自公政権は、労働者派遣法や労働基準法の「規制緩和」を繰り返し、派遣労働者や期間(契約)労働者をはじめとした、低賃金で「使い捨て」の非正規雇用を日本中に広げました。大企業は利益をのばしましたが、雇用の規制緩和は、国民の所得を減らすとともに、貧困と格差の拡大という一大社会問題を引き起こしました。不安定で非人間的な「使い捨て」労働を放置すれば、日本の経済と社会の未来はありません。
日本では、非正規雇用の労働者は、3人に1人まで広がっていますが、これはEU諸国の2倍以上です。個別の企業でも、トヨタでは全労働者の3割が期間社員ですが、米国トヨタでは1割です。派遣や期間社員など非正規雇用の労働者の正社員化をすすめ「働く貧困層」を解消することを雇用政策の最重点の目標にして、以下の政策をすすめます。
「使い捨て」雇用を広げた労働法制の規制緩和路線を抜本的に転換する…日本共産党は、今年4月に労働者派遣事業法を派遣労働者保護法に抜本改正する提案を発表しました。派遣労働を一時的・臨時的な業務に限定し、常用雇用の代替にしてはならないことを明記し、派遣労働者の生活と権利を守る法律にします。具体的には、労働者派遣は、常用型派遣を基本とし、きわめて不安定な働かせ方である登録型派遣は原則禁止して専門的業務に限定することです。この措置でこそ日雇い派遣をなくすことができます。また、違法行為があった場合には派遣先企業が期間の定めのない雇用をしたとみなす、均等待遇の実現、ピンハネの規制などを提案しています。
派遣や偽装請負が急速に広がったのは、1999年の派遣法改悪で、労働者派遣を原則自由化してしまったからです。少なくとも99年の原則自由化前に戻すことは、労働界や野党の中でも一致点になりつつあります。日本共産党は、この一致点での世論と運動を大きく広げます。
期間社員とか契約社員などの名での不安定雇用も広がっています。2003年の労働基準法の改悪後、「6カ月ごとに更新、最長2年11カ月まで」という期限付きの雇用が大企業でまかりとおっています。期限がくれば絶対にクビにするという働かせ方です。少なくない大企業が、会社のために働いてきた多くの若者を「契約満了」で放り出しながら、同時に、新しい期間社員を募集し続けています。こんな「使い捨て」雇用を常態化させる大企業の身勝手な働かせ方をやめさせるために、労働基準法を改正し、期限付きの雇用契約は、臨時的・一時的業務での募集など、期限をつける合理的な理由がある場合に限定します。
最低賃金を大幅に引き上げる…一生懸命働いても貧困からぬけだせない、ワーキングプアと言われるような状態は、一刻も早くなくしていかねばなりません。全国一律最低賃金制度をつくり、時給1000円以上に引き上げます。そのために中小・零細企業への賃金助成も雇用保険財政などを活用して実施します。また、国や自治体などが事業の外部委託を発注する際に、低賃金を押しつけるために生まれている「官製ワーキングプア」を是正します。発注する公的機関と受託する事業者のあいだで結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めるようにします。そのための法律や条例を定めます。
雇用保険給付を拡充し、非正規雇用の正社員化をすすめる…雇用保険の特別会計には、史上最高の6兆円もの積立金がためこまれています。派遣や期間社員などの不安定雇用が広がり、ネットカフェ難民まで生まれるなど、かつてなく雇用情勢が劣悪化しているときに、雇用保険の積立金が2003年の1兆円程度から、わずか5年間で6兆円にもなっているのは異常です。いかに自公政治が雇用と労働に冷たい政治をすすめてきたかを示すものです。
雇用保険給付を抜本的に拡充し、派遣や期間社員で雇い止めされている労働者をはじめ、職を失った人たちへの失業給付を受けやすく改善・拡充するとともに、非正規雇用から安定した雇用への転換を応援するために活用します。
政府は、失業給付受給資格を6カ月から1年に延長する、45歳未満の給付日数を削減するなどの改悪を重ねてきました。数カ月の雇用契約で働いている非正規労働者が「排除」され、若い世代は給付も減らされるなど、現実の雇用悪化と逆行する事態になっています。
加入期間が6カ月を超えた雇用保険加入者のすべてを給付対象にする、給付期間の上限を「自己都合」とされる場合でも360日にする、削った若い世代への給付を元に戻すなど失業給付の改善をすすめます。また、特別の体制もとって、脱法的な雇用保険未加入をなくします。
厚労省は、来年度予算の概算要求で、職業訓練中の生活援助や住宅資金等の貸付制度をつくるとしていますが、その予算規模は5億円程度です。職業訓練と生活援助の規模と対象を今日の雇用情勢にふわさしく拡大します。雇用保険未加入者も対象にし、100万人以上に職業訓練の機会を提供します。雇用促進住宅の廃止を撤回させ、強権的な退去勧告をやめさせます。“ネットカフェ難民”など住宅に困窮している人も入居できるようにします。
中小企業が非正規雇用の労働者を、「期間の定めのない」雇用として正社員に登用した場合には、雇用保険財政から賃金の差額などを補助する制度をつくります。
非正規雇用での「使い捨て」とともに、正社員でも、異常な長時間・過密労働が、成果主義の導入とともに、どんどん過酷になっています。この面でも人間らしく働けるルールづくりが必要です。
「サービス残業」「名ばかり管理職」「QC活動」など、違法な長時間労働を根絶する…いくら働かせても残業代を払わない、こんな違法行為が放置されていることが、働く人たちの身体と心の健康をむしばみ、命さえ奪うような長時間労働を横行させています。昨年11月、名古屋地裁は、トヨタでおこなわれていた「QC活動」を労働時間として認定する判決をくだし(内野過労死裁判)、厚労省もそれを認めましたが、大企業では「QC活動」などを形式上「自主的活動」にして賃金を払わないただ働きも少なくありません。
日本共産党は、長時間労働をなくすために、「サービス残業」をはじめ、企業の違法行為を根絶させるよう、国会でも繰り返し追及し、厚生労働省に改善の通達を出させ、6年間で1078億円の未払い残業代を支払わせてきました。しかし、これはまだ氷山の一角です。残業代を少なく申告することを強制する、パソコンなどに記録された労働時間を改ざんするなど、違法行為を隠蔽(いんぺい)する工作までおこなわれています。
長時間労働を是正するために、「サービス残業」や「名ばかり管理職」、自主的を名目にした事実上の残業強制などの違法行為への監督や告発を強化するとともに、違法を繰り返したり、隠蔽工作をするなどの悪質な企業は、企業名を公表し、不払い残業代を2倍にして支給させるなどのペナルティーを強化します。
残業時間の上限を法定化するとともに、最低11時間の連続休息時間を確保する…日本の労働基準法には、残業時間の上限を法律で規定していないという他の主要国にはない異常な問題があります。これを是正し、長時間労働そのものの法的規制をすべきです。政府は、「残業時間は年間360時間以内にする」という大臣告示を出しています。まずただちにこれを法定化し、実効力をもたせるべきです。
過労死や過労自殺をはじめ長時間労働による身体と心の病をなくすためにも、休息時間の確保が必要です。EUのように、連続休息時間を最低11時間は確保させます(深夜12時まで働いたら、翌日の出勤は11時以降)。休日出勤は極力おこなわせず、どんな場合でも1週間に1日は休めるようにすることをルール化します。
