国民本位の公務員制度と行政を実現するためには、政官財の癒着のトライアングルを打ち破らなければなりません。公務員は「全体の奉仕者」です。しかし、現在の官僚制度は、一部の特権官僚を中心として、国民に奉仕するのではなく一部の政治家や財界・企業のための存在となっています。この癒着のトライアングルの“接着剤”となっているのが、「天下り」「企業・団体献金」であり、政府・与党による大企業中心政治にほかなりません。
人事院の発表によれば、官僚による天下りは2001年から08年までの8年間で合計5850人、1年あたりの平均では731人にのぼります。霞が関から各企業・業界などに天下った官僚は、許認可や公共事業などさまざまな権益にかかわる各官庁の情報を天下り先に伝え、それを通じて利益をえた企業が天下り官僚を厚遇、同時に、政治家に莫大な政治献金を与えて、さらに国会で企業や業界に有利な政策をすすめてもらうという関係になっています。
天下り官僚と企業との癒着の一端について、ある大手ゼネコンの課長経験者は「ゼネコンの不正の根は官民癒着にある」として、次のように告発しています。
「私はこれらのOBすべてが談合に関わっていると断言できる」「企業が官庁などからOBを採るのは、何も永年国家のために尽くしてきた官庁OBの老後の面倒を見ようという慈善事業のためではない。OBに高い給料を払ってもなお十分なおつりが来るから採っているのだ」(鬼島紘一氏『「談合業務課」 現場から見た官民癒着』)
こうしたいびつな関係は、銀行と官僚との関係でも顕著にあらわれています。帝国データバンクの調査によれば、2003〜2004年度の121行の全役員1641人のうち、天下り役員は103人(6.3%)で、そのうち代表権をもつ役員に就任したのは3割を超える34人となり、「依然として重要ポストが用意されている」と分析されています。しかも、天下り役員103人のうち、64%の66人が財務省・日銀出身者であり、この2つの官庁が天下りのなかでも突出しています。
2005年に人事院がモニター・アンケートをとったところ、「国家公務員制度について見直すべき課題」のトップは「天下り」で、全体の53%を占めていました。国民本位の行政を実現するためにも、癒着の温床をきっぱり断ちきることが決定的となっています。
日本共産党は、「政官財」のゆ着を断ち切り、行政を、憲法が明記するとおり主権者国民全体に奉仕するものに改革するために、企業・団体献金を即時・無条件に禁止するとともに、高級官僚の営利企業・業界団体、政府関係法人への天下りを禁止する法律を制定します。
一方、この間、社会保険庁の「消えた年金」や「消された年金」問題、農水省による汚染米のずさんな管理・運営など、行政の怠慢ともいえる実態が次つぎに暴かれてきました。政府・与党は、「現場の公務員のずさんな仕事」などと批判していますが、大企業奉仕の政治と一部官僚による特権的支配が、これらの問題の背景の1つとなっていることは明らかです。
公務員は、労働者という側面と同時に、住民・国民への奉仕者として、公正で効率的な行政サービスを国民に提供するという、他には代えられない側面ももっています。とくに、戦後の公務員制度は、戦前の公務員が「天皇の官吏」と位置づけられていたことへの反省のうえに、「全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」(憲法第15条)と規定されてスタートしました。日本共産党は30年以上も前から、公務員は「全体の奉仕者」であり、行政サービスという公共性をもつ仕事に携わっている以上、公正中立で民主的効率的な行政を実現するために、住民と国民の目線にたって積極的に働くようにすべきだと主張してきました。
同時に、公務員が真に「全体の奉仕者」として業務に従事できる体制を確立することも重要になっています。民間もふくめて、労働者が健康で文化的な生活を営むうえで、「過労死」さえ問題になるようなこんにちの過酷な労働条件は、一刻も早く改善しなければなりません。また、「官製ワーキング・プア」といわれるような、非常勤職員の劣悪な労働条件の改善も急務となっています。ワーキング・プアが社会的問題になっているとき、官公庁こそそうした労働条件改善の先頭に立つべきです。
国家公務員から剥奪されているスト権などの労働基本権の全面回復をはかる必要もあります。