越地震で生き埋めの母子の救出に大きな貢献をした消防研究所の廃止を打ち出している。防災対策へのこうした逆行をやめ、観測体制や研究・技術開発の強化こそ進めるべきである。
失業率は、四・四%と引き続き高水準であり、一年以上の長期失業者が百万人を超えている。しかも正社員が大きく減少し、パート、派遣、契約など、不安定で、賃金も労働条件も劣悪な雇用への置き換えが急速にすすんでいる。安定した雇用の確保は、国民のくらしの基盤であると同時に、経済、社会の安定的な発展のためにも最重要の課題である。乱暴なリストラ、正社員の削減と不安定雇用への切り替えを推進する雇用政策をあらため、正規雇用を拡大するとともに、正社員とパート、派遣などで働く労働者との不当な差別や格差をなくす雇用政策に転換する。
深刻な失業、就職難の一方でT一人で二人分Uも働かされる状況がひろがっている。長時間労働、サービス残業をなくし、人間らしく働くという当たり前の条件を確保するとともに、新たな雇用を拡大する。政府がすすめようとしている、長時間労働を容認する労働時間短縮推進法の改悪(未達成の年間総労働千八百時間への短縮計画の放棄)、過労死防止基準の大幅緩和など、長時間労働と不安定雇用の拡大をさらに推進するやり方には断固反対する。
政府は「若者自立・挑戦プラン」をつくり、青年雇用対策にとりくんでいるとしているが、予算は七百億円足らずであり、GDP比でフランスの四十分の一、イギリス、ドイツの十分の一程度にすぎない。若者雇用対策予算を大幅に増額するとともに、職業訓練中の生活保障、新規雇用の拡大などを抜本的に強化する。
中小企業の経営は、激しい価格競争や大企業の下請単価たたきなどのもとで売り上げが伸びない一方で、原材料費が上昇するなど、引き続き、厳しい環境に置かれている。それにもかかわらず、中小企業対策費は、前年度比で八億円減の千七百三十億円に切り下げられた。小泉内閣は、四年間で中小企業対策費を一〇%以上も削減し、一般歳出に占める割合を、わずか〇・三七%と史上最低水準にしてしまった。こうしたやり方を抜本的にあらため、中小企業予算を大幅に増額する。
小泉内閣の金融政策によって、銀行の中小企業向け貸出は大きく減少させられ、資金繰りに苦しむ中小企業を窮地に追いやったうえに、さらに、地方銀行の再編・淘汰に乗り出そうとしている。小泉・竹中流の乱暴な不良債権処理策をやめ、中小企業と地域経済への円滑な資金供給をはかる金融政策に転換する。融資の全額保証を「部分保証」に圧縮する信用保証制度の改悪をゆるさず、信用保証協会への国の補助金を増額して財政基盤を安定させる。
大型店の身勝手な出店・退店や深夜営業、交通渋滞と騒音などは、商店街に大打撃となっているだけでなく、地域社会にも深刻な影響をもたらしている。ところが政府は「規制緩和」を名目に、自治体に対して「大型店は規制してはならない」という強力な規制をしている。「まちづくり三法」を改正し、大型店の身勝手を許さず、地域の商店街・中小商店の値打ちが生きる「まちづくりルール」を、自治体と住民の自主的な判断でできるようにする。
食料・農業・・・政府の無責任な政府米売却によって、米価の暴落に歯止めがなくなっている。このため政府が育成しようとしている大規模農家でさえ、重大な打撃を受けている。こうした事態に何の対応もできないばかりか、農家経営に打撃を与える米「改革」を中止し、ただちに米価の下支えと暴落に対する補償を実施すべきである。
公共事業は農林水産予算全体の四四%(一兆四千七百五十億円)を占めており、そのなかには工事差し止めの判決が出た諫早干拓事業の予算も含まれているなど、あいかわらず公共事業偏重の予算となっている。こうした予算の使い道をあらためて、必要な財源を確保する。
BSE(牛海綿状脳症)への対応は、国民の安全を守るうえで重要である。アメリカの全頭検査廃止の圧力に屈することなく、この分野でノーベル賞を受賞した研究者も指摘しているように、全頭検査を維持すべきである。
公害・環境・・・昨年十月の最高裁判決によって、水俣病患者の未認定について国の責任が認められた以上、国はただちにすべての患者の救済にとりくむべきである。増え続けている大気汚染による被害者を救済するため、新たな制度を導入するとともに、ディーゼル車の排ガスに含まれる汚染物質を除去する装置を取り付ける事業者にたいする助成の継続・拡充を求める。
あいつぐ大規模な廃棄物の不法投棄を除去するために、排出者の処理費負担を求めるとともに、政府も基金の積み増しをおこなって、除去を急ぐことが必要である。環境ホルモンや化学物質過敏症やシックハウス、シックスクールなど化学物質による健康被害に関する研究・対策を強化する。旧日本軍がかかわる毒ガスなどによる環境汚染を防ぎ、被害者を救済するよう国は全力をあげるべきである。
