標準色 | 白黒反転 |
2010年6月19日
【目次】
参院選公約
“アメリカ・財界いいなり”から「国民が主人公」の政治への転換を
――そうしてこそ「政治を変えたい」という願いが生かせます
2010年参議院議員選挙にのぞむ日本共産党の政策集
民主党は、参院選公約で、消費税増税を打ち出し、菅首相は10%に引き上げると言いだしています。それと同時に、法人税の減税を公約しました。「財政が大変だ」といいながら、さらに大企業への減税で財政に大穴をあけ、それを消費税増税で穴埋めするなど、とんでもない話です。軍事費と大企業・大金持ち優遇税制という「2つの聖域」にメスを入れれば、財源はつくれます。
経済産業省の「産業構造ビジョン2010」では、法人税の実効税率(地方分を含む)を40%から25〜30%に引き下げるとし、経済産業大臣は、来年度にも5%引下げを提案しています。
財界は、「成長戦略」の大きな柱として、法人税減税を要求しています。しかし、いま法人税減税で恩恵を受けるのは、経済危機の中でも巨額の利益をあげている大企業です。法人税減税は「強い企業をさらに強くする」という、従来の経済政策を繰り返すものです。これらの企業は、これまでも自民党政権のもとで実施された減税の恩恵を受けてきましたが、その利益は内部留保を増やしただけで、国民には回らず、日本経済の成長にもつながりませんでした。菅首相は、一部の大企業のもうけだけを増やした自民党政権の経済政策を「第二の道」といって批判しておきながら、まったく同じ道を進もうとしています。
実効税率を5%引き下げたら3兆円、15%引き下げたら9兆円も税収が減ってしまいます。ただでさえ大変な財政に、ますます大きな穴があいてしまいます。「減税すれば景気がよくなって、逆に法人税収が増える」などというのは、とんでもない幻想です。減税の恩恵が集中するのは一部大企業だけで、日本経済全体がよくなるわけではありません。この20年間、大企業には減税が繰り返されてきましたが、税収は一番景気が良かった時期でも20年前を下回ったままで、いまでは3分の1にまで減ってしまっています。このうえ大企業に減税すれば、ますます財政が悪化することは必至です。
財界が法人税減税とセットで消費税増税を主張するのは、財政の穴埋めが必要だからです。最大9兆円もの穴を埋めるためには、消費税率にして4%もの増税が国民に押しつけられることになります。菅首相は「消費税を増税しても、使い方を間違えなければ景気は悪化しない」などといいますが、大企業のためこみ利益を増やすだけの減税の穴埋めに充てるのが、「正しい使い方」だとでもいうのでしょうか。苦しい家計に増税を押しつけて、巨額の内部留保を抱える大企業に減税の大盤振る舞いをする―これで景気がよくなるとでもいうのでしょうか。
消費税は、低所得者ほど負担が重い税金です。生活保護を受けている人にも、「派遣切り」にあった人にも、消費税は容赦なく課税されます。消費税の増税は、社会的格差をますます拡大することになり、断じて認められません。ましてや、大企業減税のツケ回しで消費税を増税することなど、絶対に許せません。
民主党政権は、消費税増税のための「超党派協議」を提唱し、増税「大連立」をめざしています。「みんなで渡れば怖くない」というのです。日本共産党は、国民のみなさんと手を結んで、この増税策動をやめさせるためにがんばります。
軍事費を1兆円削減する……軍事費は減るどころか、今年度予算ではさらに増え、とりわけ、グアム移転や「思いやり予算」などの米軍関係経費は3370億円と、過去最大にふくれあがっています。米軍経費をはじめ、憲法違反の海外派兵経費、海外派兵のための装備や訓練経費を削減します。
大型開発にメスを入れる……公共事業予算は全体では大幅に削減されましたが、3大都市圏環状道路などの大型公共事業に予算が集中し、そのあおりで、耐震対策や危険個所の補修など安全に関わる事業や、暮らしに密着した事業が後回しにされています。これでは「コンクリートから人へ」に反します。大型開発にメスを入れ、不要不急の事業を中止・延期します。
高速道路無料化を中止する……高速道路無料化に何千億円、何兆円もの税金を注ぎ込んだり、その税金を道路建設に流用したり、民主党政権の迷走に国民はあきれています。地球温暖化対策にも逆行する高速道路無料化は中止し、高速道路料金のあり方は、鉄道や海上輸送などの公共交通との関係も含めて総合的に検討します。
あらゆる歳出の浪費を正す……官僚の天下りを禁止し、政官財の癒着や特権にメスを入れて、予算の浪費をただします。民主党が「事業仕分け」でも聖域にした高速増殖炉「もんじゅ」をはじめ、危険な原発推進予算にもメスを入れます。使い道が不明のまま積み立てられており、選挙目当てのばらまきに使われかねない「経済危機対応・地域活性化予備費」1兆円も、国民の暮らしのための財源として活用します。
政党助成金をただちに廃止する……国会議員の歳費総額をはるかに上回る、年間320億円もの血税を政党が分け取りする政党助成金は、ただちに廃止します。
これらの歳出の改革で、当面4兆円の財源確保が可能です。
所得税の最高税率を元に戻す……イギリスでは、40%だった所得税の最高税率がこの4月から50%に引き上げられ、アメリカでも最高税率の引き上げが提案されています。日本では所得税の最高税率が50%から40%に引き下げられたままです。会社役員などの場合は青天井の給与所得控除5%がありますから、実質的な最高税率は38%(95%×40%)にしかなりません。最高税率(課税所得3000万円超)を元の50%に戻し、給与所得控除に頭打ちを設けるなど、高額所得者に応分の負担を求めます。
証券優遇税制を廃止する……日本では、所得税は累進税率になっているはずなのに、所得が1億円を超える層では逆に税負担率が下がってしまいます。富裕層に多い株取引による所得への税率が、所得税・住民税あわせて10%に軽減されているからです。アメリカ(ニューヨークの場合で27.6%、さらに5%引き上げが提案されています)、ドイツ(26.4%)、フランス(30.1%)、イギリス(42.5%)などと比べてあまりにも「金持ち優遇」です。証券優遇税制をただちに廃止し、税率を本来の20%に引き上げます。将来的には総合課税とすることを基本とし、それまでの間も、欧米諸国の水準にあわせて30%以上に引き上げをはかります。その際、庶民の少額の投資には大資産家とは区別して税負担の軽減をはかります。
相続税の最高税率を元に戻す……社会的格差を是正する意味でも、相続税や贈与税の最高税率(50%)を、03年に引き下げられる前の70%に戻します。
大企業の法人税を段階的に引き上げる……資本金10億円以上の大企業の税率を、段階的に97年の水準に戻すとともに、研究開発減税などの大企業優遇税制をあらためます。海外進出企業を特別に優遇する税制の仕組みをあらためます。
これら、大資産家や大企業に応分の負担を求める税制改正を実施すれば、当面は3〜4兆円の税収にしかなりませんが、リーマンショック以前の水準にまで景気が回復すれば、7〜8兆円規模の増収を見込むことが可能です。
ギリシャの財政危機をきっかけに、「日本の財政は大丈夫か」という不安の声が起きています。もちろん、海外投資家による国債保有額がGDPに匹敵するギリシャと、その10分の1以下の日本とを同列において、「明日にも財政が破たんする」というような議論は正しくありません。しかし、このまま国の借金が増え続ければ、国内の資産だけでまかなえなくなって、ギリシャのように海外に頼るような事態になりかねません。計画的に政府債務の増加を抑制していくことが必要です。
歳出・歳入の無駄をただす政策を実行すれば、消費税増税に頼らなくても、当面年間7兆円程度、景気回復後には12兆円程度の財源が見込めます。景気改善によって税収の落ち込みが回復することとあわせて、社会保障の拡充などに必要な予算を確保したうえで、毎年の財政赤字額を着実に縮小していくことが可能になります。
しかし、足元の財政赤字の大きさ(10年度44.8兆円=内閣府試算)を考えると、その改善にはかなりの長期的な見通しを持つことが必要です。暮らしを守る経済成長戦略を進めて、さらに大きな財源を確保すれば、財政危機から脱却する道が開けます。一時的には国・地方の長期債務残高がGDP比で200%に達する可能性がありますが、その後着実に減少させることが可能です。
安定した雇用と、それを守る労働のルールは、国民の暮らしと健全な社会の基盤であり、長年続いている国民所得の減少に歯止めをかけ、家計と内需主導の経済成長をはかるうえでも最重要の課題です。
労働者派遣の原則自由化をはじめ、相次ぐ労働法制の規制緩和によって、非正規雇用が働く人たちの3人に1人、若者と女性では2人に1人にまで広がり、年収200万円にも満たない労働者が1000万人を超えています。OECDの調査では、日本は貧困層の8割以上が働いており、平均の63%を大きく上回る“ワーキングプア大国”になっています。非正規雇用の増大は、働く人たち全体の賃金を抑制し、引き下げる効果ももたらしています。
国民の暮らしを守るためにも、日本経済の成長を実現するためにも、非正規から正規への雇用の転換を、雇用政策、経済政策の柱として位置づけ推進します。
その中心になるのが、労働者派遣法の抜本改正です。しかし、政府が先の国会に提出した「改正」案には二つの大きな抜け穴があり、「使い捨て」の働かせ方は現状と何ら変わらないものになっています。
一つは、「製造業派遣の原則禁止」と言いながら、「常用型派遣」を「例外」にしていることです。派遣会社が「1年を超えて雇用する予定」といえば、2カ月を超える雇用契約を反復させることも「常用型」だというのですから、派遣労働の実態は何ら変わりません。もう一つは、「登録型派遣の原則禁止」と言いながら、「専門業務」を「例外」にしていることです。「専門業務」は政令で定められていますが、パソコンなどの「事務用機器の操作」やビルの受付、駐車場管理など、名ばかりの「専門業務」が多数含まれています。
日本共産党は、政府案の大穴をふさぎ、「使い捨て」の働かせ方を規制し、派遣労働者から正社員への道を開く、抜本的な改正をすすめる修正案を国会に提出しました。この実現をめざします。
数カ月〜1年単位の雇用契約を繰り返す「細切れ雇用」をなくすために、期限の定めのある雇用契約は合理的な理由がある場合に限定する、非正規と正規の不当な差別や格差をなくすために均等待遇の原則を確立するなど、非正規労働者の雇用と権利を守ります。
勤労者世帯の年収は、1997年をピークに平均で92万円も減少しています。需要が落ち込み、「デフレから抜け出せない」という悲鳴があがるのも当然です。減らされた所得を取り戻すことなしに暮らしも経済もよくなりません。
労働者の賃上げは、日本経済の前途を考えても、社会的な大義あるたたたかいであり、日本共産党は、労働組合をはじめ賃上げを求める運動と連帯してがんばります。同時に、賃金底上げのための政治の課題として、二つの取り組みをすすめます。
最低賃金の引き上げ……全国一律の最賃制を確立し、当面、時給1000円以上を目標に大幅に引き上げます。日本の最低賃金は全国平均713円で、先進国で最低水準です。財界系のシンクタンクも「最低賃金の引き上げは最大の成長戦略」「国民の購買力が高まれば需要が増え、雇用も拡大する」(富士通総研)というレポートを出しています。中小企業への賃金助成や振興策とあわせてすすめます。
国と自治体に賃金底上げの公的な責任をはたさせる……国や自治体の職場で、派遣や契約などの低賃金、不安定雇用が大きく拡大し、保育士の半分近く、公立図書館では6割が非正規とされています。国や自治体が、非正規雇用拡大と国民の所得減らしの先頭に立つことは許されません。賃金の引き上げと労働条件の改善こそすすめるべきです。
国や自治体が発注・委託する事業で、低賃金を押しつけるために生まれている「官製ワーキングプア」を是正します。公契約に生活できる賃金と人間らしく働くことができる労働条件を定めるようにし、そのための公契約法(条例)の制定をすすめます。
