日本共産党
SEISAKU
SOUGOU,KANKYO

2009年 総選挙政策 《分野別政策》

7 環境

持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣にとりくみます

  21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内の公害被害の早急な救済や、アスベスト対策や大気・土壌汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で次のようなとりくみを強めます。

地球温暖化対策の深刻な遅れを克服し、「人にやさしく環境を大事にする社会」をめざします

 今年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる温暖化に関する国際会議では、2013年以降の新たな国際的取り組みを具体的に決定します。それに向けて、6月にドイツのボンで開かれた国際会議や、7月にイタリアで開かれたラクイラ・サミットでは、2020年までの温室効果ガスの削減目標をどうするのかが話し合われました。ラクイラ・サミットでは、産業革命前に比べて、地球の平均気温の上昇幅を2度以内に抑えることの必要性が確認され、基準年の扱いには幅があるものの、先進国全体で「2050年までに80%またはそれ以上削減する目標を支持する」ことを宣言しました。

自公政権がボン会議を前にようやく発表した日本の中期目標は、2020年に、温室効果ガスの排出量を2005年比で15%削減するというものです。国際的に基準とされている1990年比に直すならば、わずか8%の削減にすぎません。これでは、京都議定書で削減すると約束した第1約束期間(2008年〜12年)の目標である、1990年比6%削減とたいして変わりません。基準年を2005年に移すことで、日本が削減するどころか2005年までに1990年比で7.6%も増加させたという都合の悪い事実を隠蔽するものです。基準年の変更を主張しているのは、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど温室効果ガスを増加させてきた国であって、圧倒的に多数の国は、90年を基準にしており、自公政権が掲げる中期目標では、国際的な取り組みをリードすることはできません。すでに京都議定書の目標を超過達成し、中長期の野心的な削減目標を決定しているEU諸国に比べ、明らかに遅れを取っています。これは、京都議定書の締結から11年も時間があったにもかかわらず、京都議定書から離脱したブッシュ米前政権に自公政権が追随し、EUの温暖化対策を「統制経済」と呼んできた財界のいいなりになって、効果的で具体的な削減のための施策をとろうとしなかった結果です。

 日本共産党は昨年3月に欧州調査団を派遣し、同6月には温暖化の抑制にかんする日本共産党の見解を発表しました。そのなかで明らかにしたように、温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(すでに今で0.76度上昇)にとどめることがカギです。そのために以下のような施策の早急な実現をめざします。

(1) ただちに温室効果ガス削減の中長期目標を示し、取り組む姿勢を明らかにします

 日本に課せられた「先進国」としての国際的義務をはたすために、2012年までに温室効果ガスの90年比6%削減という、京都議定書での約束を達成するとともに、わが国として2020年までに30%削減することを明確にした中期目標を確立し、2050年までに80%削減するという長期目標をすえて、それにむけて着実に実現していくための通過点を明示すべきです。

(2) 最大の排出源である産業界の削減のため、公的削減協定など実効ある施策を実施します

 日本の温室効果ガスの削減対策が言葉だけのものとなっているのは、総排出量の8割を占める産業界、しかもわずか166事業所で日本全体の排出量の50%に達するほど極端に排出が集中している産業界の削減について、もっぱら財界の“自主努力”まかせにしているからです。EU諸国ですでに実績を上げている施策によく学んで、政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。企業の削減目標達成のための補助的手段として、「国内排出量取引制度」(キャップ・アンド・トレード方式)や、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入すべきです。

(3) 原発優先から自然エネルギー重視に転換し、目標を拡大し促進の制度を整備します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギーに由来し、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギーは一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)にとどまっています。2020年までにその比率を20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定します。自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度を導入します。自然エネルギーから得られる電気やガス、木質チップなどの販売で、その地域には新たな収入が生まれ、地域経済対策としても有効です。自公政権は、原発を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。事故や災害、データ捏造などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源でもありません。事故や廃棄物による放射能汚染という新たな環境破壊も懸念されており、安全上も、技術的にも未確立な原発を優先にするエネルギー政策は、やめるべきです。