自公政権は、2002年度以来、社会保障予算の自然増を毎年、毎年2200億円も削減し続ける方針をとりつづけ、すでに1兆6200億円も削減してしまいました(初年度は3000億円の削減)。その結果、国民のくらしをささえ、命と健康を守るべき社会保障が、生活苦や将来不安を増大させる大きな要因にまでなっています。しかも、病気や失業、倒産などで生活が厳しくなり、高すぎる保険料を払えなくなると保険証を取り上げられるなど、低所得者が真っ先に社会保障制度から「排除」されています。社会保障が、貧困と格差を是正するどころか、拡大する事態が生まれています。
国民生活の土台をささえ、ほんとうに安心できる社会にするためには、社会保障削減から、拡充へと舵(かじ)を切ることがどうしても必要です。その第一歩として、「構造改革」で削減された1兆6200億円の社会保障予算を復活させ、以下のような国民の負担軽減とサービス拡充をおこないます。
(1)後期高齢者医療制度を廃止する…高齢者を差別し、際限のない負担増と医療切り捨てを押しつける後期高齢者医療制度を撤廃します。高齢者・重症患者の窓口負担増、療養病床の削減と患者追い出し、国保料(税)の年金天引きなど、2006年「医療改革」で自公政権が強行した改悪を中止・撤回させます。
高齢者を“じゃまもの”扱いする医療政策を転換し、減らされつづけた国庫負担を元に戻して、高齢者の負担軽減、年齢や所得による差別のない医療制度の確立をめざします。
(2)国保料(税)をひとり1万円引き下げる…年金生活者、自営業者、非正規労働者などが加入している国民健康保険では、加入者の所得が減り続けているにもかかわらず、保険料がどんどん値上げされてきました。国民のくらしを圧迫し、とくに低所得者には深刻な負担になっています。保険料高騰の最大の原因は、1984年以来、国庫負担が削減されてきたことです。国の責任で、国保料(税)を、ひとり当たり1万円引き下げます。国民健康保険証の取り上げはただちに中止します。
(3)年金、生活保護、児童扶養手当などの水準を物価高騰に応じて引き上げる…物価の値上げ、とくに生活必需品の高騰にもかかわらず、今年度、年金や生活保護などの物価スライドはおこなわれていません。しかも、年金は、2004年の年金改悪で導入された「マクロ経済スライド」の発動により、来年度も据え置きの可能性が出ています。
年金、生活保護、児童扶養手当など、物価の上昇分を反映させ、今年度からすみやかに給付を引き上げます。また、削減された生活保護の老齢加算、母子加算を復活します。低所得者向けの福祉灯油を今年の冬を大きく上回る規模で実施するために、国の財政支援を抜本的に拡充します。
(4)国の制度として、子どもの医療費無料化制度をつくる…子育て世代の負担を軽減し、誰もが安心して医療を受けられる体制を保障するために、国の制度として、就学前までの子ども医療費無料化制度をつくります。その上に、自治体独自の対象を上乗せし、さらに充実できるようにします。
(5)介護保険の保険料、利用料の減免制度をつくり、介護労働者の労働条件を改善する…年金から天引きされる介護保険料が上がり続けています。実質的な年金引き下げです。来年度も、新たな介護保険料の値上げが見込まれています。
介護保険への国庫負担割合を、全国市長会や全国町村会も要求しているように、5%引き上げて、国の制度として保険料、利用料の減免制度をつくるとともに、保険料の値上げをやめさせます。「介護とりあげ」の中止、介護サービスの改善などをすすめます。
国の相次ぐ介護報酬切り下げなどのために、介護で働く人たちの労働条件は劣悪になり、退職者が続出しているために、人材不足が深刻になっています。公的介護制度が土台から崩れる危険さえ指摘されています。介護労働者の賃金を国の責任で月3万円引き上げることなどを中心とした緊急対策を実施します。
(6)障害者福祉の「応益負担」を廃止し、福祉労働者の労働条件を改善する…障害者自立支援法による福祉・医療への「応益負担」を廃止し、自公政府が押しつけた障害者への負担増を撤回します。福祉施設・作業所への報酬を引き上げるとともに、支払い方法を日額制から月額制に改善します。介護と同じように人材不足が深刻化している福祉労働者の賃金を、国の責任で月3万円アップさせます。
日本の社会保障は、先進国のなかでも低い水準です。社会保障として国民に給付されている額は、GDP(国内総生産)比で、日本は17・4%で、イギリス22・4%、ドイツ28・8%、フランス28・5%などと比べてみても、経済の実力、国民全体で作り出す“富”の総量に対して、社会保障にまわる部分が少なすぎるのです。イギリスなみにすれば25兆円、ドイツ、フランスなみなら50兆円も社会保障給付費が増えることになります。社会保障に必要な財源は、税制や社会保険料を改革し、所得や資産に応じて負担する“応能負担の原則”をつらぬいてこそ、安定的に確保することができるとともに、経済の安定的な成長とも両立させることができます。
無年金者、低年金者をなくす年金制度の改革をすすめる…保険料を25年以上も納め続けなければ1円も年金が支給されず、国民年金の平均受給額は月額4万7000円、高い保険料を40年間納めても月額6万6000円――受給条件は異常にきびしく、給付は劣悪という日本の年金制度の貧しさの改善は重要課題です。年金受給のための条件は、「10年以上」へとただちに引き下げます。無年金者、低年金者をなくし、年金制度への信頼を回復させるためにも、全額国庫負担による最低保障年金制度の創設による年金底上げに踏み出します。当面、すべての国民に月5万円の最低額を保障し、その上に、支払った保険料に応じた額を上乗せにします。
「医療崩壊」を打開し、安心してかかれる医療をめざす…「医療費削減」の名で公的医療保障を切り縮める医療政策を転換し、「医療崩壊」を打開します。
「現役世代=3割、高齢者=1〜3割」という世界でも異常な高すぎる窓口負担を引き下げます。「混合診療」解禁など保険外医療の拡大を許さず、安全・有効な医療技術はすみやかに保険適用とする仕組みをつくり、保険で必要な治療が受けられるようにします。先進国で最低レベルとなっている医師数の抜本増、勤務医の労働条件の改善、産科・小児科・救急医療などへの支援を、国の負担と責任で推進します。診療報酬を改革し、病床削減路線をあらため、外来でも入院でも、医科でも歯科でも、安全、安心で質の高い治療が受けられる医療提供体制を確立します。国公立病院の統廃合や社会保険病院、厚生年金病院などの売却をやめ、国・自治体・医療機関の連携による地域医療の確保をはかります。難病対策を抜本的に拡充します。
誰もが必要なときに安心して利用できる公的な介護制度を拡充する…年間14万人をこえる人が家族の介護などのために仕事をやめるなど、公的な介護制度の充実はまったなしの課題です。介護給付費に占める国庫負担を計画的に50%まで引き上げ、公的介護制度の充実をはかるとともに、保険料、利用料、居住費・食費の負担をおさえ、減免制度を充実させます。
介護報酬を引き上げ、人員配置の基準などを抜本的に改善し、充実した介護が保障できるようにします。低い利用限度額や、給付抑制のために介護保険の利用を過度に制限する「介護とりあげ」をあらため、誰もがお金や家族の負担を心配せずに、必要なサービスを受けられる制度へと改善します。特別養護老人ホームなどを整備し、誰もが安心して住みなれた地域でくらせるための福祉のまちづくりをすすめます。
安心して子育てできる社会にするために…男性も女性も仕事と子育てを両立できる働き方にしていきます。長時間労働の是正、正規雇用の拡大とともにパート、派遣社員への均等待遇の確立、子育て中の夜間・休日勤務、単身赴任の制限などをすすめます。妊娠、出産による解雇や不利益な取り扱いをなくし、育児休業を男女ともに取得しやすいように所得保障を6割に増額します。
