国連女性差別撤廃条約が採択されて30年、日本では、いまなお異常な女性差別がつづいています。
女性雇用労働者の半数以上が非正規雇用であり、賃金は正社員で男性の68%、非正規をふくめると53%です。妊娠・出産、育児休業取得を理由とする解雇など違法な差別も横行しています。働きたくても保育所に入れない深刻な事態もひろがっています。女性の長時間労働もひろがり、健康破壊・母性破壊がすすんでいます。1人目の子の妊娠・出産で7割が退職し、30歳代の労働力率は資本主義国24カ国中23位、女性が最も働きにくい国となっています。女性の地位の低さは、老後の低年金にも影響を与えています。
ヨーロッパでは、母性の社会的役割を重視し、子育ては男女と社会全体の共同責任である、という女性差別撤廃条約の原則にたったルールが確立されています。パートと正規社員の均等待遇、家族政策の充実、育児休業制度の改善、保育所整備などがすすめられています。その結果、家族支援の公的支出は日本の3〜4倍です。
財界・大企業いいなりで、労働法制の改悪、社会保障のきりすてなどをすすめる日本の「ルールなき資本主義」が、世界でも異常な女性差別の大もとになっています。戦前の日本社会を「理想」とし、民法改正などに反対する勢力が政界で大手をふるっていることも異常です。
女性への差別は人間の平等と尊重の原則に反し、人類の発展に貢献すべき女性の能力の発揮を困難にし、その国の発展をもそこなうものです。日本共産党は、女性への差別をなくし、国際的な基準にたったヨーロッパ並みの「ルールある経済社会」をつくるために力をつくします。
そのためにも、日本が女性差別撤廃条約やILO条約の批准国にふさわしい国際的基準にもとづくルールを確立・強化するようもとめます。また、パートの均等待遇を求めたILOパートタイム労働条約や8時間労働条約、権利侵害を国連に通報できる制度を定めた女性差別撤廃条約の選択議定書などを早急に批准するようもとめていきます。
先進国で、日本ほど働く女性の地位の低い国はありません。企業が、女性を「安上がりの労働力」として働かせ、自民・公明政権がこの企業のやり方を応援し続けてきたからです。国際的基準にもとづくルールの確立・強化をはかり、雇用・労働の場での男女差別の是正をはかります。
女性雇用労働者の半数以上が、パートや派遣社員などの非正規雇用労働者であり、900万人をこえる女性パート労働者の平均賃金は時給975円、正規雇用の男性の5割以下、女性の7割という低賃金です。派遣労働者の半数が女性であり、日々の生活の展望も見えない不安をあたえている日雇い派遣労働者のなかの女性の比率も43%にまでひろがっています。
派遣労働を臨時的・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替にしてはならないことを明記するとともに、もっとも不安定な働かせ方となっている登録型派遣を原則禁止し、専門業務に厳しく限定します。製造業への派遣を禁止します。派遣期間違反、偽装請負など違法行為があった場合には派遣先企業が直接雇用していたものとみなす「みなし雇用」の導入など、労働者派遣法を派遣労働者の雇用と権利をまもる派遣労働者保護法に抜本改正します。数ヶ月単位の雇用契約を繰り返す「細切れ雇用」をなくすために、期限の定めのある雇用契約を合理的な理由のある場合に限定するなど、非正規労働者の雇用と権利を守ります。「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた均等待遇の法制化をすすめます。
パート労働法も、雇用管理の改善のための法律であり、パート労働者の権利を保護するうえではきわめて不十分です。パート労働法の抜本的な改正をはかり、法の対象に公務労働者や有期労働者を加えるととともに、正規労働者との均等待遇の確保をはかり、事業主が、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について正規労働者との差別的取り扱いをすることを禁止します。正規労働者の募集・採用の際には、その業務に現についているパート労働者、有期労働者で正規労働者になることを希望する人を、他の応募者への配慮もしながら、優先的に雇い入れることを努力義務とします。事業者への規制の強化をはかり、事業主が、パート労働や有期労働を理由に正規労働者との差別的取り扱いをおこなった場合や正規労働者への優先的応募の機会を与えない場合、厚生労働大臣の勧告に従わない場合は、これを公表し、勧告に従うよう命令できるようにします。
