2007年1月19日 日本共産党
「もっと審議を」「改悪反対」の大多数の国民世論に背を向けて、自民・公明は昨年12月、数の力で教育基本法を改悪しました。日本共産党は、この改悪の動きに正面から対決し、国民のみなさんとともに地域、国会でがんばりました。そのなかで、政府によるタウンミーティングでの「やらせ質問」の暴露など政府を追いつめ、他の党の追随を許さない奮闘ができました。
改悪された教育基本法は、「愛国心の強制」「教育への無制限の権力的介入」という、憲法に反する重大な問題のある悪法です。しかし、私たちの追及によって、政府も憲法にしばられて、“内心の自由は守る、「愛国心」通知表はやめる”“国家的介入についてはできる限り抑制的でなければならない”と認めざるを得なくなりました。憲法は、改悪教育基本法の具体化と押しつけを許さない確かな足場です。
教育は「人間の内面的な価値に関する文化的な営み」(最高裁学テ判決)であり、子どもの成長と発達のために、自由で自主的な空間で営まなければなりません。私たちは、この憲法から直接導かれる大原則にたって、改悪教育基本法から子どもたちを守り、憲法に基づいた教育をすべての自治体で追求します。
安倍政権は、「全国いっせいテスト」「学校選択」など教育に弱肉強食の競争原理を持ち込み、子ども、教師、学校、そして地域を「負け組」「勝ち組」にふるいわけようとしています。しかし、すでに子どもも家庭も、格差と貧困の拡大のもとで心身をすり減らし、希望を失いかけています。子どもたちに必要なのは、人をばらばらにし攻撃的にする競争原理ではなく、人と人との間で生きる連帯ではないでしょうか。国連・子どもの権利委員会から二度にわたって勧告されている「過度に競争的な教育制度」の改善にこそとりくむべきです。
私たちは、こうした立場にたって、「いじめ」など切実な教育問題の解決、子ども一人ひとりを大切にする、憲法に基づいた教育をめざし、みなさんとともに力をあわせて奮闘します。
政治の教育にたいする最大の責任は、子どものための教育条件整備です。ところが、自公政権のもとで、日本の国と地方をあわせた教育予算の水準は、OECD(経済協力開発機構)30ヶ国中最下位となり、欧米にはないような劣悪な教育条件がつくられてきました。昨年度は義務教育の国庫負担金が削減され(二分の一から三分の一)、政府はさらに「教員を減らせ」「私学助成を削れ」といっています。私たちは、政府の教育予算削減に反対し、大幅引き上げ、教育条件の拡充のために全力をあげます。
少人数学級を広げます……少人数学級は子どもをていねいに育てるために必要な条件であり、国民のつよい教育要求です。自公政権が少人数学級の実施をかたくなに拒むなか、私たちは住民のみなさんとともに自治体独自の少人数学級をすすめ、今では46道府県にまで広がりました。この流れをさらにすすめます。政府の「教職員一万人削減計画」にきっぱり反対し、国としての「30人学級」の実施を求めます。正規採用教職員の増員、臨時教職員の待遇改善をすすめます。
私学助成を増額します……私学教育は公教育の大切な一翼を担っています。私学の教育条件をきちんと保障するため、当面、経常費二分の一助成の早期実現、授業料直接補助、施設助成の拡充をすすめます。
教育格差の拡大に反対し、教育の機会均等、底上げを重視します……すべての人に教育の機会を均等に保障し、格差の継承を阻むのが教育の一つの役割です。ところが自公政権は国民の経済格差をひろげ、貧困と教育格差の連鎖という深刻な事態がひろがっています。非正規雇用や失職、単親の家庭などの子どもは「再チャレンジ」どころか、チャレンジの入口にも立てないのが現状です。このことは、社会のあり方を蝕んでいます。私たちは教育格差の拡大に反対し、すべての子どもが十分な教育を受けられるような、教育の機会均等、教育の底上げをめざします。
就学援助の国庫負担制度が廃止され、各地で就学援助の縮小が始まっています。制度の後退を許さず、利用しやすく、金額も実態に見合ったものに拡充させます。義務教育での保護者負担を減らします。