企業犯罪である違法な「サービス残業」を根絶し、残業の上限を法律で制限し、残業代の割増率を50%に引き上げるなど、過労死や「心の病」を広げている長時間・過密労働をなくします。“1人に2人分働かせる”ような長時間労働を是正すれば、新規雇用の創出にもつながります。
学生・高校生に「氷河期の再来」という深刻な就職難が襲いかかっています。日本共産党は、「新卒者の就職難打開へ――社会の第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」を発表しており、その実現に力をつくします。
新卒者への求人と雇用を増やすためにも、非正規から正規への雇用の転換、長時間労働の是正、公務・公共分野での非正規化の中止、社会保障の拡充や環境重視への政治の転換による雇用創出が必要です。
就職活動の早期化・長期化は、学生の重い負担になっているだけでなく、「ゼミが成立しない」など大学教育にも大きな弊害をもたらしています。面接解禁日の設定や卒業後3年間は「新卒扱い」とするなど、学業と両立できる「就活ルール」をつくります。奨学金返済猶予制度の拡充や経済的負担の軽減などの支援策もすすめます。
雇用保険を抜本的に拡充する……失業者の約7割が雇用保険の失業給付を受けていません。ドイツやフランスは10%台ですから、日本ほど失業者に冷たい国はありません。
失業給付期間を、現行の90〜330日から180〜540日程度まで延長する、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、離職理由による失業給付の差別をなくし、3カ月の待機期間をなくすなど拡充します。失業給付期間が切れても再就職できず、生活が困窮している失業者への生活扶助制度を創設します。
公共職業訓練所の統廃合をやめ、充実・強化する……公立の職業訓練校の削減に続き、「事業仕分け」によって、国の責任で行われてきた職業訓練所も大幅に削減されようとしています。希望するすべての失業者、新卒未就職者に職業訓練の機会を提供できるように公共職業訓練所の削減をやめるとともに、技術や技能、資格を取得できるよう訓練内容もふくめて充実します。
リーマンショックから2年近くが経過したものの、多くの中小企業・自営業者の実感は景気回復には程遠く、「とにかく仕事が欲しい」「久しぶりに仕事があったが、単価を2割も下げられた」など、厳しい状況が続いています。今こそ、日本経済の「根幹」である中小企業を本格的に支援する政治への転換が必要です。
大企業の横暴を規制するルールをつくることは、単に中小企業への不当な圧迫をやめさせるだけではなく、中小企業の適正な利益を確保することを通じて、日本経済全体の健全な成長に道をひらくものです。
下請取引を適正化し、「単価たたき」など不公正な取引をやめさせる……「申告待ち」「書面調査頼み」の受動的な下請検査から、主導的に検査するしくみに転換し、「下請Gメン」など検査官を増員します。罰金の大幅引き上げ、親会社の挙証責任の強化、振興基準の実質化など、下請2法の改正・強化をすすめます。
「優越的地位の濫用」をなくすため、独占禁止法を強化する……大規模小売業者と納入業者の取引や荷主と物流業者との取引など、下請取引以外での不公正取引が横行しています。独占禁止法の厳格な運用や課徴金の引き上げなどの改正・強化によって、「優越的地位の濫用」をなくします。
大型店の身勝手を許さないルールをつくり、商店街・小売店を活性化する……大型店の出店等による影響を事前に調査する「大店・まちづくりアセスメント」を義務づけるとともに、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。「フランチャイズ適正化法」を制定し、加盟店の自営業者としての営業と権利をまもります。
実体経済を支える金融に転換し、中小企業の経営を支えるルールをつくる……短期のもうけを最優先するアメリカ型の金融自由化路線を見直します。「地域金融活性化法」を制定し、中小企業など実体経済を支える金融に転換します。信用保証制度などを改善し、政策金融本来の役割を果たさせます。
中小企業予算を1兆円に増額し、経営支援を抜本的に強化する……現在2000億円足らずの中小企業予算を1兆円程度に増額し、経営支援を抜本的に強化します。省庁ごとに縦割り・細切れの支援制度を整理・拡充し、申請手続等の負担を軽減します。区市町村に「中小企業センター」をつくり、技術支援、製品開発、販路開拓など国の支援を強めます。
経済循環の核である中小企業を支援する……農商工連携のとりくみを支援し、地元農水産物の活用をすすめます。地場・伝統産業の特殊性に応じた「振興計画」をつくり、製品開拓や販路開拓などへの支援を強めます。環境・再生可能エネルギー開発・福祉など、社会的ニーズにこたえた中小企業のとりくみを応援します。
商店街・小売店を「地域の公共財産」と位置づけ、国の支援を強めます。600万人に達するといわれる「買い物弱者」(買い物難民)をなくすため、移動販売車への補助、商店街・小売店への移動手段の確保などを行います。「ライフ・エリア」(小学校区など)を単位に、生鮮3品を買える店舗、学校、医療機関、保育施設、官公署、公共交通などを整備します。
生活密着型公共事業への転換をすすめ、公契約法・条例で人間らしい労働条件を保障する……保育所・特養ホームの建設、学校・道路・橋梁の耐震補強や維持補修など生活密着型の公共事業に転換します。中小企業向け官公需を増やし、分離・分割発注をすすめます。自治体の住宅リフォーム支援のとりくみを応援し、「小規模工事希望者登録制度」の活用を強めます。入札制度の改善をすすめ、ダンピング競争をなくします。千葉県野田市などの実践例を参考に、生活できる賃金などを保障する公契約法(条例)を制定します。
創業・開業を応援し、後継者育成、人材育成への支援を抜本的に強化する……積極的な創業・開業を応援し、研究機関等との連携をすすめます。中小企業にとって最大の財産は「人」です。後継者育成、人材育成への支援を抜本的に強化します。
中小企業を支援する税制・税務行政に転換する……消費税増税に反対し、免税点の引き上げを行います。家族従事者に支払った賃金を必要経費として認めない所得税法56条の廃止、法人税の累進制の強化、中小企業の事業承継に関連した相続税の減免、商店街・町工場の固定資産税負担の軽減措置などをすすめます。先進国では当たり前の「納税者憲章」を制定し、納税者の権利をまもります。生存権的財産の差押はやめ、分納を認めます。
国保料をはじめとする中小企業の負担を軽減する……過剰な負担となっている国保料を緊急に1人1万円値下げするとともに、国庫負担を復元して、誰もが払える国保料をめざします。脅迫まがいの督促や差押など、人権無視の国保行政をあらためます。国保組合の国庫補助をまもり、負担軽減の取り組みを応援します。社会保険料の猶予・軽減制度を整備し、経営難の事業所が必要な公的支援を受けられるようにします。
「中小企業憲章」の理念に沿って、中小企業基本法などを見直す……政府は、6月18日、「中小企業憲章」を閣議決定しました。これは、中小企業への国の基本姿勢を明確にするもので、経営者・自営業者のねばり強い運動が政治を動かしたものです。もちろん、「憲章」をつくって終わりでは意味がありません。現行の中小企業基本法は、日本共産党以外のすべての政党が賛成した1999年の改悪で市場原理主義に基づくものにされたため、抜本改正が不可欠です。また、一内閣の閣議決定で終わらせるのではなく、全会一致の国会決議で国の基本姿勢を明確化すべきです。さらに、「憲章」の基本理念に沿って、中小企業施策の抜本的な改善をすすめます。総理大臣のもとに、中小企業の代表等が参加する「中小企業政策会議」をつくり、横断的な中小企業施策をすすめます。
地方自治体で「中小企業振興条例」を制定し、地域独自の活性化策をすすめる……地域経済活性化策の中心に中小企業をすえる「中小企業振興条例」を制定します。地域の中小企業の実情をつかみ、全庁的・横断的な施策を行うために、「全事業所実態調査」を実施します。経営者、地元金融機関、学識経験者などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業が「主役」となるとりくみをすすめます。
この20年間で、東京都大田区では製造業の事業所が42%減少し、大阪府東大阪市でも40%減少するなど、日本の町工場は危機的状況に追い込まれています。
日本共産党は、業者・町工場と共同して、借工場の家賃など固定費への補助を求めてきました。民主党政権は、当初は消極的でしたが、4月16日、中小企業の機械設備のリース代の支払猶予に応じるように通達を出しました。これも、業者・町工場の声が政治を動かしたものです。今後、同通達を活かしてさらに活用を広げるために、遅延損害金を求めないこと、遅延しても合意なくリース物件を引きあげないことなどが必要です。
さらに、「日本の宝」である町工場を守るためには、支払猶予にとどめず、リース代や借工場の家賃補助など直接・緊急の支援を行います。
民主党政権が目玉とする戸別所得補償は、水田を対象にしたモデル事業がスタートしましたが、期待を裏切っています。所得補償の水準が低すぎ、しかも米価の暴落は放置したままです。転作作物への補償を全国一律にしたうえで、米粉・エサ用米以外の転作作物の補償水準を大幅に引き下げました。しかも、日米FTA(自由貿易協定)、日豪EPA(経済連携協定)など輸入自由化の推進と一体とされています。自公政権と同様に、農業予算全体の削減を続けたため、農業振興にさまざまな弊害がうまれています。
日本の食料自給率はわずか41%と、先進国の中でも異常な低さです。“お金を出せば世界中から食料を買い集めることができる”という時代はとっくに終わっているのに、このような農政では日本農業も国民の食料も守れません。経済・社会の基盤である食料の安定的な確保のために、当面、食料自給率の50%台への回復を最優先の課題とします。その達成に向けて、「日本共産党の農業再生プラン」(08年3月)や農業再生への党の見解(10年4月)で提案した施策の実現をめざします。
4月に発生し依然として被害が拡大している口蹄疫は、戦後最大の畜産被害をもたらすなど、宮崎県をはじめ全国の畜産の根幹を揺るがす事態です。
口蹄疫対策の基本は、感染家畜の殺処分と埋却の迅速な実施です。国の責任で、獣医師と要員の確保、口蹄疫対策特別措置法の趣旨にそった埋却地の確保をすすめます。全国の未発生地域においても大規模畜産農家を中心に埋却予定地の確保を、都道府県の協力を得ながら早急に行います。交通機関によるウイルスの拡散を防ぐには、一般車両を含めて車両消毒の徹底を行い、それによる渋滞の発生を防ぐために,消毒ポイントを多数設置し、必要な要員を配置します。全国の畜産農家に消毒機材と消毒剤を配布し、予防措置を徹底します。
被害畜産農家の経営再建は、待ったなしの課題です。口蹄疫対策特別措置法による支援措置は、実行に手間取っており、早急な実施を図ります。また、口蹄疫対策特別措置法の経営再建対策は融資中心であり,多額の負債を抱えている畜産農家の現在の経営実態に合いません。国による経営再建に向けた直接補助を実施します。
いま口蹄疫はアジア全体で発生し,日本に侵入する可能性は絶えずあります。症状がでた家畜をいち早く処分し,迅速な防疫措置をとれるよう、システム整備がすすんでいるイギリスなどを参考に農家や獣医が直接国に通報する情報ネットワークを早急に確立します。
口蹄疫の検疫は,従来,生きた家畜と肉製品が中心ですが、飼料の稲ワラなどの検疫も強化します。また、アジアにおける口蹄疫の押さえ込みのために国際協力を強化します。
家畜伝染病予防法は,大規模畜産経営が主流となっている現状に合いません。抜本的に改正します。諸外国での対応策を検討し,その先進事例を反映させます。
