4月から障害者自立支援法が実施され、施設利用に応益負担が課せられることになり、利用者負担の大幅増大の影響が懸念されている。また施設への報酬が切り下げられて施設経営が大きな困難に直面している。その実態を緊急に調査することとした。
全国の障害者施設(法定)のうち、身体・知的・精神障害者の入所・通所施設、グループホームを中心に無作為で抽出した230施設。これに地方議員が直接訪問して聞き取りをおこなったものを追加した。
郵送でアンケート用紙を送り、郵便またはFAXで40都道府県212施設・事業所から回答が寄せられた。回答施設の内訳(身体障害者施設34、知的障害者施設116、精神障害者施設24、グループホーム17、その他21か所)
2006年5月17日から6月3日。
回答を寄せてきた212施設・事業所のうち、障害者自立支援法の対象となる施設(法定)を中心にした概要と特徴は以下のとおり。
応益負担が導入された施設ではいずれも大幅な利用者負担増になっている。とりわけ身体・知的通所施設では、これまで無料だった障害者があらたに月1〜3万円の負担(給食代含む)をしいられる厳しい状況にある。
国の減免制度があっても、所得制限などで減免の対象とならない利用者が多く存在する。
4月からの負担増を理由に、施設の利用を断念した障害者は65人、検討中は111人、合計176人にものぼっている。1施設で「退所者が5人」(北海道)、「利用断念を検討中が10人」(山梨)にものぼる施設もあった。
※施設利用断念の障害者の施設種別内訳
身体障害者通所施設で断念31人、検討中47人。知的障害者通所施設で断念25人、検討中39人。精神障害者通所施設で断念2人、検討中11人。その他、知的障害者入所施設・共同作業所などで断念7人、検討中14人。合計で断念65人、検討中111人。
調査時点では、利用者負担金の請求はまだ4月分だけであり、今後、月を重ねるにしたがって、負担増の影響はもっと増大することが予想される。
▼施設の収入は、全体として前年度に比べて1〜2割の減。身体・知的通所施設では減収規模が大きく、2割を超す施設も相当数見受けられる。3割以上減の施設が6施設あり、4.6割の減収という深刻な施設もあった。経営基盤が脆弱な小規模のグループホームは共通して経営危機は深刻化している。児童デイサービスも学齢児を受け入れている施設の報酬が大幅に下がった影響で存続の危機を訴える声が寄せられた。
▼10月からの新体系後の収入の見通しについて、約6割の施設が「まだわからない」と回答。多くの施設が不安をつのらせており、移行の見通しももてない状況となっている。収入の試算をした施設ではどこも「さらに大幅な減収になる」と見込んでおり、「半分近く減収」との回答を寄せてきた施設もある。
各施設とも経営の存続が問われる危機的事態に直面しており、「園廃止も現実的課題になってきている」(東海地方)と悲痛な声を寄せてきた施設もある。
ほとんどの施設が「必要」と回答。「必要ない」とした施設は1か所のみ。
▼職員に深刻な犠牲
職員の労働条件関係では、「賃金切下げ」「一時金カット」「人員削減」「職員のパート化」などをあげる施設が多く、「苦渋の選択」をしいられている施設の深刻な実情があらためて浮き彫りになった。すでに、「職員の夏の一時金ゼロ」(北海道)、「4名のパートとの再契約をおこなわず」(東京)などをおこなった施設もある。
▼利用者サービスの後退
利用者関係では、「夏休みの日数減」、「土・日・祝日の開所」、「行事の中止」、「定員を超えた新規利用者の受け入れ」など、多くの施設で利用者サービスの後退を余儀なくされている。グループホームでは、「帰省や外泊のルール変更」をあげる施設が多い。
「国は施設をつぶそうとしているのでしょうか。利用者、施設ともに八方ふさがりです。4月から職員の給与は引き下げがおこなわれました。やる気のある若い職員は去っています」(北関東、身体障害者通所授産施設)など深刻な声が数多く寄せられている。
〔事例〕
▽東京・身体障害者通所授産施設(定員31人)
05年度の支援費収入5300万円、06年度は2930万円へと2370万円の減収。05年度の通所率が77.3%で国の設定率94.5%よりも大幅に低いことが原因。このため、(1)労働組合の合意をえて職員の給与を年額一人当たり30〜50万円削減、(2)職員の人数を2人削減、(3)利用者が楽しみにしている旅行の中止などの措置を講じた。
▽国への要望
「応益負担の撤回」、「減免制度の拡充」は、いずれかについて、すべての施設が要望するとして回答し、切実な要求であることを裏づけている。「応益負担の撤回」は、7割を超す施設が要望項目にあげていることに見られるように、法施行後、応益負担の問題点が、福祉の現場であらためて深刻な事実として噴出していることをうかがわせている。
報酬については、「単価の引き上げ」と「日払い方式の見直し」のいずれかについてすべての施設が「必要あり」と回答。「日払い方式の見直し」は、通所・入所施設、グループホームで7〜8割の施設が見直しの必要性をあげており、事態の深刻さを反映している。
▽自治体への要望
「利用料負担の軽減」、「施設への運営費補助」について、例外なくすべての施設がいずれかの要求をあげており、切実な要求であることを裏づけている。知的通所、精神通所、グループホームでは6〜10割の施設が自治体からの援助を痛切に要望している。
応益負担導入による大幅な利用者負担増、施設経営の危機的状況にたいして、施設関係者から悲痛な訴えと、国政、地方政治に事態打開を求める声が数多く寄せられた。
以上
●障害者自立支援法の影響調査(第2回)/(2007年9月26日)→
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