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【報告書】

市町村国保にたいする都道府県の独自支出金の調査結果について

2010年5月21日 日本共産党政策委員会


 日本共産党中央委員会は、2010年3月から4月にかけて、全国の都道府県を対象に、市町村が運営する国民健康保険(市町村国保)の特別会計への「独自支出金」(法律に定めがなく、都道府県が独自の条例や要綱等にもとづいて支出しているもの)の実態を調査しました。調査は、厚生労働省が毎年公表している「国民健康保険事業年報」の調査項目に該当する金額の速報値を集計するもので、全国の都道府県ならびに日本共産党の都道府県委員会をはじめとする方々の協力をえて実施しました。調査結果の整理・分析にあたっても、聞き取りや各種資料の分析をおこないました。関係各位に改めてお礼を申し上げます。

 調査結果の特徴、ならびに調査に関連して判明したことを下記の通りご報告します。

1 「独自支出金なし」の県は、10年間で9県から34道府県へ大幅に増加しました。

 2007年度以前の「国民健康保険事業年報」の金額(決算ベース)に、今回の調査でえられた2008年度(決算)、2009年度(予算)、2010年度(当初予算)にもとづく数値をくわえ、別添のグラフと2つの表を作成しました。

 2000年度には9県にすぎなかった、「市町村国保」会計への「独自支出金なし」の県の数は、2010年度当初予算の段階では、34道府県にまで大幅に増加しています。

 また、市町村国保の特別会計にたいする全都道府県の「独自支出金」総額も、2000年度には321億8826万5千円あったところ、2010年度当初予算では84億1826万4千円でした。10年間で約4分の1への落ち込みです。歴史的にみても、2010年度の水準は、過去最高だった1996年度の540億6334万8千円にくらべれば16%にすぎません。とくに革新都政以来、「独自支出金」の規模がずば抜けていた東京都は大きく落ち込み、1970年度よりも少なくなっています。

 社会保障きりさげの「構造改革」のなかで、国保料(税)の住民負担をおさえるなどの役割をはたしてきた、都道府県の市町村国保会計に対する支援の大きな後退が明らかになりました。

2 子ども、高齢者、障害者、ひとり親家庭などの医療費助成制度にたいする国のペナルティから市町村を守る独自支出金を廃止した県が広がっています。

 都道府県の「独自支出金」の後退という調査結果の具体的な内容を分析するなかで、深刻な実態も見えてきました。子ども、高齢者、障害者、ひとり親家庭などへの医療費助成制度など、福祉医療をささえる「独自支出金」の縮小・廃止の広がりです。

 国は、医療費の窓口負担を軽減すると医療給付費が増えるという口実で、福祉医療を実施している市町村の国民健康保険会計にたいする国庫負担を削減する「ペナルティ」をもうけています。この「ペナルティ」をきっぱりと廃止させることが国民共通の第一の要求であることは言うまでもありません。

 同時に、その「ペナルティ」があるもとでは、都道府県が実施する福祉医療制度によって市町村国保会計がこうむる「ペナルティ」については、その一定割合(多くは2分の1)を都道府県が負担することが、従来は広くおこなわれてきました。ところが、少なくない県で、このような市町村国保会計にたいする支援制度が廃止・縮小されていました。

 たとえば、2010年度当初予算でも、大阪府は福祉医療にともなう市町村国保会計に対する支援を実質的に半減しています。一方で、山梨県では、住民の世論と運動、日本共産党の県議団のとりくみもあり、08年度から、県の福祉医療の改善(「償還払い」から窓口無料化へ)にあわせて、独自支出金を大幅に増加させています。

 子どもの医療費無料化の対象拡大などの改善はあっても、近年の「構造改革」のなかで、都道府県の福祉医療は大幅に後退しています。くわえて、都道府県が福祉医療をつづけている場合でも、国の「ペナルティ」から市町村の国保を守るという、都道府県として当然の役割まで廃止・縮小されていることに、大きな危惧を抱かざるをえません。

3 「三位一体改革」で、それまで国がはたしてきた役割が都道府県におしつけられ、都道府県の独自の役割は後退しています。

 今回の調査であきらかになったことは、「三位一体改革」のなかで、国民健康保険においても、これまで国がはたしてきた役割が都道府県に押しつけられる中で、都道府県が独自にはたしていた役割が廃止・縮小され、市町村へとしわよせされているということです。その矛盾は、結局は、高い国保料(税)のいっそうの値上げなど、住民にむかっています。

 都道府県が「独自支出金」を廃止・縮小している理由は、「財政難」などを口実とした「構造改革」だけではありません。国からの「税源移譲」のかわりに、2003年度・2005年度から、都道府県にも、市町村国保にたいする法定の支出金がつくられ、拡充されたことも、少なくない県で、法定外の「独自支出金」を廃止・縮小した理由にあげられていました。

 しかし、市町村国保にたいする法定の都道府県支出金の基本的な性格は、それまで市町村国保の特別会計で国が負担していた部分を、都道府県に肩代わりさせるものです。国保料(税)の水準をおさえるなど、「独自支出金」がはたしていた役割のすべてを、新しくつくられた法定の都道府県支出金によって置き換えることはできません。

 国民健康保険の再生をめざすためには、国庫負担の引き上げが一番肝心であり、私たちも強く求めています。同時に、今回の調査結果のように、都道府県による独自の支援が弱まっていることも重大です。都道府県にもふさわしい役割の発揮を求めます。

表・グラフ(PDFファイル)


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