最低賃金を時給1000円以上に引き上げ、全国最低一律最低賃金制をつくり、あまりにも低い女性の賃金の底上げをはかります。
男女雇用機会均等法制定から20年余、男女の賃金格差是正も昇進昇格差別の改善も遅々として進んでいません。
男女雇用会均等法改正法をいかし、企業への指導を徹底するとともに、法律の見直しをはかり、間接差別の禁止規定を実効性あるものに改善し、強力な救済機関の設置や罰則の強化などをすすめ、事実上の差別の禁止、是正をすすめます。
男女賃金格差是正をはかります。(1)仕事の内容、熟練度、労働時間、勤務形態が男性と同一の場合、あらゆる賃金格差を抜本的に是正する。(2)同期同年齢男性との同一昇格をはかる。(3)昇進・昇格は、仕事内容に即した試験などだれもが納得できる客観的で透明な制度にし、結果の本人への開示原則を確立する。(4)出産や子育てで退職し再就職した場合は、資格や専門性、経験や熟練度を性差別なく正当に評価する。(5)同一労働のパートなどの賃金は、正社員との時間比例をめざし、少なくとも判例のある8割まで引き上げさせる、など、男女賃金格差是正のための正当な要求を支持し、その実現のためにともに力をつくします
妊娠・出産による不利益扱いがますます横行しています。妊娠・出産による不利益扱いを禁止した均等法による企業への指導を強め、違反企業への指導の徹底、罰則の強化をはかります。均等法は、産前産後休業を取得した場合、休業中は「業績ゼロ」として評価が下がっても不利益取り扱いにはあたらないなど禁止の範囲が狭いことが問題です。これでは、妊娠・出産による不利益、格差の拡大は改善されません。女性労働者が妊娠・出産をすることで賃金や昇進・昇格が不利にならないようにします。欧州などでは、産前産後休業は有給休暇などと同様に、出勤したものとみなしている国が少なくありません。少なくとも産前産後休業は、人事評価やボーナス・退職金の算定でマイナスにならないようにします。
出産・育児等で退職した女性の経験や実績を生かせるよう、再就職への支援、職業訓練への助成拡充、正規雇用での再就職を促進し、不利益や差別をなくします。
ヨーロッパなどでは、自営業・農業の女性の働き分を評価するのがあたり前になっています。妻など家族従業者の労賃を認めない所得税法56条を廃止します。
自営業や農家の多くが加入している国民健康保険には、妊娠・出産や病気・ケガの休業補償がありません。安心して休めるように、出産や病気の時の出産・傷病手当金の制度をつくります。「出産ヘルパー」「酪農・農業ヘルパー」の実施などで、安心して休めるようにします。
起業を望んでも、資金不足や家庭・子育てとの両立の問題など女性ならではの困難を理由に断念したり、せっかく起業しても廃業せざるをえない場合も少なくありません。起業に関する知識、情報提供、相談窓口や低利融資の拡充、子育てとの両立支援をすすめます。農産物加工技術の研修や販路の拡大などを支援します。
自営業・農業の女性は、仕事をにないながら、家事や育児、介護の重い負担も背負っています。そうした実態や地位の現状を改善する上でも、自営業・農業女性の仕事と健康など総合的な実態調査をおこないます。
「子どもができても働き続けたい」という女性が増えているにもかかわらず、実際には、仕事と子育ての両立が困難なのは、社会にも政治にも、妊娠・出産を社会的に保障するという考え方が不十分であり、社会的条件や子育て環境の整備がきわめて遅れているからです。妊娠・出産を社会的に保護し支えてこそ、女性がいきいきと働くことのできる条件がつくられます。だれもが安心して仕事も子育てもできるあたりまえの社会をめざすとともに条件整備をすすめます。
30代男性の22%が週60時間以上働き、40%が夜9時以降に帰宅しています。労働基準法の女子保護規定撤廃によって、女性の労働時間も拡大し、妊娠・出産で働き続けられない理由のトップは「残業が多い」という調査結果もだされています。健康破壊・母性破壊も深刻です。生理に問題がある、婦人科系の障害がある、流産しやすいなど、4人に1人が妊娠・出産にかかわる健康問題をかかえており、とりわけ長時間労働している女性に障害のある割合が高いと指摘する調査もあります。これでは、妊娠・出産も、男女が協力して子育てをすることの困難も拡大するばかりです。