子育てへの負担を軽減するために、児童手当を当面小学校6年生まで月額1万円に倍増するとともに、支給対象の18歳までの引き上げをめざします。政府がすすめている公的保育の切り捨てをやめ、「保育所整備計画」をつくり保育所の拡充・整備をすすめます。学童保育を量質ともに整備します。子育てへの不安や児童虐待などの問題にこたえるための相談・支援体制を拡充します。
「消えた年金」問題を、一人残らず、今年4月までに解決するという安倍元首相や大臣の国民への約束は果たされず、それどころか、厚生年金記録の改ざんも明らかになりました。国民の怒りと不安が広がるのは当然です。“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、国が解決に責任を果たすことを求めます。
受給者、加入者に、年金記録が消えたり、消されたりしていないかわかるように、国が管理・保有している情報をきちんと提供すること、相談・問い合わせや、記録の照会や訂正、未払い金の支払いなどに対応できる体制を抜本的に強化すること、第三者委員会などでは、物証がなくても、申し立てや証言などを尊重して支給することなどを求めます。また、コンピューターの誤った記録は、すべての手書き記録とつきあわせて修正すべきです。
「消えた年金」「消された年金」問題の根本には、国民の老後の生活保障である年金受給権を守ることには無関心で、保険料の徴収と納入率のアップが年金行政の最重要課題になっているという、大きなゆがみがあります。社会保障に対する国の政治姿勢が問われています。年金をはじめ社会保障は国民の権利であり、行政は国民の権利を守るために仕事をするという、最も基本的な原則を行政の上から下まで徹底することこそ、求められている改革です。
この立場で、年金保険料の流用をやめる、世界に例のない巨額の積立金は計画的にとりくずして給付にあてる、などの年金行政の抜本改革をすすめます。また、「消えた年金」「消された年金」問題の国の責任も放棄してしまう、社会保険庁の解体・民営化は中止し、これまで繰り返し政府が国民に約束してきたように、最後まで国の責任で解決するにふさわしい体制をとることを求めます。
昨年夏以来の輸入農産物の高騰は、食料自給率がわずか40%しかない日本の経済・社会に重大な影響を与えています。世界各地での天候不順で日本が頼っていた輸出国の生産が減少しています。途上国の需要増に、アメリカなどによる穀物を原料にしたバイオ燃料生産の急拡大なども加わった世界的な食料不足が生じ、投機資金による穀物価格のつり上げが事態をいっそう深刻にしています。各国で食料の値上がりに反対する抗議や暴動が起こり、多くの国が農産物の輸出規制に踏み切りました。お金を出せば、世界中から食料を買い集められるというようなやり方は、もはや通用しなくなったのです。
ところが自公政権は、日本国内の自給率を向上させるどころか、国内生産をささえる価格保障制度を廃止し、現場の実態を無視した規模拡大を条件にすることで補助対象をせばめるなど、国内の生産基盤を弱体化させる農政をすすめました。さらに今年7月のWTO(世界貿易機関)交渉ではいっそう輸入を促進する農産物の関税引き下げに同意しました。こんな自公政権では、日本農業も、国民の将来も守れません。
国際的な状況の変化に機敏に対応し、経済・社会の基盤である食料の安定的な確保のため、当面、食料自給率の50%台への回復を最優先の課題とします。その達成にむけて、ことし3月に発表した「日本共産党の農業再生プラン」で提案した施策の実現をめざします。
わが国農業の再生にとっていまもっとも必要なのは、農業経営を安定して持続できる条件を保障するための制度を整備・充実することです。米の場合、過去3年間の平均生産費を基準とし、その年の米価が基準額を下回った場合、差額を「不足払い」する価格保障制度を創設して、少なくとも1俵1万7000円以上を保障します。加えて、水田のもつ国土・環境保全の役割を評価した直接支払い(所得補償)を拡大し、あわせて当面1俵あたり約1万8000円の米生産による収入を確保します。麦、大豆、畜産、野菜・果樹などの主な農畜産物も条件に合わせて価格保障・所得補償で増産をうながします。飼料や燃油の高騰への直接補てんなどの対策を緊急に実施します。
今後の農業の担い手も家族経営が主役であり、担い手対策の中心に、多様な家族経営を維持することを柱にすえます。小規模農家や兼業農家を排除する「水田・畑作経営所得安定対策」(「品目横断対策」)をやめ、農業を続けたい人すべてを応援します。高齢者や離農者の農地や農作業を引き受けてがんばっている大規模農家や生産組織などが地域農業をささえている現実の役割を重視して、支援を強めます。
世界ではいま、食料を市場まかせにすることによる害悪が明らかになり、各国が、輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をもとめる流れが広がっています。世界各国では、農業をめぐる自然的・社会的条件や、農業の果たしている多面的機能の国ごとの違いを踏まえて、生産条件の格差から生まれる不利を補正するため、関税や輸入規制など必要な国境措置がとられています。関税など国境措置を維持・強化することは当然です。各国の「食料主権」を尊重する立場に立って、WTO農業協定を根本から見直すよう求めます。わが国が諸外国と結ぶFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)は、それぞれの協定ごとに検討し、日本の農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものとなる場合には反対します。
輸入資材の高騰や不足をふまえて、飼料稲の栽培など飼料の自給率の向上を図り、肥料の原料である石油・リン鉱石の高騰にもたえる農業にするために、畜産の廃棄物を活用した有機農業の強化など資源循環型の農業を実現する政策をすすめます。
食品の産地・品質の偽装、添加物の表示違反、賞味期限の改ざん、メラミン混入など、山積する「食の安全」問題を打開するには、食品に関する検査体制をただちに強化するとともに、根本的には食料自給率を抜本的に高めることが必要です。BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査を維持するなど食に関する信頼を高め、安全・安心の生産・流通の拡大など農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざします。
強力な発がん性物質アフラトキシンに汚染されるなど食用にしてはならない「事故米」を、農水省が非食用として販売し、買った企業が食用に不正転用して売却した事件は、食の安心を求める国民に不安と怒りを広げています。問題のコメの流通にかかわった業者が370社に達するなど底なしの広がりを示しており、事件の徹底究明をはかり、農林水産省の管理責任をきびしく追及します。
同時に、汚染米の8割は輸入米であり、問題の根源には、日本に必要のないミニマムアクセス米を年間77万トンも輸入しているという、自民党農政の大問題があります。さらに、「小泉改革」の「農業版」として、2004年に実施された「コメ改革」で、米を扱う業者の許認可制をいっさい取り払って、届け出さえすれば誰でも米売買に参入できるようにする規制緩和によって、国が米流通の管理責任を完全に放棄してしまったという大問題があります。ミニマムアクセス米の「義務的」輸入を中止すべきです。米の流通の管理責任を国はしっかり果たすべきです。
