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9.金融

破たんしたアメリカ型の金融自由化路線を転換し、国民のくらしと営業に役立つ金融を応援します

1.金融自由化路線を改め、「地域金融活性化法」など金融機関に社会的責任を果たさせるためのルールをつくります

日本が“お手本”としてきたアメリカ型の金融自由化路線は、08年秋のアメリカ発の世界金融危機で劇的に破たんしました。いま、アメリカでは、銀行とヘッジファンドとの取引を禁止する「ボルカー・ルール」や、大手銀行に破たん処理のコストを負担させるルールなどをはじめとして、本格的な金融規制の強化がすすめられています。また、EUでも、ヘッジファンドに対する認可制の導入、銀行税あるいは金融取引税(いわゆるトービン税)など、これまでにない新たなルールが検討されています。金融自由化路線の見直しは、世界の流れです。

国際的なルールづくりの舞台が、先進国だけで構成するG7ではなく、新興国も含めたG20に移った点も前向きな変化です。今後、G20にとどまらず、G192すなわち国連を中心にして、国際的なルールづくりをすすめることが求められます。日本政府も、この間の積極的な変化をさらに促進する立場で、国際社会に貢献する必要があります。

自民党と同じ「新金融立国」を掲げる菅新政権

ところが、日本政府は、この流れに逆行する路線を続けています。もともと、日本では、長年にわたって、アメリカ型の金融モデルを“お手本”にした金融自由化、規制緩和路線がすすめられてきました。90年代後半の「日本版金融ビックバン」以降は、民主党も自民党も一緒になって、金融自由化、規制緩和を競いあってきました。

菅新総理のもとで閣議決定された『新成長戦略』(2010年6月18日)でも、7番目の「成長戦略」として「金融戦略」が取り上げられていますが、その中身は、「新金融立国」をめざし「2010年中から速やかに具体的なアクションを起こす」、「総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設を推進」など、多くの金融規制緩和策です。「新金融立国」というスローガンは、自民党時代の「金融立国」の“焼き直し”にほかなりません。

これは、金融自由化路線を見直している世界の流れに逆行するものです。日本共産党は、金融の公共性を投げ捨てる金融自由化路線の転換を一貫して訴えてきました。今こそ、この立場に立って転換をすすめることが求められています。

―――金融機関のもうけを最優先する金融自由化万能路線・規制緩和万能路線をきっぱり転換します。日本共産党が提案している「地域金融活性化法」をはじめとして、金融機関に社会的責任を果たさせ、中小企業の経営を支える金融のルールをつくります。「貯蓄から投資へ」などといって、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を転換します。

―――国連やG20などですすめられている国際的なルールづくりにおいて、積極的なイニシアチブを発揮します。原油や穀物などの価格が投機でつり上げられることを許さないために、国際社会と共同して投機マネーを規制します。ヘッジファンドなどの情報開示をすすめます。国際連帯税など、投機マネーの暴走を制限するための適切な課税を本格的に検討します。

2.中小企業と地域経済を応援する金融行政に転換します

民間金融機関による中小企業向け貸出残高は、2001年3月の約293兆円から、2009年12月には230兆円へと63兆円も減少しています(『中小企業白書2010年版』)。三大銀行(メガバンク)グループの中小企業向け貸し出しも減少を続けています。三菱UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンクグループは、09年3月末からの1年間で中小企業向け貸出を約3兆8500億円減らしています。

アメリカを“お手本”にした金融自由化路線のもとで、金融機関は、短期的な利益を最優先しています。直近決算期の売上など、限られた数値だけをモノサシにして機械的に融資の可否を決定するようになっています。金融機関が本来発揮すべき「目利き」能力、審査能力の喪失は深刻です。

「頼みの綱」となるべき政府系金融機関も、「構造改革」路線のもとで、短期的な「効率化」を迫られて審査基準を厳格化しています。信用保証制度では、部分保証(責任共有制)導入によって「一般保証」が激減し、09年度下半期の一般保証額は、制度導入前に比べてほぼ半減しています。保証料率も、中小企業の経営状況に応じて9段階の格差がつけられました。

いま必要なことは、民間金融、公的金融ともに、その本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。

―――金融機関、とりわけメガバンクによる貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。

―──金融の公共性と金融機関の「目利き」能力を回復し、社会的責任を果たすことのできる仕組みをつくります。「地域金融活性化法」を制定し、金融の公共性の発揮と円滑な資金供給に関する国、自治体、金融機関の責務を明らかにします。中小企業向け融資について、独自の検査マニュアルや監督行政のしくみをつくります。国による地域金融機関への合併押しつけをやめさせます。信金・信組などの協同組織性を変質させる動きを許さず、協同組織金融機関が本来の役割を発揮できるよう支援を強めます。

―――商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を総合的に見直します。公的金融にふさわしい融資基準をつくるとともに、予算、人材を含め、中小企業向け政策金融を抜本的に充実させます。貸し付け条件の変更や、さらなる融資相談などに対する冷たい窓口対応を改めさせます。

