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国の社会保障予算を毎年2200億円削減するため、医療・年金・介護・福祉の制度改悪を繰り返すという異常な政治が続いた結果、日本の社会保障は、制度の「崩壊」が叫ばれる危機的事態となっています。
生活に困窮している人が保険証まで取り上げられ、医者にかかれなくなる、無年金者が100万人を超え、若い世代でも国民年金の保険料を払えない人が過半数にのぼる、介護や福祉も「お金次第」となり、低所得者はまともなサービスを受けられない――日本の社会保障は弱者に冷たく、貧困を解決するどころか、逆に追い打ちをかけています。医療体制の崩壊や介護現場の人手不足など制度の根幹にかかわる深刻なゆがみが顕在化し、病院が次つぎ閉鎖される、お産ができない、救急車を呼んでも病院にたどりつけないなど、これまで「当たり前」だったことさえ、まともに機能しなくなっています。
社会保障の連続改悪は、経済・社会全体のあり方にも重大なゆがみをもたらしました。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本は市場所得の貧困率は他の先進国より低いのに、社会保障・税負担を加えた可処分所得の貧困率は、先進国中のトップレベルとなっています。「所得の再配分」という社会保障・税制の機能が損なわれ、“貧困・格差が解消されない国”となってしまったのです。
民主党は、社会保障費削減路線の転換を公約して政権につきました。菅首相はさかんに「強い社会保障」を実現するといっています。それならば、自公政権の削減路線が生みだした傷を治し、改悪された医療・年金・介護・福祉制度を立て直すことが、第一の課題となるはずです。ところが、民主党政権は、後期高齢者医療制度のすみやかな廃止という公約を投げ捨て、制度の害悪を広げつづけています。かつては猛反対し、野党共同で撤回法案を出した、医療費の窓口3割負担も継続する方向です。年金・介護制度の立て直しにも背を向け、自公政権時代の施策をそのまま継続しています。障害者自立支援法の応益負担も温存したままです。こうした裏切りに、国民の怒りと失望が広がるのは当然です。
日本共産党は、後期高齢者医療制度のすみやかな撤廃をはじめ、社会保障費削減路線が生んだ数々の「負の遺産」を是正します。歴代政権が各分野に持ち込み、社会保障を「お金で買うもの」に変質させてきた受益者負担主義を転換し、医療・介護・障害者福祉などの利用料は無料化をめざして負担軽減をはかります。社会保障を大企業の利潤追求の場に明け渡し、公的責任を後退させる市場化・民営化路線を抜本的に転換し、国の責任による介護・保育・医療・年金などの充実をはかります。
社会保障の再生・拡充は、一部の大企業に富が集中して国民所得が減り続ける、異常な経済・社会構造を変革するうえでも重要な役割を果たします。その財源は、“負担能力のある所に応分の負担を求める”という原則によって確保することが重要です。応能負担の原則をまもり、税・社会保険料の改革をすすめるなら、国民生活や経済成長と矛盾することなく、社会保障の財源を確保できます。さらに、社会保障の拡充で貧困・格差を解消し、国民の将来不安を取り除いて、日本経済を安定した成長軌道に乗せれば、将来の社会保障や国民生活を支える財源も生まれてきます。
日本共産党は、「健康で文化的な最低限度の生活」をすべての国民に保障し、社会保障の増進を国の責務と明記した憲法25条の立場から、だれもが安心でき、将来に希望のもてる社会保障制度を構築する改革に取り組みます。
長く続いた自民党政権・自公政権のもとで、年金制度は改悪をくりかえされ、本来は老後の保障である年金だけでは、とても生活できないという不安と怒りが広がっています。
日本の年金制度の最大の問題点は、日々の生活をまかなえない低年金・無年金の人が膨大な数にのぼることです。国民年金しか受給していない人は約1000万人いますが、その平均受給額は4万8000円にすぎません。厚生年金も、女性を中心に劣悪な状態が放置されています。また、国民年金の保険料を払っていない人が1000万人をこえ、免除などをのぞいた実質的な納付率が5割を切るなど、年金制度全体の深刻な空洞化も放置できません。
民主党政権も、低年金・無年金の対策として「最低保障年金」制度の実現を提案していますが、その内容は、現在の低年金・無年金の人たちは対象外として、数十年後に月7万円の最低保障をおこなう、その財源のために消費税を増税するというものです。これでは、現在の無年金・低年金の人たちにとっては、なんの恩恵もないだけでなく、消費税増税だけが押しつけられます。また、最低保障年金が実現しても、所得の少ない人ほど負担の重い逆進性がある消費税が増税によるのでは、低所得者の生活の困難は解消されません。
しかも、民主党の参院選では消費税の増税(菅首相は、10%の増税を示唆)とともに、法人税の減税を公約しています。経済産業省などは、法人税を25〜30%にまで引き下げると言っています。そうなると消費税増税分の4%相当が「消える」ことになってしまいます。消費税を2倍に増税しても、民主党の主張する「最低保障年金」制度の財源にはなりません。
日本共産党は、現在の無年金・低年金の人たちへの対策はとらず、年金財源を口実に消費税増税を国民におしつける民主党政権の姿勢を許さず、自公政権によって傷つけられた、公的年金制度にたいする国民の安心と信頼をとりもどす改革を進めます。
わが国では、保険料をおさめていても、総加入期間が25年に満たなければ、税金から支払われている部分も含めて、1円も年金を受けとることができません。加入期間25年以上という、この長すぎる受給条件は、不安定雇用で働く若者をはじめ、国民のなかに年金制度にたいする不信を広げている大きな要因のひとつです。イギリス、フランスなど、年金の受給資格に加入年数を条件としていない国も広がっています。受給のための加入期間の引き下げは、日本共産党の主張や国民の世論・運動によって、現在では自民党や公明党も主張するようになっており、民主党が決断すればただちに実現できますが、民主党は、これを先送りする姿勢をとっています。日本共産党は、せめてアメリカなみに、年金受給のための最低加入年数を「10年以上」へとただちに引き下げます。基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げの財源は、消費税増税ではなく、歳出・歳入の見直しでまかないます。
日本共産党は、「最低保障年金制度」をつくり、今も将来も安心できる年金制度をつくるという提案をおこなっています。その中心点は、憲法25条の「生存権」を保障する見地にたって、全額国の負担でまかなう「最低保障年金」を実現させることです。第一歩として、最低保障額を月額5万円とし、その上に、支払った保険料に応じた額を上乗せし、無年金を解消し、低年金を底上げする制度をスタートさせます。これによって、国民年金の満額は現在の月6万6000円から月8万3000円へと引き上げます。厚生年金も給付水準の低い人から順番に底上げをすすめていきます。
「最低保障年金制度」の実現に足を踏み出せば、低年金や無年金の問題、年金制度全体の空洞化、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度がかかえるさまざまな矛盾を抜本的に解決する道が開けます。
日本共産党は、安心できる年金制度にするために、(1) 年金財源は、大型公共事業や軍事費などの浪費を削減するとともに、「所得や資産に応じて負担する」という原則をつらぬき、大企業や高額所得者に応分の負担を求めて確保する、(2) 巨額の年金積立金は、高齢化がピークを迎える2050年頃までに計画的に取り崩して年金の給付にあてる、(3) リストラや不安定雇用に歯止めをかけ、年金の支え手をふやす、(4) 急速な少子化の克服は年金問題を解決する上でも大事であり、安心して子どもを生み育てられる社会をつくる−−この4つの改革にとりくみます。
この改革を着実に進めれば、給付を減額せずに、低年金を底上げすることができます。将来、経済が発展の軌道に乗り、国民の実質所得が増えていくなかで、年金改善のために国民の保険料の負担増を求める場合も、政府の計画よりはるかに低い水準にとどめることができます。
一方で、最低保障年金制度の創設を口実にして、大企業の年金にたいする負担を軽減したり、消費税を増税することにはキッパリと反対します。
「消えた年金」「消された年金」問題を2年以内に解決するという民主党政権のマニフェストはすでに実現不可能となっており、それどころか、社会保険庁の解体と年金機構の発足にともなう人員削減・体制縮小により、今年に入ってからの解決のスピードも遅くなっています。「消えた年金」「消された年金」問題は国が引き起こした問題であり、被害者には何の責任もありません。“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、日本共産党は、国が解決に責任をはたすことを求めます。
受給者・加入者に、年金記録が消えたり、消されたりしていないかわかるように、国が管理・保有している情報をきちんと提供するとともに、相談・問い合わせや、記録の照会や訂正、未払い金の支払いのスピードアップなどに対応できる体制を抜本的に強化すること、第三者委員会などでは、物証がなくても、申し立てや証言などを尊重して支給することなどを求めます。また、コンピューターの誤った記録は、すべての手書き台帳とつきあわせて修正すべきです。
「消えた年金」「消された年金」問題の根本には、国民の老後の生活保障である年金受給権をまもることには無関心で、保険料の徴収と納入率アップが年金行政の最重要課題になっているという、大きなゆがみがあります。社会保障にたいする国の政治姿勢が問われています。年金をはじめ、社会保障は国民の権利であり、行政は国民の権利を守るために仕事をするという、最も基本的な原則を行政の上から下まで徹底することこそ、求められている改革です。
この立場で、年金保険料の流用をやめる、世界に例のない巨額の積立金は計画的に取り崩して給付にあてる、などの年金行政の抜本改革をすすめます。社会保険庁の廃止と年金機構の発足を口実に、「消えた年金」「消された年金」問題の国の責任や体制を放棄することはゆるさず、「分限免職」した職員の再雇用をはじめ、問題解決の体制をきちんととり、これまで政府がくりかえし国民に約束してきたように、最後まで国の責任で解決することを求めます。また、1995年4月から2003年3月まで、賞与から「特別保険料」としてとりたてた保険料も、納めた期間に応じて年金額を上積みするなど、国民の年金受給額に適切なかたちで反映させるように改めます。
「消えた年金」問題も一つの口実にして、社会保障番号制度(税と社会保障の共通番号)の導入が検討されています。しかし、国民の医療・介護・年金などのあらゆる情報を一元管理するという社会保障番号の導入は、「消えた年金」問題の解決に役立つものではありません。
社会保障番号は、そもそもは財界団体などから、一人ひとりの国民が納めた社会保険料と受けとった給付額が比較できるようにして、公的な社会保障を民間の保険商品と同様にあつかい、社会保障制度にたいする国や企業の負担という責任をあいまいにするために導入が提言されてきたものです。民主党政権が、そのような自公政権の考えをひきつぎ、社会保障の給付をその人が納めた保険料にもとづく対価という考え方をひろげ、もっぱら保険料のとりたてを強化するために、社会保障番号を導入することは問題です。また、社会保障番号を導入しているアメリカでは、社会保障番号の盗難など、年間20万人が「なりすまし被害」にあっており、国民の個人情報・プライバシーの保護という観点からも慎重な検討が必要です。