中山間地は、日本の農地と農業生産の約4割を支えているにもかかわらず、過疎と高齢化によって耕作放棄や集落の消滅がすすんでいます。中山間地などの活性化のためには、農業とともに林業の振興が大切です。国土の3分の2をしめる森林は、国土保全や温暖化対策などの環境保全、水資源のかん養など多面的な機能を果たしています。そうした機能を維持し、今後予想される世界的な木材不足に対処するためにも、国内林業を圧迫している野放図な外材の輸入に歯止めをかけ、国による国内林業経営への支援を強め、経営に必要な林道などの整備をすすめることが必要です。地元の木材を公共施設で優先的に使用することをルール化し、地元の木材を使用した住宅などの建築には国が助成することなどによって、国産材の需要を広げ、またペレット燃料の生産など新たな産業の創出に力を入れるべきです。
燃油の高騰で漁船がいっせい休業に追い込まれるなど、漁業も存続の危機に直面しています。燃油への直接補てんを実施するとともに、経費に見合う魚価の実現のために国は、価格保障・所得補償を図るとともに、資源回復のための休業にたいする補償、適切な輸入管理を実施すべきです。こうした取り組みをおこないながら、食料自給率を長期的に支える資源管理型の漁業を追求します。
この10年間に、大企業・大資産家には7兆円もの減税(年間ベース)がおこなわれる一方、国民には、小泉内閣以降、定率減税の廃止や年金課税の強化など5兆円を超える増税が押しつけられてきました。ほんらいなら、所得の再分配に役立つはずの税制が、逆に格差を広げる方向にゆがめられてきました。国民のくらしが危機に直面しているいま、減税によって家計の負担を軽減することが必要です。単年度かぎりの「定額減税」は、くらしの不安を取り除く効果が少ないことは10年前の経験でも示されており、まじめに国民のくらし、日本の景気を考えてのものではなく、選挙目当てのばらまきというほかないものです。減税というならば、所得の再分配という税制の民主的原則にたって、現在の税制のゆがみをただす第一歩となる減税をおこなうべきです。
消費税増税に反対をつらぬく…自民党は、国民の批判をおそれて増税を先送りしてはいるものの、「(消費税率は)段階的に引き上げて2015年ぐらいに10%台にする」(麻生氏)などと、消費税の大増税のねらいを公言しています。民主党も、「当面は据え置く」といいながら、近い将来の増税を否定しません。消費税は低所得者ほど負担が重く、大企業は1円も負担しないなど、最悪の不公平税制です。消費税の増税に反対をつらぬきます。
消費税の食料品非課税を緊急に実施する…どんな低所得者でも食料品なしには生きていけません。食料品にかかる消費税は、月収12万円の世帯の負担率が月収104万円の世帯の6倍以上になるなど、きわめて逆進的です。輸入穀物などを中心に食料品の価格が高騰している中で、食料品の消費税を非課税とすれば、緊急の家計の負担軽減とともに、格差是正にもつながります。
高齢者増税を元にもどす…05年からはじまった高齢者、年金生活者への増税は、所得税・住民税にとどまらず、国保料や介護保険料など、雪だるま式の負担増をもたらし、目減りした年金をさらに減少させています。灯油や食料品の値上がりでも、高齢者世帯が深刻な被害を受けています。公的年金等控除の最低保障額を120万円から140万円に戻します。一定所得以下の高齢者については老年者控除を復活します。高齢者の住民税非課税限度額(125万円)を復活します。
中小企業、農林漁業、運輸業などは、原油・飼料などの異常高騰による打撃がもっとも深刻です。ところが政府の「緊急総合対策」は、コスト転嫁による「新価格体系への移行」、省エネなど「供給力・競争力」の強化への支援などが中心です。“物価高騰にも対応できるようにせよ”というのです。
しかし、もともと販売不振で経営が困難なうえに、「燃油が2倍になった」が価格に転嫁できない、と悲鳴をあげている多くの中小企業や農林漁業者などにとって、政府が打ち出した「対策」は、どれほどの効果があるでしょうか。多くの農業者、漁業者、運輸業者などは、「競争力」を強化する前に倒産・廃業に追い込まれてしまう、といっています。
また「新価格体系への移行」などを強調することは、原油・飼料などの異常な価格水準を当たり前のものとし、投機マネーによる不当な価格つり上げを事実上、容認するものといわなければなりません。
政府が打ち出した肥料・燃料価格高騰分の一部補てん事業は、新たな設備投資をして燃料使用量を減らすことが条件ですが、すでに借金を多くかかえており、これ以上借金して設備投資することが困難な農業者、漁業者には活用できない制度です。
直接補てんは、「新たな設備投資」などの条件をつけることなく、燃油や飼料などへの依存が高く、価格転嫁が難しい産業・業種で、経営が苦しくなっている農林漁業者、中小業者から重点的におこないます。投機が本格化する前の燃油や飼料などの平均価格と、投機が荒れ狂った08年の平均価格の差額とします。直接補てんは、実効ある投機規制によって燃油価格などを引き下げるまでの期間おこなうものとします。
ガソリン、軽油などの暫定税率の廃止にくわえ、漁業用A重油、船舶用軽油、農業用軽油にたいする減免を継続します。加工原料乳、肉用子牛、麦類、野菜など国の助成金のある農畜産物について、コスト上昇に見合って単価を引き上げます。肥料などのコスト上昇についても助成措置をとります。輸入小麦の政府売り渡し価格の引き上げを中止します。
燃油高で経営が危機にさらされている福祉・医療・教育施設などにも適切な補助をおこないます。
投機マネーの暴走は、金融市場でのマネーゲームにとどまらず、原油や穀物などの商品市場に入り込み、国民のくらしと営業を脅かしています。投機マネーによる価格つり上げを容認したままでは、「穴の開いたバケツ」で水をくむようなものであり、いくら補てんの財源があっても足りなくなります。異常な高騰の大もとを断つ対策がどうしても必要です。
7月に1バレル=147ドルまで高騰した原油価格は、その後、値下がりに向かいました。これは、各国政府・議会が投機マネー規制の動きを強めたからです。「投機マネーの暴走を抑える」という強い政治的意思を打ち出してこそ、個々の規制強化策も実効性を持つことができます。そのうえで、国際社会とも協力しながら、以下の規制策を早急に具体化すべきです。
(1)原油や穀物など人類の生存の土台となる商品に対する投機の制限を具体化する。
(2)ヘッジファンドに対して、直接の情報開示を求めるなど抜本的な規制強化にふみだす。
(3)投機マネーの暴走をおさえるための適正な課税を本格的に検討する。
いま中小企業は、原油・原材料高にくわえ、販売不振、銀行による「貸し渋り・貸しはがし」などによって、新たな経営難に直面しています。中小企業倒産も多発しています。
政府は「緊急総合対策」に「中小・零細企業金融の円滑化」を盛り込みましたが、貸し渋りが深刻化している中小企業金融の現実をふまえ、抜本的改善が必要です。「セーフティーネット保証制度」について、対象業種と適用条件の拡大、返済猶予期間の設定、金利と保証料の引き下げなどの改善をおこないます。部分保証など中小企業信用保証制度の改悪を元に戻すとともに、信用保証協会の財政援助をおこない、保証能力を強化します。銀行にたいする「貸し渋り・貸しはがし」是正の指導を強化し、中小企業の資金繰りを円滑にします。
下請け・中小企業は、原油・原材料価格が高騰しても、価格転嫁が困難です。大企業による不当な「買いたたき」や下請け代金支払い遅延などをなくすために、検査・指導を強力にすすめます。中小企業庁の「下請かけこみ寺」などの相談体制を強化するとともに、下請けいじめや不公正取引の事例の公表と処罰、被害者に損害を補償させるようにします。