異常な長時間労働を改善し、男女ともに労働時間を短縮します。残業時間をただちに年間360時間以内とする上限規制の法制化をはかり、違法なサービス残業を根絶します。子育て中の変則勤務、夜間・休日出勤、単身赴任などを制限します。
育児介護休業制度は、改善をもとめる声の高まりを背景に一歩ずつ前進しています。09年の国会でも、3歳までの子を持つ労働者の短時間勤務制度・残業免除制度、介護のための短期休暇制度がとれるなどの改善が行われています。働き続けている女性の中での育児休業取得率は9割近くになっています。しかし、一方では、取得すると昇進・昇格にひびく、それどころか解雇されるなどの不利益扱いが横行しています。男性の取得率はいまだに1%台です。
男性も女性も、正規雇用も非正規雇用も、だれもが育児休業をとりやすい制度にさらに改善することが必要です。所得保障6割への改善、中小企業への助成や代替要員の確保、男性の取得促進のための「パパクオータ制」の導入などで、企業の大小の別なく、男女ともに、取得しやすくします。勤務時間短縮や時間外・深夜労働免除制度、子どもが病気のときの「子ども看護休暇」を学校行事への参加などにもつかえる「家族休暇」制度の拡充など、仕事と育児の両立がしやすい制度への拡充をはかります。取得したことによる不利益扱いを禁止します。派遣やパートなど有期雇用労働者の育児休業制度取得の厳しい条件を抜本的に見直します。
入所を希望して入れない待機児童の数は08年4月で2万人、09年春には、東京23区は昨年の1・4倍、横浜市は1・8倍をはじめ、各地で、申し込んでも入れない事態が急増しました。待機児童数は潜在的には100万人ともいわれています。
自治体の責任で、臨時保育所をつくるなど緊急対策をとるとともに、「保育所整備計画」をつくり、保育予算を抜本的に増額し、計画的に公立・認可保育所の新・増設をすすめます。延長・夜間・休日・一時・病後児保育等を拡充します。保育料、幼稚園教育費の父母負担の軽減をはかります。
政府は、「少子化対策」と称して、公的保育制度を改悪し、国と自治体による保育の実施と水準の確保、公費負担の責任をなくし、企業まかせの安上がり保育をすすめる制度への改変を急いでいます。国や自治体の責任を後退させる保育所直接入所方式の導入や最低基準の切り下げ、保育条件を切り下げる公立保育所の民営化・民間委託に反対します。
学童保育は、子どもたちが「遊びと生活の場」にふさわしく安心して生活できるよう量質ともに整備します。放課後児童クラブガイドラインにとどまらず、設置・運営基準を定め、大規模化の解消、専任の指導員の常勤・複数配置・働く条件の改善などをすすめます。
母子家庭の平均所得は、児童扶養手当などをふくめても年約237万円、一般世帯の4割で、85%が「生活が苦しい」と感じています。自民、公明、民主党などは、児童扶養手当を08年度から最大で半分に減らすという制度改悪を行いましたが、運動と世論の批判を受けて手直しを迫られ「凍結」しています。しかし、「就業が困難な事情」の証明書類の提出など「就業意欲」による線引きの考え方は変えていません。手続きも煩雑です。手続きの簡素化はもとより、受給開始から5年で最大半額に削減という制度改悪そのものを中止し、額の引き上げと対象の拡大をはかります。削減された生活保護の母子加算を復活し、支給対象年齢も18歳の年度末までに戻します。
母子家庭にとって長期の安定した雇用が切実です。母子家庭の母親の85%が働いていますが、非正規労働者がふえて常用雇用を上回っています。パートタイム雇用を正規雇用に転換した事業主にたいする奨励金を増額し、正規雇用への道を拡大します。母子家庭の母親が仕事と子育てをしながら資格取得や技能訓練をするにはその間の経済的保障など支援が必要です。資格取得や技能訓練費などの国の援助額をひきあげます。安価で良質な公共住宅を供給します。
母子家庭の寡婦控除を受けられないシングル・マザーにも、税控除がうけられるよう、制度を改善します。