農家の経営困難を打開する最大の柱は、農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせて実施して再生産を保障することです。当面、米については、農水省調査の全国平均の米生産費(06年〜08年では60kgあたり1万6500円)を基準として、その年の販売価格の差額を農家に補てんする「不足払い制度」を導入します。あわせて、水田のもつ洪水防止や水質浄化など国土や環境をまもる役割を評価して、10アールあたり1〜2万円の所得補償を実施します。これによって、全国平均60kg当たり1万8000円前後が保障されます。これらの保障の水準は、全国一律ではなく、地方の条件を踏まえて行います。
緊急の対策として、09年産生産者米価の今以上の値下がりを避けるため、市場にだぶついている米30万トン以上を政府が適正な価格で緊急に買い入れます。下落のもう1つの原因である大手流通企業の買いたたきを規制するルールづくりを進めます。
食料自給率向上のため、水田の多面的利用をすすめ麦・大豆・飼料作物などの増産をめざします。農家が自主的に選択でき、安心して生産に取り組めるよう、転作助成、保障価格の引き上げ、増産を促しながら輸入から国産への切り替えなどを進めます。
地域の条件に応じた畑作物、畜産、果樹、野菜など多様な農業が、豊かな食生活と地域経済を支えてきました。それぞれの生産や流通・加工の実態にそくして価格保障(野菜・果樹などの価格安定・支持、サトウキビ、大豆、麦などの内外価格差是正、牛乳や肉畜、子畜にたいする価格補てんなど)と所得補償を導入・拡充します。
多様な家族経営の維持を担い手対策の中心にすえ、農業を続けたい人すべてを応援します。地域農業の重要な担い手であり、高齢者・離農者などの農地や農作業を引き受けるなど、大規模農家や生産組織などが果たしている役割を正当に評価して、支援を強めます。
後継者をふくむ新規就農者への「月15万円を3年間」の支給を柱とする「新規就農者支援法」の制定、林業、漁業の新規就業者への支援制度の創設に取り組みます。農林漁業の新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農家、漁業者、林業経営者や、農業生産法人や森林組合、漁協にたいする援助も強化します。他地域から移住しての就業希望者にたいし、農地や住宅の斡旋、低利資金の提供、技術・経営を身につけるための教育・研究機関の強化、就業しようとする人のための農地、林地、船などの確保に国の支援を進めます。
農業に壊滅的な打撃を与える日豪EPAや日米FTAには、断固反対します。WTO農業協定は根本から見直し、関税の維持・引き上げなど実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールを、確立します。輸入機会の提供にすぎないのに、「義務」的に実施されているミニマムアクセス米の輸入を中止します。一般産品として自由化されてきた林産物、水産物についても輸入野放しをやめ、環境や資源循環を守る立場から輸入を規制し、国内の林業・水産業の振興を保障する貿易ルールをめざします。
都市の農業は、都市住民にとって、新鮮な食料・農産物を消費者の食卓に供給するもっとも身近な存在です。都市計画に農業・農地を位置づけ、現に農業が営まれている農地の相続税・固定資産税は、農地課税・農地評価を基本とし、作業場なども農地に準じた課税とします。当面、生産緑地の指定を拡大し、相続税猶予の条件を緩和します(詳細は2010年5月7日発表の「日本共産党の都市農業振興政策」を参照)。
期限切れとなる条件不利な中山間地農業への直接支払い制度を継続し、指定の条件を緩和します。さらに法律で恒久化し、補償水準を拡充します。一定の生活エリアに日常生活の諸施設を備えた「山の駅」(仮称)を設置するなど、山村・過疎地域の生活条件を改善する拠点づくりをすすめます。
鳥獣被害への対策を強化し、生態系の実態調査などに国が積極的な役割をはたします。
農業の再生や食料自給率の回復には、長期の見通しによる計画的な取り組みと関連予算の思い切った増額が不可欠です。現状の生産水準を前提として、農家が安心して生産に取り組める水準の価格保障・所得補償の実施には4千億円の追加が、食料自給率50%をめざした増産には、この4千億円を含めて約1兆円の追加予算が必要です。現在の国の予算規模を前提にしても、農業予算の割合を10年前の水準に戻せば可能です。
わが国の森林は、年間需要量に匹敵する成長量がありながら、木材の自給率は24%程度に過ぎません。森林・林業を再生するため、間伐助成の拡充と作業路網の整備によって健全な森づくりをすすめ、住宅への地元産の木材使用への補助、公共施設建設への地元産木材の使用などで国産材の需要を拡大し、地場産業を活性化します。間伐材や廃材を利用したバイオ燃料の生産と供給など森林資源を活用して、新たな仕事と収入を生み出します。
魚場の環境を悪化させる開発の規制を強めるとともに,も場や干潟の保全・回復など漁業資源の回復・増大をはかります。生産コストに見合う水準での魚価と水産物価格の安定をはかり、漁業者が操業を持続できるよう「調整保管」などを活用した価格の下落防止と所得補償の実施、大手量販による生産コストを無視した買い叩きの規制、適切な輸入管理を実施します。資源回復のための休業や生産協定にたいする助成を強めます。
後を絶たない「食の安全」問題を打開するには、食品に関する検査体制をただちに強化するとともに、根本的には食料自給率を抜本的に高めることが必要です。
BSE(牛海綿状脳症)対策がずさんなアメリカ産牛肉の輸入規制を緩和すべきではありません。BSE対策の全頭検査を維持するなど食に関する信頼を高めます。
農水産物と産直・食品加工、製材業と住宅建設などで、食と住にかかわる安全・安心の生産・流通を築くことを通じて、農林漁業者・関連業者と消費者の共同を広げ、地域の再生をすすめます。
菅首相は「強い社会保障」にするといいますが、それならば、自公政権の社会保障費削減路線が残した「傷跡」を治し、改悪された医療・年金・介護・福祉制度を立て直すことが第一の課題となるはずです。ところが、菅政権は、後期高齢者医療制度の廃止を先送りし、年金・介護制度の立て直しにも背を向けています。障害者自立支援法の“延命”につながる「一部改正案」を自民党、公明党と一緒になってゴリ押ししようとしました。これでは、社会保障は弱体化したままです。日本共産党は、自公政権の削減路線が生みだした数々の「負の遺産」をすみやかに是正し、社会保障を削減から拡充へと転換します。すべての国民に生存権を保障し、社会保障の増進を国の責務とした憲法25条の立場から、医療・年金・介護をはじめ社会保障の各分野で、負担軽減と不安の解消をすすめます。
「保険証1枚」あれば、だれでも、どんな病気でも医療が受けられるという「国民皆保険」の原則に基づき、医療制度を土台から建て直します。
後期高齢者医療制度をすみやかに廃止する……公約を破って後期高齢者医療制度を温存し、保険料値上げなど制度の害悪を拡大しつづける民主党の裏切りに、国民の怒りが広がっています。しかも、民主党政権が2013年度の導入を検討している「新制度」案は、65歳以上の高齢者を現役世代と「別勘定の国保」に加入させ、負担増や差別の対象を「75歳以上」から「65歳以上」に広げるというものです。差別医療制度の温存・拡大を許さず、すみやかに撤廃して、元の老人保健制度に戻します。
“窓口負担ゼロ”をめざし、負担軽減をすすめる……重すぎる窓口負担に多くの国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起きています。欧州諸国など多くの先進国では、窓口負担は無料または少額の定額制です。日本も1980年代前半までは、健保本人や高齢者は窓口負担が無料でした。保険料は所得などに応じて負担し、必要な医療は平等に保障する――これが公的医療制度の本来の原則です。先進国では当たり前の“窓口負担ゼロ”の医療制度をめざし、その第一歩として、就学前の子どもの医療費無料化制度を国の制度として創設し、75歳以上の高齢者の医療費を無料化します。現役世代の3割負担を健保も国保も、本人も家族も引き下げます。70〜74歳の2割への負担増を撤回し、一律1割負担とします。
高すぎる国民健康保険料(税)を引き下げ、保険証取り上げを中止する……国民健康保険は、加入者の所得が減っているにもかかわらず、保険料(税)がどんどん値上げされ、くらしを圧迫し、深刻な負担となっています。その最大の要因は、1984年以来、国庫負担が削減されてきたことです。国の責任で国保料(税)をひとり当たり1万円、緊急に引き下げます。国庫負担を計画的に復元し、だれもが払える国保料(税)に改革します。
失業や経営難に苦しむ人が、国保料(税)滞納を理由に保険証を取り上げられ、受診が遅れて重症化・死亡する事件が続発しています。生活困窮者からの保険証取り上げをただちにやめさせます。
診療報酬を抜本的に増額する……「医療崩壊」をもたらした大きな要因は、診療報酬の連続削減です。民主党は診療報酬増額を公約していましたが、10年度の診療報酬改定を実質「ゼロ増額」に終わらせ、診療所・中小病院・療養病床などの診療報酬を引き下げました。診療所に経営難を押しつけ、病院淘汰や病床削減を促進する診療報酬改定では、「医療崩壊」は加速するばかりです。診療報酬を抜本的に増額し、地域医療全体を底上げします。安心してかかれる医療体制の再建・拡充をすすめます
医師・看護師を計画的に増員する……先進国で最低レベルの医師数を計画的に増員し、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均並みの医師数にします。そのために医学部定員を1・5倍化し、国の責任で教育・研修・養成体制を整備します。看護師の増員と労働条件の改善で、看護師200万人体制を確立します。
保険で必要な治療が受けられる制度を……保険外診療の拡大をやめて、安全・有効な治療はすみやかに保険適用とする仕組みをつくる、薬・医療機器に偏った報酬のあり方を見直して、医療従事者の労働を適正に評価するなど、診療報酬の改革をすすめ、外来でも入院でも、医科でも歯科でも、保険で必要な医療が受けられるようにします。
国公立病院など公的医療機関への支援を強める……政府は公的医療機関に「採算重視」「コスト削減」を強要し、「不採算」を口実に産科・小児科・救急医療などを率先して切り捨ててきました。民主党政権の「事業仕分け」でも国立病院や労災病院に事業縮小を求める方向が打ち出され、「公立病院改革ガイドライン」による統廃合や病床削減が継続されています。公的医療機関の役割を投げ捨てる政府のやり方をあらため、国公立病院、厚生年金病院、社会保険病院などを地域医療の拠点として支援します。
無年金者が100万人を超え、国民年金だけの受給者の平均月額は4万8千円しかないなど、深刻な無年金・低年金問題を解決し、年金全体の底上げをはかります。
受給条件を「25年以上」から「10年以上」にただちに引き下げる……保険料を原則25年以上納めないと1円も年金が受け取れないという、先進国のなかでも異常な受給資格条件を、緊急にアメリカ並みの「10年以上」に引き下げます。
最低保障年金制度の創設で無年金の解消、低年金の底上げをはかる……全額国庫負担で当面月5万円を保障し、支払った保険料に応じた金額を上乗せする、最低保障年金をすみやかに創設します。民主党政権も「最低保障年金」の検討を始めましたが、その内容は、今の無年金・低年金の人は対象とせず、消費税増税を押しつけ、数十年後に月額7万円の最低保障を実現するというものです。「年金財源」を口実にした消費税増税には反対します。
「消えた年金」「消された年金」問題は国の責任で解決……社会保険庁解体を口実にした責任逃れや体制の縮小を許さず、“被害者を一人たりとも残さない”“一日も早く”という立場で、国の責任で解決します。