「ものづくり」などですぐれた中小企業の技術を生かし、製品開発などを支援します。地球環境保全、省エネ、新エネルギー、省資源・リサイクル、農林漁業などの分野への投資を増やし、地域産業を強化します。中小企業振興条例をさだめ、地域住民に雇用と所得を保障する中小企業の育成をはかり、「地産地消」「地産地商」の循環型の地域経済を発展させます。
日本を議長国として7月に開かれた洞爺湖サミットでは、世界が注目していた先進国の中長期削減目標についてなんの決定もされず、温暖化の影響を憂えている人々の失望をかいました。
ことしから京都議定書の第1約束期間に入り、2012年までに1990年比で、日本は温室効果ガス排出量の6%削減を達成するよう迫られています。来年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる温暖化に関する国際会議では、2013年以降の新たな国際的取り組みを具体的に決定しなければなりません。
ところが自公政権は、国際的な取り組みをリードできないどころか、京都議定書の目標さえ達成できるか危うい状況です。すでに京都議定書の目標を超過達成し、中長期の数値目標を決定しているEU諸国に比べ、明らかに後れを取ってしまいました。これは自公政権が、最大の温室効果ガス排出国でありながら京都議定書から無責任にも離脱したブッシュ米政権に追随するとともに、具体的な削減のための施策をとることを「統制経済」と呼んでそっぽを向く財界のいいなりになってきた結果です。
日本共産党はこの3月に欧州調査団を派遣し、6月には温暖化の抑制にかんする日本共産党の見解を発表しました。そのなかで明らかにしたように、温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(現在までにすでに0・76度上昇)にとどめることがカギです。そのために以下のような施策の早急な実現をめざします。
国連のもとにある研究者の組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2度以内の気温上昇に抑えるために、世界全体やとくに先進国の中長期の削減に関する試算を明らかにしています。日本に課せられた「先進国」としての国際的義務を果たすために、2012年までに温室効果ガスの90年比6%削減という、京都議定書での約束を実質的に達成するとともに、わが国として2020年までに30%削減することを明確にした中期目標を確立し、2050年までに80%削減するという長期目標をすえて、それにむけて着実に実現していくための通過点を明示すべきです。福田ビジョンのように90年比で7・7%も増加した2005年を基準にして、「2050年まで60〜80%削減」の長期目標だけを出すのでは、内外の信頼は得られません。
日本の温室効果ガスの削減対策が言葉だけのものとなっているのは、総排出量の8割を占め、しかもわずか200程度の事業所で日本全体の排出量の50%に達するほど極端に排出が集中している産業界の削減について、もっぱら財界の“自主努力”まかせにしているからです。EU諸国ですでに実績を上げている施策によく学んで、政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。企業の削減目標達成のための補助的手段として、「国内排出量取引制度」や、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入すべきです。
二酸化炭素の排出量の9割がエネルギーに由来し、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギーは1次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)にとどまっています。2020年までにその比率を15〜20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定します。自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度を導入します。自然エネルギーから得られる電気やガス、木質ペレットなどの販売で、その地域には新たな収入が生まれ、地域経済対策としても有効です。自公政権は、原発を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。事故や災害、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源ではありません。事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きく、安全上も、技術的にも未確立な原発を優先にするエネルギー政策はやめるべきです。
地球温暖化対策は、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制など各分野の政策と有機的に結びつけて着実にすすめてゆくべきです。そのために、国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定します。生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階で、温室効果ガスを削減し、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から、「24時間社会」など大胆に見直すことが必要です。
あらゆるムダにメスを入れる…ダム、港湾などの大型開発や、政党による税金分け取りの政党助成金(320億円)など、あらゆるムダにメスを入れます。年間約5兆円にのぼる軍事費に縮減のメスを入れます。年間2500億円もの米軍への「思いやり予算」を廃止し、正面装備費、米軍との共同演習費、イラク・インド洋派兵費などを、大幅に削減します。政府・与党は、道路特定財源の「一般財源化」を国民に約束しながら、高速道路をつくり続ける「道路中期計画」は廃止せず10年を5年に短縮するだけで、ムダを削る姿勢はまったくありません。国土交通省は、来年度予算で道路予算を15%も増やすという概算要求をおこなっています。これでは揮発油税などをすべて道路に注ぎ込むことになり、現状と何ら変わりません。道路特定財源をただちに一般財源化し、揮発油税などを道路建設以外にも振り向けられるようにします。
大企業・大資産家にもうけに応じた負担をもとめる…大企業の経常利益はバブル期の1・7倍に増えているのに、税負担は横ばいです。自公政権が、法人税率の引き下げ、研究開発減税や連結納税制度などの大企業減税を実施したからです。巨額の利益をあげている大銀行は、欠損金繰越期間の延長の恩恵で、軒並み「法人税ゼロ」となっています。所得税の最高税率も引き下げられたうえ、証券優遇税制で大資産家に膨大な減税がおこなわれています。そのうえ政府は、「緊急総合対策」に、「企業の国外所得非課税」や「証券マル優制度」など、大企業や大資産家へのいっそうの減税を盛り込んでいます。国民には「財源がない」といいながら、大企業や金持ちには減税をばらまく――こうした政治の姿勢を転換し、大企業や大資産家にもうけや所得に応じた負担を求めます。大企業・大資産家へのゆきすぎた減税をただし、優遇税制を改めれば、7兆円以上の財源が確保できます。