(4) 国の将来戦略に温暖化対策を位置づけ、政府の取り組みを義務付ける「気候保護法」(仮称)を制定します

 地球温暖化対策は、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制など各分野の政策と有機的に結びつけて着実にすすめてゆくべきです。そのために、国の将来に関わる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定します。生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階について、温室効果ガスを削減し、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から、「24時間社会」など大胆に見直すことが必要です。(→温暖化対策の全体・詳細については、2008年6月25日発表の「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか―――日本共産党の見解」を参照)

水俣病被害者の全面的な救済を急ぎます

 公式認定から52年になる水俣病にかんして、最高裁が国の責任と判断基準や認定制度・検診の見直しを認めたこと(2004年10月)をうけ、6100名をこえる被害者が国の認定を求めています。新潟水俣病でも、昨年、新たな申請者による阿賀野患者会が結成され、被害者が新たに提訴をおこないました。ところが、自公政権は7月に、被害者を切り捨て、加害企業のチッソを免罪する「水俣病特別措置法」を制定しました。

この法律は、わずかばかりの「解決金」で水俣病に幕引きを図ろうとするもので、(1)チッソを分社化して補償会社を消滅させる、(2)公害健康被害補償法に基づく「判断条件を満たさないもの」を救済する、(3)対象者の認定方法、(4)対象者を三年以内に確定し救済を終了する――という内容で、「被害者すべての公平な救済」という患者らの願いとはかけ離れた内容です。チッソの事業部門を水俣病の補償にあたる親会社と切り離して「身軽」にするという「分社化」を認めるものです。分社化すれば、最終的には水俣病に責任を負う会社が無くなり、新しい被害者が出てきた場合、救済の道も閉ざされ、加害企業を免罪してしまうことになります。「分社化は凍結」といっていた民主党も、与党との協議で分社化容認にあっさり転換し、衆院では審議なし、参院もわずか3時間の委員会質疑だけで採決してしまいました。日本共産党は修正案で示したように、司法の判断にもとづく水俣病認定基準の見直しや、不知火海沿岸47万人の健康・環境調査などの被害の実態調査、加害企業と国、県の責任に応じた補償を行うよう求め、すべての水俣病被害者が「救われた」といえる対策の実現をめざします。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせます

 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。原告はメーカーの責任も追及し、判決は、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘しました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められ、東京都では都・自動車メーカー・国・首都高速道路株式会社の負担で、都内に1年以上居住する気管支ぜん息患者の医療費の自己負担分が昨年8月から無料となりました。国は、こうした無料化を全国で実施すべきです。

 政府が1978年に、公害被害者の反対を押し切って環境基準を緩和した二酸化窒素については、その緩和された環境基準すら、大都市部を中心にいまだに達成できずにいます。また、浮遊粒子物質(SPM)についても、環境基準が設定されて以来38年も経つのに、未達成率が増えています。大気汚染の対策を、根本的に強化することが必要です。

 大気汚染公害の患者団体は、ぜん息などを引き起こす空気中のごく微小な粒子状物質「PM2・5」(微小粒子状物質。直径が2・5マイクロメートルの粒子。1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1)以下の微小粒子について環境基準設定を求めてきました。ようやく環境省の検討会も、昨年4月、PM2・5がぜん息や心筋梗塞(こうそく)、肺がんに影響を与えているという報告書を発表しました。ディーゼル車からの排出が多い「PM2・5」について、アメリカやWHO(世界保健機関)の環境基準にてらしても、日本ははるかに高濃度の汚染状況となっています。東京高裁の和解条項にもあるように、一刻も早く環境基準を設定して、住民の健康被害をなくす対策が必要です。2007年の自動車NOx・PM法の改正で、局地的な汚染が継続している地区内への流入車対策がようやく導入されました。しかし、大幅な削減効果をあげるには、大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、総量規制による汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

