「構造改革」路線による内需の冷え込みに加えて、アメリカ発の金融危機による外需の激減、民間金融機関の貸し渋り・貸しはがしなど、中小企業は二重三重に痛めつけられています。民間金融機関による中小企業向け貸出残高は、2001年3月の約293兆円から、2008年12月には236兆円へと57兆円も減少しています(『中小企業白書2009年版』)。とくに、三大メガバンクは、昨年3月からの1年間で中小企業向け貸出を約2.6兆円も減らしており、貸し渋り・貸しはがしの先頭に立っています。
自公政権の「構造改革」路線は、金融機関に対して、短期的な「効率化」の達成をおしつけました。この結果、金融機関は、短期的な収益目標に追われ、直近決算期の売上など限られた数値だけをモノサシに、融資の可否を機械的に決定するようになっています。金融機関の「目利き」能力、審査能力の喪失は深刻です。
「頼みの綱」となるべき政府系金融機関も、「構造改革」路線のもとで、短期的な「効率化」を迫られて審査基準を厳格化するなど、公的金融本来の役割を果たせていません。信用保証制度では、部分保証(責任共有制)導入によって、貸出金の2割について民間金融機関が責任を負うことになったため、民間金融機関による貸し渋りに拍車をかけています。保証料率も、中小企業の経営状況に応じて9段階の格差がつけられました。さらに、政府が新設した「緊急保証」制度は、全業種を対象にしていないだけでなく、拒否が8%、減額要求が24%(帝国データバンク調査)にのぼるなど、保証が受けにくい実態があります。
いま必要なことは、「構造改革」路線を見直し、民間金融、公的金融ともに、その本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。
―――金融機関、とりわけメガバンクによる貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。
―──金融機関の「目利き」能力を回復し、社会的責任を果たすことのできる仕組みをつくります。「地域金融活性化法」を制定し、金融機能の再生と活性化に関する国、自治体、金融機関の責務を明らかにします。中小企業向け融資について、独自の検査マニュアルや監督行政のしくみをつくります。国による地域金融機関への合併押しつけをやめさせます。信金・信組などの協同組織性を変質させる動きを許さず、協同組織金融機関が本来の役割を発揮できるよう支援を強めます。
―――商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を総合的に見直します。公的金融にふさわしい融資基準をつくるとともに、予算、人材を含め、中小企業向け政策金融を抜本的に充実させます。
―――「緊急保証」制度について全業種を対象とするほか、融資条件を緩和します。また、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。小規模企業への保証料の差別的な引上げをやめさせます。信用保証協会への財政援助をおこなうなど、信用保証制度を抜本的に強化します。
―――日本では、毎年3000人を超える中小業者が自殺しています。この痛ましい事態の要因の1つが、中小企業融資における個人保証制度です。現在、金融機関が中小企業融資を行う際に、経営者自身や知人に対して保証・連帯保証を求めるケースがほとんどです。この制度のもとでは、会社だけでなく経営者自身も保証人も全財産を失うことになり、家族や保証人に迷惑をかけないようにと生命保険をあてにした自殺が多発しています。欧米では、数十年前に金融機関の個人保証制度は廃止されています。中小企業融資に対する個人保証制度の廃止をめざし、当面、政府系金融機関の融資について、個人保証を廃止します。
―――病気や事故などに備える「自主共済」は、2006年施行の保険業法により、保険会社に委託するか少額短期保険業者に移行するか選択が迫られました。しかし、多くの自主共済が、準備金の積み立てや外部監査導入などの負担ができず、制度廃止に追い込まれる事態も生まれています。社会保障の改悪などで国民の不安が増しているいまこそ、自主共済を守り発展させることが必要です。助け合いのためにつくられた自主共済については、保険業法の適用除外とします。
リストラや急な事故・病気など、誰の身にも起こりうる要因による生活苦や、売上不振や物価高騰などによる経営難などを理由に、高金利のサラ金に手を出す人が後をたちません。高金利と過剰融資を是正した貸金業法の改正を受けて、政府も各種の対策を打ち出していますが、未だに多くの人々が多重債務と貧困問題で苦しんでいます。本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。
また、個人年金保険や外国為替証拠金取引(FX)などの金融商品で被害を受ける人が続出しています。郵便局での投資信託などのリスク商品による被害も増えています。FX業者による証拠金の流用や詐欺的勧誘も相次いでいます。高齢者などをねらった「振り込め詐欺」や「振り込め恐喝」による被害も、史上最悪の件数にのぼっています。こうした金融被害もただちに根絶すべきです。
―――改正貸金業法について、09年12月を目処に完全施行します。ヤミ金に対する取締りを抜本的に強化します。「振り込め詐欺」などの犯罪をなくすために、警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます。
―――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど制度の運用改善をすすめます。
―――銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。
―――FXや商品先物を組み合わせた投資信託など、個人の資産運用に適さないハイリスクな金融商品について、総合的・抜本的に規制を強化します。
―――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。
自民・公明政権は、「金融を自由化し投資を促進すれば、日本経済も活性化する」といって、アメリカを“お手本”にした金融自由化・規制緩和万能路線をおしすすめてきました。また、「貯蓄から投資へ」の大宣伝をおこない、1500兆円の国民の大切な金融資産をマネーゲームに誘導してきました。
しかし、“お手本”としてきたアメリカ型の金融自由化・規制緩和万能路線は、アメリカ発の金融危機で劇的に破たんしました。いま、国連やG20などでは、金融自由化路線の見直しがすすめられ、投機マネーへの規制強化など経済と金融に関する新たなルールづくりがすすんでいます。
ところが、自民党・公明党は、いまだに金融自由化路線に固執しています。今年も、金融市場や商品市場の自由化・投機化をすすめる法案を提出し、これには民主党も賛成して成立しています。民主党は、今回の総選挙マニフェストでも、「貯蓄から投資へ」をかかげています。こんな“周回遅れ”の金融自由化路線に固執したままでは、日本企業や経済のまともな発展はのぞめません。
日本共産党は、アメリカを「お手本」にした金融自由化路線を見直し、実需に貢献する金融へ転換します。また、原油や穀物などの価格が投機でつり上げられることを許さないために、国際社会と共同して投機マネーを規制します。
―――金融自由化万能路線・規制緩和万能路線をきっぱり転換します。日本共産党が提案している「地域金融活性化法」をはじめとして、金融機関に社会的責任を果たさせるルールをつくります。「貯蓄から投資へ」といって、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を転換します。
―――国連やG20などですすめられている投機マネー規制改革で、積極的なイニシアチブを発揮します。原油・穀物市場での投機を規制するなど、生活を脅かす投機マネーへの規制を抜本的に強化します。ヘッジファンドなどの情報開示をすすめます。国際連帯税など、投機マネーの暴走を制限するための適切な課税を本格的に検討します。
自民・公明政権は、1500兆円にのぼる国民の大切な資産をマネーゲームに誘導するために、2003年度に「証券優遇税制」を導入しました。これは、庶民の預貯金(税率20%)よりも、マネーゲームでの利益(同10%)を税制上優遇するものです。アメリカの25%、フランスの30%からみても低すぎます。日本の制度は、世界に例をみない証券優遇税制であり、きっぱり改めるべきです(くわしくは、税制の項をご参照ください)。
―――世界に例を見ない大資産家優遇の配当・譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止します。配当や譲渡所得などは、アメリカやイギリスも総合課税です。勤労所得とあわせた総合課税を原則とし、大資産家には応分の負担を求めます。