いわゆる「埋蔵金」を国民のために活用する…特別会計の積立金は、年金給付以外に流用すべきでない年金積立金を除いても、数十兆円の規模に達します。恒常的な財源にはなりませんから、社会保障などの長期的な財源には不向きですが、原油高騰対策などの緊急的・臨時的な施策の財源としては、大いに活用すべきです。とくに、財政投融資特別会計の積立金は、昔から「埋蔵」されていたものではなく、この10年間で30兆円もの剰余金が発生したことによるものです。超低金利にもかかわらず、住宅金融公庫ローンの借り手や公団住宅居住者、高速道路利用者などから、高い金利や家賃、料金を取り立ててきた結果です。政府は、「借金返済にしか充てるべきでない」として、21・8兆円を国債の返済に充てましたが、国民からしぼりとってためた積立金を、国民のくらしを守るためにも使うのは当然です。雇用保険の6兆円もの積立金も、雇用対策の財源として活用します。電気料金に上乗せして徴収されている電源開発促進税は、特別会計に1000億円以上も剰余金が生じています。原発立地促進などに充てられている使途をあらため、自然エネルギーの普及促進などに活用します。
アメリカの一国覇権主義の政策と行動が、世界で孤立し、力を弱めています。とくにアフガニスタンとイラクでの先制攻撃戦略は、テロと暴力の悪循環、泥沼状態をますます深刻化させ、米国の軍事支配は完全に破たんをきたしています。一方で、アジアでは、東南アジア友好協力条約(TAC)に地球人口の6割近くを占める25カ国が参加し、ラテンアメリカでは、南米諸国連合設立条約が締結され、平和と民族自決、核兵器のない世界などを高らかに宣言するなど、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす流れが世界の広大な地域に広がっています。
こういう世界にあって、日本は、恒久平和主義という理想を先駆的に体現した「世界の宝」ともいうべき憲法9条をもっているにもかかわらず、自公政権が、アメリカいいなりに海外派兵をおしすすめ、憲法を改悪して、「アメリカとともに海外で戦争する国」にしようとする動きをすすめています。「戦争をしない」という憲法9条の理想が世界政治の現実の流れとなりつつあるなか、異常なアメリカ追従、軍事偏重の政治をいつまでもつづけていいのか。このことが正面から問われています。
アフガニスタンでは、海上自衛隊によるインド洋・アラビア海での米艦船などへの給油というかたちで、米国の「対テロ戦争」に加担し、罪のない民間人の殺りくに手を貸してきました。アフガン戦争を支援する新テロ特措法は来年1月15日に期限切れになりますが、自民、公明の与党は、アメリカの要求にこたえて、戦争支援の活動継続のための特措法を延長する法案の国会提出を決めました。アフガニスタンでは、米軍などによる無差別の武力掃討作戦によって多くの民間人が殺害され、それが、外国軍の駐留への怒りを強め、自爆テロや武力衝突を急増させるという情勢悪化の悪循環がおこっています。「最悪の治安状況」といわれるなかで、日本人の人道支援活動家が犠牲となる事態もうまれました。戦争でテロはなくせない。このことが明らかになったのが、この7年間の重大な教訓です。戦闘を一刻も早くやめさせ、和平の努力を尽くすことが求められています。アメリカの報復戦争に加担する新テロ特措法の延長を許さず、自衛隊を一刻も早く撤退させるべきです。
イラク戦争支援をめぐっては、航空自衛隊による米軍支援活動を憲法違反と断じた画期的な名古屋高裁判決が下され、これが確定判決となりました。この判決は、まさに憲法9条の奥深い生命力を示すものです。米軍を中心とする多国籍軍駐留の根拠となってきた国連安保理決議が今年末に失効すれば、多国籍軍の一員として活動している自衛隊の派兵の根拠もなくなります。自公政権は、航空自衛隊の年内撤退を「米側と相談して検討する」といわざるをえなくなりましたが、名古屋高裁判決でも「違憲」とされた活動をやめるのは当然であり、ただちにイラクから航空自衛隊を撤退させるべきです。
日本共産党は、自衛隊のイラク、インド洋・アラビア海からのすみやかな撤兵を強く要求します。さらに、アメリカの要求にこたえて、自民、公明、さらに民主党もくわわった自衛隊の海外派兵恒久法策定の動きなど、憲法を踏みにじる海外派兵のあらゆるくわだてに反対します。
日米両政府は、日米安保条約を従来の枠組みさえこえた「地球規模の日米同盟」へと侵略的に大変質させ、「米軍再編」の名で米軍基地の強化、米軍と自衛隊の一体化を推進しようとしています。「米軍再編」のねらいは、アメリカがおこなう地球規模の先制攻撃戦略に日本を組み込むところにあります。
「日本防衛」とは無縁の海外遠征――“殴りこみ”部隊の司令部機能や機動性が、陸・海・空・海兵隊の4軍そろって強化され、出撃・補給拠点として恒久化されようとしています。沖縄・名護市への新基地建設、横須賀基地への原子力空母の配備、山口・岩国基地への空母艦載機の移駐、神奈川・座間基地への米陸軍第1軍団司令部機能の移転などです。
しかも、政府は、米軍のグアム基地大増強の一環である海兵隊のグアム移転の費用をはじめ、アメリカ政府いいなりに約3兆円も負担しようとしています。
自公政権は、「再編交付金」という「札束の力」で、基地をかかえる自治体と住民を分断、懐柔、屈服させて、基地強化を押しつけようとしています。しかし、曲折はあっても、こうした圧力に屈せず、全国各地で、基地強化反対の粘り強いたたかいがすすんでいます。沖縄県内の基地たらい回しを決めたSACO合意から12年たちますが、沖縄県民のたたかいは、新基地建設のための杭(くい)一本も打たせていません。米側からは、「同盟変革(再編)の実施が漂流している。普天間飛行場の移設がその例だ。…この合意はすべてが連動する複雑な機械のようなもので一つのパーツが凍結すれば、全体が凍結してしまう」という、危機感が伝えられています。大局的にみれば、追いつめられているのは、日米両政府です。
日本共産党は、「米軍再編」の名による基地強化・永久化に反対し、基地のない平和な日本をめざして国民とともにたたかいます。
「憲法改正を必ず政治日程にのせていく」と言明していた安倍内閣は1年前の参議院選挙で惨めな大敗北をし、憲法擁護の声が国民的多数派になりつつある、大きな変化がうまれています。2004年に結成された「九条の会」はいまや草の根の組織が7000を超え、一大潮流に発展しました。読売新聞の世論調査でも、改憲反対が改憲賛成を15年ぶりに上回り、9条については、改憲反対が60%と、賛成31%の実に2倍に達しています。イラク戦争が破たんをとげるもとで、国際紛争の平和的解決という理念を極限にまでおしすすめた日本国憲法第9条の値打ちが内外で再確認されています。
にもかかわらず、自民、公明、民主などによって、改憲原案の審査権をもつ国会の憲法審査会を始動させる動きを強めるなどの逆流もあります。改憲派の巻き返しの動きは軽視できません。国民が作り出した画期的な変化に確信をもって、憲法擁護のゆるぎない多数派を結集するために、さらにたたかいを前進させることが必要です。
日本共産党は、改憲策動を許さず、思想信条、党派の違いを超えた共同をさらに発展させるために全力をあげます。
アメリカの一国覇権主義が無残な破たんをとげているもとで、国際社会は、国連憲章にもとづいて、国際紛争の平和的・外交的解決を求めるという方向に動いています。21世紀は、軍事ではなく外交こそが重要な意味をもつ時代となっています。「国際紛争の平和的解決」「武力の行使・威嚇の禁止」という国連憲章の「平和のルール」にそった国際秩序を築きあげることは、国際政治が取り組むべき重要課題です。
日本共産党は、自公政権のアメリカいいなり政治を断ち切り、国民の利益にたった自主・平和の外交に転換し、国連憲章にもとづく「平和のルール」を厳守して、平和で公正な国際社会を実現するために力をつくします。
――日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・協力をすすめます。