アスベストなど、身近にある有害性物質への規制を強め、化学物質政策基本法を制定します

 化学物質の安全性にかかわる規制は、分野ごとに設けられ、統一性がありません。2002年に南アフリカのヨハネスブルクで開かれた環境サミットでは、2020年までに、予防的取り組みに留意しながら、科学的根拠にもとづくリスク評価を使って、化学物質が、人間の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で、使用・生産されることをめざすという目標が合意されました。

しかし政府の対応は、化学物質の環境リスクを2025年までに低減するという政府の第三次環境基本計画や、化学物質審査製造等規制法「改正」によるものであり、不十分です。同計画を前倒しして2020年に間に合わせることや、予防的原則を明文化し、化学物質の製造や使用量の削減、安全性のデータがない化学物質は市場での流通・使用を認めないなどの理念をもりこんだ化学物質基本法を制定します。

化学物質審査製造等規制法で新たに禁止された物質については、本来使用すべきではありません。代替物質への転換を政府が責任をもって促すべきです。産業界の負担を軽減することを理由に、リスク評価の対象を約1000種の物質に絞った「スクリーニング型評価」ではなく、危険性評価が必要な全化学物質(約7000種)に対する網羅型評価を2020年までに終えるよう、取り組むべきです。また10億分の1メートル単位の微細粒子であるナノ物質については、健康被害を拡大したアスベストの苦い教訓を踏まえて、健康への影響について対策をとります。

アスベスト(石綿)は、吸いこんでから20〜30年以上も後に悪性腫瘍(がん)をひきおこします。その一種である中皮腫(ちゅうひしゅ)などの被害が続々と明らかになり、その影響は事業者・従業員だけでなく、家族、周辺住民にも及んでいます。政府が、ILO条約の批准を先延ばしにした結果、WHO基準の200倍も緩い基準(76年の通達)を05年まで放置してきました。関連業界と政府の責任は重大です。

 石綿関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施するために、費用を原因企業と国が負担するよう求めます。アスベスト対策法の施行後も、認定対象が狭く、救済数が余りにも少ないため、被害者の実態に合わせて拡充します。石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、被災者の見つけ出しをすすめ、建設労働者や「一人親方」も含めすべての健康被害者を救済し、周辺住民の被害認定でも、石綿肺や良性石綿胸水などを労災同様、対象に含めるべきです。被害に対する補償水準を引き上げるなど、救済制度を早急に改善するよう政府に求めます。汚染者負担にもとづいて製造・使用企業の責任による基金創設を実現し、救済制度を強化します。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、石綿除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。

 化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

 電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、昨年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3〜4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。新基準は電磁波のうち、1秒間に50回または60回変動する送電線の電磁波など、強さが比較的ゆっくり変動する「超低周波」が対象です。動物や細胞の実験では発がんが立証されず、電磁波と発がんに因果関係があるとまでは言えないと指摘したものの、予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。

 高速道路や米軍基地のヘリ、大型風力発電機、家庭にあるコンプレッサーなどから発生した低周波騒音・振動によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置の設置、早朝夜間の軍事訓練の中止などは、住民の当然の要求です。低周波振動の健康への影響について、ただちに調査・研究を行い、環境アセスメントでの影響調査を義務付けるなど、本格的な対応が必要です。

ごみの“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムを製造段階から確立します

 大型焼却炉によるごみの“焼却中心主義”からの脱却をはかります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ大型廃棄物処理施設の建設・運営の高コスト負担や、処理施設の爆発事故やトラブルに、自治体は頭を痛めています。自治体は、国の誘導策にのって大規模施設の建設に走ることをやめ、事故やトラブルについてはプラントメーカーに改善と補償を要求するとともに、国の指導を求めます。家電製品のリサイクル費用については、廃棄時の不法投棄をなくし、ごみになる部分を減らすために、商品の販売時に徴収すべきです。