高齢者増税を見直し、税・保険料の強制「天引き」を中止……公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻し、所得500万円以下の人には老年者控除を復活します。介護保険料や住民税の年金からの強制的な「天引き」をやめさせ、支払い方法を選べるようにします。
介護保険ができて10年がたちましたが、高すぎる保険料・利用料、増え続ける特養ホームの待機者など、「介護地獄」は解決されず、介護を苦にした痛ましい事件も続発しています。介護保険の国庫負担割合をただちに10%引き上げ、国と自治体による公費負担割合を60%にし、高齢者の経済的負担をおさえながら、介護サービスの充実、家族介護の負担軽減、介護労働者の処遇改善をすすめます。
経済的な負担を軽減し、介護を受けられない人をなくす……国の制度として保険料・利用料の減免制度をつくります。さらに、国庫負担割合を介護保険発足前の50%にまで戻すことで財源を確保し、住民税非課税の高齢者には原則として保険料・利用料を求めない仕組みをつくるなど、お金を心配せず利用できる介護制度をめざします。
「介護とりあげ」をやめさせ、利用制限の仕組みを撤廃する……要介護認定や利用限度額は廃止し、ケアマネジャーやヘルパーなど現場の専門家の判断で必要な介護を提供できる制度に改善します。介護報酬や研修を改善し、ケアマネジャーの独立性・中立性・専門性を確保します。訪問介護、福祉用具の利用制限などの「介護とりあげ」を中止します。民主党政権のもとでも検討が続く「軽度」者の介護保険からのきりすてに反対します。
「介護難民」をなくすため、介護施設を整備する……特養ホームや小規模多機能施設などの整備をすすめ、5カ年計画で、42万人にのぼる特養ホーム待機者の解消をめざします。自公政権が決め、民主党政権でも継続されている療養病床の廃止・削減計画を白紙撤回します。どこでも必要な医療と介護を受けられるよう、医療と介護の連携をすすめます。
介護労働者の労働条件を改善し、人材不足を解消する……生活できる賃金水準の目標を設定し、介護労働者の大幅な賃上げを計画的にすすめます。第一歩として、民主党が前回総選挙で公約した一人4万円の賃上げのすみやかな実施を求めます。人員配置基準の2対1への改善や、介護労働者の正規雇用化など労働条件の抜本的改善にとりくみます。
障害者の福祉・医療の無料化をめざし、応益負担をすみやかに撤廃します。当面4月から始まった低所得世帯の福祉・補装具の無料化を緊急に自立支援医療にも広げます。施設への報酬を日払いから月払いに改め、大幅に引き上げます。障害者施設で働く労働者の賃金を国の責任で月4万円引き上げます。
障害のある子どもたちの成長と発達を保障するために、国・自治体の責任で療育、生活などあらゆる場における施策を充実させます。
国が2013年8月までの制定を約束した障害者自立支援法にかわる新法を、難病や慢性疾患をもつ人、高次脳機能障害、発達障害など、支援を必要とするすべての人を対象とする障害者総合福祉法とするため力をつくします。国と自立支援法違憲訴訟団の「基本合意」、憲法、障害者権利条約にもとづき、基本的人権を尊重する障害者福祉制度を確立します。
障害基礎年金の抜本的引き上げをはじめとした所得保障や就労の保障などを抜本的に拡充します。
貧困解消の総合的施策を推進する……自殺者は毎年3万人を超え、その6割を「無職者」が占めています。判明しているだけで年間100人近くが餓死し、各地で孤独死・行き倒れが急増するなど、貧困の拡大はますます深刻です。生活保護の受給者は1956年以来最高の180万人にのぼりますが、厚生労働省の推計によれば、生活保護基準未満の低所得世帯のうち、実際に保護を受給できているのは15・3%に過ぎません。政府として貧困の実態をさらに調査し、貧困を減らす具体的な目標を策定します。
保護申請の門前払いをやめ、制度改悪を元に戻す……住所の有無や年齢などを理由にした保護申請の門前払いをやめ、生活保護法の本来の主旨にそった行政に転換します。老齢加算の復活をはじめ、自公政権によって改悪された加算・給付を元にもどし、憲法25条の生存権保障にふさわしい制度への充実をはかります。
子育て支援は、仕事と子育ての両立、経済的負担の軽減、「子どもの貧困」の解決など、“子育てがしにくい”という日本社会のあり方への総合的な取り組みが必要です。
人間らしく働けるルールをつくる……残業規制の強化など長時間労働の是正、育児休業制度の改善、妊娠・出産にともなう不当な解雇や退職勧奨、不利益な扱いをなくす、若い世代に安定した雇用を取り戻すなど、子育てしやすい働き方、賃金・労働時間を保障することが大切です。
待機児解消、保護者の負担軽減に……保育所に入れない待機児は5万人。認可外施設やベビーホテルなどに預けられている子どもや保育所への入所を希望している潜在的な待機児童なども含めると100万人近くになるとされています。待機児童を速やかにゼロにするために、当面一年間で10万人分、3年間で30万人分の保育所を国の責任で整備します。それとともに保育士の待遇改善、保育料の負担軽減などのために、年間4000億円程度の財源を確保し、保育制度を充実させます。建設費あわせて、幼稚園の授業料の負担軽減や、希望者全員が入れる学童保育をめざします。
政府・厚生労働省は保育所の面積や職員配置などの国の最低基準をなくし、都道府県の条例にゆだねる「地方主権」改革で規制緩和をねらっています。保育所に対する市町村の義務をなくして保護者と保育所の「直接『契約』・自己責任」にする、保育料に「応益負担」を導入する仕組みに変えることも検討しています。保育への公的責任を後退させ、負担増や格差をもち込む大改悪を中止させ、公的保育を守り、充実させます。
子ども手当を口実とした庶民への増税に反対する……政府は、子ども手当を理由にして、配偶者控除や扶養控除の廃止による増税をねらっています。生計費非課税の原則を踏みにじる増税には反対します。
小学校入学前までの子どもの医療費無料化制度を国の制度として確立し、そこに自治体独自助成を上乗せできるようにして医療費負担軽減を拡充します。
子どもを持つ上での不安のトップはどの世代も、「経済的負担の増加」です(内閣府調査)。なかでも教育費の負担は重く、高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども一人当たり平均1007万円、教育費は年収の34%にのぼり、年収200〜400万円の世帯では48.3%に達します(日本政策金融公庫調査)。高校も大学も無償化していくことは、国際人権規約で定められている世界のルールであり、ヨーロッパでは教育費負担がほとんどかからない国が少なくありません。日本共産党は義務教育、専門学校をふくむ全ての段階で教育費の軽減・無償化をすすめます。
高校教育費の無償化をすすめる……今春始まった「高校無償化」をさらに前進させ、私立高校が入学金等の負担が重いことを考慮に入れ、私立高校も無償化をめざします。当面、年収500万円以下の世帯の無償化など、現行制度の拡充をはかります。低所得層への交通費等の支援の制度をつくるとともに、「無償」措置の年限制限などの不合理な制度を是正します。不登校の子どもの学習への公的支援を強めます。国際条約に基づき朝鮮人学校など外国人学校に無償化措置を適用します。
大学の高学費を軽減する……国公立大学の学費を引き下げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。国公私立の区別なく、年収400万円以下の世帯への学費免除を実施する制度をつくります。各種・専門学校へも学費負担軽減をすすめます。国際人権規約(社会権規約)第13条の高校と大学の「学費の段階的無償化」を定めた条項の「留保」を直ちに撤回します。条約加盟国160か国中、この条項を「留保」しているのは日本とマダガスカルだけです。
給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める……国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、卒業後の年収が300万円以下の場合に返済を猶予する制度を確立します。滞納者を個人信用情報機関に通報する「ブラックリスト化」を中止します。就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。給付制奨学金制度がない国は、先進国のなかで、授業料無償のアイスランドを除けば日本だけです。
政府が公表した子どもの相対的貧困率は14.2%、ひとり親家庭では54.3%にもおよびます。国として貧困の実態調査をおこない、当事者や支援団体の協力も得ながら貧困の解決のための体制を整備します。
生活困窮世帯の子どもに給食費・学用品などを援助する「就学援助」は、その役割はますます重要になっています。ところが政府が2005年に準要保護世帯への国庫補助を廃止したために、支給額や基準を切り下げる自治体も増えています。国庫補助を復活し、拡充へと転換します。児童扶養手当の増額、支給基準の拡大をはかります。児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童相談所の体制強化を緊急にすすめます。
昨年12月のCOP15(国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)での「コペンハーゲン合意」にも明記されたように、地球温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(現在までにすでに0.76度上昇)にとどめることがカギです。
温暖化抑制に有効なルールをしっかり設定し、それにもとづいて中長期的な取り組みを進めることが必要です。いまこそ、温室効果ガスの排出量を減らしながら発展する経済社会への本格的な転換が求められています。それによって切りひらかれる「グリーン・エコノミー」は、日本経済の再生の重要な柱です。
前国会で廃案となった民主党政権の地球温暖化対策基本法案は、総選挙の公約になかった、途上国をふくむすべての主要国が大幅な削減に同意するという前提条件をつけ、それが満たされない限り、中期削減目標(2020年までに90年比25%削減)を設定せず、施行しないとしました。これでは、2013年以降の国際的枠組みづくりを外交でリードするどころか、成り行きを見て目標を決めるラストランナーになってしまいます。
こうした姿勢では、これまで温室効果ガスを大量に排出してきた過去の事実や削減する能力からみて、先進国としての責任は果たせません。日本共産党は、日本に課せられた先進国としての国際的義務を果たすために、2020年までに90年比で30%削減することを明確にした中期目標を確立し、温暖化対策基本法案にも盛り込まれた2050年までに80%削減するという長期目標にむかって、着実に実現していくための手立てを講じます。
産業界は日本の二酸化炭素の総排出量の8割(家庭が使う電力分を電力会社の排出とすると9割)を占め、わずか大企業44社、161の事業所だけで日本全体の温室効果ガス排出量の50%に達しています。にもかかわらず日本では、もっぱら産業界の“自主努力”まかせにされています。EU諸国で実績を上げ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告でも役割が評価されている国と産業界との間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。
企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」では、原単位方式ではなく、発電施設も含めた事業所の直接排出量の総量削減を定めます。二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入し削減を加速します。
二酸化炭素の排出量の9割がエネルギーに由来する分であり、エネルギー対策は温暖化抑制の要ですが、日本は世界で大きく立ち遅れています。