―――「緊急保証」制度について全業種を対象とするほか、融資条件を緩和します。また、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。小規模企業への保証料の差別的な引上げをやめさせます。信用保証協会への財政援助をおこなうなど、信用保証制度を抜本的に強化します。保証協会による「保証しぶり」をやめさせます。

―――「中小企業金融円滑化法」による支払猶予の申し込みは、民間金融機関で46万6千件、日本政策金融公庫など公的金融機関3つで21万件となり、合計で67万件を超えています。同制度の改善をすすめ、さらに使い勝手を良くします。中小企業の機械設備のリース代の支払猶予についても、経産省の通達(4月16日)の趣旨を活かして活用をすすめるとともに、遅延損害金を求めないこと、遅延があってもリース物件を引きあげないこと、金融機関と同様にリース会社にも情報開示を求めることなどの改善をすすめます。

―――日本では、毎年3000人を超える中小業者が自殺しています。この痛ましい事態の要因の1つが、中小企業融資における個人保証制度です。現在、金融機関が中小企業融資を行う際に、経営者自身や知人に対して保証・連帯保証を求めるケースがほとんどです。この制度のもとでは、会社だけでなく経営者自身も保証人も全財産を失うことになり、家族や保証人に迷惑をかけないようにと生命保険をあてにした自殺が多発しています。欧米では、数十年前に金融機関の個人保証制度は廃止されています。中小企業融資に対する個人保証制度の廃止をめざし、当面、政府系金融機関の融資について、個人保証を廃止します。

―――病気や事故などに備える「自主共済」は、2006年施行の保険業法により、保険会社に委託するか少額短期保険業者に移行するか選択が迫られました。しかし、多くの自主共済が、準備金の積み立てや外部監査導入などの負担ができず、制度廃止に追い込まれる事態も生まれています。社会保障の改悪などで国民の不安が増しているいまこそ、自主共済を守り発展させることが必要です。助け合いのためにつくられた自主共済については、保険業法の適用除外とします。

3.貧困をなくすセーフティーネット貸出を抜本的に拡充します。「貯蓄から投資へ」路線を転換し、金融被害をなくします。

リストラや急な事故・病気など、誰の身にも起こりうる要因による生活苦や、売上不振や物価高騰などによる経営難などを理由に、高金利のサラ金に手を出す人が後をたちません。高金利と過剰融資を是正した貸金業法の改正を受けて、政府も各種の対策を打ち出していますが、未だに多くの人々が多重債務と貧困問題で苦しんでいます。本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。

 民主党も、自民党も、「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を続けています。このもとで、個人年金保険や外国為替証拠金取引(FX)などの金融商品で被害を受ける人が続出しています。郵便局での投資信託などのリスク商品による被害も増えています。FX業者による証拠金の流用や詐欺的勧誘も相次いでいます。高齢者などをねらった「振り込め詐欺」や「振り込め恐喝」による被害も、史上最悪の件数にのぼっています。こうした金融被害もただちに根絶すべきです。

―――2010年6月18日から完全施行された貸金業法の円滑な施行をすすめるとともに、ヤミ金に対する取締りを抜本的に強化します。「振り込め詐欺」などの犯罪をなくすために、警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます。

―――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど、制度の運用改善をすすめます。

―――「貯蓄から投資へ」などといって、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を転換します。銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。

―――FXや商品先物を組み合わせた投資信託など、個人の資産運用に適さないハイリスクな金融商品について、総合的・抜本的に規制を強化します。

―――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。

4.大資産家優遇の証券税制を改めます

 2003年度に導入された「証券優遇税制」は、1500兆円にのぼる国民の大切な資産をマネーゲームに誘導するものです。これは、庶民の預貯金(税率20%)よりも、マネーゲームでの利益(同10%)を税制上優遇するものです。

いま、世界では、金持ち優遇の税制を見直す動きが進んでいます。イギリスでは、今年4月に所得税の最高税率が40%から50%に引き上げられ、株式配当などの最高税率も32.5%から42.5%に引き上げられました。アメリカでも、オバマ政権は所得税の最高税率を36%から39.6%に、株のもうけの所得税率を15%から20%に引き上げることを提案しています。

株式配当や譲渡所得の税率は、ドイツでは25%で、付加税(所得税の5.5%)を含めるとて26.375%、フランスでは所得税が18%、社会保障関連の目的税12.1%をあわせて30.1%となっています。わずか10%しか課税しない日本の証券税制は世界でも異常な優遇税制になっているのです。

こうした金持ち優遇税制を改めることが、経済危機の中で必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠です。

――世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止し、税率を20%に引き上げます。将来的には、配当や譲渡所得などは、勤労所得とあわせた総合課税を原則とし、大資産家には応分の負担を求めますが、それまでの間も、欧米諸国の水準にあわせた税率の引上げをはかります。その際、庶民の少額の投資には、大資産家とは区別して税負担の軽減をはかります。


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