 不正軽油の生成から大量に発生する硫酸ピッチや、地下水から法定基準値を超えて検出されたヒ素やセレンなどの有害物質など、廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な指導と監督をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去を実施させます。

 全国150箇所以上あると言われる不法投棄産廃処理は、産廃特措法による処理が10箇所たらずに止まっています。この10箇所の処理費用が約1160億円と、当初の10年間で1000億円という見込みをオーバーして新たな処理ができない状態になっています。滋賀県栗東市の産廃処分場でも全量撤去の要求が圧倒的多数にもかかわらず、知事は費用負担が少ない遮水壁の採用を表明する状況です。財源確保のための制度見直しを行い早期処理を進めます。

 容器包装リサイクル法によるペットボトルリサイクルも、自治体負担の軽減措置など制度見直しを求めます。家電リサイクルでは、大手量販店などによる不適正な引取・引渡が問題になっており、早急に小売業者が遵守すべき基準の設定などの規制強化や、回収・リサイクル料金の見直しを求めます。

 各地で家庭ごみの有料化が行政の側から提案されていますが、住民への有料化の押し付けでは、ごみ問題は解決しません。すでに有料化した自治体でも、当初はごみの量が減り、“減量効果”があるといわれましたが、その後はまた増えだし、“お金を出せば、ごみをいくら出しても自治体が処理するのは当然だ”という意識が生まれたりするなど、ごみの減量が進まない例も出ています。ごみの有料化だのみでは、ごみ削減への住民の意識の形成とはなりません。住民がごみになるものを買わない、使わない、出さない、分別を徹底するなど、住民の意識・取り組みの向上、自治体と住民の協力が欠かせません。ごみの有料化問題は、一方的な住民への押し付けでなく、住民も参加して十分な論議を行うべきです。

 産業からの廃棄物の投棄によって引き起こされた土壌汚染の問題も深刻です。東京の石原都政が進める築地市場(東京都中央区)の移転計画で、移転先の江東区豊洲の東京ガス工場跡地が高濃度の有害物質で汚染され、環境基準の4万3千倍の発がん性物質・ベンゼンや930倍の猛毒・シアン化合物が検出されて大問題となっています。大阪市の工場跡地を再開発し、汚染を知りながら隠してマンションが販売された「大阪アメニティーパーク」で、環境基準をこえるセレン、ヒ素などが検出された土壌汚染事件も起きました。全国各地で土壌や地下水の汚染が発見されています。

 2009年に改正された土壌汚染対策法では、3000平方メートル以上の土地を改変する場合に調査を義務づけることなどが盛り込まれましたが、依然として、法改正以前に廃止された事業所には適用されないなど不十分なものになっています。操業中の工場敷地や、工場敷地を別の工場に売却した場合にも、調査を義務づけるよう改正すべきです。

大型開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性をまもります

 湿地も森林と同様、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収に重要な役割を果たしています。湿原では、植物の死がいが積み重なり、炭素が泥炭の形で蓄積されます。 しかし温暖化がすすめば、湿地の乾燥と分解がすすみ、CO2やメタンといった温室効果ガスが排出され、いっそう温暖化が促進されるという悪循環に陥る可能性があります。

 昨年の洞爺湖サミット開催にあわせ、国連訓練調査研究所(UNITAR)が釧路市で開いた「生物多様性と気候変動についての研修ワークショップ」で示されたように、ラムサール条約(1971年採択)と気候変動枠組条約(1992年)、生物多様性条約(同)の3つは、不可分の関係にあります。これまで開発の対象と思われてきた湿地は、水の浄化など、自然の恵みをもたらすものだと再認識されるようになり、地球温暖化対策のうえでも、その保全が重視されてきています。登録ずみの湿地の保全にとどまらず、ラムサール条約を通して広い視野で、環境について考えることが求められています。諫早干拓計画を撤回し、水門の開放で有明海の豊かな海を回復するよう、政府はただちに実行すべきです。沖縄の泡瀬干潟や辺野古沖など貴重な干潟の保全のために力をつくします。