「消えた年金」「消された年金」問題で、国の管理能力・統治能力が問われているいま、どさくさにまぎれて社会保障番号を導入することは許されません。
厚生年金など社会保険に加入することは本来、非正規雇用もふくめた労働者の権利です。現在の法律でも、法人または従業員が常時5人以上いる事業所は、正社員の4分の3以上の時間を働く労働者はすべて厚生年金に加入させる義務を負っています。問題は、この義務を果たしていない事業所が少なくないことです。派遣社員も派遣元の企業が加入させる義務をおっていますが、責任逃れ・違法行為がまん延しています。日本共産党は、経営が苦しい零細企業などについては社会保険料の軽減制度などをもうけて支援をおこなうと同時に、違法・脱法行為をなくし、非正規雇用で働く人たちの社会保険加入・厚生年金加入の権利を守ります。
この間、自公政権によっておこなわれた高齢者の年金にかかる所得税・住民税の増税について、公的年金等控除の最低保障額を140万円にもどすとともに、所得500万円以下の高齢者には老年者控除を復活します。
介護保険料や住民税の年金からの特別徴収(天引き)については、「天引き」の強制をやめさせ、各人の希望で普通徴収に変更できるようにします。
自公政権の時代に「百年安心」といって2004年に導入されたしくみが、物価が値上げしたときにも、年金額をすえおく重大な役割をはたしています。その繰り返しによって、年金の給付水準を15%も削減しようという「マクロ経済スライド」の仕組みは撤廃します。さらに、09年度のように、物価上昇率が名目賃金上昇率を上まわっている場合に、物価スライドの上昇率を名目賃金上昇率まで引き下げる仕組みもやめさせます。過去の物価下落時に国民生活の困難に配慮して凍結したマイナススライド分を、物価が上昇するときに年金額から引き下げることは中止すべきです。
国民からみて公平な年金制度をめざすことは当然ですが、民主党政権や、過去の自公政権がすすめてきた年金の「一元化」論議は、負担は重い方に、給付は少ない方にあわせることになりかねない危険なものです。
現在の国民年金と被用者年金(厚生年金・共済年金)は給付水準に大きな格差があり、また、被用者年金には事業主負担がありますが、国民年金にはありません。そのため、民主党政権が主張するようにこれらを単純に「一元化」すれば、国民年金の給付水準を被用者年金にあわせれば、事業主負担のない国民年金加入者の保険料は数倍にはねあがります。また、被用者年金を国民年金にあわせれば、被用者年金の給付水準の大幅な引き下げとともに、財界が要求してきたように、被用者年金の事業主負担をなくす入口にもなりかねません。どちらにしても、保険料の大幅な引き上げか、給付水準の引き下げであり、国民にとって良いことはありません。
また、自公政権のもとで議論がすすめられてきた厚生年金と共済年金の一元化では、厚生年金が改善されることはなく、ただ「見せしめ」的に共済年金の制度を改悪するだけです。しかも、改悪の対象には公務員だけでなく、零細な私立学校や幼稚園の教職員なども含まれます。
日本共産党は、年金の水準をいっそう貧しくする「一元化」ではなく、年金制度間の格差をなくし、国民からみて公平な制度をめざすべきだと考えます。そのために、いちばん具体的で現実的な方法は、最低保障年金制度を創設して、国民年金と厚生年金の低い部分の底上げをはかり、全体として格差を縮小していくことです。財源は、大企業・大資産家に応分の負担を求めるなど、歳出・歳入の改革によってまかないます。そうしてこそ、誰もが「生存権」を保障される年金制度への道が開かれます。
深刻な受診抑制、急増する無保険者、医師・看護師不足、地域の拠点病院の消失――「医療費削減」の名で国民の命と健康を切り捨てる政治が続いた結果、日本の医療は今、「崩壊」の危機にひんしています。こうした政治のおおもとには、大企業の税・保険料負担を減らすため、公的保険・公的医療の縮小・解体を求める日本経団連などの要求があります。
民主党は「医療費削減」路線の「転換」を公約して政権につきましたが、後期高齢者医療制度の廃止を先送りし、約束していた国保への国庫負担増もおこなわず、2010年度の診療報酬改定も実質「ゼロ増額」に終わらせるなど、国民への公約を裏切り続けています。日本共産党は、財界の身勝手な要求にこたえて公的医療保険を切り縮める政治を転換します。「保険証一枚」あれば、だれでも、どんな病気でも必要な医療が受けられるという「国民皆保険」の原則にもとづき、医療制度を土台から建て直します。
高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込み、負担増と差別医療を押しつける後期高齢者医療制度は、社会保障費削減路線の最悪の象徴です。民主党はこの制度を撤廃し、元の老人保健制度に戻すと公約していました。ところが、政権につくと“事務手続きに時間がかかる”などと言いだし、「新制度をつくる4年後まで現行制度を維持する」方針に転換しました。また、当初は、“先送りするかわりに制度の弊害は極力解消する”と弁明し、2010年の保険料値上げを抑えるため国庫補助をおこなうと言明していましたが、結局これも反故にし、この4月から31都道府県で、後期高齢者医療保険料が引き上げとなりました。
さらに、民主党政権が2013年度の導入をめざす「新制度」の内容も大問題となっています。厚生労働省の「高齢者医療制度改革会議」で検討されている案のうち、唯一、詳細な「財政試算」がつけられ、各紙に「厚生労働省案」と報じられているが、「65歳以上の人を国保に加入させた上で、64歳以下と別勘定にする」案です。高齢者を別勘定にすれば、保険料は高齢者の人口増や給付費増に応じて際限なく引き上がらざるを得ません。健保加入となっている高齢者は、65歳の誕生日を迎えると健保を脱退させられ、新たな保険料を徴収されます。これでは、差別と負担増の対象を「75歳以上」から「65歳以上」に拡大しただけです。しかも、厚労省の試算によれば、この「別勘定国保」が導入されれば、高齢者医療に対する国庫負担はさらに削減されます。
日本共産党は、後期高齢者医療制度をすみやかに撤廃し、元の老人保健制度に戻します。老人保健制度は、高齢者を国保や健保に加入させたまま、窓口負担を現役世代より軽くするための財政調整の仕組みです。後期高齢者医療制度を廃止して老人保健制度に戻せば、保険料の際限のない値上げや別枠の診療報酬による差別医療はなくなります。保険料の「年金天引き」や「保険証取り上げ」の制裁もなくなります。高齢者が75歳になったとたんに家族の医療保険から切り離されることもなくなり、65〜74歳の障害者も、国保や健保に入ったまま低負担で医療が受けられます。自治体職員やシステムの専門家からも、“新制度を立ち上げるより、元の制度に戻す方が容易で、短期間にできる”という声が上がっています。老人保健制度に戻したうえで、減らされ続けた高齢者医療への国庫負担を抜本的に増額し、高齢者の窓口負担の無料化、保険料負担の軽減をはかります。
「現役世代=3割、高齢者=1〜3割」という窓口負担に国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起こっています。東京大学医科学研究所の調査によると、糖尿病など慢性疾患患者のうち、「医療費の支払いに負担を感じる」という人は7割、「治療中止を考えた」という人は4割にのぼります。また、東北大学の研究者の推計でも、がん患者のうち、経済的理由で治療中断や治療内容の変更をしている人は、少なくとも数万人にのぼります。
ヨーロッパ諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も、1980年代前半までは「健保本人は無料」「老人医療費無料制度」でした。高すぎる窓口負担の軽減は今、日本医師会をはじめ医療界の一致した要求となっています。
日本共産党は、他の先進国では当たり前の“窓口負担ゼロ”の医療制度をめざし、その第一歩として、就学前の子どもの医療費無料化制度を国の制度を創設し、75歳以上の高齢者の医療費を無料化します。さらに、現役世代の3割負担も、健保・国保、本人・家族ともに引き下げていきます。70〜74歳の2割負担への引き上げを撤回し、「現役並み所得者」の3割負担をやめて、一律1割とします。
市町村が運営する国民健康保険では、所得200万円台で30万円、40万円の負担を強いられるなど、各地の国保料(税)が住民の支払能力をはるかに超え、滞納が加入者の2割を超えています。国保料(税)滞納を理由に保険証を取り上げられ、医療費の全額を負担する「資格証明書」にかえられた世帯は31万世帯にのぼります。また、「派遣切り」などで健保を追い出され、国保も「未加入」となっている人、自治体当局が保険証を「留め置き」にしたまま放置している人など、数十万人規模の無保険者が生まれ、「資格証・無保険」の人が医者にかかれず、死亡する事件が全国で続発しています。国民の命と健康をまもる公的医療保険が、国民の貧困をますますひどくし、社会的弱者から医療を奪うことなどあってはなりません。
民主党は、野党時代、「(市町村国保に対し)9000億円弱の予算措置を、我が党が政権をとった暁にはさせていただく」(鈴木寛議員、08年11月9日、衆院厚労委員会)といっていましたが、その公約は反故にされました。
日本共産党は、国の責任による国保料(税)の値下げを緊急に提案します。国保料(税)の「応益割」部分を、年間1人1万円(4人家族なら4万円)、国の支出で引き下げます。所得にかかわらず“頭割り”で課される「応益割」の引き下げは、国保料(税)の逆進性を緩和して、中・低所得者の負担を軽くします。
貧困にあえぐ人から医療まで取り上げる――こんな非情な行政をおこなっている国は、ヨーロッパにはありません。生活困窮者からの保険証の取り上げをただちに中止し、貧困におちいった人に医療を保障する仕組みを拡充します。
政府の圧力と指導のもとで横行する、国保料(税)を滞納した人への脅迫まがいの督促、無法な財産調査・差し押さえなど、加入者の人権を無視した国保行政をやめさせます。
国保法第44条にもとづく窓口負担の減免措置を推進します。生活悪化で窓口負担を払えない人が急増し、医療機関の未収金も増大するもと、政府もこの間、国保法第44条の活用を言わざるを得なくなりました。国の責任ですべての自治体で減免制度を行わせ、対象者の拡大など制度拡充をすすめます。
低所得者に対する国保料(税)の減額・免除制度を拡充します。現行制度にも、失業や災害、事業不振など「特別な事情」で所得が減った人への国保料(税)の減免制度があり、政府もこの間、失業者などへの負担軽減策をとっていますが、適用を受けられる人は限定され、多くの生活困窮者が、滞納・無保険者となっています。急激な収入減におちいった人はもちろん、広範な低所得を対象とした減免制度を国の責任で整備します。
国庫負担の増額で国保料(税)全体の水準を引き下げつつ、“低所得者に重い”国保料(税)の算定方式を見直し、所得に応じた国保料(税)に改革します。公的年金等控除の縮小や定率減税の廃止など、この間の庶民増税に連動した国保料(税)の値上げから国民をまもる、負担軽減策をすすめます。