自然エネルギー利用の発電を促進する固定価格買取り義務制度を導入する……2020年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を自然エネルギー(再生可能エネルギー)でまかなう計画を策定し、着実に実行します。そのために、太陽光発電の余剰電力だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、電力会社が全量買い取る「固定価格買取義務制度」を導入します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3300億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出量を買い取るのにも使われている石油石炭税(同4800億円)などの使い方を見直し、ユーザーの負担増を抑制します。
自然エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を2分の1にまで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、自然エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。
日本や東アジアの気候や条件にあった発電機器の開発を進める……風力発電では、日本や東アジアでは欧米と違い、風の方向や速度が急に変わり、台風の襲来によるダメージも深刻です。また雷撃による被害で、停止する施設もあります。小水力発電では、発電効率の引き上げとともに流水で運ばれてくるゴミなどの除去も、大きな課題です。こうした気候や条件にあった発電機器の研究・開発を支援し、再生可能エネルギーの利用を新たな産業分野として育成します。
途上国の温暖化対策に貢献する……中国やインドなどの新興国をはじめ、途上国も今後の経済発展が見込まれるなかで、従来型の発展方式のままでは温室効果ガスの排出量の急増が懸念されます。日本が開発した再生可能エネルギーの利用や省エネの技術、ノウ・ハウを生かして、途上国の排出抑制を支援します。
低周波被害への本格的対応を進める……大型風力発電機、ヒートポンプや熱・電気併給システムのコンプレッサーなどから発生した低周波騒音・振動によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。低周波振動の健康への影響についてただちに調査・研究を行い、影響調査を義務づけ、環境基準や設置・建設のさいの距離条件の設定、低周波を発生しない製品の開発など、本格的な対応が必要です。
民主党政権は、原子力発電を「温暖化対策の切り札」とし、プルサーマルや核燃料サイクル計画の推進、原発の新増設を図り、長期的には電力供給の半分以上を原発でまかなおうとしています。また途上国への原発の輸出までも強力に推進しています。技術的に未確立で、事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きい原発に頼った「温暖化対策」はやめるべきです。
被爆国日本の国民の切実な願いであり、人類的課題である「核のない世界」――核兵器廃絶に向けて、歴史的な変化がおこりつつあります。
5月3日から国連本部で、核不拡散条約(NPT)再検討会議がひらかれました。NPT再検討会議は、5年ごとにおこなわれていますが、今回の会議は、「核兵器のない世界」への機運が世界的規模で広がるもとで、文字通り歴史的なチャンスの会議でした。日本共産党の志位委員長を団長とする訪米団は、このNPT再検討会議に出席するとともに、会議主催者、国連関係者、各国代表団に、被爆国・日本国民の悲願を訴えるとともに、「核兵器廃絶の目標そのものを主題として、この目標にいたるプロセスを検討する国際交渉を開始する」ことなどを要請するなど、会議成功のための働きかけをしました。
NPT再検討会議は5月末、全会一致で採択された最終文書で、「核兵器の完全廃絶に向けた具体的措置を含む核軍備撤廃」に関する「行動計画」に取り組むことで合意しました。「行動計画」は、2000年の再検討会議でおこなわれた核保有国による核兵器廃絶の「明確な約束」を再確認するとともに、「すべての国が、核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みをおこなう必要について確認する」と明記しています。とりわけ核兵器国にたいし、核兵器廃絶への「いっそうの取り組み」、「具体的な進展」を求めています。これらの確認は、重要な一歩前進です。
再検討会議の過程では、5月中旬に発表されたNPT再検討会議の第1委員会の報告草案として、「核兵器の完全廃絶のための行程表(ロードマップ)を検討する国際交渉の開始」という方向が打ち出されました。この内容は、一部の核兵器保有国の同意がえられず、最終文書には盛り込まれませんでしたが、こうした内容が交渉の過程で提起され、多くの国によって支持されたことは、世界の変化を反映した画期的な出来事です。このことは、最終文書での「核兵器のない世界の達成に関する諸政府や市民社会からの新しい提案およびイニシアチブに注目にする」「加盟国の大半は、こうした(核軍備削減・廃絶の)法的枠組みは具体的な日程を含むべきであると考える」などの言及にも反映されました。
これは、日本共産党の訪米団がニューヨークでNPT再検討会議議長に伝えた要請と合致するものであり、また、被爆国・日本の反核平和運動が求めていることです。NPT再検討会議のカバクチュラン議長から志位委員長宛てに「あなたの努力が、この会議のプロセスにきわめて大きな貢献となり、10年NPT再検討会議の大きな成功に役立ったことは確実です」という書簡も寄せられました。
日本共産党は、日本の反核平和運動とともに、この方向が実るよう日本政府や世界各国にも働きかけるなど、可能なあらゆる取り組みをおこないます。
日本共産党は、戦後一貫して核兵器廃絶のためにたたかい続け、綱領にもその課題を明記した党として、この歴史的なたたかいの一翼をにない、広範な人々と共同して地球上から核兵器をなくすために積極的な役割を果たします。
日本は、人類史上唯一、核戦争の惨禍を体験した国でありながら、歴代日本政府のもとで、アメリカの「核の傘」依存を正当化して、「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず」の「非核3原則」をないがしろにする動きや核武装論がくりかえされてきました。
民主党政権は、3月、日米間の密約問題にかんする「有識者委員会報告書」を発表しました。日米密約問題の解明は、当時の鳩山民主党代表が昨年の総選挙中に国民に公約したことであり、日本共産党は、この問題に一貫して取り組んできた党として、昨年9月の党首会談で調査に協力することを表明し、資料の提供などをおこなってきました。
しかし、「報告書」には、一連の密約のなかでも最大の焦点となっている「日米核密約」について重大な問題点があります。「日米核密約」とは、日本に寄港・飛来する米艦船・航空機の核兵器搭載について、安保条約第6条の「事前協議」の対象外として、この方式での核持ち込みを、条約上の権利としてアメリカ側に認めたものです。2000年の国会審議で、日本共産党の不破哲三委員長(当時)は、1960年の日米安保改定時に結ばれた「討論記録」という決定的な事実を示し、「日米核密約」の存在を明らかにしています。
「報告書」の最大の問題点は、「討論記録」の存在を認めながら、「日米両国間には、核搭載艦船の寄港が事前協議の対象か否かにつき明確な合意はない」などと、「討論記録」が核持ち込みの密約だったことを否定していることです。これはまったく成り立たない議論です。「討論記録」の存在を認めながら、核持ち込みの明確な合意は存在していなかったなどという議論は、悪質な歴史の偽造というほかありません。
核持ち込みの密約問題は、けっして過去の問題ではありません。米政府は1994年には水上艦艇から核兵器を撤去しましたが、攻撃型原潜に必要があれば随時、核巡航ミサイル「トマホーク」を積載する態勢を維持してきました。さらに、アメリカが「有事」と判断したさいには、核兵器を再配備することを宣言しています。オバマ政権は、4月に発表した「核態勢見直し」(NPR)で、「核巡航ミサイルを退役させる」としていますが、国防総省高官は、「退役の時期は、2,3年後」とのべています。しかも、今回のNPRは、F16戦闘機と後継機のF35 戦闘機に搭載するB61核爆弾について、「前方展開の非戦略核兵器搭載能力を維持する」ことを明確にしています。
したがって、日本への核持ち込みは、「今後は心配ない」(岡田外相)という保証はどこにもありません。「日米核密約」を廃棄しないかぎり、日本に核兵器が持ち込まれる仕組みと体制は引き続き日本列島を覆っているのです。にもかかわらず、民主党政権が、今後、日米核密約に関して「米側に何らの働きかけもしない」という立場を繰り返すことは絶対に許されません。
日本共産党は、政府が核密約の存在を正面から認めて、これを廃棄し、名実ともに「非核の日本」に進む実効ある措置をとることを強く求め、その実現のために全力をあげます。
今年は、戦後65年、安保改定50年の節目の年にあたりますが、わが国には、戦争直後の全面占領の時期につくられた米軍基地の大きな部分が、戦後65年を経ていまだに全国に置かれ続けています。現在、日本には、133件(うち米軍専用84、自衛隊との共用49)の米軍基地があります。共用を含む米軍基地の総面積1028平方キロメートルは、東京都23区の総面積の1・7倍にあたります。
なかでもひときわ米軍基地が集中しているのが沖縄です。日本の総面積の0.6%にすぎない沖縄県に米軍専用基地の75%が集中し、沖縄本島の面積の18%、県全体の10%を占めています。米国でもこれほど米軍基地が密集している州はありません。横須賀基地や横田基地のように、首都圏に広大な米軍基地がおかれているのも、日本以外にありません。しかも重大なのは、これらの米軍基地がつぎつぎと強化されようとしていることです。
日米両政府は、日米安保条約を従来の枠組みさえこえた「地球規模の日米同盟」へと侵略的に大変質させ、「米軍再編」の名で米軍基地の強化、米軍と自衛隊の一体化を推進しようとしています。「米軍再編」のねらいは、アメリカの地球規模の戦略に日本を組み込むところにあります。
「日本防衛」とは無縁の海外遠征――“殴り込み”部隊の司令部機能や機動性が、陸・海・空・海兵隊の4軍そろって強化され、出撃・補給拠点として恒久化されようとしています。沖縄・名護市への新基地建設、横須賀基地への原子力空母の配備、山口・岩国基地への空母艦載機の移駐、神奈川・座間基地への米陸軍第1軍団司令部機能の移転などです。
この「米軍再編」の日米合意をしたのは、自公政権です。自公政権は、「再編交付金」という「札束の力」で、基地をかかえる自治体と住民を分断、懐柔、屈服させて、基地強化を押し付けようとしてきました。民主党政権はこれを改めるどころか、住民と自治体の要求を踏みつけにして基地強化をすすめています。
菅首相は、沖縄県名護市の辺野古に巨大な米軍新基地を建設する日米合意を「何としても実現しなければならない」(所信表明演説)と宣言しました。「沖縄の負担軽減に尽力する」といいますが、巨大な最新鋭基地の建設を押しつけながら、「負担軽減」といってもむなしいだけです。しかも、日米合意は、鹿児島県・徳之島や本土に米軍訓練の「分散移転」をするとしています。これは、沖縄に新基地を建設したうえに、米軍訓練の被害と危険を全国にまき散らすというもので、自公政権時代のよりも悪い方針になったといわなければなりません。
菅首相は、沖縄県民の「合意」がなくても、「理解を求める」などとして、ごり押しする姿勢です。しかし、この方針を強行すれば、県民の怒りの火にさらに油を注ぎ、「県内移設」反対という県民的な団結をいっそう強め、必ず破たんすることになるでしょう。
