一、本日、文部科学省は、小、中学校での教科等の枠組みや時間数、その内容を示す「学習指導要領」を十年ぶりに改定する案を公表しました。これは改悪された教育基本法、学校教育法に基づいたもので、以下のように、国民の学力への不安や願いにこたえたものにはなっていません。改定案を撤回し、指導要領のあり方をふくめ国民的な討論をおこなうことを求めます。
一、改定案は、「ゆとり教育をやめ、知識をつめこめ」という政府・財界の圧力のもと、学習内容を増やしすぎ、小学校一年生を毎日五時間授業にするなど、過密なものとなっています。 さらに、各教科について「こういう活動をして指導せよ」と、これまでと違って指導法を細かく例示しました。 これは憲法に反し、教師の自主性や創造性をうばう最悪のやり方です。 これでは、授業についていけない子どもや勉強嫌いを増やし、政府が進める「全国学力テスト」や「習熟度別授業」など競争主義的な施策と一体に、子どもの学力格差をひろげることは明らかです。指導要領は、本当に必要な学習事項に精選したものを試案として提示するにとどめるべきです。
一、改定案は、すべての学校に「道徳教育推進教師」を配置し、指導要領どおりに道徳の時間を教えているかどうか点検させ、さらに数学など全教科で道徳教育の実施を求めています。 指導要領で示された道徳は、復古的かつ形式的で、肝心の基本的人権や子どもの権利の見地がありません。子どもを人間として尊重する姿勢を学校生活全体につらぬくことを、道徳教育のカナメにすえるべきです。
一、改定案は、あらたに小学校に「外国語活動」を設けましたが、まともな条件整備なしに学級担任にまかせるという粗末なものです。しかも小学校での英語教育は国民的合意に至っていません。 また中学体育の「武道」必修化は、条件整備がともなわず、特定の価値観の注入に悪用される危険もあります。いずれも拙速な導入はやめるべきです。
一、改定案は、各教科について「基礎」だけでなくその「活用」を重視するとし、文科省はそれをOECD(経済協力開発機構)などの国際的動向に合致するとしています。 しかし、OECDがめざす学力は、「社会的不平等の削減」などを担う人間の育成をふくんだもので、国際競争に勝つための人づくりを狙いとする今回の改定案とは異なります。しかも、「基礎」と「活用」を機械的に分離して教え込み、かえって学習の質を低下させる危険があります。