一人で仕事と子育てをする大変さは、父親でも母親でも変わりません。より長時間労働を強いられている父親の場合、子育てのために仕事を変えざるをえない人も少なくありません。年収は一般世帯の75%と母子家庭を上回るものの、就労収入が300万円未満の世帯が37%、200万円未満も16%にのぼっています。父子家庭にも児童扶養手当を支給するようにします。政府に実態・要望調査をもとめ、父子家庭に必要な子育て・生活支援などを強めます。
性と健康にかんする権利、産む・産まない権利をカップルと個人がもち、とりわけ妊娠・出産の可能性のある女性の健康は大事な問題であることが「性と生殖、健康にかんする権利」(リプロダクティブヘルス・ライツ)として国際的にも確認されています。長時間労働などによる健康破壊、「お産難民」といわれるような産科医不足、若い世代への性や体にかんする教育の不十分さなど、日本では、その大事な権利をまもることができない事態がひろがっています。
高齢妊娠、ストレスをかかえる妊婦なども増加しており、母体や胎児の健康のための妊婦健診はいっそう重要になっています。女性たちの運動と世論の高まりのもとで自治体の公費負担の全国平均は、国が望ましいとする14回に近づいています。出産育児一時金も増額されています。しかし、無料になる健診回数も公費負担額も自治体によって格差があり、それぞれ2年間の時限措置です。イギリス、ドイツなどでは、健診も出産費用も無料です。国の責任で、妊婦健診、出産費用の軽減をはかり、無料化をめざします。
パートなど非正規、業者、農業などを問わず産休中の所得を保障できるよう拡充をはかります。高額な費用がかかる不妊治療の助成額の増額、所得制限の緩和をはかるとともに健康保険の適用をめざします。
都市でも地方でも産科医のいない地域が急増し、全国で「お産難民」が発生し、救急車を呼んだ妊産婦が搬送先を見つけられずに死亡するなどの痛ましい事件も続発しています。こうした事態を引き起こした最大の原因は、「医療費削減」の名で医師数を抑制しつづけてきた歴代政権の失政です。この15年間に日本の産婦人科医師数は22%も減りました。医師が絶対的に不足するもと、200床以下の病院では産科医の当直が平均で月7回をこえるなど、労働条件はますます過酷になり、産科医の退職があいついでいます。また、自公政権は、診療報酬の抑制・削減で多くの産科医療機関を経営難に追いやり、「不採算」を理由に国公立病院の産科を切り捨ててきました。その結果、1990年代には5000施設あった分娩施設が、2005年には3000施設に激減しています。産科医療の崩壊をくい止め、妊産婦や子どもの命と健康をまもるには、「医療費削減」路線を転換し、国の責任で計画的な打開策をこうじることが必要です。
日本共産党は、医師の養成数を抜本的に増やし、国の責任で産科医の育成・研修などをすすめます。地域の産院・産科病院への公的支援を強め、産科・小児科・救急医療などにかかわる診療報酬を引き上げます。国公立病院における産科切り捨てをやめ、周産期医療をまもる拠点として支援します。産科医の過酷な労働条件の改善をすすめます。とくに、30歳代半ば以下の産科医では過半数を占めるなど、産科医療を支える大きな力となっている女性医師に対し、妊娠中の当直免除、産休・育休中の身分保障や代替要員の確保、職場内保育所の設置など、家庭生活との両立支援をすすめます。
産科医療の崩壊が進行するなか、助産師・助産院の役割はますます重要です。みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの「良いお産」を普及・発展させるため、助産院に対する手厚い公的支援をすすめます。助産師の養成数を増やし、「院内助産所」の設置など医師と助産師の連携を国の責任で推進します。
乳がんや子宮がんの予防・早期発見は、女性の命と健康をまもるうえで重要です。ところが、自民党政府が、がん検診への国庫補助を廃止したために、自治体の「財政難」を理由とした、検診の有料化や利用料値上げ、受診者のふるいわけ、検診内容の縮小や検査機器の老朽化が問題となっています。イギリスでは、1987年まで任意だった子宮頸がん健診を定期健診にきりかえ、検診料を無料にしたことで、受診率が4割から8割にアップし、死亡率も減少しました。検診の充実を求める世論を受け、政府も09年度、該当年齢の人について一回だけ無料検診をおこなう措置を実施しましたが、抜本的な改善が必要です。国の財政を投入し、乳がん・子宮がん検診の自己負担の軽減・無料化をはかります。マンモグラフィー検査など最新技術による検診を促進し、企業の定期健診に女性関連項目を加えます。骨粗しょう症や甲状腺障害など、女性に多い疾病の予防・健診の充実をはかります。