政府主導の「一貫校」構想などは、結局、一部の「エリート」のための教育に公立学校予算を重点的につぎこむもので、教育格差を助長しかねません。困難をかかえる子どもや学校への支援など教育の「底上げ」のための予算を手厚くします。
高校の授業料減免制度を拡充させます。学費無償化は、世界人権規約でうたわれている世界の流れです。ところが自公政権は国際人権規約の「高校教育無償化」「大学教育無償化」の各条項への批准を拒否したままです。現在批准をしていない条約加盟国はたった三ヶ国(日本、ルワンダ、マダガスカル)です。批准をつよく求めるとともに、幼児教育、高校、大学、専門学校などでの教育費負担軽減、無償をめざします。
公立大学法人化による大学予算削減と大学への行政的介入をやめさせ、教育研究条件の充実をはかります。
障害児教育を拡充します……この4月から、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など軽度発達障害の子どもへの支援をふくむ「特別支援教育」が本格化します。軽度発達障害の子どもは数十万人(6.3%、文科省推計)とされているにもかかわらず、政府は「既存の人的・物的資源」で対応するとしてきました。そのもとで、「障害児学校の多くの教職員が特別支援にまわされ、在籍する障害児の教育が手薄になった」など深刻な事態もうまれています。政府にたいし、特別支援教育の実施に必要な教職員の定数基準をさだめ、その計画的な配置をつよく求めるとともに、自治体独自の条件整備をすすめます。
軽度発達障害をふくめどの子にもていねいな教育ができるよう、少人数学級などをすすめます。障害児学級をまもり、通級指導教室を増やします。「支援地域」の中心と位置づけられる盲・ろう・養護学校は統廃合でなく小規模分散で地域密着型をめざし拡充し、教員をふやして地域支援が行える体制をととのえます。医療・福祉など専門機関とのネットワーク、巡回相談など地域全体の支援体制をつよめます。来年度政府予算案で、国民と日本共産党の要求によってようやく、全国で311名の教員配置と、地方交付税での「特別支援教育支援員」の位置づけがもりこまれました。各地域で「支援員」の配置が具体化されるようとりくみます。
不登校、非行などへの対応を進めます……子どもたちにストレスをもたらしている、ゆきすぎた競争と格差づくりの教育をやめさせます。子どもたちのケア、教育権の保障のための公的支援をつよめます。相談しやすい窓口を拡充するとともに、支援団体や家庭への公的支援をつよめます。
外国人教育、夜間中学開設を推進します……日本に居住する外国人登録者は200万人を超え、新たに結婚する20組のうち1組は外国籍の人との結婚といわれています。内外人平等を保障した国際人権規約、子どもの権利条約にもとづき、日本語教室設置、公立学校への入学資格の改善など在日外国人の子どもの教育を保障します。外国人の賃金未払いや劣悪な労働条件の改善、福祉・医療を受けやすくするとともに、地域での共生をすすめます。
夜間中学は、戦争の混乱で教育を受けられなかった多くの人、不登校の子ども、障害者、中国帰国者・在日韓国・朝鮮人らにとってかけがえのない教育の場となっています。ところが全国にわずか35校しかなく、昨年には日弁連からも夜間中学増設の意見書が提出されました。今ある中学校の二部授業として夜間中学の開設を全国ですすめます。
学校安全対策を進めます……「学校災害給付」件数は年間二百万件に増加し、学校での事故や犯罪から子ども、教職員らの生命を守る仕事は急務です。ところが国の施策は、通達を出すだけの「通達行政」「手引き行政」の粋をでず、学校安全対策はきわめて不十分です。私たちは、子どもの「安全の教育を受ける権利」を保障する立場にたった「学校安全法」「学校安全条例」の制定を支持するとともに、不審者対応を含めた安全対策のための専門職員配置や施設の改善をすすめ、住民の自主的なとりくみを支援します。
学校図書館、公立図書館を拡充します……学校図書館に専任の専門職員の配置と図書の拡充をすすめます。学校図書館法を条件整備のために生かすとともに、「読書冊数」を競うような安易な目標の押しつけなどには反対します。すべての自治体の生活圏域に図書館を設置し、住民の知る権利を保障するとともに、地域の振興にいかします。図書館サービスと機能の変質につながる指定管理者制度の導入に反対します。