国民健康保険を安心できる医療制度とするには、根本的な制度改革が必要です。低所得者が多く加入する国保は、そもそも手厚い国庫負担なしには制度が成り立ちません。しかもこの間、大企業の雇用破壊で失業者や非正規労働者が国保に流入し、「構造改革」によって自営業者や農林漁業者の経営難・廃業が加速するなど、“国保の貧困化”が急速に進行しています。ところが、歴代政権は1984年の国保法改悪を皮切りに、国保に対する国の責任を次つぎと後退させてきました。1984年から2007年の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は約50%から25%へ半減し、それと表裏一体に、一人当たりの国保料(税)は3・9万円から8・4万円へと2倍以上に引きあがりました。日本共産党は、国保への国庫負担を計画的に1984年度の水準に戻し、国保料(税)をだれもが払える水準に引き下げ、国保財政の立て直しをはかります。
民主党政権や一部の自治体首長が「国保の広域化」「都道府県単位化」を叫んでいます。さきの通常国会でも、都道府県に市町村国保の「広域化推進方針」を策定させ、国保料(税)の収納対策を指導する権限や国保への予算配分の権限を都道府県に移譲して、「国保の都道府県単位化」を推進する法案が可決されました。国の予算を削減したまま国保を寄せ集めても“弱者同士の痛みのわかちあい”にしかならず、国保財政の改善にはつながりません。厚生労働省は、国保「広域化」を推進する通達のなかで、都道府県下の国保料(税)を「均一」にするため、市町村の一般財源の繰り入れは解消し、保険料値上げに転嫁せよという号令もかけています。これでは、国保料(税)は高騰するばかりです。保険者の「広域化」が、問答無用の税・保険料徴収、機械的な給付抑制、住民無視の組織運営につながることも、後期高齢者医療制度や介護保険の広域連合によって、すでに実証されています。日本共産党は、市町村国保を解体して住民不在の機構に改編する改悪に反対し、住民の命と健康をまもる社会保障の制度として、国保の再建をはかります。
民主党政権は「医療保険の一元化」も唱えていますが、国庫負担を削減したまま「一元化」をしても、国保の財政赤字が健保に転嫁され、現役労働者の保険料が値上げされるだけで、なんら制度の改善にはなりません。「一元化」を理由に、事業主負担が削減・廃止されれば、国民の負担はさらに増大します。「一元化」により、現在、各保険者が独自におこなっている“給付の上乗せ”などが不可能になることへの懸念も出ています。もともと、医療制度の「抜本改革」として、「医療保険の一元化」めざす方針を打ち出したのは自公政権の小泉政権でした。ねらいは、保険者ごとの“負担軽減”や“独自給付”をなくし、“医療を受ければ保険料に跳ね返り、負担増に耐えられなければ給付を制限する”という、むき出しの保険原理で運営される地域保険に全国民を加入させて、さらなる「医療費削減」をはかることでした。こうした旧政権以来の流れを引き継ぎ、「医療保険の一元化」を前提に「制度改革」の論議を重ねても、国民に願いに応える改革案は出てきません。「医療費削減」路線の枠内での保険者組織の改編ではなく、削減された国庫負担の復元で、公的医療保障を立て直すことこそ、求められます。
民主党政権の発足後、建設国保などの国保組合が取り組む、入院費無料化などの“独自給付”を非難・攻撃する、異常なキャンペーンが繰り返されています。国保組合に対する国庫補助率は市町村国保よりも低く、建設国保などに「手厚い国庫補助」が出ているという攻撃はまったく事実を偽った宣伝です。建設国保の“独自給付”は、「有給休暇や退職金制度もなく、病気等で仕事ができないと無収入になる」という加入者の実情を踏まえ、加入者が割高の保険料を負担しながら実施している事業であり、そこには国庫補助は投入されていません。事実を二重、三重にねじ曲げた上で、キャンペーンの推進者が訴えるのは、国保組合への国庫補助の削減です。
公的医療保険は加入者の命と健康をまもる制度であり、窓口負担の軽減は、病気の早期発見・早期治療を促進し、医療費の不必要な膨張を抑えることにもつながります。建設業者・家族が、お金の心配なく医療にかかれるようにする建設国保の取り組みは、制度本来の主旨にかなったものです。
日本共産党は、さらなる国の医療予算の削減をねらった卑劣なキャンペーンに反対し、国保組合への国庫補助をまもり、拡充します。
2002〜08年の診療報酬改定で、自公政権が削減した診療報酬は7・68%――年間2・6兆円にのぼります。これが、保険医療に従事するすべての医療機関を経営危機におとしいれ、「医療崩壊」を引き起こす大きな要因となりました。診療報酬の大幅増額による地域医療の立て直しは、医療従事者はもちろん、いまや国民的な要求です。
民主党は09年総選挙で、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけた」(「医療政策<詳細版>」)と自公政権を批判し、大幅引き上げを公約しました。ところが、政権獲得後に打ち出した2010年度の診療報酬の増額はわずか0・19%(700億円増)――事実上、削減されたままの水準に据え置かれました。しかも、今回の診療報酬改定には「表に出ていない薬価削減」(△600億円)もあり、これを加えると、実質の増額は0・03%(100億円増)、事実上の「ゼロ回答」であったことが明らかとなりました。
このように全体のパイが増えないもと、2010年度の診療報酬改定では、高度医療を担う大規模病院に重点的に財源が投入される一方、診療所の再診料、中小病院や療養病床の報酬は削減されました。医療は大規模病院だけでは成り立ちません。大規模病院と中小病院、病院と診療所、医療機関と介護施設等が連携して、住民の命と健康をまもっています。再診料引き下げで開業医の経営に打撃を与え、中小病院の淘汰や病床削減を誘導する診療報酬改定では、「医療崩壊」は加速するばかりです。
日本共産党は、診療報酬を抜本的に増額し、地域医療全体の底上げをはかります。診療報酬の増額を患者負担に直結させないためにも、窓口負担の軽減・無料化が求められます。この点で、日本医師会など医療界が一致して、診療報酬増額と窓口負担軽減をセットで要求し、「医療崩壊」を立て直す国民的共同を呼び掛けているのは重要です。
自公政権は2006年の「医療改革法」で、介護型療養病床を全廃し、医療型療養病床を大幅削減することを決めました。さらに、06・08年の診療報酬改定で、療養病床に入院する患者の「医療の必要度」を区分し、「軽度」とされた人の診療報酬を大幅に引き下げるなど、入院患者の“追い出し”を促進する改悪を強行してきました。
民主党政権は、療養病床削減計画の撤回を公約して政権につきましたが、その公約はいまだ実行されず、2010年度の診療報酬改定では、療養病床の診療報酬をさらに引き下げる改悪も実行されています。
日本共産党は、「医療難民」「介護難民」を大量に発生させ、患者と家族に多大な苦しみを負わせる病床削減・廃止計画を中止・撤回させ、必要なベッドをまもります。診療報酬や負担増による病院追い出しをやめさせ、慢性期患者の医療を保障します。
2006年の「医療改革法」では、「混合診療」の拡大に道をひらく、「保険外併用療養費」の導入も行われました。保険診療と自費診療の併用を認める「混合診療」の解禁は、「必要な治療はすべて保険でおこなう」という公的医療保険の原則を崩し、患者の支払能力による治療の格差を生みだすものです。こうした動きの背景には、大企業の保険料負担の軽減を求める財界と、ビジネスチャンスを増やそうという米日保険業界の要求があります。「医療改革法」の施行後も、財界からは「混合診療」の全面解禁を求める提言があいついでいます。民主党政権も、医療を産業として育成する「ライフ・イノベーション」の一環として、保険外併用療養の拡大を打ち出しています(行政刷新会議「規制・制度改革分科会」報告書)。日本共産党は「混合診療」拡大を許さず、「保険証一枚」でだれでも平等に必要な医療が受けられる制度をまもり、広げます。
「軽い病気」の治療を保険外にする「保険免責制度」、医療機関が処方する風邪薬や胃腸薬の「保険はずし」など、財界が要求する公的医療保険のさらなる縮小に反対します。安全・有効な治療技術はすみやかに保険適用とする仕組みをつくり、差額ベッド料などの自費負担をなくし、安全で質の高い治療が保険で受けられるようにします。
「株式会社による医療経営」の解禁など、日本の医療を日米大企業の新たな儲け口とするために、国民の命と健康を犠牲にする「医療の市場化」に反対します。
2006年「医療改革法」にもとづき、40〜74歳の国民に「特定健診・保険指導」を受けさせ、加入者のメタボリックシンドロームの改善をせまる仕組みがスタートしています。加入者の“受診率”や“メタボ改善率”が低いとされた医療保険には、財政支出増のペナルティが課され、加入者の保険料値上げにつながります。政府が国民に“健康づくりを怠った”というレッテルを貼り、懲罰を課すのは本末転倒です。特定健診の検査項目が「メタボ対策」に特化されたため、従来の健診にあった、病気の早期発見に必要な項目が除外されるなどの問題も発生しています。健診が保険者負担になることで、国保や健保のなかには、住民・労働者に費用を転嫁する動きも起こっています。健診の営利化により、医療保険財政が、健康機器業界やフィットネス産業など「メタボビジネス」の食いものになることへの懸念も広がっています。日本共産党は、「自己責任」の名で健診をゆがめ、国民の健康保持に対する国・自治体の責任を後退させる改悪に反対します。病気の予防・早期発見という本来の主旨にたち、健診の改善・充実をはかります。
2006年の「医療改革法」では、国と都道府県が5年単位の「医療費適正化計画」を策定し、経済指標を参照しながら給付費抑制を推進していく仕組みが導入されました(第1期計画は2008〜2012年度)。“医療給付費の伸び率を経済成長率以下に抑制せよ”という財界の要求にもとづく制度改編です。各都道府県は「適正化計画」に「老人医療費の抑制」「病床数の削減」「メタボ・予備軍の減少」などの数値目標をさだめ、その達成をせまられます。給付費抑制の目標を達成できない都道府県には、その県だけ診療報酬を低く設定し、医療機関に経営難をしいるなどのペナルティが国から課されます。住民の命と福祉をまもるべき地方自治体を、医療切り捨ての先兵に使う改悪など許されません。日本共産党は、「医療費適正化計画」をはじめ、都道府県・市町村を給付費削減競争に動員する仕組みを撤廃します。
2006年「医療改革法」により、財政・保険料ともに全国単一だった政管健保が、都道府県単位で運営される協会けんぽに改編されました(実施は08年10月)。政府のねらいは、保険料に地域ごとの格差をつけ、「医療費適正化計画」ともリンクさせながら、都道府県単位で給付費抑制を競わせあうことです。今年度、協会けんぽは、全国で大幅な保険料値上げとなりました。最大の原因は、長年にわたる政府の国庫補助削減です。自民党政府は、1992年以来、本来は「16・4%〜20%」とされている政管健保への国庫補助率を13%に引き下げ、健保財政を赤字におとしいれてきました。こうした恒常的な財政難の上に、不況・賃下げによる加入者の所得減、高齢者医療への過重な支援金負担などの要因が重なり、大幅な保険料値上げとなったのです。