日本共産党は、この方針の白紙撤回、普天間基地の無条件撤去を強くもとめます。
普天間基地問題だけではありません。日米両政府は昨年2月、グアムの米軍基地強化に日本国民の税金を投入する義務を負わせた米海兵隊「グアム移転」協定に調印しました。「グアム」協定は、海兵隊「移転」が、沖縄への新基地建設と日本の財政的貢献にかかっているとしています。アメリカの領土内の米軍基地建設費を日本国民が負担するのは、国際的にも歴史的にも例がなく、まったく道理がありません。
民主党は、この「グアム協定」に反対したにもかかわらず、民主党政権は今年度予算でグアム移転費用を大幅に増やすなど、「米軍再編」経費を500億円近くも増額させました。岩国基地への空母艦載機の移駐や横田基地への自衛隊の航空総隊司令部の移転などの経費も計上しています。米軍「思いやり予算」や「米軍再編」経費などを合計した米軍関係費は、過去最高の3370億円です。自民党政権でも見られなかった大盤振る舞いであり、民主党政権には「アメリカいいなり」政治から脱却する姿勢がまったくみられません。民主党政権が、自公政権と同じかそれ以上に沖縄県民をはじめ日本国民の願いを踏みにじって、新基地建設、基地強化を強行しようとしていることは絶対に許し難いことです。
日本共産党は、「米軍再編」の名による基地強化・永久化に反対し、基地のない平和な日本をめざして国民とともにたたかいます。
日米地位協定を抜本改定し、米軍優遇の特権をなくすために力をつくす……多発する米軍犯罪、事件・事故のたびに、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定が問題になります。米軍による主権侵害と横暴をおさえ、犯罪をくりかえさせないために、地位協定の抜本改定は、まったなしの課題です。にもかかわらず、民主党政権は、国民の強い要求に背を向けて、抜本改定に取り組もうとしていません。
日本共産党は、日米地位協定を抜本改定し、主権国にあるまじき米軍優遇の特権をなくすために力をつくします。
日本国憲法に明記された平和・人権・民主主義の精神がきわめて積極的な意義をもっていることは、この間の動きのなかで証明されてきました。08年4月、名古屋高裁判決は、イラクへの自衛隊派兵が憲法違反であると断定し、「平和的生存権」がすべての人権の基礎となっていると判示しました。また、日本共産党機関紙の「しんぶん赤旗」号外を配ったために国家公務員法違反で逮捕・起訴された事件の控訴審では、東京高裁が2010年3月、「逆転無罪」の判決を下しました。さらに、09年8月の総選挙をめぐる「1票の格差」について、この間、4つの高裁が「違憲」、3つの高裁で「違憲状態」と判示しました。
憲法の平和・人権・民主主義の原理を軽視したり否定したりする動きは依然としてつづいており、いささかも楽観視することはできませんが、憲法にもとづく国民的な運動と世論によって、情勢を変化させ、政治を動かす条件と可能性は確実に広がっています。
とくに07年参院選と09年総選挙で、最大の改憲勢力である自民党政権に「ノー」の審判を下したことが、大きく影響しています。07年参院選は、「自分の任期中の改憲」を初めて公言した安倍晋三首相を退陣に追い込むきっかけとなり、09年総選挙では、改憲策動の“震源地”だった「新憲法制定議員同盟」の現職議員(139人)の6割が落選しました。明文改憲を指向する勢力の策動は、大きくとん挫し、国民のたたかいによって重大な困難に直面しています。
改憲派の“オピニオン・リーダー”を自認する「読売」の憲法世論調査でも、注目すべき結果が出ています。同紙の調査では、1993年以来、「(憲法を)改正する方がよい」とする回答が、「改正しない方がよい」とする回答を大幅に上回っていました。ところが、あいつぐ自衛隊の海外派兵、改憲勢力の問答無用の改憲ごり押し姿勢を目の当たりにした国民のなかに危機感が広がり、04年を境に「改憲賛成」が減少の一途をたどりはじめ、今年、ついに「改憲賛成」43%(前年は52%)、「反対」42%(同36%)と拮抗する結果となりました。なかでも9条については、改定派が32%(同38%)だったのにたいし、非改定派は44%(同33%)と完全に逆転しました(4月9日付)。「朝日」の調査でも、9条を「変えない方がよい」は67%で、「変える方がよい」24%の3倍近くに達し、9条が「平和に役立つ」と答えた人が7割を占めました(5月3日付)。
2010年5月18日、改憲手続き法(国民投票法)が施行されました。改憲派からは「これで憲法改定のためのスタートラインに立った」との声も上がっています。しかし、この法律は、「投票年齢」を何歳にするのか、憲法改定の是非に関する国民運動の自由をどう保障するのか、「最低投票率」の要件をどう規定するのか等々、民主主義的な制度として当然備えるべき条項を欠いた、まったくの「欠陥法」にほかなりません。このような「改憲手続き法」は、すみやかに廃止すべきです。
参院選を前に、新党が続々と誕生し、そのいずれも「政界再編」とともに、「改憲」を旗印の1つにしています。こうした動きは、民主党、自民党などをもまきこんで、憲法改悪の「政界大再編=大連立」につながる動きとして、特別の警戒が必要です。
日本共産党は、憲法の前文をふくむすべての条項をまもり、とりわけ、平和・人権・民主主義を豊かに保障した条項を完全に実施することをめざします。その立場から、解釈であれ明文であれ、改憲につながる一切の策動を許さず、思想信条、党派の違いを超えた共同をさらに発展させるために全力をあげます。
1960年に日米安保条約が改定されて以来のこの半世紀に、多くの軍事同盟が解体、機能不全に陥り、米国を中心とした軍事同盟も、現在、実体的に機能しているのは、NATO(北大西洋条約機構)、日米、米韓、米オーストラリアの4つの軍事同盟しかありません。これらの軍事同盟のもとにある国は、31カ国(国連加盟国の16%)にすぎず、軍事同盟のもとにある人口は、1960年当時の世界人口の67%から16%に激減しました。多くの国ぐにが軍事同盟から抜けだし、外部に敵をもたない、開かれた地域の平和共同体が世界各地に広がっています。
国際社会は、国連憲章にもとづいて国際紛争の平和的・外交的解決を求めるという方向に動いています。21世紀は軍事ではなく外交こそが重要な意味をもつ時代となっています。
世界が大きく変化しつつあるもとで、日本外交のあり方が問われています。世界の前向きの変化に積極的に働きかけて促進する外交か、前向きの変化が目に入らず、変化しないことを求める外交かが鋭く問われています。
民主党政権は、「対等な日米関係」ということを強調していますが、実際には、アメリカが変化していない部分では、変化を求めず、自らすすんで従属政治を続けています。日米軍事同盟を不可侵のものと仰ぎ、米軍基地を強化し、自衛隊の海外派兵をおしすすめ、グアムに建設する米軍基地にまで日本国民の血税を注ぎ込む、さらに「核抑止力を含む拡大抑止」として米国の核戦力に依存しつづけようとしています。こうした政治に未来がないことは明らかです。
日本共産党は、核兵器廃絶問題での行動が示すように、世界の前向きの変化に働きかけ、それを促進する、憲法9条にもとづく「自主・自立の平和外交」をすすめます。
――日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・協力をすすめます。
――国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義にも反対をつらぬきます。
――一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロ根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させます。
――日本の歴史的領土である千島列島と歯舞・色丹島の返還をめざします。
――多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重と、平等・公平・互恵を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざします。
――紛争の平和的解決、災害、難民、飢餓などの人道問題にたいして、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的におこないます。
――社会制度の異なる諸国の平和共存、異なる価値観をもった文明間の対話と共存の関係の確立のために力をつくします。
――経済面でも、アメリカによる不当な対日要求に屈せず、金融・為替・貿易を含むあらゆる面で自主性を貫いた対等・平等の日米関係を確立します。
北朝鮮問題の解決のために6カ国協議の再開を求め、日朝両国間の諸問題の解決のために努力する……今年3月の韓国海軍哨戒艦沈没事件について、韓国の軍民合同調査団が「北朝鮮製魚雷によるもの」と断定したことにたいし、北朝鮮は「全面戦争を含む強硬手段で対応する」などと、緊張激化をあおっています。日本共産党は、この事件について、「他国の軍艦を魚雷で攻撃するといった行為は、けっして許されない無法で乱暴な軍事行為であり、厳しく非難する」とともに、南北両国をはじめ関係各国が、北東アジアの平和に関わるこの問題を、けっして軍事的緊張の拡大・悪循環につなげることなく、外交的・政治的方法で解決するよう強く求めました。こうした問題の解決のために、北朝鮮に核兵器および核兵器開発計画を放棄すること、6カ国協議に無条件に復帰することを求めて、国際社会が一致結束した行動をとることが大切です。
6カ国協議の無用論、無力論が出ていますが、この協議は、北東アジアの平和と安定に直接かかわる関係者が一堂に会する場として、引き続き最も効果的な交渉の枠組みです。この枠組みの当面の目標は、「朝鮮半島の非核化」ですが、この目標が達成されるならば北東アジア地域の平和の共同体として発展しうる可能性をもったものです。
日本共産党は、困難はあっても、国際社会が6カ国協議の枠組みに北朝鮮を引き戻し、協議を再開させるために力をつくします。
朝鮮半島の核問題の解決とともに、拉致問題や侵略戦争と植民地支配という日本の“過去の遺産”を解決する問題など、日朝間の諸問題の包括的解決に努力をつくし、日本と北朝鮮の国交正常化への道筋をひらかなければなりません。「日朝平壌宣言」にもとづき、この道をすすんでいくべきです。こうした道をつうじて、北朝鮮問題が道理ある解決をみれば、東アジアの平和・繁栄・友好に大きな展望が開けます。日本国民にとっても、平和と安心が確保されます。
日本共産党は、国の内外で、日朝間の諸問題の理性的解決のために全力をあげます。
日米安保条約にもとづく日米軍事同盟は、米国を中心とした四つの軍事同盟のなかでも、他に類のない異常な特質をもっています。それは、(1)米軍基地面積と駐留米兵数、(2)海兵隊と空母という「殴り込み」部隊の配備、(3)在日米軍による事件・事故の多発と治外法権的な特権を保障する日米地位協定、(4)「世界一」気前のよい在日米軍駐留経費負担、(5)国民を欺く「事前協議」制度、(6)「米軍再編」の名での世界的な軍事共同態勢の強化、(7)経済的従属の「制度化」などの視点からみれば明りょうです。
歴代日本政府が、憲法9条も平和を願う国民世論も踏みにじって、従属政治を続けてきた大もとに、日米安保条約=日米軍事同盟があります。日米安保条約は、いま、世界とアジアの軍事緊張を高める危険な震源地の一つになり、沖縄をはじめ日本中で、「基地あるがゆえ」の苦しみを国民に押しつけています。アメリカが繰り返し日本に軍拡を要求する圧力をかけているのも日米軍事同盟強化のためです。
日本共産党は、日本で唯一、日米軍事同盟からぬけだして日本を外国の軍隊のいないほんとうの独立国家にすること、世界とアジアの平和に貢献することを主張している政党です。軍事同盟に縛られ、巨大な軍事基地をおかせ、米国の無法な戦争に動員される体制を「永久不変」だと考える勢力には、およそ国の独立と平和を語る資格はありません。