学校給食を拡充します……安全で豊かな学校給食のために、地産地消、自校方式、直営方式などをすすめます。中学校給食、高校給食をひろげます。
保健室を充実させます……保健室は、今を生きる子どもの心身を支え、医師、カウンセラーなど子どもとかかわる専門家と連携する、多様でかけがえのない役割を果たしています。養護教諭の複数配置をすすめるなど拡充をすすめます。
学校耐震化等の条件整備をすすめます……学校の耐震化率は半分にとどまり、子どもの生命、地域の防災にとっても深刻な問題です。「学校耐震化年次計画」を自治体の優先課題として策定するとともに、耐震診断を国庫負担で早急に実施すること、耐震化工事への国庫補助率をアップすることを求めます。
学校の統廃合に反対します……子どもの通学を困難にし地域の教育力を弱めるなど子どもの学習権を後退させ、地域の文化、コミュニティーの拠点を奪う、学校の一方的統廃合に反対します。
文化、スポーツ施策を拡充します……図書館、公民館、児童館、公園、スポーツ施設などの増設、拡充をすすめます。子どもの安全や文化環境を貧しくする民間委託に反対します。スポーツ・文化活動への公的援助をつよめます。学校などでの文化芸術鑑賞などを拡充します。青少年に有害で、財政的にも破綻したサッカーくじの廃止を求めます。
いじめ、校内暴力、学力のゆがみなど、いま日本の教育は大きな問題をかかえています。ところが、この間、政府・文部科学省は、詰め込みと系統性のない学習を実態とする「ゆとり教育」や「数値目標化」など道理のない「教育改革」を押しつけ、子どもの成長・発達を阻害するような「競争と管理」の政策をつよめてきました。そのもとで、地方と学校の自主性が奪われ、子どものことより、政府の顔色をうかがうことを優先する風潮が教育行政にも広がりました。この間おきた、「いじめ自殺」をめぐる対応や「高校未履修問題」は、こうした子ども不在の教育のあらわれではないでしょうか。一方、この流れから離脱しようとする新しい試みも生まれています。たとえば愛知県犬山市では、「犬山の子どもは犬山で育てよう」と、立場をこえた、子ども本位の改革の試みがはじまりました。そのなかで、子どもを「できる」「できない」でより分ける習熟度別学習より、多様な子どもたちが学びあい助け合う少人数学級・学習のほうが、人格形成にも学力にもいいという方向が見えています。文部科学省の顔色ではなく子どもの笑顔を大切にする──これは、誰でも一致できる教育のあり方ではないでしょうか。私たちはこの立場で、子どもの成長・発達を中心にすえた教育を一歩でも前にすすめるために全力をあげます。
いじめ問題の解決にとりくみます……いま政府の教育再生会議は、いじめの深刻化の背景や温床を何も論じないまま、いじめる子どもへの懲戒、教員による体罰容認など、懲罰的対応を突出させようとしています。こんな方向では、いじめ問題をこじらせこそすれ解決には程遠いといわなければなりません。子どもの声をききとり、いじめの温床となっている過度の競争と管理の教育をあらため、すべての子どもを人間として大切にする学校をつくることこそ、今やるべきことです。さらに私たちは、いじめの実態を見えなくする「いじめの数値目標化」に反対し、学校、地域のいじめ問題解決のとりくみをはげまし、そのために子どもの権利条約の普及、いじめ問題についての理解促進、教員の「多忙化」解消、保健室やカウンセラーの充実などにとりくみます。
学力保障をすすめます……すべての子どもに基礎的学力を保障するため、学校・教員の自主性と創意・工夫を保障し、支援します。競争とつめこみでは本当の学力は生まれません。子どもを傷つける危険のつよい習熟度別学習等、特定の教育方法の強制に反対します。文部科学省は改悪教育基本法に基づいて学習指導要領を改訂しようしていますが、文科省による指導要領の押しつけに反対し、子どもの状況、学校・地域の実情に即した教育課程を自主的につくれるようにします。子どもの成長を第一にする方向での学習指導要領の抜本的改訂を、国民参加ですすめることを求めます。その際、学力とともに、市民道徳、体育、情操教育など全人格的な教育を大切にします。