民主党政権は2010年度、協会けんぽ本体への国庫補助を16・4%に戻しましたが、協会けんぽが支出する高齢者医療支援金への国庫補助は削減し、その分を組合健保や共済に転嫁しました。こうした中途半端な対応のために、協会けんぽの財政悪化・保険料値上げをくい止めることができなかったのです。民主党政権が、自公政権がつくった都道府県単位の給付費抑制の仕組みを、そのまま引き継いでいることも重大です。
日本共産党は、協会けんぽへの国庫補助を緊急に20%まで引き上げ、協会けんぽの財政再建、労働者・中小企業の負担軽減にむけた国の支援を強化します。06年「医療改革法」で導入された、保険料引き上げ・給付費抑制の仕組みを撤廃し、中小企業の労働者やその家族に国の責任で医療を給付するという、政管健保の本来の目的・役割をまもる立場から、制度の改革をすすめます。
日本の総医療費はGDP(国内総生産)の8・2%、サミット参加7カ国では最下位です。公的医療費の対GDP比も6・7%であり、イギリス(7・3%)並みにするなら2兆円、ドイツ(8・1%)並みにするなら7兆円、公的医療費が増えることになります。国民の長寿化や医療技術の進歩によって、医療費が増えることは本来、おそれるべきことではありません。日本共産党は、「医療費削減」の名で患者・国民、医療機関・医療従事者に犠牲を強いる路線を転換し、公的医療保障を拡充します。高薬価や高額医療機器など医療保険財政の無駄にメスを入れつつ、国の歳出の浪費を見直し、大企業・大資産家に応分の税・保険料負担を求めて、財源を確保します。
地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となっています。根本原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を抑制し、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた歴代政権の失政です。そこに、診療報酬削減による病院の経営悪化、国公立病院の統廃合・民営化などの「構造改革」が加わって、地域の拠点病院・診療科の消失が引き起こされています。
民主党は、自公政権の「医療費削減」「医師数抑制」を批判して政権につきましたが、医師増員・確保の抜本策には手をつけず、診療報酬のわずかな「増額」を理由に、地域の医師確保の予算を削るなどの対応に終始しています。政府の「事業仕分け」では、国立病院・労災病院に「不採算な病棟の廃止」が要求され、総務省「公立病院改革ガイドライン」による公立病院の統廃合や病床削減も、引きつづき推進されています。
医師数がOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均よりも14万人も少ないという日本の現状からすれば、さらに抜本的な医師増員が必要です。地国公立病院などの公的医療機関には、コスト削減の強要や統廃合の押しつけではなく、地域医療の拠点としての手厚い支援こそ求められます。「医師数抑制」「病院淘汰・病床削減」路線を転換し、国の責任で計画的な地域医療の確保と再建をはかります。
――国の予算投入で医師の養成数を抜本的に増やし、OECD加盟国平均並みの医師数にします。そのために、医学部定員をただちに1・5倍化します。医学部の「地域枠」や奨学金の拡充、教育・研修内容の充実をはかります。
――産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。
――医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額します。
――医師の公的任用、公募などで医師を確保する「プール制」「ドクターバンク」、代替要員の臨時派遣など、不足地域に医師を派遣・確保する取り組みを、国の責任で推進します。
――勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、医療事務員、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立をめざします。女性医師の働きやすい環境づくり、産休・育休・現場復帰の保障などを国として支援します。
――「公立病院改革ガイドライン」の押しつけをストップします。国公立病院の乱暴な統廃合・民営化、社会保険病院・厚生年金病院・労災病院などの売却をやめ、地域医療の拠点として支援します。
――2004年の新臨床研修制度の導入によって、大学病院の医師派遣機能が低下したことは医師不足が露呈するきっかけとなりましたが、新臨床研修制度自体は、研修医の力量アップをはかる改善です。ところが、政府はこれを「医師偏在」の原因だとし、研修期間の短縮や研修先の強制的などの「見直し」をおこなおうとしています。日本共産党は、よい良い医師を育てるという臨床研修制度の主旨をまもり、研修内容の充実、受け入れ病院への支援強化、研修医の待遇改善をすすめます。
看護師の不足、超過密労働、離職者の急増は、医療の安全をおびやかす重大問題です。2006年、国は看護師の配置基準を18年ぶりに改定し、「患者7人に看護師1人」(「7対1」)を配置した医療機関に報酬を加算して、手厚い看護体制を促す仕組みをつくりました。ところが、看護師が絶対的に不足しているうえに、「構造改革」で診療報酬全体が大幅に削減されたため、“看護師争奪戦”が激化し、経営難の中小・地方の病院で看護師不足がいっそう深刻化する事態が起こりました。これに対し、政府は、「7対1」基準の報酬を取得できる要件に「重症度・看護必要度」などを導入しましたが、その要件はきわめてきびしく、現場の負担を増やし、増員の流れに水をさすものとなっています。
本当に手厚い看護体制を実現するには、諸外国に比べて異常に少ない看護師数を抜本的に増やすことが必要です。また、医療機関に「入院日数の短縮」をせまって看護師の過密労働を激化させるなど、給付費抑制のため看護現場に犠牲をしいる医療政策の転換が求められます。看護師の配置基準を満たせない中小・地方病院をさらなる経営悪化に追い込み、選別した病院だけを支援する路線もあらためるべきです。日本共産党は、地域医療をまもり、すべての患者に安全でゆきとどいた治療を保障するため、看護師不足の解決に全力をあげます。諸外国に比べて少なすぎる看護職の抜本的増員、労働条件の改善と地域医療の支援、退職した看護師の再就労支援などで、看護師200万人体制を確立します。
――「7対1」基準の報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにします。「7対1」以外の配置基準を満たしているすべての病院にたいし、診療報酬を緊急に引き上げ、人員体制の確保を応援します。
――看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。
――政府が検討している「第7次看護職員需給見通し」に実態を十分反映させ、新たに「看護師確保緊急7カ年計画」を策定して、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。「行革」の名による看護学校の切り捨てをやめ、自治体独自の看護師増員対策をすすめます。看護教育制度の抜本的充実をすすめます。
――退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅に増やして支援します。
給付費抑制を最優先に、国民に負担増を求め、公的保険を切り縮めて市場原理にゆだねる財界流「医療改革」では、患者の重症化がすすみ、国の医療費は逆に増大するだけです。日本共産党は、本当に持続可能で安心できる医療保険財政を確立するため、(1) 減らしつづけた医療への国庫負担を計画的に元に戻す、(2) 薬の価格をさらに見直し、異常に高い高額医療機器の価格を引き下げる、(3) 予防・公衆衛生や福祉施策の充実に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進する――などの改革に取り組みます。
この間、大企業の賃下げやリストラ、非正規雇用への置きかえで健保の収入が減り、不安定雇用の労働者が大量に国保に追いやられたことも、健保・国保財政を悪化させる原因です。1980年度と2008年度を比較すると、国民医療費に占める事業主負担の割合は4%――1兆3000億円分も減りました。医療保険財政を立て直すためにも、大企業に雇用・賃金・保険料負担にたいする社会的責任を果たさせます。
低所得者や治療が長期間にわたる患者の過重な医療費負担を軽減するため、高額療養費制度の改善を緊急にすすめます。
負担限度額の上限を、現役世代も高齢者も、通院も入院も大幅に引き下げます。負担限度額の「1%」の定率部分をなくします。70歳未満の通院にも、受領委任払いを導入します。70歳未満の入院費の受領委任払いを徹底し、使いやすい制度に改善します。
「多数該当」の要件を緩和し、同じ疾患への治療なら、1年を超えても減額が受けられるようにします。“同一世帯でも異なる保険者だと医療費を合算できない”“治療が月をまたぐと医療費が別々に計算され、高額療養費が適用されない”などの矛盾を解決します。
対象が限定され、当事者が申請しないと適用されない、高額医療・介護合算制度を抜本的に見直します。
現行では三疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)に限られている「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、ウィルス性肝炎や慢性骨髄性白血病(CML)など、治療が長期にわたり、高額の医療費がかかる疾患を対象としていきます。
H1N1型ウィルスによる新型インフルエンザの流行に備え、必要な医療・保健体制を国の責任で拡充・強化します。H5N1型ウィルスによるヒト・ヒト感染の強毒性インフルエンザなど、別種の新型インフルエンザの流行にも備え、抗インフルエンザ薬とプレパンデミック・ワクチンの備蓄量を大幅に増やすなど、医療・保健体制を抜本的に強化します。
はしか対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。
細菌性髄膜炎の予防に有効で、WHOも定期予防接種を推奨している「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」の、国の予算による無料・定期接種化をめざします。
子宮頸がんはウィルス感染を原因とする病気であり、欧米諸国では、ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンの早期接種による予防がおこなわれています。日本でも、ワクチン接種への公費助成をおこなう自治体が出ています。国の予算による定期接種化を実現します。
今後も予想される、さまざまな感染症の発生・流行にそなえ、政府が「採算重視」の名で閉鎖・削減してきた100施設・3400床の感染症指定医療機関を復活させ、拠点病院への専門医・看護師の配置、医療機器の整備、保健所の体制強化、ワクチンなどの研究・製造システムの確立をすすめます。
小学校就学前の子どもの医療費を、所得制限なしで無料化する国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。子どもの医療費の助成制度(現物給付)をおこなっている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせます。