日米安保条約をなくすのに難しい手続きはいりません。安保条約第10条の規定に従って、アメリカに「安保廃棄」を通告すれば、相手国の同意がなくても1年後には条約はなくなります。アメリカとは「友好条約」を結び、対等・平等の新しい日米新時代を開きます。これを実現するうえでも、東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていきます。
小選挙区制は、少数政党を問答無用に切り捨てる一方、それぞれの選挙区で「比較第1党」にさえなれば得票率にかかわらず圧倒的多数の議席を確保できるという仕組みです。2005年総選挙(小選挙区)では、自民党は48%の得票率で73%の議席を獲得し、その結果、郵政民営化を強行しただけでなく、ほとんど議論もなく選挙の争点にもならなかった教育基本法の改悪や改憲手続き法の強行など、「数の力」をたのんだ暴挙を繰り返しました。また、2009年の総選挙(小選挙区)では民主党が47%の得票率で74%の議席を獲得し、民主党は「マニフェストが信任された」などとして、国民の声に背くような課題にまで乗り出してきました。
――主権者国民の意思を正確に反映できない最悪の選挙制度である小選挙区制を廃止し、衆院選挙制度を、民意を正確に反映できる全国11ブロックの比例代表制にあらためます。
国会議員の定数は、1980年代まではそれぞれ512(衆院)、252(参院)でした。ところが、この20年のあいだに衆参ともに定数が削減され、現在では、衆院480、参院242議席となっています。もともと日本の国会議員数は、人口比で比較すれば世界でも最下位の部類に属します。人口1000万人以上の国で2院制を採用している国は世界で41カ国ですが、人口10万人あたりの下院(衆院)議員数は、日本は下から9番目の33位です。G7(主要7カ国)で比較した場合でも、連邦国家のアメリカをのぞけば日本が最下位です。(人口10万人あたり、イタリア1.07人、イギリス1.06人、フランス0.93人、ドイツ0.74人、日本0.38人)
ところが、最近結成された新党をふくめ、日本共産党をのぞくほとんどすべての政党が定数削減を選挙公約に掲げています。これらの党は、国会議員定数を削減する理由を、国会議員も“痛み”を分かち合う必要がある、ムダを削減するためなどとしています。これらは、道理も根拠もなく、国民主権の原理からみても有害な議論です。真剣に“痛み”を分かち合い“ムダを削減する”というのなら、なによりも320億円にもたっする憲法違反の政党助成金をきっぱり廃止すべきです。
定数削減が強行された場合を2009年総選挙の結果にあてはめると、民主党と自民党の「2大政党」を中心とした勢力で95%前後の議席を独占してしまいます。そうなれば消費税増税反対、辺野古への米軍新基地押しつけ反対、憲法9条を守れなどの国民多数の声が国会から締め出され、暮らしや平和を破壊する政治が思うままにすすめられてしまいます。定数削減の真の狙いは、ここにあります。日本共産党は、国会議員定数の削減に反対し、主権者国民の意思を反映できる議員数を確保するよう主張します。
09年8月の総選挙について、著しい「1票の格差」があるとして、全国10カ所の高裁(支部を含む)のうち、現在まで4つの高裁で「違憲」、3つの高裁で「違憲状態」の判決が下されています。
参議院については、最高裁が09年9月、07年の参院選結果について、「憲法に違反するとはいえない」としながら、一方で「投票価値の平等という観点からは、なお大きな不平等が存する状態であり、選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にある」と指摘しました。
――国会議員定数の削減に反対します。
――「1票の格差」是正のため、党派を超えた焦眉の課題として取り組むことを提案します。
民主党などは、「政治家同士の議論をおこなうために」などという口実で「国会改革」を強行しようとしています。しかし、こんな主張をする資格は、民主党にはまったくありません。だいたい総理大臣が代わり、新しい内閣をスタートさせながら、予算委員会を開かないまま国政選挙を迎えた政権は、この20年来、なかったことです。なぜ菅政権と民主党は、みずから衆参それぞれ1日ずつの予算委員会を主張しておきながら、土壇場にきて予算委員会を開かないまま国会を無理やり閉幕させたのでしょうか。それは、「(世論調査で)『V字回復』を果たした支持率のまま選挙を急ぐべきだとの声にすべてが吹き飛ばされた」「国会審議よりも選挙を優先する姿勢は徹底していた」(「朝日」6月17日付)からです。こういう勢力が、「国会改革」などというのは笑止千万のことです。
しかも、民主党などが考えている「国会改革」とは、(1)内閣法制局長官をはじめとする官僚の国会答弁をいっさい禁止し、(2)国会審議とは別に行政官僚などの「意見聴取会」を設定する――などという内容です。こうした議論は国会の機能を否定し、議会制民主主義を形がい化するものです。
国の行政が法律にもとづいて中立・公正に運営されているかどうか、執行状況に問題がないかどうかは、国会審議を通じて国民の前に明らかにされるべきものです。行政監督権を立法作業から切り離してしまえば、法律そのもの制定にも支障をきたすことになりかねません。そしてなによりも重大なのは、法制局長官を国会答弁に立たせないことで、“国連などの「国際機関」や「国際社会」の要請があれば日本の自衛隊も武力行使に参加できる”という民主党流の解釈改憲を内閣の公的な“解釈”にしてしまおうという思惑があります。
「国会改革」というなら、いま早急に必要なのは、衆参いずれかの院で10議席以上なければ党首討論ができないというような、少数政党を不当に国会審議の場から排除したり、発言の機会を少なくしたりしている規定を抜本的にあらためることです。
――国会審議の形がい化をもたらし、国会の行政監督権を弱める「国会改革」をストップさせます。
――「集団的自衛権の行使」や自衛隊の海外派兵の拡大など、憲法の拡大解釈につながる、法制局長官の答弁禁止に反対します。
――少数政党を不当に差別し、国会審議の場から排除しようとする現行の規定をあらため、国会審議の充実をめざします。
鳩山政権が退場に追い込まれた最大の理由の1つは、「政治とカネ」の問題にありました。しかし、菅内閣でも、早速、荒井聡・国家戦略担当相が不明朗な事務所費を計上していた疑惑がもたれています。「クリーン」を掲げて登板したはずの菅政権ですが、この疑惑について真摯に説明しようとする姿勢はまったくありません。これは、鳩山政権下で、首相・政権党幹事長という「2トップ」にかかわる疑惑について、国会で真相解明の措置がただの一度もとられなかったこととまったく同じ構図です。
日本共産党は引き続き、「政治とカネ」にまつわる疑惑解明のため、国政調査権を駆使して必要なすべての資料を国会に提出させること、疑惑をもたれた政治家や関係者を証人喚問し、国会として必要な政治的道義的責任を追及することをもとめます。
「政治改革」が唱えられ始めてから20年が経過しました。この間、「政治改革」の名を借りて、選挙制度の改悪、政党助成金導入と政治資金規正法一部改定などがおこなわれてきました。しかし、これらの措置は、この間の数かずの「政治とカネ」にまつわる疑惑でもあきらかなように、その解決にはまったく無力であったばかりか、本来もっとも必要な改革を後景に追いやる点で有害な役割さえ果たしてきたといわなければなりません。
クリーンな政治を実現する最大の保証は、「政治とカネ」の黒い関係の温床となっている企業・団体献金をきっぱり禁止することです。
また、政治資金規正法を抜本的に改正し、政治家の資金管理については窓口を完全に一本化すること、資金の流れを完全にガラス張りにすることを求めます。また、国民がすべての国会議員の政治資金の流れを把握できるよう、インターネットに公開することを義務づけます。
政党助成金は1995年に導入されて以降、2010年末までに4800億円近くもの税金が投入されてきました。もともと政党助成金制度は、「企業・団体献金を廃止する」ことを口実に導入したものです。いまだに“片手で企業・団体献金、もう一方の手で国費も受けとる”というのは、“詐欺”にも等しい行為です。
――「政治とカネ」の汚い関係の温床となってきた企業・団体献金のすみやかな全面禁止を実現します。
――政治家の資金管理について、窓口を完全に一本化するとともに、資金の流れをガラス張りにすることを求めます。
――国民が、すべての国会議員の政治資金の流れを把握できるよう、インターネットに公開することを義務づけます。
――政党助成金は、ただちに全面的に廃止します。
女性へのあらゆる差別の撤廃を義務づけた国連女性差別撤廃条約を批准して25年、日本の女性差別の是正はいまだに大きく立ち遅れています。女性労働者の2人に1人以上が非正規雇用であり、賃金は非正規をふくめると男性の53%です。働きたくても保育所に入れられない待機児童問題はますます深刻です。1人目の子の妊娠・出産で7割が退職し、30歳代の労働力率は先進資本主義国24カ国中23位と、女性が最も働きにくい国となっています。国連からは、条約の完全実施にもとづく早急な改善を求められています。
ヨーロッパでは、母性の社会的役割を重視し、子育ては社会全体の共同責任だという女性差別撤廃条約の原則に立つルールが確立し、社会的な合意もすすんでいます。パートと正規社員の均等待遇、家族政策の充実、育児休業制度の改善、保育所整備などがすすめられています。家族支援の公的支出は日本の3〜4倍です。財界・大企業いいなりの日本の「ルールなき資本主義」が、世界でも異常な女性差別の原因になっています。戦前の日本の社会を「理想」とし、民法改正などに反対する意見が政界にあることも異常です。
女性への差別は人間の平等と尊重の原則に反し、人類の発展に貢献すべき女性の能力の発揮を困難にし、その国の発展をそこなうものです。日本共産党は、国連女性差別撤廃条約の具体化・実現をはかります。国際的な基準にたったヨーロッパ並みの「ルールある経済社会」をつくるために力をつくし、女性差別撤廃条約の選択議定書の批准をすすめます。
派遣法やパート労働法に均等待遇原則を明記し、差別の是正、正規化、労働条件の改善をすすめます。男女賃金格差是正をはかります。男女雇用機会均等法を改正し、間接差別の禁止規定の改善、賃金や昇進昇格などの差別をすみやかに是正できる強力な救済機関の設置、違反企業への指導の徹底、罰則の強化などをすすめます。
妊娠・出産を社会的に保護し支えてこそ、女性が平等に働くことのできる条件がつくられます。「産休切り」「育休切り」などの違法行為を根絶します。再就職の支援を強めます。
労働時間の短縮をはかり、男女がともに仕事と子育てを両立できる条件整備をすすめます。育児介護休業法を改正し、所得保障の6割への改善、休業期間の延長、パートや派遣労働者がとりやすいように適用条件の見直しなどをすすめます。
認可保育所の新増設、保育条件の改善など、国と自治体の責任で拡充をはかります。民主党政権がすすめる保育所最低基準の撤廃などさらなる「規制緩和」、国や自治体の責任を後退させる保育制度の改悪を許しません。
母子家庭の命綱・児童扶養手当の削減は世論と運動で「凍結」させていますが、制度改悪そのものの「撤回」を実現し、制度の充実をはかります。
民法改正は、民主党政権が公約も国民の期待も裏切り、いまだに実現していません。選択的夫婦別姓制度の実現、再婚禁止期間・婚姻最低年齢の見直し、婚外子差別の禁止など民法改正をすすめます。家庭、社会のすみずみまで男女平等、個人の尊厳の徹底をはかり、家庭内暴力、セクシャルハラスメントなどを生まない社会をつくります。旧日本軍「慰安婦」問題は政府の謝罪と補償でこそ解決します。早急な解決を政府に強くもとめていきます。教科書への歴史的事実の記述を復活させます
