憲法施行62周年記念日にあたって
2009年5月3日 日本共産党書記局長 市田忠義
一、今から62年前に日本国民は、平和で、民主主義に支えられ、人権が大切にされる日本社会をつくる決意をこめて現憲法を制定しました。この憲法の諸価値を守り生かすために政治が力をつくすことが、今日ほど真剣に求められているときはありません。
一、北朝鮮の核兵器開発問題、アフリカ・ソマリア沖での海賊行為の問題など、世界の平和と安全にかかわる問題がおこっています。わが国の政府は、一連の事態に対してやみくもな軍事的対応に終始しています。日本共産党は、「戦争放棄・戦力不保持」「武力行使・威嚇の禁止」「国際紛争の平和的解決」というわが国の憲法原則を踏みにじるこのような対応に強く反対します。
一、オバマ米大統領は、歴代大統領として初めて、アメリカの「核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国」としての「道義的責任」を明らかにし、「核兵器のない世界」をめざすことを国家目標として追求することを宣言しました。日本共産党は、世界で唯一の被爆国で、地球上から核兵器をなくすことを国民とともに求めつづけてきた政党として、この発言を心から歓迎するとともに、国際政治が、この人類的な目標の実現にむけた具体的な交渉をすみやかに開始するよう強く求めるものです。
一、世界的な経済危機の中で、わが国では、職も住まいも無理やり奪い去る「派遣切り」「雇い止め」「新規採用の取り消し」などの不法・無法が大手をふってまかりとおっています。高齢者を“じゃまもの扱い”する世界に類例のない「後期高齢者医療制度」、介護の必要な人や障害をもつ人の生活や人権をないがしろにする施策が横行しています。お金のあるなしで命が左右されたり、経済的な理由で高校や大学への進学を断念したり、中退を余儀なくされたりする事例も跡を断ちません。
このようなわが国の現状は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」とそれを具体的に保障する国の責任を明記した憲法第25条に反し、「勤労の権利」(第27条)、「教育を受ける権利」(第26条)など、憲法が豊かに保障する人権条項がまったくないがしろにされている事態だといわなければなりません。憲法が定める国民のくらしと権利の保障に、政治が全力をつくすことが切実に求められています。
一、政府・与党の姿勢には、現憲法の積極的な価値を生かすのではなく、9条改悪を軸に、もっぱら、いかに憲法改定を急ぐかということしかありません。来年5月には、憲法改定のための国民投票を定めた「憲法改正手続き法」が施行されますが、これに先立って政府は、「『憲法改正国民投票法』が施行されます」とするパンフレットを作成して自治体や公共施設の窓口で配布するなど、改憲の雰囲気づくりに躍起になっています。また、改憲の直接の足がかりとなる憲法審査会の始動もくわだてられています。
日本共産党は、憲法改悪をねらう危険な動きを厳しく監視するとともに、平和・民主主義・人権という日本国憲法の原理原則が名実ともに生かされる政治をめざして、国民のみなさんと力を合わせて歩む決意を表明します。