診療報酬は、国民に平等に医療を保障し、“もうけ本位の医療”を許さないための大事な仕組みです。ところが、歴代政権は、医療にかかる国の予算を減らすために診療報酬の仕組みをゆがめ、「医療費削減」の道具にしてきました。現行の診療報酬は、医療従事者の労働を不当に低く評価し、そのことが、中小病院の経営難や医療従事者の労働条件悪化の大きな原因となっています。急性期患者の強引な早期退院を誘導する報酬改定、高齢者・長期入院の“追い出し”を促進する報酬削減、長期リハビリに対する保険給付の制限など、公的医療費の削減をねらったさまざまな報酬操作が、医療現場の矛盾を拡大し、医療従事者と患者の両方を苦しめています。
日本共産党は、医科でも歯科でも診療報酬を抜本的に増額するとともに、「国民皆保険」をまもり、拡充する立場で診療報酬の改革に取り組みます。診療報酬の総額削減、保険外診療の拡大に反対し、安全・有効な治療はすみやかに保険適用とする仕組みをつくります。“安上がり医療”をねらった「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対し、「出来高払い」による給付をまもります。薬・医療機器にかたよった報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革します。
高齢者や長期入院患者の給付費削減をねらった差別的な診療報酬を廃止します。
地域医療・救急をささえる病院を大幅な減収に追いこみ、病院に「保険外併用療養」の採用をせまる、「総合入院体制加算」を撤回させます。
標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする改悪を許さず、リハビリ日数制限の全面撤回と制度の再構築を求めます。
政府は2008年10月から、脳卒中や認知症の入院患者を多く抱える「特殊疾患病棟」、「障害者施設」に対する診療報酬の減額を強行しました。脳卒中・認知症患者などの“病院追い出し”をねらった改悪を撤回させます。
2006年改定による人工透析の「夜間・休日加算」の引き下げにより、外来の夜間透析を廃止・縮小する医療機関が各地で生まれ、患者が仕事をやめざるをえなくなるなどの事態が続いています。患者負担の軽減をすすめながら、適切な報酬への引き上げをはかります。
2010年度の診療報酬改定では、「24時間対応」をおこなう診療所に、「地域医療貢献加算」がつけられました。多くの診療所は、学校医の引き受け、自治体の集団健診や乳幼児の定期健診への協力、輪番制による夜間診療所への参加など、地域医療に多様な貢献をしています。これらをいっさい評価せず、診療所の報酬全体を引き下げながら、一部の診療所だけ“地域医療に貢献している”と評価する手法に、多くの開業医が批判の声をあげています。診療所の役割や地域医療の実態に即した診療報酬に改善します。
今年4月から、保険請求を電子化している医療機関には、診療明細書の患者への発行が義務化されました。医療の内容を患者自身が知ることは、患者の権利をまもり、医療の安全・安心を高めるために重要です。しかし、現行の診療明細書は、患者がもっとも知りたい医療内容の情報がすべてわかるものとなっておらず、医療機関に煩雑な負担をしいるだけとなっています。情報提供のあり方について、抜本的に見直すことが必要です。
今年度の診療報酬改定では、入院中の患者が他の医療機関で受診した場合、▽入院医療機関に支払われる入院料を減額する、▽他医療機関が算定できる報酬の範囲を制限する、▽他医療機関による投薬を当日分に限る――などの仕組みが導入されました。こうした報酬削減・投薬規制に、医療現場からは「入院患者に必要な医療を提供できない」「医療機関の連携を阻害する」などの批判の声が上がっています。日本共産党の国会論戦などを受け、投薬規制の一部は見直されましたが、入院医療機関への報酬削減、他医療機関の算定範囲の制限、包括払い病床の患者に対する投薬規制は、今も続いています。地域医療の実態とかけ離れ、患者・医療機関の双方に困難をもたらす、不合理な報酬のあり方をあらためます。
政府は、出産一時金の“直接払い制度”を導入しましたが、支払いが出産から1〜2カ月後となり、資金繰りに困る産科医療機関が出てくるなど、混乱した事態となっています。妊産婦・医療機関の双方の負担とならないよう、制度の改善をすすめます。
政府は、歯科の診療報酬を不当に低く抑え、自費診療・混合診療を拡大してきました。この20年間、重要な診療行為の保険点数が据え置かれ、新たな歯科医療技術の保険収載もほとんどおこなわれないという事態がつづいています。そのために、患者は保険だけでは十分な治療が受けられず、高い自費負担に苦しめられています。一方で、多くの歯科医は経営難にあえぎ、開業歯科医の4分の1が年収300万円以下の「ワーキングプア」という状況になっています。2010年度の改定で、歯科の診療報酬は2・09%引き上げられましたが、劣悪な水準の改善にはほど遠いものです。日本共産党は、国民の口腔の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、歯科診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実にむけた支援を進めます。
初診料・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。長期にわたり据え置かれている「う触処理」などの基礎的技術料を引き上げます。医科・歯科ともに窓口負担の抜本的軽減を進めます。
歯周病の治療・管理や義歯に関わる包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。画一的な文書提供業務の押しつけをやめさせます。
2010年度の改定では、訪問歯科診療料の算定要件が改悪され、点数が引き下げられました。「同一建物内で複数の患者を診察した場合の減算」「20分未満の診療に対する減算」など、不合理な報酬削減を撤回し、元に戻します。
国民の歯科医療への需要の高まりや、治療技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消をはかります。歯科新技術の安全・有効性を確認してすみやかに保険収載とする仕組みを確立し、金属床の部分入れ歯など、実績もあり、広く用いられている治療法は保険給付の対象としていきます。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付はずしに反対し、混合診療となっている欠損・補綴の保険移行をすすめます。
歯科技工士や歯科衛生士の役割を、適正に評価する診療報酬にあらためます。入れ歯にかかわる診療報酬の改悪により、歯科技工所の経営難・廃業が加速し、新たに歯科技工士となる若い人を確保できないなどの事態が深刻化しています。一方で、安全や品質に規制のない安価な海外技工物が大量に輸入され、自費診療で使用されています。歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と連携して「よい入れ歯」を保険で給付できるよう、歯科技工物にたいする診療報酬の改善をすすめます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準を設けて規制をおこないます。
歯科健診の充実など、国民の口腔の健康をまもる取り組みを国の責任で推進します。
安全な医療は国民の切実な願いです。日本には医療事故を専門に取り扱う公的機関が存在せず、もっぱら警察の捜査に責任追及がゆだねられてきましたが、それでは問題の解決も被害者の救済もはかれません。政府内でも医療事故調査機関の設置が検討されてきましたが、現在、議論は中断され、国会に法案が提出されないままとなっています。日本共産党は、医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関の設置を早くから提案してきました。国民の願いにこたえ、医療現場の苦難を軽減するためにも、患者・国民、医療従事者の意見を聞きながら、公正中立な調査機関のすみやかな設置を実現します。
分娩時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう「産科医療補償制度」が09年1月から始まりましたが、補償の対象が限定され、基金の運営は営利企業に丸投げで、透明性・公平性にも疑問がだされるなど、問題の多い制度となっています。現行制度の抜本的見直しをすすめつつ、諸外国のような幅広い医療事故に対応できる無過失補償制度の創設をめざします。
患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「基本法」の制定をすすめます。
医療内容のすべてを反映せず、患者のための情報開示というニーズを満たさない一方、医療現場に負担をしいるだけとなっている、現行の「診療明細書の発行」を見直し、患者に医療の内容をわかりやすく知らせる、情報開示の仕組みを整備します。
日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、歴代政権は、窓口負担増、保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。「医療崩壊」が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差も深刻な問題となっています。がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。
薬害(肝炎、イレッサ、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。
薬害C型肝炎訴訟の原告・弁護団の運動がみのり、2008年1月、薬害発生と被害拡大に対する国の責任を明記し、血液製剤によってC型肝炎に感染した被害者を救済する法律が成立しました。しかし、救済法では、カルテのない被害者の救済がきわめて困難で、対象となる血液製剤は限定され、先天性疾患の治療や集団予防接種などで感染した被害者は救済対象から外されています。日本共産党は、すべての被害者の救済をはかり、製薬企業にも謝罪・補償・再発防止をおこなわせるなど、全面解決にむけた努力をつづけます。
B型肝炎についても、集団予防接種における注射器の回し打ちによる感染被害として、最高裁が国の責任を断罪してから、4年がたっています。ところが、政府は裁判所の勧告を受けて和解に応じる態度を表明しながら、具体的な解決策は何一つ示していません。日本共産党は、志位和夫委員長の代表質問(2010年6月14日、衆院本会議)をはじめとする国会論戦や政府交渉で、政府による謝罪と、早期全面解決にむけた具体的な解決策を要求してきました。早期全面解決と被害者救済にむけた取り組みをさらに推進します。