どの子どもにも、十分な教育を受けて成長発達する権利があります。そうした教育の保障こそ平和で豊かな社会を築くカギです。ところが日本では、「世界一高い学費」のもとで貧富の差による教育格差が広がり、過度の「競争」や非人間的な「管理」が子どもの成長を歪めています。この異常さは国際機関も厳しく指摘しており、その転換は国民的な課題です。
ところが民主党政権は、全国いっせい学力テストの実質存続、「日の丸・君が代」強制続行など、これまでの教育政策を基本的に引き継いでいます。今春の「高校学費無償化」などの前向きな施策でも、私立高校の重い負担などの新たな格差や矛盾をつくりだしました。これらの大本には、憲法や子どもの権利条約の精神に反した「日本国教育基本法案」を「教育政策の集大成」とする同党の姿勢があります。
私たちは教育格差、「競争」や「管理」などの歪みをただし、子どもたちが「わかった!」と目を輝かす授業、子どもの声をじっくり聞いてあたたかく接する先生――そんな教育が全国どこでも行なわれるようにします。
憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は…経済的地位…によって、教育上差別されない」(第4条)としています。その立場から、乳幼児教育や義務教育の保護者負担の軽減、高校の私立を含めた無償化・負担軽減、大学や専門学校等の負担軽減をすすめます。(詳しくは、一の6「子育て支援」参照)
OECD加盟国で最低水準の教育予算を早期に平均(GDP比5%)まで引き上げ、全国共通に保障すべき教育条件を国の予算でしっかり支えます。教職員を増員・正規化し、国の制度として「30人以下学級」を実施します。特別支援教育の改善など条件整備を進めます。「私学の自由」を尊重する立場から、私学助成を増額し、公私間格差を是正します。大学を疲弊させている「基盤的経費」の減額をやめ増額し、基礎研究や若手研究者支援などを拡充します。図書館、社会教育施設を拡充し、専門職員の配置を進めます。
上意下達の学校運営をやめ、教職員、子ども、保護者等の参加と共同で学校を運営できるようにします。授業準備もままならない「多忙化」の解消、自主的研修の保障等で教員の力量向上を支えます。充実した授業ができるよう、学習指導要領の法的拘束力をなくし、内容も国民の英知を集めて改めます。教科書の検閲的な検定をやめ、採択に教員や父母の意向を反映させます。基本的人権を大切にする市民道徳の教育を重視します。いじめのもみ消しを根絶し、子どもの命最優先の学校をつくります。子どもの気持ちを無視する「不登校ゼロ」政策をやめ、不登校の子どもの学びと自立を支援します。
「点数をあげるため先生が正解を教える」「テスト対策ばかりで授業の質が低下」などの弊害をもたらしている「全国いっせい学力テスト」を中止し、どの子も放置せず全ての子どもに基礎的な学力を保障する体制をつくります。高度に競争的で子どもの成長を歪めている高校や大学の入試制度を改革するため、国民的検討の場を設け、改革に着手します。
教員免許更新制、教育活動の数値化など教育の条理に反する制度を見直し・廃止します。硬直化した教育委員会制度を民主的な制度に刷新します。意見表明権など子どもの権利を教育のあらゆる場で保障します。「君が代・日の丸」の強制、侵略戦争の美化の公教育への持ち込みに反対します。教育への国家的統制を進める改悪教育基本法を、憲法と子どもの権利条約に基づいて再改正するための国民的討論を進めます。
行政を財界本位にゆがめる仕組みをあらため、国民の声が通る行政機構をつくる……民主党は、「脱官僚」や「官僚主導政治の打破」をかかげて政権につきましたが、政権をとるやいなや自民党と変わらない天下り人事や「渡り」を容認してきました。現在の政治の大きな問題である「政官業の癒着」に根本からメスを入れる立場がないからです。この“鉄のトライアングル”を解体しないまま、いくら「官僚=国民の敵」という図式をつくろうとしても、政治がよくなるはずがありません。
各省庁に無数に設置されている審議会や調査会・研究会などには、少なくない財界・大企業の役職者が名前を連ね、行政が大企業・財界中心にゆがめられています。これらの審議会の構成を、公平・中立なものにするだけでも、国民本位の行政改革を実現する一歩にすることができます。
行政情報のあり方を国民本位に抜本的に変える必要があります。民主党政権のもとで、予算案が審議入りする前から、公共事業予算をどのようにどの場所に配分するかという「個所付け」の問題が与党議員だけに知らされていることが大問題となり、民主党政権が自民党政権と同様に“利権構造”にどっぷりと浸っている実態が浮き彫りになりました。与党はもちろん、行政官僚などによる公共事業の「個所付け」が恣意的におこなわれないような仕組み・制度を整備します。
また、外務省や内閣などの機密費(官房報償費)などについても、依然として国民の目から覆い隠されています。重大なのは、これらのお金が、与党による野党対策やマスメディア対策の資金源とされているだけでなく、与党の政治家自身の“つかみ金”となっている証言が相次いでいることです。日本共産党は、すべての機密費について、原則として一定の期間が経過した段階で、使途と支出先を公開するよう求めます。
公務員が、憲法の定める「全体の奉仕者」の役割を果たせる条件を整える……民主党をはじめ、日本共産党以外の政党は、公務員の数の削減数を競っていますが、一部の公務員を別にすれば、むやみやたらに数の削減をすることは国民生活にかえって有害な結果にしかなりません。重要なことは、公務員が「全体の奉仕者」として業務に従事できるような体制を確立することです。そのためには、「天下り」や「渡り」をはじめとする特権的な官僚システムを根本から改善しなければなりません。いま、民主党政権のもとで議論になっている「公務員制度改革」は、特権的官僚制度を温存するだけでなく、内閣のもとに人事権などを一元化することによって、与党の意を受け与党に都合のいい仕事だけをする公務員を育て上げる危険があります。
また、定数が年ごとに削減されているもとで、少なくない公務員が長時間・過密労働にさらされている実態も問題になっています。公務員が真に国民・住民のための行政を遂行できるよう、劣悪な労働条件を改善するとともに、非常勤・非正規職員のなかに広がっている“官製ワーキングプア”といわれるような労働のあり方を根本から改善します。そのためにも、憲法が保障している労働基本権を付与することが急務です。
「利潤追求」ではなく、「公共の福祉の増進」を目的に郵政事業の再生をめざす……「郵政民営化」によって、簡易郵便局の閉鎖、郵貯ATMの撤去、各種手数料の引き上げなど、国民サービスが大きく後退しました。いま審議されている郵政「改革」関連法案も、利益の最大化を追及する株式会社化を改めるものではなく、全国一律のサービスを確保する保証はありません。
郵政事業については、利潤の追求ではなく、公共の福祉の増進を事業の目的としてはっきりさせることが必要です。郵便・貯金・決済・保険など、全国2万4千余の郵便局ネットワークによって提供されている生活に不可欠なサービスを全国一律で保障する公的事業体として再生することを目指します。経営形態は、政府案のような株式会社化した上での3分社化ではなく、3事業一体で運営する体制にします。
民主党政権は、「地域主権」の実現を「内閣の改革一丁目一番地」(鳩山前首相)と位置づけ、今年夏には「地域主権戦略大綱」を策定するとしています。自民党政権の「地方分権」とは「もともと発想が違う」と強調しますが、現実に進めていることは、「義務付け・枠付けの見直し」の名による保育行政の改悪や「一括交付金化」による国庫補助負担金の廃止・縮小など、小泉「改革」が敷いた「地方分権」路線の継承・推進を基本に、さらに踏み込んで具体化するものです。
「地域主権」と言うなら、福祉や医療の後退と地方支出の削減を進め、地方の疲弊を招いた「構造改革」路線を根本的に転換し、地方自治体が、「住民福祉の増進」の精神を発揮し、安心して暮らせる住民サービスの充実と生活基盤の整備、地域経済の振興・雇用の確保で元気な地域づくりなどを進められる財源保障を軸に、自治権の拡充をはかるべきです。
政府が「地域主権」の名ですすめているのは、地方向け補助金の「一括交付金化」と福祉分野を含めた国の最低基準の緩和・撤廃です。民主党は、「ひも付き補助金」と呼びますが、その圧倒的部分は、国が法律で負担が義務付けられた福祉・教育関係費です。今年度の地方向け国庫補助負担金は約21兆円ですが、このうち社会保障関係費が14.8兆円、教育関係費が2.3兆円で8割以上を占め、そのうち高齢者医療や国民健康保険、生活保護、介護保険、子ども手当、障害者支援、児童扶養手当、義務教育、高校授業料無償化など法律が定める「負担金」が9割近くを占めています。全国知事会が「地方における財源総額が大幅に削減され、地方の権限・裁量の拡大につながらなかった、かつての『三位一体の改革』の二の舞になることを強く懸念している」と表明しているのは当然のことです。
また、保育所や高齢者福祉施設の国の最低基準をなくし地方自治体の条例に委ねるという自公政権が路線を敷いた方向も、そのまま強行しようとしており、福祉関係者・家族の不安と怒りを招いています。
地方自治体が「住民福祉の増進を図る」ために必要な財源を保障します。福祉や教育など国の責任を後退させず、逆に、医療や介護、子育て、教育への国の負担を充実させます。国が責任を持つべき社会保障についてナショナルミニマム(最低基準)や標準を定めるとともに、自治体が独自に上乗せできる財源を保障します。公共事業などの補助金については、地方の現状と要望をふまえてムダをなくすとともに運用の制度改善をはかります。
自公政権のもとで削減された地方交付税を回復します。民主党政権は今年度の税制改正大綱で「地方消費税の充実」を明記しましたが、消費税の大幅増税に直結するものであり、きびしく反対します。
民主党政権は、「地方政府基本法の制定」=地方自治法の「抜本的見直し」を地域主権戦略の柱の一つに掲げています。いま総務大臣のもとで検討されているのは、「自治体の基本構造のあり方―議会と長の関係」などです。わが国の地方自治体は、憲法で、首長と議会議員がそれぞれ住民の直接投票で選挙される「二元代表制」と定め、地方自治法で議会と執行機関(首長・行政)のそれぞれの役割と権限、関係を明確にしています。いま議論されているのは、もっぱら「二元代表制のもとで、議員が執行機関に入ることは是か非か」です。民主党が、「憲法提言」(05年)で、憲法を改正して地方自治体が「二元代表制」をとるかどうかを自治体の選択にすることを提起していることが背景にあります。
しかし、いま憲法と地方自治法が定める制度を変える必要性に迫られている地方自治体などありません。「二元代表制」のもとで首長・執行機関と議会議員が融合することになれば、現在でも強大な執行権限をもつ首長に対して、議会議員の役割と権限がより縮小することになりかねません。多くの地方自治体でいま求められているのは、首長の行政運営に住民の意思がより反映されること、そのためにも議会の構成と活動に民意が公正に反映され、民主的運営、行政に関するチェックと調査、政策能力の向上がはかられることです。
地方議会の形骸化につながりかねない地方自治法の「見直し」に反対し、住民に開かれた住民代表機関として地方議会の権限と活動の強化をはかります。
いま民主党政権は「道州制の導入」そのものは掲げていません。しかし、鳩山内閣当時の担当大臣は、「地域が道州制を選択した場合」と条件をつけつつ道州制議論をすすめるとしていました。一方、財界と一体に道州制の導入を推進してきた自民党は、参院選公約に「道州制基本法を早期制定」を掲げています。道州制は、たんなる都道府県の再編ではなく、アメリカいいなりと財界奉仕の国づくり構想として、国家機能の特化と強化、他方で市町村を300から700程度に再編することと一体に議論されてきました。こうした道州制の導入と市町村のいっそうの大合併・大再編に反対し、住民と地域に身近な市町村、住民福祉の増進の使命を果たす都道府県行政への前進など、住民自治の発展をはかります。