――国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義にも反対をつらぬきます。
――一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロ根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させます。
――日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざします。
――多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重と、平等・公平・互恵を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざします。
――紛争の平和解決、災害、難民、飢餓などの人道問題にたいして、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的におこないます。
――社会制度の異なる諸国の平和共存、異なる価値観をもった文明間の対話と共存の関係の確立のために力をつくします。
――経済面でも、アメリカによる不当な対日要求に屈せず、金融・為替・貿易を含むあらゆる面で自主性を貫いた対等・平等の日米経済関係を確立します。
核兵器廃絶を求める声が、国際的な反核平和運動、非同盟諸国、新アジェンダ連合諸国とも連帯して、世界の大きな本流となるなか、かつてアメリカの核戦略を推進した多数の元米高官などから「核兵器のない世界」のために行動をおこそうという声が繰り返しあがるなど、注目すべき動きが広がっています。
こうした流れのなかで、被爆国の政府でありながら、「核抑止力」論にしがみつき、米国の「核の傘」依存を正当化し、核兵器廃絶を正面から掲げようとしない日本政府の逆行ぶりはきわだっています。原爆症認定問題で、国が敗訴をつづけながら、あくまで被爆者と争う態度をとり続けている背景にも、核兵器固執の姿勢があります。
日本共産党は、「すみやかな核兵器廃絶を」の声をさらに大きくし、核固執勢力を日本でも世界でも包囲・孤立させるたたかいの先頭に立ちます。
自公政権が、憲法9条も平和を願う国民世論も踏みにじって、アメリカいいなりの道をつきすすむ大もとに、日米安保条約=日米軍事同盟があります。日米安保条約は、いま、世界とアジアの軍事緊張を高める危険な震源地の一つになり、沖縄をはじめ日本中で、「基地あるがゆえ」の苦しみを国民に押しつけています。アメリカが繰り返し日本に軍拡を要求する圧力をかけているのも日米軍事同盟強化のためです。
日本共産党は、日本でただひとつ、日米軍事同盟からぬけだして日本を外国の軍隊のいない、ほんとうの独立国家にすること、世界とアジアの平和に貢献することを主張している政党です。軍事同盟にしばられ、巨大な軍事基地をおかせ、米国の無法な戦争に動員される体制を「永久不変」だと考える勢力には、およそ国の独立と平和を語る資格はありません。
日米安保条約をなくすのにむずかしい手続きはいりません。安保条約第10条の規定にしたがって、アメリカに「安保廃棄」を通告すれば、相手国の同意がなくても1年後には条約はなくなります。アメリカとは「友好条約」を結び、対等・平等の新しい日米新時代をつくります。日米軍事同盟からぬけだせば、わが国に明るい展望が開けます。
日本の教育は、歴代の自民党政治によってゆがめられ、そのうえ小泉内閣以来の「構造改革」によって教育条件の悪化と「子どもの貧困」がもたらされ、子どもの人間として成長する権利が深刻な形で奪われています。
とりわけ、改悪された教育基本法にそった教育への国家介入の強化、競争教育のいっそうの押しつけが急ピッチで具体化されようとしていることは重大です。
憲法の平和・人権・民主の原理にそった教育…なによりも、憲法の平和・人権・民主主義の原理に立脚した教育をすすめ、教育内容・方法への国の不当な介入をやめさせることに力をつくします。思想・良心・内心の自由を侵す“愛国心”の押しつけ、「君が代・日の丸」の強制、侵略戦争・植民地支配を美化・肯定する教育に反対します。
憲法および子どもの権利条約等の国際的なとりきめに基づいて、子どもの成長を中心にすえた教育を築くことをめざします。自公政権が教育にもたらしているゆがみをただし、すべての子どもが、安心して豊かに成長できる社会を築くために全力をつくします。
競争とふるいわけの教育を是正する…教育に「競争原理」をもちこんで子どもたちを競争に追い立て、ふるいわけする「教育改革」を抜本的に見直します。年数十億円の無駄遣いだと指摘されている「全国いっせい学力テスト」は中止し、抽出調査にします。
国連子どもの権利委員会からも改善の勧告を受けている「極度に競争的な教育制度」を改革するため、国民的な討論の場をもうけます。
子どもの豊かな成長の保障…暗記一辺倒ではない自然や社会のしくみがわかる知育を重視するとともに、体育、情操教育などバランスのとれた教育をめざします。学習が遅れがちな子どもへの支援を手厚くします。学習指導要領の強制をやめ、内容の再検討を国民参加ですすめます。上からの徳目の押しつけをやめ、基本的人権に立脚した市民道徳の教育をすすめます。
「不登校ゼロ作戦」など子どもや親を追いつめる施策をやめ、子どもの「最善の利益」の立場から、多様な選択への公的支援、親の会やフリースクールへの支援をすすめます。「いじめ」の温床である過度の「競争と管理」をあらためます。子どもの生命最優先へ「安全配慮義務」を徹底します。被害をうけた保護者の「知る権利」を保障します。
教育の自主性の保障…教育行政と教育委員会を抜本改革し、教育の自主性を尊重し、学校が民主的に運営され、教員が子ども、保護者に誠実にむきあえるようにします。定数増をすすめ、現場無視の「改革」押しつけをやめ、「教員の多忙化」を解消して教育に専念できるようにします。統制的で恣意(しい)的な「教員評価」、臨時教員制度、採用制度などを見直します。制度的にも無理がある「教員免許更新制」は中止します。
「子どもの貧困」の克服…深刻化する「子どもの貧困」を解決するため、専門家会議を設置し、実態調査をふまえて抜本的な対策をとるようにします。緊急に、国民健康保険証のとりあげ中止、就学援助の拡充、ひとり親家庭への支援強化、児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童手当の拡充、児童相談所の体制強化をおこないます。
教育条件の整備…OECD(経済協力開発機構)諸国で最下位の教育予算を、段階的に平均にまで引き上げ、「30人以下学級」、学校耐震化の促進など教育条件を整備します。「世界一の高学費」をただし、経済的な理由で学業をあきらめる若者をなくします。特別支援教育・障害児教育に必要な人員・施設を保障します。予算削減のための学校統廃合の強制を中止します。「私学の自由」を尊重し、私学助成を増額し、公私間格差を是正します。大学を疲弊させている「基盤的経費の連続削減」を中止し、予算を引き上げます。図書館、公民館などの拡充、専門職員の配置をすすめ、社会教育の自由、自主性を守ります。
国連で女性差別撤廃条約が採択されて、来年で30年になります。この間、ヨーロッパなどでは、差別撤廃条約やILO条約にもとづくルールの確立・強化がはかられ、あらゆる分野で男女が平等に社会的役割を果たすことがあたり前の社会に大きく変化してきました。しかし、日本では、いまだに異常な女性差別が続いています。
この根源には、一つは、日本の社会と政治が、大企業の利潤第一主義を最優先にした、世界にも例をみない異常な「ルールなき経済社会」になっていること、二つめには、戦前のような日本の社会を「理想」とし、そのもとですすめられた侵略戦争を美化し、民法の差別的条項の改正に反対する「靖国派」が政界で大手をふっていることがあります。
