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障害者団体の大きな運動と自立支援法違憲訴訟のたたかいが全国に広がる中、民主党政権は自立支援法の廃止を表明しました。訴訟の和解を受け、国は応益負担により障害者の尊厳を深く傷つけたことをこころから反省し、障害者参画のもとに、新たな総合的福祉制度を制定するとの「基本合意」を結びました。いま、「基本合意」にもとづき、新法の策定に向けて、「障がい者制度改革推進会議」で話し合いがすすめられています。
ところが民主党は、自民党、公明党とともに参議院選挙前の通常国会において、障害者の声を無視し、「基本合意」をないがしろにして、自立支援法の「延命」につながる「自立支援法一部『改正』法案」を強行成立させようとしました。障害者の大きな怒りが広がり、「改正」法案は審議未了、廃案に追い込まれましたが、法案をゴリ押しした民主党など各党の態度は厳しく問われなければなりません。
政府は、訴訟団との「基本合意」にもとづき自立支援法をきっぱりと廃止すべきです。障害者参加で憲法、障害者権利条約の趣旨にそった、難病・慢性疾患をもつ人、発達障害、高次脳機能障害をはじめとする、すべての障害者を対象とした「障害者総合福祉法」を制定すべきです。
日本共産党は「障害者自立支援法を廃止し人間らしく生きるための新たな法制度を」(2008年12月)という提言を発表し、障害者団体のみなさんと力を合わせ、政治を動かしてきました。引き続き全力をあげます。(「提言」は「個別分野の政策・見解」→「社会保障」→「障害者・障害児」でご覧になれます)
当面の緊急措置として、応益負担を即刻撤廃し、利用料は支援費制度時代の応能負担に戻し、住民税非課税世帯は無料とすることや、報酬を大幅に引き上げ、「日額払い」を「月額払い」方式に戻すなどの予算措置が必要です。民主党政権の今年の予算は、市町村民税非課税世帯の福祉・補装具の利用料の無料化に踏み出したものの、自立支援医療は対象からはずすなど中途半端で不十分なもので、障害者の切実な要求にこたえていません。身体障害者手帳をもたない難病・慢性疾患、発達障害、高次脳機能障害をもつ人たちへの緊急対策も含め、予算措置でできる改善は多くあります。新法を待たずに早急にすすめるべきです。
憲法25条の生存権理念に照らせば、本来、障害者福祉や医療の利用者に対して負担を求めるべきではありません。世界の障害者福祉にも例のない制度は廃止し、障害者福祉の利用料の無料化をめざします。本人所得による収入認定に改善し、今年4月から始まった市町村民税非課税世帯の福祉・補装具の無料化を、緊急に自立支援医療にも広げます。給食費やホテルコストの実費負担はなくします。親兄弟・配偶者の扶養義務をはずします。
障害者が65歳になると、介護保険優先原則により1割負担が強いられるおそれがあり、優先原則をあらためます。
昨年の4月から施設・事業所に対する報酬単価が平均5・1%引き上げられましたが、焼け石に水です。日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、報酬の底上げをおこないます。福祉労働者の賃金を、全額公費措置により、月4万円の引き上げをはかります。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準を復活させるとともに、グループホームやケアホームの夜勤体制の改善をすすめます。
すべての施設・事業所が2012年3月末までに新事業体系への移行をせまられていますが、「障がい者制度改革推進会議」や同会議の総合福祉部会で、事業体系も検討されている最中であり、移行の推進をいったんやめるべきです。現行の事業体系は就労を強調していますが、障害者の就職を受け入れる企業は依然として少なく、不況下では真っ先に障害者が解雇されているのが現実です。障害者が働く意義は多様で豊かであり、就労保障とともに日常生活の支援も拡充する新たな事業体系になるよう、強く求めます。入所型の施設や「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を含め、グループホームなど暮らしを支える多様な選択肢を整えます。当面、低水準にある小規模作業所と地域活動支援センターにたいする補助金を、実態に見合った水準に引き上げることを求めます。
障害のある子どもの福祉を、児童福祉法にもとづく施設やサービスとして、だれもが気軽に療育を受けられる環境のもと、障害が確定していない子どもたちも含めて、発達を保障するよう改めます。給食も療育の一環であり、給食費の実費負担をなくします。
入所施設では、措置と契約による入所の子どもが混在し、措置率の地域間格差も生じており、契約制度の矛盾が顕著になっています。福祉サービスを利用するにあたっての契約制度は、子どもの成長や発達にたいする責任を保護者にすべて負わせるしくみです。契約制度をやめ、公的責任で適切な福祉サービスが利用できるように改めます。成人してもさまざまな事情から子どもの施設にとどまらざるを得ない人たちへの支援を強めます。
国の責任で約30年間変わらない施設の職員配置基準や面積などを早急に改善し、手厚い生活の場や療育環境がすみやかに保障されることを求めます。
学齢期の障害のある子どもたちの放課後生活を保障するよう法制化します。長期休業中の生活を豊かに保障する制度を早急に確立します。
医療費は医療保険制度における給付率の改善で無料化をすすめながら、当面障害者にかかる医療費については、自立支援医療の「応益負担」のしくみを撤廃し、原則無料の公費負担医療制度とします。育成医療、更生医療は、対象とする治療の範囲を拡大するなど、制度の改善をはかります。更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく悪化を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。すべての自治体で実施している重度心身障害者(児)医療費助成制度を障害者総合福祉法に位置付けて、国の制度として確立します。