全国いっせいテスト・学区自由化に反対します……すでに「全国いっせいテスト」とその公表をおこなった自治体では、「テスト対策のため文化祭や林間学校を縮小・廃止」「できない子どもを休ませる」「先生が答案を書き換える」など深刻な問題がおきています。ところが、文部科学省は66億円もの税金を使って、「全国いっせいテスト」(4月予定)を強行しようとしています。私たちは子どもを傷つける「全国いっせいテスト」への参加・点数公表による学校ランキングに反対します。また、子どもと教員を不毛な形で競い合わせ、地域の教育力を弱め、入学者ゼロの学校をつくりだす学区自由化の強制に反対します。
教育委員会のあり方を、子ども最優先のものに切り替えます……教育委員を住民が選ぶ準公選制など選出方法を改善するとともに、会議公開の実質化、子ども・保護者・教職員らの意見反映、事務局職員の専門性向上などをすすめます。
学校の自主的な運営を保障します……教育行政や政治による学校への不当な介入・干渉に反対し、憲法が保障する教育の自由、自主性を尊重します。職員会議の形骸化などに反対し、学校運営での子ども、保護者、教職員らの参加と協同をすすめることを奨励するとともに、学校評議員制度や地域運営学校はその立場で改善します。
教員が専門家としての力量を発揮できるように支援します……いま教職員は、残業月平均81時間という国の過労死ラインを上回る労働時間で働き、かつ、授業準備や子どもと触れ合う時間が取れずに悩んでいます。こんな「多忙化」を放置することは子どもの教育にとっても絶対に許されません。「多忙化」の解消をふくめ、子どもたちにゆきとどいた教育をすすめるためには、教職員をふやすことが不可欠です。政府の「教職員一万人削減計画」にきっぱり反対し、教職員の定数改善をつよく求めます。
教員の力量向上はきわめて大切な課題です。それに逆行する教員の目を子どもから管理職に向けさせる上からの「教員評価」制度や免許更新制の導入に反対します。教員の力量向上に役立つ教員評価というなら、行政が管理職を通して行なうのではなく、子ども、保護者、同僚、専門家などの関与のもとで、教員が納得し、教員の努力を励ます、教育活動へのていねいな評価であるべきです。教員の自主的研修を保障します。子どもを傷つける教員には子どもの成長する権利を保障する立場から毅然と対処するとともに、問題をかかえる教員の人間的なケア、立ち直りを重視します。
侵略戦争の正当化を許しません……政府も表明している「侵略と植民地支配への反省」に逆行し、子どもたちを世界に通用しない人間にする、侵略戦争肯定の教育に反対します。教科書採択は、教育委員会が独断できめるのでなく、各教科の専門家である教員の意見が十分反映するようにすべきです。
性教育などへの政治介入に反対します……性教育は、子どもを人間として大切にしようと、専門家や保護者らの努力で進められてきました。ところが、自民党や民主党などの国会、地方議員が子どもの状況も見ずに、性教育の実践をゆがめて描き、一方的な攻撃をおこない、行政が教材を奪う、処分するなどの事態が引き起こされています。こうした政治介入に反対します。
「内心の自由」を守ります……憲法19条(思想、良心、内心の自由)に違反する、「日の丸・君が代」の強制や「愛国心」通知表などに反対します。入学式・卒業式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、子ども、保護者で話し合って行なえるようにします。
子どもの権利条約を社会と学校に定着させ、自治体の施策に生かします……子どもの権利条約は、日本政府も批准しており、その精神と各条項を、政府、自治体ともに遵守することは当然のことです。「余暇・休息、遊び、文化の権利」「意見表明権」など子どもの権利の全面的実施をめざします。子どもとおとなへの権利条約の普及、子どもに関する施策への子どもの意見反映をすすめます。
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