日本共産党

「住まいは人権」という立場へ、いまこそ住宅政策の転換を

――住生活基本法案に関して――

2006年3月15日
日本共産党国民運動委員会


 いま国会に、住生活基本法案が提出されています。この法案は、「住生活の安定の確保及び向上」を基本目的にしながら、肝心の居住者、国民の権利がまったく登場しない、きわめて不十分なものです。しかも、これまでの住宅建設計画法と「住宅建設計画」が廃止され、公共住宅の供給に関する政府目標などがなくなります。近年、政府は住宅に関する公的責任を大きく後退させ、公営住宅・公団住宅は新規建設を行わず、住宅金融公庫の融資も縮小・廃止するなど、住宅の供給も、住宅取得のための金融も、「市場まかせ」「民間まかせ」にしてきました。法案はそれを追認、固定化することを今後の日本の住宅政策の基本指針とする内容であり、本来あるべき「基本法」とは相容れません。

 いま、耐震偽装事件や自然災害、ホームレスの増加をはじめ、住まいに対する国民の不安と不満は深刻です。「民間まかせ」や「自己責任」を基調とした現在の住宅政策を、「住まいは人権」という立場にたった住宅政策に転換することこそ必要です。そのためにも、公共・民間、持ち家・借家といった形態を問わず、国民の居住の権利を明確にし、その保障の指針となる基本法を実現すべきです。

 その内容としては、当面、(1)国民の住まいに対する権利の規定、(2)めざすべき居住・住環境の水準の法定化、(3)適切な住居費負担の設定、(4)公的住宅の質量ともの改善の明確化、(5)国民の権利を守るための国・自治体や住宅関連事業者・金融機関などの責務の明確化などが必要です。国民的な議論を広げ、抜本的な改善をすすめることをよびかけます。

1、安価で良質な公共住宅の供給をはかり、国民の住生活の改善・向上をめざします

 いま公営住宅では、高齢者世帯が多くを占め、コミュニティも大きな困難を抱えています。それでも安い家賃を求めて入居希望者は増え、数十倍の応募倍率もめずらしくありません。しかし、新規建設がほとんどないため、住居に困っている人も入居できないのが現実です。安価で住みよい公共住宅を求める国民の願いは切実です。

 「特殊法人改革」で公団住宅から再編された都市再生機構住宅(UR<ユーアール>賃貸住宅)も、既存住宅の改善はおろそかにされ、住宅供給から完全撤退しました。3年ごとに家賃が値上げされており、「民間」への売却さえ検討されています。高齢化している入居者からは、「住み続けられる家賃を」という声が大きくなっています。当初の中堅勤労者を対象に質のよい住宅を供給するという役割は投げ捨てられました。

 1950年に制定された公営住宅法は、当初は幅広い国民を対象とした住宅の供給を目指していました。それが憲法にもとづく、国の責任だと考えられたからです。また、公団住宅もかつては「寝食分離」、システムキッチンなど近代的な住生活を定着させるなど、わが国の居住水準の向上に大きな役割を果たしました。

 安価で良質な公共住宅が一定のシェアを占めれば、それは民間の住宅にも影響をあたえ、結果として、国民全体の住生活の改善・向上へとつながります。法案のように、公共住宅の供給を「セーフティネット」対策に矮小化すれば、まったくの救貧対策となり、国民の居住を保障することにはなりません。

 「貧困化」「格差社会」が問題となっているいま、公共住宅の役割はますます大きくなっています。日本共産党は、既存の公共住宅の改善、安価で良質な公共住宅の供給にとりくみ、国民の住生活の改善・向上をめざします。

2、欠陥住宅の根絶、住宅の改善などの支援

 持ち家では、住宅の欠陥被害などが増えています。1998年の建築基準法改悪で、安全確認・検査すら民間まかせにしたことが大きな原因です。今回の耐震偽装事件では、住宅を「民間まかせ」にすると、どんな深刻な事態が生まれるかが明らかになりました。また、長期・固定の低金利で持ち家取得を支援してきた住宅金融公庫の融資が廃止された結果、住宅ローンでも、性別、収入や勤務形態などによる、金融機関からの融資選別が行われるようになっています。

 日本共産党は、住宅購入者に対する長期、固定、低利融資の仕組みを維持するとともに、耐震化・バリアフリー化など住宅ストックの向上と結合させた持ち家にたいする公的支援を要求します。また、そもそも欠陥住宅が生まれないように、検査制度の改善や、被害者救済と売主・施工主の責任の明確化をはかるなど制度の改善を求めます。

3、民間賃貸住宅の改善への支援や、借家人の居住の安定の確保につとめます

 民間賃貸住宅では、家主に正当な事由がなくても居住者を追い出せる「定期借家制度」が導入されました。当時の政府は、これによって安価で良質な借家が増えると宣伝しましたが、賃貸住宅居住者の居住の安定が脅かされただけであり、狭くて高い家賃の民間賃貸住宅が多い実態は、何ら改善されていません。

 日本共産党は、耐震化・バリアフリー化をはじめ、家主の協力を得ながら民間賃貸住宅の改善を支援すること、高齢者や障害者に入居差別をやめさせるなど、居住の安定確保につとめるよう住宅関連事業者への指導、誘導を強化することなどを要求します。

《「住まいは人権」は世界の流れ 》

 本来、住まいは生活の基本であり、憲法25条が保障する生存権の土台です。住まいが権利であることは、世界人権宣言や、日本政府も批准している国際人権規約(社会権規約)も認めています。最近でも、1996年に開催された国連人間居住会議は、負担可能な費用で、安全で健康的な住宅に住む国民の権利や、住環境改善への住民参加など、国民の「適切な住まいに住む権利」を確認する「イスタンブール宣言」を改めて採択しました。

 その後10年間に日本政府が歩んだ道は、この宣言に真っ向から反しています。日本共産党は、「住まいは人権」「住民こそ主人公」という立場をつらぬく党として、国民の住環境の改善、豊かな居住環境の実現へ、国民のみなさんの運動と力をあわせてがんばります。


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