350万人とも言われるウィルス性肝炎患者の治療推進と生活支援にむけ、肝炎対策基本法のさらなる充実や、「肝炎治療7カ年計画」の拡充を求めます。C型肝炎に対する肝がん予防を目的としたインターフェロン投与や、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の使用などの有効性をすみやかに確認し、必要な検査・治療は迅速に医療費補助の対象としていきます。ウィルス性肝炎を「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」の対象に加え、患者負担を軽減します。「肝炎ウィルス無料検査」の拡充、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、「肝炎情報センター」の機能拡充など、肝炎の早期発見・治療、情報提供、研究体制の充実をはかります。
保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が購入する医薬品・医療機器などには消費税が課税されています。これによって医療費の負担も増え、医療機関の経営も圧迫されています。医療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。
社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を継続します。租税特別措置法第26条等に規定された、医療機関の概算控除の特例を存続させます。
救急体制の確保は、人の生死を左右する課題です。この十年間で救急出動件数が65%も増加しているのに、救急隊員数は9%増にとどまるなど、政府の責任放棄が患者の命を脅かし、救急現場の矛盾を拡大しています。さらに、政府は、救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ(治療の優先順位の選別)」の導入など、「命の格差」を拡大する改悪を検討しています。日本共産党は20年前から国会でドクターヘリの導入を提案するなど、救急体制の充実をいっかんして要求してきました。救急車の有料化などの改悪に反対し、救急体制の拡充をすすめます。
国の責任で、小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)を現行2000床から当面、2500床に増床し、計画的に3000床の確保をめざします。
「お産難民」が社会問題となっている今、助産師・助産院の役割はますます重要となっています。ところが、2006年の「医療改革」では、嘱託医・嘱託医療機関を確保できない助産院の開業は認めないとする法改悪が強行され、多くの助産院を廃業に追い込みかねない事態が引き起こされました。その後、政府は対応を一定あらためましたが、事態が完全に解決されたとはいえません。日本共産党は、みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの、喜びと満足のある質の高いお産を普及・発展させるため、助産師の養成数を増やし、助産院に対する公的支援をすすめます。助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置づけ、「院内助産所」の設置をすすめるなど、助産師と産科医の連携を国の責任で推進します。
在宅医療、訪問看護、訪問介護の分野では、一定時間の駐車が避けられませんが、その仕事に従事している人たちは、駐車禁止で取締りを受けることに不安を感じながら仕事をしなければならないのが実態です。 駐車許可を得るには、煩雑な手続きや実態と合わない基準が障害となっている現状を改め、柔軟で実態におうじた道交法上の配慮を求めます。
難病対策は、1972年に始まった難病対策要綱にもとづき、治療研究や医療費助成などの事業がすすめられてきました。難病・慢性疾患をもつ人とその家族は医療構造改革によってもたらされた過重な医療費負担に苦しめられており、療養施設が極度に減少し受け入れ施設のないまま在宅療養に移され、重介護が家族にのしかかっている人も少なくありません。疾患と併存する障害を認めない狭い障害概念のとらえ方から、難病・慢性疾患をもつ人は長い間福祉の谷間におかれ、福祉サービスから除外されてきました。病気が治る展望も生活の見通しもなく、働くこともできずに自ら命を絶つ人もいます。
当事者団体はこうした現状に声をあげ、難病指定や予算の拡大などに道を開いてきました。しかし、五千から七千あるといわれる難病の中のほんの一部の疾患しか、国は施策の対象にしていません。すべての難病が対象となる施策の実現を強く求め、日本共産党は力をつくします。
研究対象疾患をすべて医療費助成の対象に…国が医療費助成をする指定難病はわずか56疾患です。当面、すべての治療研究の指定難病を医療費助成の対象とし、医療制度改悪とともに導入されてきた自己負担を元に戻して無料にします。緊急に低所得者の無料化の枠を広げ、所得別の負担上限額を引き下げます。小児慢性特定疾患児世帯でも、同様の措置をとります。
高額療養費制度の改善を…当面、慢性疾患、重い病気、低所得者の人などに過酷な負担となっている高額療養費制度の負担上限額を大幅に引き下げ、応能負担を徹底します。血友病、HIV、人工透析を受ける慢性腎不全の患者におこなわれている「長期高額疾病」の対象(負担上限額1万円、2万円)を他の疾患にも拡大することや新たな制度の新設も含めて検討し、負担軽減をはかります。重い病気の患者ほど患者負担を自動的に引き上げる「1%」応益加算は廃止します。「多数該当」制度の適用基準を緩和します。治療が月をまたぐ場合には、月ごとでなく治療ごとの限度額とするなど、同一治療でも負担額が違うという患者間の不公平を是正します。
キャリーオーバー疾患対策を緊急に…先天性心疾患や胆道閉鎖症、小児がんなど小児期に発症する慢性疾患対策である「小児慢性特定疾患治療研究事業」は、20歳で打ち切りとなるため、成人期(キャリーオーバー疾患)の医療費助成をはじめとする社会的支援策がなくなってしまうことが社会的な問題になっています。医療費助成を含めた総合的な施策の検討に早急にとりかかります。
生存権にもとづいた医療費無料化を…公的医療保険制度のある国で、外来でも入院でも3割もの負担をとられるなどという国は日本だけであり、外国では無料もしくは小額の定額制が主流です。ヨーロッパの多くの国では、長期療養が必要な患者に、疾病の別なく、手厚い給付と負担軽減をはかる仕組みが整備されています。日本共産党は指定された難病の医療費助成の枠組みを毎年の予算で決める現行制度をあらため、ヨーロッパの多くの国々のように、すべての疾患に必要な医療を給付し、生存権にもとづいた医療費無料化をめざします。
昨年創設された「研究奨励分野」の柔軟な運用の継続を求め、予算の抜本的拡充で臨床研究、研究奨励分野ともに研究対象疾患を広げ、原因究明や治療法の確立を求めます。
専門医、研究者、看護師などの医療従事者の体制を抜本的に拡充します。療養・介護施設が医療機関と連携できるよう、療養環境を整えます。24時間支援が必要な重篤患者の家族を支える体制を整えます。
未承認薬や適応外薬問題の早期解決をはかるため、保険外併用療養(混合診療)の拡大ではなく、有効で安全な薬は医療保険の枠内で薬を使えるよう、薬事行政の承認審査体制を大幅に強化すること、新薬の開発を国の責任でおこなうなどの改善をはかります。
新生児の代謝病などを発見するマス・スクリーニング検査、さらに多くの疾患が発見できるタンデムマス方式の検査を、自治体まかせでなく、国の責任で検査を実施できるよう財源を保障します。
機能が狭められ、広域化している保健所のあり方を見直し、すべての難病や慢性疾患をもつ人の窓口となるとともに、患者とその家族の支援にとりくみます。各都道府県にある難病相談・支援センターが、当事者と家族の拠り所となるよう国が運営費を保障するしくみをつくります。
国のせまい障害概念のもとで、難病・慢性疾患をもちながら社会生活を送る上で困難を抱える人たちは、福祉制度の谷間におかれてきました。ICF(国際生活機能分類)の障害概念や障害者権利条約にもとづけば、障害がすべての機能障害に関連するもので、「態度および環境との障壁との相互作用から生じる」という観点を含めることが重要になっています。難病や慢性疾患をもつ人も障害者であり、福祉サービスが受けられるようにすることは当然です。
国は障害者自立支援法を廃止し、障害者総合福祉法を2013年8月までに制定することを約束しました。この方向を後退させることなく、難病や慢性疾患をもつ人も含め、すべての障害者を新法の対象にして、福祉、就労、所得、教育などを保障します。障害者基本法の改正や、制定に向けて話し合いがすすめられている障害者差別禁止法においても難病や慢性疾患をもつ人を対象にします。
在宅の福祉支援をおこなう難病患者等居宅生活支援事業や、難病患者の雇用を広げるため企業に賃金助成をおこなう難治性疾患雇用開発助成金制度は、難病や慢性疾患をもつ人が障害者の雇用や福祉サービスに位置付けられるまでの間、緊急に改善して使いやすい制度に変えるべきです。難病患者等居宅生活支援事業は一般財源化されているために、ホームヘルプサービスは141、ショートステイは4、日常生活用具給付事業は281自治体にとどまっています。国は財源を保障し、対象者を緊急に広げて、医師の意見などでも利用できるようにします。「難治性疾患雇用開発助成金」制度の対象になったのは昨年わずか11人であり、制度の周知徹底を強力におこなうとともに、対象枠を広げ、企業への助成期間の延長、柔軟な雇用形態の実施などを求めます。
(就労、所得保障、教育について詳しくは障害者・障害児の分野をご覧ください)
難病・慢性疾患をもつ人たちの実態調査を国として早急に実施し、各関係法律を連携させて憲法、障害者権利条約とICFなどの理念の実現と難病患者の人権を守るために「難病対策基本法(仮称)」を制定します。
今年4月、介護保険は開始から満10年を迎えました。その10年間は、社会保障切り捨ての「構造改革」の10年間とかさなり、介護保険も、自民党・公明党・民主党が賛成してすすめた2005年の大改悪をはじめ、改悪が繰り返されてきました。「介護の社会化(家族が支える介護から社会が支える介護へ)」などという当初のスローガンはよそに、介護の現場は深刻な事態にたちいたっています。
日本共産党は、今春に発足から10年をむかえた介護保険制度を検証する、見直しにむけたアンケートに取り組み、その結果を6月9日に公表しました。そのなかでも、利用者、事業者、自治体など多くのみなさんからご意見をいただきました。「アンケート」によっても、現在の介護保険のかかえる矛盾、深刻な実態がいっそう明らかになりました。
第一に、「保険あって介護なし」という実態です。
とりわけ、介護施設の不足は深刻です。特別養護老人ホームの待機者は42万人にのぼり、現在の特養ホームの定員43万人に匹敵します。「アンケート」でも東京23区内のように、待機者が現在の定員の1・5倍を超えるような自治体も多く、2倍を超える自治体すらありました。待機者の数が定員の10倍をこえている特養ホームからは、申し込んだ家族から「これでは2回死んでも入れない」と嘆きの声が上がっている、という回答もありました。しかも、2005年の大改悪で、食費・居住費が全額自己負担化されたことにより、負担の重さにたえられず、施設を利用できない人もあとをたちません。「福祉の沙汰も金次第」となっています。
その一方で、在宅サービスも、過酷な利用抑制がすすめられてきました。2005年の大改悪で、「軽度」と判定された人にたいして「予防」や「自立支援」という名前のもとに「介護とりあげ」がすすめられたことをはじめ、「給付適正化」という口実で、とくに訪問介護で、同居家族がいることを口実に調理・洗濯・掃除などの生活支援が受けられない、散歩へのヘルパーの同行が認められない、通院時の医療機関内での待ち時間について介護保険が使えず全額自費のサービスが横行するなど、事態は深刻です。
