日本共産党の志位和夫委員長は九日、「イラクにかんする国連安保理新決議と、多国籍軍への自衛隊の参加について」と題する談話を発表しました。
一、国連安全保障理事会は、九日午前(日本時間)、新しい決議一五四六を採択した。決議では、イラクへの「完全な主権の返還」、イラクの新政権樹立へのプロセスで国連が「主導的役割」をはたすことなどが明記された。また、米英を中心とする占領軍の駐留期限についても言及された。
これらの規定には、国連主導の枠組みでのイラク復興支援、そのもとでのイラク国民の意思にもとづく新政府の樹立という、国際社会の願いが反映されている。
一、しかし、決議で明記されたこれらの原則の今後の実施過程を展望すると、そこには非常に多くの問題が存在している。
――何よりも、イラクでは米英軍を中心とする占領軍と、それに抵抗する勢力との戦争が継続中である。この間の、占領軍による軍事弾圧や拷問・虐待にたいして、イラク国民はきわめて強い怒りと抵抗を広げている。
――戦争の一方の当事者である米英軍が、多国籍軍と名称を変更して駐留をつづけ、この軍隊にたいして、決議は、「イラクにおける安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる権限をもつ」としている。さらに、米英軍の軍事作戦にたいして、イラク側の拒否権が保障されていない。
――この間発足したイラク暫定政権の構成は、アメリカの意向を色濃く反映したものとなっており、イラク国民の多数がこれをみずからを代表する政権とみなしていないという状況がある。
こうしてイラク情勢の今後の展開は、予断をもってのべることができない複雑さと困難さをもっている。安保理決議で明記された原則が名実ともに実施されるためには、イラクに戦火と混乱をつくりだした元凶であるアメリカが、その軍事行動を強く自制しつつ、すみやかに撤退にむかう措置をとることが、必要である。わが党は、新しい国連安保理決議の採択にあたって、このことを強調するものである。
一、小泉首相は、日米首脳会談において、イラクにおける多国籍軍に自衛隊を参加させる方針を事実上表明した。これは、イラク情勢の前向きの打開にとっても、日本国憲法にてらしても、有害で危険なものである。
政府はこれまで、「国連軍(多国籍軍)の任務・目的が武力行使を伴う場合には、自衛隊の参加は憲法上許されない」との見解をのべてきた。「反連合軍・反イラク勢力との戦争を遂行すること」(連合軍機関紙)を自らの任務とする米英中心の多国籍軍への参加は、従来の政府見解にてらしても憲法違反以外の何ものでもない。
わが党は、自衛隊のイラクからのすみやかな撤退を、強くもとめるものである。