特定健診(メタボ健診)の導入により、40歳以上の妻で、夫が加入する組合健保の扶養家族となっている人は、健保が指定する医療機関で健診を受けなければならなくなり、受診しにくくなっています。これらの人たちに対し、居住する市町村の健診や、近隣の医療機関での健診を受けられるようにする措置をこうじます。特定健診には、「メタボ改善率」を理由にしたペナルティ、健診項目の切り捨て、住民・労働者への費用転嫁など、さまざまな問題があります。健診の縮小や負担増を許さず、病気の予防・早期発見という本来の主旨に立って、健診の充実をはかります。
長時間の残業や深夜労働による過労・ストレスで体調を崩す女性が増え、精神疾患の労災認定も急増しています。生理休暇取得率は1・6%まで低下し、月経障害や不妊に悩む女性も少なくありません。男女ともに長時間労働を規制し、生理休暇なども気兼ねなく取得できる職場環境をつくるよう、企業への指導を強化します。働く女性の長時間労働、深夜労働の実態・健康影響調査をすすめます。
乳がんや子宮がんなどの術後のリンパ浮腫治療における弾性スリーブ・ストッキングが保険適用になりました。保険適用の対象を、その他の病気によるリンパ浮腫とマッサージ治療に広げます。
女性の体、性差を考慮した医療の発展をはかり、公的医療機関に女性専用外来の開設を促進します。若年層を対象にした性教育、性感染症予防教育、医療関係者による相談活動などを強めます。
女性は男性よりも平均寿命が長く、65歳以上では6割弱をしめています。2人に1人は配偶者なしとなっています。また、一人暮らしの女性の約半数は年収180万円未満、離別で一人暮らしになった女性の12%強が年収60万円未満という調査結果もあります。高齢期のこうした生活実態は、女性の地位の低さがそのまま影響したものであり、多くの女性が低額年金、無年金の状態におかれています。女性の厚生年金平均受給額は約106000円、男性の6割以下です。女性の国民年金平均受給額は46000円です。
男女賃金格差の改善、パート労働者と正規労働者の均等待遇の改善は、公平な年金実現にとっても重要です。パート労働者の社会保険加入の権利を保障し、企業による保険料負担逃れのための未加入の解決をはかります。二つ以上の職場をかけもちするパート労働者の社会保険加入の権利を保障します。サラリーマン世帯の専業主婦の保険料は「応能負担の原則」で、夫が高額所得の場合には応分の負担をもとめるしくみにします。厚生年金の遺族年金を女性が働き納めた保険料が受給額に反映できるよう改善をはかることなど、どんな生き方を選択しても公平な年金制度の方向を検討します。全額国庫負担の最低保障年金制度の確立で低額年金の底上げをはかります。
女性の人間としての尊厳、人権を侵害する制度が残され、セクハラや暴力によって苦しむ女性はあとをたちません。女性の尊厳、人権をまもることは、民主主義の前進にとって欠かすことのできない大切な課題です。家庭、社会のすみずみまで男女平等、個人の尊厳の徹底をはかり、女性の人権を尊重する社会にします。「選択的夫婦別姓やDV防止法は家庭を破壊する」などの「靖国」派の攻撃を許しません。
民法には、いまだに夫婦同姓を強制する制度や女性のみの再婚禁止期間、男女別の婚姻最低年齢、婚外子への相続差別など、男女平等と人権尊重に反する遅れた制度やしくみが残されています。これらの条項については、国連からくりかえし改善勧告などが寄せられています。こうした問題を、憲法や国連女性差別撤廃条約の精神にそって改め、男女平等、個人の尊厳の徹底をはかります。協議離婚の際には、子の養育者、父又は母と子の面会や交流、養育費の分担のとりきめを、子の利益を最優先して考える立場からすすめるようにします。離婚後300日以内に出生した子の無戸籍の問題は、前夫が父でないことが明らかな場合は、「現夫の子」または「嫡出でない子」とする出生届を受理できるようにしするとともに、民法の規定の見直し、検討もすすめます。