総務省の調査でも、家族の介護などを理由に仕事をやめたり、転職した人の数は、1年間で14万5千人。介護保険が始まった当時の1・5倍にまで増えています。また、「老老介護」「認認介護(認知症の人が認知症の人を介護する)」などを苦にした、痛ましい事件も続発しています。
第二に、介護の支え手である、ヘルパー、介護職員をはじめ、介護の現場で働くみなさんの状況も深刻です。ただでさえ、夜勤など労働条件はきびしいのに、給与水準は全職種平均の約6割と政府も認めています。そのため、無念の思いでやめる人も多く、深刻な「人材不足」のために閉鎖される事業所などがあとをたちません。その根本に、自公政権による二度にわたる、事業者に支払われる介護報酬の切りさげがあったことは言うまでもありません。立場の違いをこえた国民の運動と世論によって、2009年度には3%の改善をかちとりましたが、「アンケート」でも、介護事業者の7割の方が介護現場の改善に対して「ほとんど効果がない」と答えたように、これまでの改悪の傷すら回復できていません。
ところが民主党政権は、自公政権が残した介護行政の枠内での対策をとるものの、昨年の総選挙マニフェストで掲げた、介護職員一人月4万円の賃上げという公約などにはいっこうに取り組む気配がありません。
第三に、介護における公的責任の放棄です。介護保険の発足とともに介護に対する自治体の責任は大きく後退し、せまい意味で介護保険の運営に取り組むことだけを自分たちの責任と考えるような自治体が大きな流れになりました。特養ホームの待機者数すら把握していない自治体も増えています。しかも、現場の実態も知らないのに、国の旗ふりのもと、介護の提供者に“さしず”して「介護とりあげ」に加担する自治体も広がっています。
それにくわえて、2005年の大改悪によって、介護予防や保健福祉の事業が「地域支援事業」として介護保険に吸収され、公的な責任と行政の財政負担はいっそう後退しました。各地の介護予防事業は順調にすすまないばかりか、地域の高齢者の実態を把握し、介護予防や虐待防止などの取り組みの中心になるとされた地域包括支援センターも、介護予防プランの作成で手一杯というのが実態です。社会的な支援を必要としながら、介護制度や社会福祉の網の目からこぼれ、地域の中で貧困にたえ、困難をかかえてくらす高齢者が増えています。
満10年をむかえた介護保険制度は、その国民的な存在意義という点でも、制度をささえる人材という点でも、土台からゆらぐ深刻な事態となっています。
日本共産党は、2007年12月に発表した「国民の願う高齢者介護・障害者福祉の実現を−−―深刻な人材不足を打開するための緊急提言」や、昨年2月に発表した「介護保険10年目を迎えるにあたっての提言」にもとづき、現在の介護保険の枠組みにとらわれず、誰もが安心して利用でき、安心して働ける介護制度への抜本的な見直しのために国民の協力・共同の輪を広げることに力をつくしてきました。そのとりくみは、要介護認定の改悪を一部撤回させたことをはじめ、いま、政治を動かしつつあります。
ひきつづき、国民のみなさんとの協力・共同の輪を広げながら、誰もが安心して利用でき、安心して働ける介護制度をめざして力をつくします。とくに、以下のような改革にとりくみます。
保険料値上げか、サービス切りさげかという介護保険の根本的な矛盾を打開するには国庫負担割合の引き上げで財源を確保することが不可欠です。国庫負担割合を10%増やし(在宅は25%から35%へ、施設は20%から30%へ)、公費負担割合を当面60%にすることで、国として介護保険料・利用料の減免制度をつくることをはじめ、高齢者の負担をおさえながら、介護サービスの充実、家族介護の負担軽減、介護労働者の処遇改善などに取り組みます。
将来的には、国庫負担割合を介護保険がはじまる前の50%にまで引き上げることで(公費負担割合75%へ)、高齢者の経済的負担の軽減と、介護内容の充実、介護労働者の処遇改善などを抜本的にすすめます。介護の財源を口実とした消費税増税には反対します。
国として、実効性のある保険料・利用料の減免制度をつくります。高齢者の保険料のあり方を全国単一の所得に応じた定率制など、支払い能力に応じた負担にあらためていきます。利用料は、将来は無料(10割給付)をめざし、当面は在宅サービスでも施設サービスでも減免制度を抜本的に充実させます。
介護保険料はすでに高すぎる水準です。そもそも約3人に2人が住民税非課税という高齢者に高い保険料を求めることに無理があります。国庫負担を増やすなかで介護保険料を値下げするとともに、将来は住民税非課税の高齢者は保険料も利用料もなく、介護が利用できる制度をめざします。当面、収入の少ない高齢者は、原則として介護保険料・利用料を免除して、お金の心配をせずに介護を利用できるしくみを緊急につくります。食費・居住費の全額自己負担をやめさせます。
昨年の要介護認定の見直しにあたっては、日本共産党が暴露した内部文書によって、そのねらいが「介護とりあげ」にあったことが明らかになりました。現在も、更新する人が軽度に変更される事態は続いており、改善はまったなしの課題です。
利用者の実態をふまえずに、機械的に必要な介護までとりあげる要介護認定と利用限度額は廃止し、ヘルパーやケアマネジャーをはじめとした現場の専門家の判断で適正な介護を提供する制度に改善させます。
高齢者の身近な相談相手・専門家として、利用者の声を中立・公正な立場から代弁できるようにケアマネジャーを支援・育成します。ふさわしい介護報酬や研修などを保障します。介護予防プランの作成をケアマネジャーの担当にもどし、介護報酬も引き上げ、高齢者が自分の担当のケアマネジャーから一貫した支援が受けられるようにします。
2005年の大改悪による「軽度」と判定された人に対する訪問介護や福祉用具利用などの「介護とりあげ」を元に戻します。また、「ローカルルール」として、自治体の乱暴な「介護とりあげ」の背景となっている、国の給付適正化事業のあり方を抜本的に改め、ヘルパーやケアマネジャーなどの判断で、利用者の人間らしい、その人らしい在宅での生活を保障するために、介護の現場の実態に応じて、柔軟に適切なサービスが提供されるようにします。
「介護の社会化」に反する、同居家族がいる場合に調理・洗濯・掃除などの生活援助の利用制限は、国の責任で基準を示して、キッパリとやめさせます。
いわゆる「院内介助」の規制が、自費サービスなどを生み、高齢者の医療を受ける機会を奪っていることは重大です。医療機関内では「院内のスタッフにより対応されるべき」という国の通知を撤回することをはじめ、医療機関の内部や、必要ならば利用者が受診しているときに医師の指示などを一緒に聴くこともふくめて、要介護者の通院介助を保障するようにあらためます。
「生活援助」と「身体介護」の区分を廃止、一本化して、利用者に必要な介護を適切に保障するとともに、ヘルパーの待遇改善もはかります。
地域の介護をささえる核となる特養ホームや、生活支援ハウスなどの計画的整備、ショートステイの確保、グループホームや宅老所、小規模多機能施設への支援など、在宅でも施設でも、住み慣れた地域で安心して暮らせる基盤整備をすすめます。国による自治体への低い数値目標のおしつけをやめ、基盤整備への国庫補助を復活・充実する、都市部での介護施設やグループホームなどの用地取得への支援など、特養ホームの待機者を解消するための、緊急の基盤整備5カ年計画をすすめます。
この間、高齢者施設で相次いでいる火災事件の教訓を踏まえ、275平方メートル未満の小規模なグループホームなども含めてスプリンクラーのような初期消火設備や自動火災報知装置などを設置するために国の補助を抜本的に拡充するとともに、なによりも「火事をおこさない」ために、夜間の職員の人員配置をふやし、職員の定着をはかることなど、介護労働者の処遇改善などをすすめます。
「コムスン事件」の反省を生かし、非営利の介護提供者を支援するとともに、民間事業者については適切な介護が提供できるかなどを事前に審査できるようにあらためます。特養ホームへの営利企業の参入拡大には反対します。
医療が必要な高齢者が、介護施設やショートステイなどを利用できないという事態が広がっています。特養ホームやグループホームなどでも、医療行為は医療保険の適用を認めるなど、医療と介護の連携を強め、どこでも必要な医療と介護が受けられるように改善します。介護従事者にたいする医療にかかわる研修なども充実させます。現在は介護保険の利用に結びつかないとまったく報酬の対象にならない、高齢者の退院などの相談にのっているケアマネジャーなどの働きを評価する仕組みをつくります。
自公政権が決定し、民主党政権のもとでも引き継がれている療養病床の廃止・削減計画に反対し、その医療施設が地域で果たしてきた役割をまもり、地域における慢性期医療を充実します。介護と医療の連携の土台である地域医療をまもります。
介護職は、人の命や人生をあずかる専門職です。「派遣切り」をはじめ解雇された労働者を“右から左に”介護の現場にもってくればよいというような発想の対策はまちがっています。処遇や研修体制を現場の要望を踏まえて改善し、国の責任で介護職の養成にとりくみます。公費負担で研修や教育が受けられるように、時間や費用を負担する仕組みをつくります。
介護職員が生活設計を描けるような賃金水準を目標として設定し、その計画的な実現をめざすとともに、第一歩として、民主党も昨年の総選挙マニフェストで公約した介護職一人月4万円賃金アップの実現をただちに求めます。そのためにも、介護報酬の引き上げとあわせた国庫負担割合引き上げや、公費による賃上げなど、利用料・保険料の値上げにつながらない対策をすすめます。
サービス提供責任者が常勤で配置できるように、介護報酬に位置づけます。施設の人員配置基準を利用者の重度化がすすんでいる実態に合わせて3対1から2対1に改善させ、それにみあった介護報酬にあらためます。24時間・365日の在宅介護体勢を整備するために、夜間の訪問介護は複数のヘルパーの派遣を保障できるように改善します。現在の地域計数と人件費率をかけあわせる介護報酬の算出式は、とりわけ大都市部の物価や賃金水準からかけ離れたものになっており、地域の物価や賃金水準を反映した介護報酬にあらため、中山間地でも大都市部でも安心して介護が提供できるようにします。介護保険の手続き・指導・監査などを改善し、書類作成などの簡素化をはかります。
介護労働者の労働条件を改善し、早急に150万人の介護従事者を養成・確保して人材不足を解消します。
福祉事務所や保健所の機能強化など、保健・福祉・公衆衛生などの自治体の取り組みを再構築します。地域に暮らす高齢者の生活を行政がつかみ、総合的にその生活をささえていくために、地域包括支援センターを公費で運営し、機能を強化するなど、自治体の取り組みを充実させます。
介護保険だけで高齢者の生活を支えることには限界があり、行政の高齢者福祉を充実させます。介護予防や高齢者の保健事業などは、介護保険から取り出して、再び公費で運営するようにあらためます。介護・医療・福祉などの連携をすすめ、国の財政保障に裏付けられた自治体の取り組みによって、高齢者の健康づくりをすすめます。介護のなかでも、民間での対応が難しい人には自治体が介護を提供するなど、積極的な役割をはたせるようにします。認知症に対する支援を強めます。家族介護者へのサポートを充実します。