国際的な基準にたって職場での男女差別是正をはかる…女性差別撤廃条約やILOの条約の批准国には実効ある施策をとる義務が課せられています。日本共産党は、日本が批准国にふさわしい国際的基準にもとづくルールを確立・強化するようもとめます。また、未批准のままのパートの均等待遇を求めたILOパートタイム労働条約や権利侵害を国連に通報できる制度を定めた女性差別撤廃条約選択議定書などを早急に批准するようもとめます。男女雇用機会均等法、パート法の抜本的な改正で、均等待遇原則の明記、間接差別の禁止の範囲の拡大・強化、強力な救済機関や罰則の設置などをすすめ、事実上の差別の禁止、是正をはかります。
妊娠・出産による不利益な扱いをやめさせ、男女ともに労働時間の短縮をはかります。育児介護休業法を改正し、所得保障の改善、パートや派遣、有期雇用への適用条件の見直しなどをすすめ、拡充します。公的保育制度の改悪を許さず、認可保育所の新増設など国と自治体の責任による拡充をはかります。
民法を憲法にふさわしく改正する…民法には、いまだに夫婦同姓制度や再婚禁止期間、婚姻最低年齢、婚外子への相続差別など、男女平等と人権尊重に反する遅れた制度や仕組みが残されています。これらの条項については、国連から繰り返し改善勧告などが寄せられてきました。こうした問題を、現行憲法の精神にそって改め、男女平等、個人の尊厳の徹底をはかります。
毎年のように暴かれる官製談合や、その背景にある高級官僚の天下り、高級官僚による行政の私物化は、本来、国民のためにおこなわれるべき行政をねじまげるとんでもない行為です。「消えた年金」「消された年金」問題、汚染された輸入米の不正流通など、国民の権利も安全もないがしろにする自公政治のもとで、行政のあり方が根本から問われています。国民本位に転換するための真の行政改革は、まったなしの課題となっています。
官僚による不正、腐敗と行政の怠慢への批判が広がるなか、民主党などは現在の官僚制度こそが諸悪の根源だとする「自公政治=官僚支配」論を主張しています。現在の数かずの悪政はすべて官僚に主導されて引き起こされているという主張です。たしかに、自民党政治のもとで官僚制度のなかにさまざまな腐敗・堕落がもちこまれていることは事実です。しかし、悪政の責任をもっぱら官僚と官僚制度だけに転嫁することは、「あまりにひどい大企業中心」「異常なアメリカいいなり」という自民党政治の「二つの政治悪」を免罪する議論でしかありません。
現在の政府・自公両党による国民無視の悪政と官僚の不正・腐敗問題の核心は、「政官財」――政治と官僚、財界――の癒着にこそあります。こうした“鉄のトライアングル”のゆがんだ関係を断ち切ることなしには、ほんとうに国民の立場に立った政治と行政を実現することはできません。
政官財癒着の根源にあるのが、企業・団体献金であり、天下りの問題です。財界・業界は、一部の特権官僚に「特別席」「指定席」を用意し(天下り)、その見返りに官僚が財界・業界の利益につながる所管官庁の政策を立案、それを自民党などの政治家が国会で成立させ、その見返りとして財界・業界が多額の政治献金をしています。この「トライアングル」を打破することこそ、政治と行政を国民の手にとりもどす近道であり、最大の政治・行政改革になります。
08年の通常国会では「国家公務員制度改革基本法」が成立しましたが、これは、国民本位の行政の実現に逆行するものでした。法律では、官僚の特権的天下りに手をつけないだけでなく、逆に、官民の人事交流を規制緩和するなど、「天上がり」という形で財界と行政・官庁とのいっそう密接な人脈関係を築ける内容になっています。
国民のための政治・行政を実現するためには、まず、天下りをきびしく規制する必要があります。日本共産党は、営利企業はもちろん特殊法人や業界団体などへの天下りも禁止することを求めます。また、特殊法人の役職員の天下りも規制します。
政府与党や民主党、財界からは、「地方分権」が強調され、その一つのあり方として「道州制」が主張されています。「道州制」論は、現在の都道府県を改編して全国を10前後のブロック(道州)に区分けし、そのもとに基礎的自治体として1千程度の市町村に再編しようとするものです。
こうした構想は、国民の生活や社会の必要性からでてきた話ではありません。もともとは財界が音頭をとり、それに乗った形で、政党と政治家が主張をはじめたものです。
そのねらいは、国が外交や軍事、全国的規模の開発事業にだけかかわり、社会保障や教育、治山治水など、本来、全国的に国として責任を負うべき仕事を、地方に押しつけるところにあります。
いま、求められていることは、「地方自治」の精神を全面的に貫くことです。ただでさえ少ない地方への交付金や補助負担金を減らす一方で、本来、国として責任を負うべき社会保障や教育を押しつけるやり方は、地方自治体と住民をいっそう疲弊させることにしかなりません。
日本共産党は地方交付税の一方的な削減と制度改悪に反対し、地方財源の充実をもとめます。地方交付税を使った国の政策誘導をやめさせ、制度本来の財源保障・調整機能の充実と、住民福祉を保障する総額の確保をもとめます。福祉や教育などの国の補助負担金の削減に反対します。
自民党や民主党は、「国会議員定数の削減」を主張しています。しかし、国会議員の最大の使命は、国民の声を政治に直接反映させることです。その議員定数を削減するというのは、「国民の声は少なくて小さいほどいい」という議論にほかなりません。しかも、削減の対象にしようとしているのは比例代表です。民意を反映する比例代表の定数が削減されれば、ますます国民の声が届かない国会になってしまいます。
日本共産党は、衆院の選挙制度について、民意を正しく反映しない小選挙区制を廃止し、全国11ブロックの比例代表制の選挙制度を実現することを主張します。また、参政権の制限につながり、諸外国とくらべて異常に高い供託金を大幅に引き下げることをもとめます。世界の8割以上の国で実施されている18歳選挙権を実現します。
「国民の生活がきびしいとき、定数削減で議員自らも身を切る覚悟が必要」などとのべていますが、ほんとうに「自らも身を切る覚悟」というなら、毎年、毎年、320億円、1995年からの総額で4400億円にものぼる政党助成金の廃止こそが求められます。
もともと、政党助成金は、「企業・団体献金」をなくすことを条件に導入されました。それがいまでは、日本共産党以外の各党は、年間320億円もの政党助成金を山分けしたうえ、財界・大企業や労働組合などから企業・団体献金まで受けとっています。
企業・団体献金と政党助成金は、国民に顔を向けない政治と密接不可分の関係にあります。日本経団連は自民党と民主党のそれぞれの「政策評価」をおこない、政策に財界の意向が反映されているかを点検して“通信簿”をつけています。政党がそれに沿って政策をつくり、実行すればするほど、企業・財界からの献金額が上昇する仕組みになっています。そのうえ、毎年決まった額の政党助成金が自動的に入ってきます。「官から民へ」などと主張しながら、自民党は収入の6割、民主党は8割を税金に依存するなど、事実上の「国営(官営)政党」になっています。
南米のボリビアでは政党助成金を廃止してその財源を障害者支援にまわしました。日本でも政党助成金320億円をやめれば、たとえば障害者自立支援法による障害者福祉サービスの「応益負担」を廃止することができます。
いまこそ、憲法違反の政党助成金を廃止するべきです。
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