芸術や文化は、人びとの心豊かなくらしに欠かせません。芸術・文化をつくり楽しむ国民の権利を尊重し、その条件を整えることは行政の責務です。芸術・文化を市場原理だけにまかせては、その多面的な発展をはかることはできません。ところが、自民・公明政権のもとで、「貧困と格差」が拡大し、多くの国民は芸術・文化から遠ざけられ、芸術・文化団体や芸術家に大きな困難をもたらしています。さらに、経済危機が困難に拍車をかけています。そのなかで、もともと不安定な地位にある芸術家は、収入が低下し、社会保障の改悪で、現在と将来への不安をつのらせています。
自民・公明政権は、芸術・文化活動を守るための公的助成を削減し、制度も改悪しています。また、国立美術館や公立文化ホールの民営化を押しつけ、芸術・文化にたいする責任を投げ捨てています。日本共産党は、くらしと文化に冷たい政治を切りかえ、芸術・文化活動の多面的な発展をはかり、国民だれもが文化を楽しめる社会をめざします。
国民が等しく文化を享受する権利を保障するうえで、芸術団体や芸術家の活動を支援する公的助成が重要です。日本の公的助成制度は、1990年代にようやく本格的に始まりましたが、その額はヨーロッパなどに比べて著しく低い水準にとどまっています。しかも、文化庁、芸術文化振興会の助成のいずれも、「構造改革」路線のもとで大幅に削減されています。さらに、ヨーロッパ諸国とは違い、芸術団体の無理な自己負担を前提にしており、いくら努力しても赤字になるしくみになっています。これでは、芸術団体の基盤が安定せず、専門家の生活と地位の向上に生かされません。こうした方式を切りかえ、芸術団体の基盤強化に役立ち、芸術家の地位向上がはかられるよう、助成の改善・充実をめざします。
経済危機のなかで芸術団体の制作・運営資金が著しく困窮しているもとで、文化庁、芸術文化振興会助成金の一部「前払い」制度の実施や助成金のすみやかな支払いを実現します。中小企業庁の緊急融資制度の拡充をはじめとして融資の改善をはかります。
文化庁の重点支援の方式は、公演ごとの事業採択から団体支援の「アーツプラン21」に戻すとともに、芸術文化振興基金を充実させます。日本映画への公的助成は、芸術文化振興基金の役割を大事にして助成を大幅にふやし、採算のとりにくい分野への製作助成と日本映画の上映支援を強めます。
芸術団体の「自己負担」枠を撤廃し、公演や普及の方法が違う芸術各分野の特性を考慮した助成制度をめざします。また、芸術団体の自主的な年間活動全体を考慮した助成制度として充実させ、芸術団体への助成率を引き上げます。助成にさいして実演家への報酬を引き上げることを考慮した方式にします。
幅ひろい団体が創造・普及のため簡便に利用できるように、劇場費やけいこ場などへの支援を中心にした助成制度の確立をはかります。
子どもたちの心豊かな成長のためにも、芸術・文化に参加できる条件を整えることが重要になっています。学校での芸術鑑賞教室は、すべての子どもに芸術鑑賞の機会を保障する大切な制度です。ところが、実際には、芸術鑑賞教室が激減しています。日本共産党は、すべての子どもが年1回以上、芸術鑑賞ができるよう条件整備をすすめます。
現行の芸術文化振興基金の助成を抜本的に拡充し、学校と芸術団体の自主的な努力を応援するとともに、国としてすべての芸術鑑賞教室を視野に入れた支援制度を確立します。文化庁の現行事業は、へき地や小規模校など開催が困難な地域を重点にする方向で改善をはかります。文化団体が全国の草の根ですすめているとりくみを、交通費・宿泊費や会場費の援助などで応援する制度を拡充します。
大小さまざまな表現空間や展示場所、けいこ場といった芸術家・文化団体の活動の条件を整備します。映画、演劇分野で国が責任をもつ公的な高等教育機関を設立・充実し、民間の養成機関の努力を応援します。アニメなどの制作における劣悪な労働条件や人材難などの障害をなくすよう支援を拡充します。実演家の労働基本権を守り、芸術家の社会保障の確立をはかります。
文化庁予算は、年間1020億円(2009年度)にすぎず、とりわけ芸術・文化活動への支援は、国立美術館などの施設費をふくめても400億円に達していません。こうした現状を改め、文化予算を拡充します。芸術家への不当な税制をあらため、寄付税制を充実するとともに、民間劇場や映画館の固定資産税の減免といった税制支援をすすめます。「公益法人改革」にあたって芸術団体に無理な負担がないようにします。
国立美術館・博物館、国立劇場・新国立劇場の民間委託を許さず、国の施設にふさわしい予算の充実をはかり、運営への芸術家の参画を促します。映画の国立フィルムセンターの人員を拡充し、国立美術館の付属施設から国が責任をもつ独立した組織へと発展させます。国民の身近な文化施設である文化ホールや図書館、美術館・博物館、文学館の民営化、民間委託の押しつけをやめさせ、公的支援を充実します。舞台技術者や司書、学芸員など専門家の身分を保障し、専門家として力量を発揮できるよう支援します。
アニメ、マンガ、写真、音楽など、文化各ジャンルの貴重な遺産の収集・保存を支援します。景気対策を口実に、2009年度補正予算にもりこまれた「国立メディア芸術総合センター」は、まともな収集・保存の計画もなく、国が運営にも責任をもたないものであり、中止します。
大型開発による文化財破壊を許さず、文化財と歴史的景観の保存をすすめます。
芸術・文化は、「表現の自由」が守られてこそ発展します。公的助成にあたっては、「金は出しても口は出さない」ことが原則です。「靖国」問題を扱ったドキュメンタリー映画への助成を自民党議員が非難し、一時上映中止に追い込まれた事態は、二度とあってはなりません。芸術・文化活動の自由を守るために、すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善し、専門家による採択結果を政府が尊重するようにさせます。
著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。デジタル化・ネットワーク化にともない芸術・文化の新たな利用形態が発展することは、国民の創造・享受の条件が広がる点から歓迎すべきことです。同時に、そのなかで作家・実演家の権利が適切に守られなくてはなりません。
著作物である「コンテンツ」の流通形態が変化するなか、日本経団連が「産業活性化」と称して著作権の「権利の放棄」や「強弱」をつける「提案」を出すなど、著作権制度改定への圧力が強まっています。国民の利用を保障しながら、作家・実演家の権利をまもるよう著作権の発展をはかります。すべての権利が企業に移転してしまう現状をあらため、映画監督・スタッフ・実演家の権利確立をめざします。私的録音録画補償金制度の協力義務を放棄するような大企業の横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。