民主党政権のもとでも、厚生労働省の審議会の委員などから、介護保険の利用料の引き上げや、「軽度者」を介護保険の対象外にすることなどが主張されていることは重大です。
日本共産党は昨年の要介護認定の見直しのときにも、ねらいが給付費削減にあることを示した内部文書を暴露するなど、介護保険改悪反対の国民的運動の一翼をになって活動してきました。「介護保険だけがのこって、高齢者の生活が崩壊する」ような、介護保険のいっそうの改悪はキッパリとやめさせます。
生活保護制度は、「最後のセーフティーネット」であり、その水準は、国民の生存権=「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を具体化したものでなければなりません。貧困問題に取り組む運動におされ、国は生活保護の通院移送費の通知の明確な撤回、母子加算の復活などをおこないました。今年の4月には、1965年以来の捕捉率(生活保護基準未満の低所得世帯のうち、実際に保護を受給できる世帯の割合)の推計をおこない、15・3%(2007年度)と発表しました。生活保護受給世帯は134万世帯(10年3月)に達し、史上最高を更新し続けているものの、必要な人すべてが受給できる状況とはほど遠いのが現実です。
生活保護費の抑制を求める政府の指導により、自治体では、受給希望者に申請書さえ渡さない違法な「水際作戦」や、保護開始後、生活が軌道にのっていないのに無理やり保護の辞退届を書かせるなどの非情な行政が横行しています。国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと生活保護を受けられるようにします。生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体ですすめます。「年越し派遣村」で注目を集めた、「ワンストップサービス」を継続し、どの窓口からでも必要な人には生活保護にアクセスできるようにします。安価で入居できる公営住宅の整備や就労支援など、生活支援を強めます。
自公政権の社会保障削減路線のもとで、生活保護の給付は、老齢加算の廃止や、持ち家を持つ高齢者に不動産を担保にお金を貸し付けて、それを使い切るまでは保護を受けさせない「要保護世帯向け長期生活支援資金=リバースモーゲージ」導入など、さまざまな改悪にさらされてきました。
老齢加算の廃止は、保護を受ける高齢者の生活に大きな打撃を与え、取り消しを求める「生存権裁判」も起こされています。民主党政権は、自公政権が廃止した母子加算は復活しましたが、同じ論理で廃止された老齢加算の復活には背を向けています。そうしたなか、今年6月14日の福岡高裁では、老齢加算の廃止を「正当な理由のない保護基準の不利益変更にあたり違法」とする判決が下されました。政府はこの判決にならい、緊急に老齢加算を復活させるべきです。日本共産党は、老齢加算の復活、リバースモーゲージの中止など、改悪された制度を元に戻します。
生活保護基準は、非課税限度額や就学援助、公営住宅の家賃など、各種制度の目安・基準となっており、生活扶助基準の引き下げ、級地再編などの制度改悪は、低所得層全体に大きな打撃となります。生活保護基準の改悪に反対し、水準の引き上げをはかります。「働く貧困層」をはじめ、必要とするすべての国民が利用できる生活保護制度とするため、保護基準や運用、利用方法など抜本的に改善・拡充します。
国と地方の負担割合を改善することをはじめ、国の財政支出を増やします。ケースワーカーを増員し、過重になっている担当件数を減らすなどの待遇改善と技能の向上をはかります。
生活保護受給者を食い物にした「貧困ビジネス」が全国で横行しています。住居や食事を実態とかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて保護費をほとんど“ピンハネ”する悪質業者や団体の野放しを許さず、実効性ある規制づくりに取り組みます。
政府が昨年発表した子どものいる世帯の相対的貧困率(可処分所得を高い順にならべた中央値の半分以下の世帯の割合)は14.2%であり、ひとり親家庭では54・3%にもおよびます。貧困の実態調査をおこない、当事者や支援団体の協力も得ながら、貧困の解決のための体制を整備します。
就学援助の拡充を…義務教育の子どもの給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助は、受給者が急増し、その役割はますます重要になっています。ところが、国が2005年に、生活保護に準ずる世帯の国庫補助金を打ち切り、一般財源化してしまったことで、支給額や基準を厳しくしている自治体が広がっています。準要保護世帯への国庫補助金を復活・拡充させます。
児童扶養手当の削減を撤回する…児童扶養手当では、今年の8月分から、父子家庭にも手当が支給されるという前進が勝ちとられました。一方で、2002年に自民・公明・民主の賛成で決められた、支給開始から5〜7年で手当額を最大2分の1まで削減するという仕組みは撤回されていません。「08年実施」とされていたこの削減措置は、国民の世論と運動を受けて、今「凍結」されていますが、それと引き換えに、児童扶養手当の支給世帯は、「勤労意欲」を示す「求職活動中」などの証明書類の提出が義務づけられています。この証明書を提出できないため、手当を一部支給停止されている母子家庭は、2010年1月時点で3958世帯にのぼります。
「自立支援」の名で児童扶養手当を削減し、ひとり親家庭の困窮に追い打ちをかける制度改悪は撤回するべきです。手当削減を決めた法律条項をすみやかに撤廃し、受給条件の緩和、支給額の拡大など、制度の改善・拡充をすすめます。「勤労意欲」を証明させる就労関係の書類は廃止し、提出書類を簡素化して、受給世帯の不安と負担を解消します。
学費の無償化など教育費負担の軽減、子どもの医療費の無料化を推進する…「3、子ども・子育て」をご覧ください。
長年におよぶ原爆症認定集団訴訟により、2度にわたって原爆症の認定基準が改善され、昨夏には政府との間で訴訟全面解決のための画期的な確認書が締結されました。従来からみれば新規の認定者数は大幅に増大しましたが、それでも被爆者手帳保持者の2%にも及びません。しかも合意では、再び裁判を起こす必要がないように、厚生労働大臣は原告らと定期協議をおこなうと確認したにもかかわらず、大量の申請却下が続いています。裁判で勝訴・認定された被爆者と同じような状態なのに却下され、「裁判に訴えないと認めないのか」という叫びが広がっています。
民主党政権のもとで、確認書の実行がすすまないことに、高齢の被爆者の焦りや不安が強まっています。矛盾の多い原爆症認定制度について、被爆者の要求を基礎に、法改正を含め早急に再検討することが必要です。同時に法改正をまたずに、これまでの司法の判断にそって認定基準をさらに見直すなど緊急措置をとります。
この間の原爆症認定集団訴訟で明らかになったことは、政府がいかに被爆の実相を直視せず、原爆被害を矮小化してきたかということです。「ふたたび被爆者をつくるな」という訴えを原点に、核兵器廃絶の声が世界に大きく広がった今、なお「核抑止力」「核の傘」に固執するようでは、被爆国としての国際的な責任も、被爆者切り捨て政策の根本転換もできません。また、国民に原爆被害・戦争被害の「受忍」を強いる政策をとり続けることは許されません。
いまこそ被爆者施策の抜本的改善、原爆被害への国家補償に踏み切るべきです。被爆二世対策、また海外に住む被爆者が日本に住む被爆者と同等の援護措置を受けられること、被爆地域拡大など被爆者としての認定基準の見直しを進めます。
全国には13カ所の国立ハンセン病療養所があります。入所者は約2500人であり、平均年齢は80歳を超え、高齢化と身体の不自由が年々すすんでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動がおこなわれ、08年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立し、09年4月から施行されています。さらに09年7月、「国立ハンセン病療養所における療養体制の充実に関する決議」が衆議院において全会一致で可決され、今年5月には同決議が参議院で可決されました。
日本共産党は2009年12月、「基本法」「決議」にふさわしい入所者の処遇改善や職員体制の充実を一刻も早く実施し、生活環境が地域から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるよう必要な措置を講じることを、国に申し入れました。
入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。そのために、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外します。重症化している入所者の夜間介護体制の充実をすすめます。退所者給与金の停止をおこなうことなく、退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。
療養所ごとに「将来構想」づくりがすすめられています。国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。
ハンセン病に対する偏見、差別はいまだに克服されてはおらず、隔離政策から100年の今、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、検証結果を広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講ずることを求めます。
さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法」による支援給付金の支給など、新たな支援策が2008年4月から始まりました。しかし、国は、終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援給付金の水準は、「安心した老後をおくりたい」という願いに応えるものとはなっていません。また、▽支援給付金が生活保護制度に準ずる制度になっているため、医療などが十分に受けられない、▽法施行前に60歳未満で亡くなっている「孤児」の配偶者には支援給付金が支給されない、▽支援対象が一世のみで二・三世が抱える社会的問題が法の対象外になっているなど、現行の支援給付金には、さまざまな問題点があります。配偶者や二・三世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実におこなうことを強く求めます。
日本の敗戦によって強制労働に従事したシベリア・モンゴル元抑留者の賃金を、抑留期間に応じた特別給付金として国が支払うことを柱にした、「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法」が先の国会で可決されました。法には、賃金支給とともに、元抑留者の強い願いである真相究明や、実態調査、資料保存、追悼の実施、遺骨収集の拡大なども盛り込まれています。これらを確実に実施するよう強く求めます。また、今回の措置で支給対象外になっている、日本兵や軍属として抑留された台湾・韓国・中国の人たちへの補償もおこなうべきです。