 2010年には、生物多様性条約の締約国会議が名古屋で開かれることになっており、日本の環境対策でのイニシアチブが問われます。人類生存の基盤である生態系を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせるとともに、環境アセスメント制度を改善し、住民参加と情報公開、代替案の検討を義務づけ、事後評価を実施させます。さらに欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の早急な実施を求めます。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすべきではありません。干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。諫早湾や長良川などの水門をあけ、自然の維持と回復をはかるべきです。八ツ場ダムや川辺川ダム、設楽ダム、サンルダム、淀川水系ダムなど、あいかわらず必要のないダムの建設を政府は推進しようとしています。首都圏に残る貴重な自然である高尾山に高速道路のトンネルを通そうとするなど、大型開発による環境破壊をきっぱりとやめるべきです。

 国土の3分の2を森林が占める日本は、世界でも有数の「森」の国ですが、その荒廃が進んでいます。絶滅が心配されているオオワシ、イヌワシ、ツキノワグマ、サンショウウオや北海道のナキウサギ、ヒグマなどを、開発から守り保護に力をつくします。森林の荒廃や気候の変動によって、野生の熊やイノシシ、シカなどが森から里に近づいて人間に捕殺されるケースが急増しています。捕殺だけの対応ではなく、野生動物との共存のために生息する頭数や状況の把握、森林の保護・管理、野生動物による被害の防止と救済に総合的にとりくみます。

 神奈川県内の野生のウシガエルから国内の野生カエルで初めてのツボカビ感染が確認されました。ツボカビは、過去30年間に中南米やオーストラリアの両生類を激減させたカビです。日本の両生類への壊滅的打撃と生態系全体への影響が危惧されます。日本は外来種生物の大量輸入国であり、それが自然界に出て日本の固有種の生息を脅かしています。動植物の輸出入検疫を強化するとともに、内外の知見にもとづくリストを作成し輸入を規制すべきです。輸入業者の立入り検査の強化も必要です。米軍の岩国基地で繁殖した毒グモが基地外にまで広がったように、港湾や空港、基地などでは意図せず付着などで入り込む外来種があり、こうした施設の周辺の監視を強めるとともに、固有種を脅かす外来種の除去をいっそう積極的におこなうべきです。

ペットの殺処分をへらすため、不妊手術や譲渡促進を支援します

 犬や猫などのペットは、こんにちでは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。ところが、最近では、さまざまな事情からペットの飼育を途中で放棄する人も少なくなく、心ない人たちによる動物虐待もしばしば報道されます。一部の無責任な飼い主のために、近隣の住民が迷惑に感じ、ペットとなっている動物を快く思わなくなってしまう人たちもおり、人間社会で暮らす動物たちを取り巻く状況はきびしくなっています。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は年間36万件にもなるといわれています。

 殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、ペットが死ぬまで飼いつづけることが基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが重要です。場合によっては犬猫の不妊手術をすることも求められます。子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。人をかむなど矯正できない問題がある場合をのぞき、譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、必要な矯正をし、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難ですが、愛護団体やNPO、地域の住民の協力なども得られる仕組みをつくります。政府は、市町村による動物との共生の地域ビジョンの作成を支援したり、不妊手術への助成制度を創設や、譲渡促進のとりくみへの支援などに乗り出すべきです。

日本にも影響が及んでいる東アジアの環境保全のために協力します

 日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることや、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の悪化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。

 東アジア全体の環境を保全するために、政府は、公害防止の経験や研究の成果を生かし、緑化事業や東アジア諸国の人びとの健康を守るとりくみを提起し、積極的に協力を広げるべきです。東アジア諸国に進出して活動している日本企業も、その国の環境にかかわる規制を遵守するだけでなく、適正な環境基準の設定に積極的に応じることで、社会的に貢献すべきです。

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