女性労働者から雇用均等室によせられたセクハラの相談は年々増加し、08年度には1万3500件をこえています。均等法は、事業主にセクハラ防止義務を課しています。行政による企業のセクハラ防止対策の強化・指導、改善命令をだせる機関の設置、被害者の保護、相談窓口の拡充などをすすめます。
06年におこった自衛隊でのセクハラ・わいせつ暴行問題は、重大な人権侵害であるセクハラへの国の認識の低さを露呈しています。学校や大学などでもセクハラ事件があとをたちません。政府みずからがセクハラ問題の重要性を認識し、社会からセクハラをなくす先頭にたつべきです。
人身売買被害者の保護・人権擁護の体制を拡充します。雑誌やインターネット、メディアなどには性を商品化するような写真、記事、動画などが氾濫しています。女性を蔑視し、人格をふみにじる文化的退廃を許さず、人権尊重の世論と運動をひろげます。
08年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDV相談は、約6万8000件で過去最高です。しかし、増加するDV被害の訴えに、相談窓口・一時保護・自立支援施設など必要な体制が追いついていません。国の予算を大幅に増やし、配偶者暴力相談支援センターの増設と施設条件の改善、民間シェルターへの委託費の増額と運営費への財政的支援、被害者が自立の準備をするためのステップハウスへの助成をはかります。公営住宅優先入居や自立に要する費用援助をすすめます。子どもの心身のケア、加害者更生についての調査研究と対策強化をすすめます。暴力を許さない社会的合意をつくります。
「慰安婦」問題は、日本がおこした侵略戦争のさなか、植民地にしていた台湾、朝鮮、軍事侵略していた中国などで、8万人から20万人以上ともいわれる女性たちを集め、組織的継続的に性行為を強制するという非人道的行為です。1993年の河野官房長官談話、1995年の村山首相談話などで強制連行の事実を認め、謝罪はしたものの、国による賠償はおこなわれておらず未解決です。安倍首相(当時)が「強制連行の証拠はなかった」と事実を否定するなど、この非人道的行為の清算をまともにおこなおうとしない態度は、国際的にも大きな批判をあびています。米下院、欧州議会など各国議会や国連自由権規約委員会、ILOは、日本政府による被害女性への公的な謝罪や国による賠償などを求めています。
日本政府に「慰安婦」問題の真の解決と、国による謝罪・賠償、教科書への記載を一刻も早くおこなうことをもとめます。国会の責任として、これを促す「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律」の成立のために力をつくします。
女性の高校進学率は男性を上回り、大学・大学院への進学率も高まっています。社会のあらゆる分野で女性の活躍がひろがっています。しかし、政策・意思決定機関への参加は著しくおくれています。女性がはたしている役割にふさわしい役員構成などがあたり前になる社会をめざします。
政府は、男女共同参画基本計画で2020年までにあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%にするという目標をかかげています。政府がその目標の実現に直接責任をもつ女性国家公務員の管理職への登用をすすめ、民間企業への指導の徹底など、目標達成をはかることを求めます。
審議会などでの女性の登用で、民主的で公正な人選をもとめます。人口の半数をしめる女性の意見が、審議会などに公平に反映することができる適切な構成にすることが大切であり、そうした立場にたった女性の積極的な選任をはかることをもとめます。業界や大企業など特定の団体や特定の個人の比重が高く、民間の団体も同じ団体からの人選が多いという偏りをただし、国民のあらゆる層の意見が反映する民主的で公正な人選と運営をもとめ、極端な兼任、政府の施策立案に都合のよい委員の登用はやめさせます。
研究者にしめる女性の割合も、大学、大学院にかよう女性比率、約40%、30%から大きく低下し、13%です。講師、准教授、教授となるにしたがって女性割合が低くなっています。出産や育児、介護等で継続が難しいこと、昇進差別など、女性研究者をとりまく条件は劣悪です。昇進差別やセクハラをなくし、出産・育児における休職・復帰支援策の拡充、大学内保育施設の充実など研究者としての能力を十分に発揮できる環境づくりなどをすすめます。