政府は、あいかわらず原発の推進に固執している。原子力対策には四千三百八十億円も予算を計上し、エネルギー予算全体の三七%をしめる。ヨーロッパで温暖化対策として重視されている自然エネルギーを含む新エネルギーの予算は、わが国では千六百六十六億円で、エネルギー予算の一四%にすぎない。温暖化ガス排出量の大幅削減を約束した「京都議定書」の発効をふまえ、自然エネルギーの研究・開発や普及のための予算を大幅に拡充する。
教育・・・わが国の教育予算の水準(GDPに対する公教育費負担の割合)は、OECD諸国中最低である。そのために、教育条件は欧米にくらべて格段に劣っている。この低教育予算を転換し、以下のような国民の切実な教育要求にこたえる。
少人数学級は、教育の困難がますなかで、ますます国民の切実な要求となっている。また、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症などのいわゆる「軽度発達障害」の子どもへの支援教育を始めることが切実だが、教員の体制がない。少人数学級と特別支援教育をすすめるために教員を増員する。
日本の大学学費は世界一高く、家計の重い負担となっている。国際条約では「漸進的無償化」が明記され、ヨーロッパでは学費無償の国が少なくない。政府予算案は国立大学学費値上げを見込んでいるが、これはキッパリと中止すべきである。
老朽化が著しい国立大学の改修のための予算を増額する。公立学校の改修は、耐震化予算がある程度確保されている一方、トイレ改修等の耐震化以外の改修予算が削られている。これを例年並みにおこなえるようにする。
義務教育国庫負担金制度は、憲法に明記されている「無償の義務教育」のための中心的制度である。「三位一体」改革による削減は、憲法上の国の責任を後退させるものであり、削減を元に戻す。同様に、一般財源化した就学援助費を復活させる。
児童虐待防止は、子どもの命にかかわるまったなしの課題である。ところが、児童虐待防止のための中心的機関である児童相談所の体制がきわめて貧弱で、急増する相談に追いついていない。予算を倍加し、児童福祉司の倍加、子どもの「一時保護所」の整備などをおこなう。
少子化対策・・・子育てや家庭と両立できる人間らしい働き方にする、子育てへの重い負担を軽減する子育て支援策を強化するという、二つの方向でのとりくみを強める。
仕事と子育てを両立させるうえでも、異常な長時間労働をなくすことは急務である。残業や「単身赴任」の強要をやめさせることも重要である。フリーターの急増など若者の雇用環境の急激な悪化が少子化に拍車をかけている。若者に安定した仕事を確保するために、企業が雇用責任を果たすよう働きかける、職業訓練の機会を拡大するなど、若者雇用対策を抜本的に強化する。派遣やパート、臨時などと正社員との不当な差別、格差をなくす。男女差別・格差をなくし女性が働き続けられる社会にしていく、とくに、派遣労働者なども含めて育児休業が取得できるように徹底するとともに、「原職復帰」の原則を確立するなど、出産が働き続けることにとって不利になるような仕組みを改める。
子育てへの負担を軽減する、いわゆる少子化対策の予算も一兆円規模に拡大する(政府集計の「少子化社会対策」予算は三千八百三十二億円)。小泉内閣は「待機児ゼロ」プランをかかげたが、保育所への待機児は逆に史上最高になっている。本当に「待機児ゼロ」にするために必要な保育所の増設・拡充をはかるとともに、保育料を値下げする。地方自治体ごとに実施されている乳幼児医療の無料化を国の制度として拡充する。第一子、第二子の児童手当を月額五千円から一万円に引き上げる。さらに、世界的に見ても異常に重い教育費負担を軽減するために、授業料の値上げを中止し、値下げへと転換する。
文化・スポーツ・・・ヨーロッパに比べ低い文化予算を増額する。舞台芸術支援を拡充し、けいこ場や地方公演の交通・宿泊費を支援する。すべての子どもが年一回は鑑賞できるよう支援する。日本映画の製作・上映支援を拡充し、フィルムセンターの独立と人員増をはかる。アニメなど制作現場の労働条件を改善する。
耐久年限をすぎたスポーツ施設の全国調査を実施し、その補修・改築等への助成費の増額をはかる。フットサルなどができる青少年のプレー・パークの整備を推進する。
地方財源の拡充・・・政府は「三位一体改革」の名のもとに、今後二年間で三兆円の国庫補助負担金を削減するとして、〇五年度は義務教育費や国民健康保険などを中心に、約一・八兆円を削減した。これらの補助負担金は、一部を除いては所得譲与税、税源移譲予定交付金などの形で「税源移譲」されるが、その配分は人口基準などになるため、大都市と地方での格差が拡大することになり、これを調整するための地方交付税の役割がますます重要になる。ところが、その地方交付税の配分額は、〇四年度とほぼ同水準に据え置かれた。〇四年度は、地方交付税とその代替財源である臨時財政対策債の削減が三兆円にのぼり、多くの自治体が財源不足に陥り関係者の悲鳴が上がったが、〇五年度もこの水準に据え置かれたために、全国の多くの地方自治体で苦しい財政運営が強いられることは必至である。住民サービスの低下をもたらさないよう、地方交付税の拡充をはかる。