障害程度区分認定制度は、難病や発達障害などあらゆる障害の範囲に対応できる、真に必要な支援を保障するあらたなしくみづくりを求めます。
日本共産党国会議員団の調査(08年)では、障害者の外出などに必要な移動支援事業に対し、利用制限をおこなっている自治体が6割を超えていることが明らかになりました。自治体の姿勢も問われますが、もともと国が補助金を抑制していることが原因です。国は補助金を大幅に増やすとともに、移動支援事業、コミュニケーション事業などの利用料を無料化し、国の制度として位置付けて地域間格差を解消します。
在宅や施設サービスを大幅にふやすなど、地域生活の基盤整備を集中的にすすめるため、「障害福祉基盤の緊急整備5カ年計画」を策定し、特別立法を制定します。
「地域主権改革」の中でねらわれている障害者施設の面積や職員数などを自治体まかせにする、補助金をなくして一括交付金にするなどの方向は、地域間格差を助長するものです。国のナショナルミニマムを放棄する「地域主権改革」の撤回を求めます。
精神障害者が地域で安心して暮らせるよう、医療、福祉などの抜本的拡充をはかります。自立支援医療の応益負担のしくみを撤廃し、原則無料の公費負担医療制度にします。精神障害者の相談支援活動や住まいの確保をすすめます。障害者雇用促進法において、雇用を義務化します。精神障害者の交通運賃割引制度を適用拡大します。薬物依存症者の治療体制や社会復帰の支援を強めます。
発達障害者が「障害者総合福祉法」の制定を待たずに福祉などのサービスを利用できるよう、緊急に制度を改善します。また、明確に「総合福祉法」や障害者差別禁止法などの対象になるよう位置づけ、医療、就労、教育などすべてにわたって障害特性をふまえた支援を拡充します。
諸外国に比べてGDP比できわめて低い(ドイツの3分の1、スウェーデンの7分の1)障害者予算を抜本的に増額します。
障害者施策のために、消費税増税はまったく必要ありません。 菅政権は消費税10%を公約し法人税減税も公約しています。消費税は障害者やその家族にもっとも冷たい税であり、福祉の充実とは相いれないものです。予算のムダを見直し、軍事費にメスを入れることや、大企業・大資産家に対するゆきすぎた減税をただせば、障害者予算の増額は十分実現できます。
介護保険と障害者福祉の「統合」は障害者の実態を無視したものであるとともに、介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めることにねらいがあり、反対です。
国連の障害者権利条約は、08年5月に発効しました。日本でも批准が求められています。条約を批准するためにも、障害者の平等と参加をうたった障害者権利条約の趣旨にてらして、国内関連法を抜本的に見直すことが不可欠です。日本共産党は関連法を見直しながら、障害者の声を十分に反映させて、条約を批准するよう求めます。
障害者基本法は、障害者権利条約で示された障害者の人権を尊重し、国が条約にそって国内施策をおこなう義務があることを基本法で明確にするよう位置づけ、制度の谷間のない障害の定義、合理的配慮を提供しないことが差別であることを含む差別の定義などをもりこんだ抜本改正を求めます。
「障害者差別禁止法」(仮称)を制定し、就労・労働・交通・教育などあらゆる分野で障害を理由とした不当な差別をなくします。裁判規範性をもち、権利侵害などへの具体的な救済策をもりこんだ、実効性のある差別禁止法の制定をめざします。障害者に対する差別をなくし、実質的な平等を保障するためにも、障害者総合福祉法の制定があわせて重要な課題です。すべての障害者の虐待をなくすために、「障害者虐待防止法」の制定を求めます。
障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、あわせて最低保障年金制度の実現で底上げをはかります。(最低保障年金制度については社会保障の年金の項目をご覧ください)。
無年金障害者への特別給付制度が05年4月から開始されていますが、障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げるよう改善をすすめます。特別給付金制度はあくまでも福祉的措置であり、年金制度の枠内での根本的な解決が必要です。国の不作為や年金制度の不備を認めて、障害基礎年金の支給を行うべきです。
初診日認定についても、精神障害や内部障害のように発病時期が特定困難な場合、現在の状態が基準に十分該当するにもかかわらず、初診日が証明できないために障害年金が受けられないなどのことがないよう、実態に即した運用をすべきです。
「障害者雇用促進法」において難病・慢性疾患をもつ人など、すべての障害者を施策の対象にするとともに、法定雇用率の対象とします。法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。
病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。ジョブコーチ制度などを充実させ、職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。
障害や疾患を理由にした職場での差別は、制定が話し合われている障害者差別禁止法の対象になることは当然です。労働条件の切り下げやパワーハラスメントなどを防止するためのしくみを構築し、障害者のはたらく権利をまもります。
一般就労が困難な人のために、ヨーロッパ諸国で実施されているような保護雇用制度を創設し、所得保障をおこないます。
「インクルーシブ(障害のある子どもが一般の教育制度から排除されず参加を保障される)教育」を真に実現するために、通常の小中学校を含めた教育条件の抜本的改善にとりくみます。学校のバリアフリー化、通学できない子どもたちの在宅学習の保障、特別支援学校の整備、臨床心理士をはじめとしたメンタルサポートの実施、教職員の配置の充実など十分な教育予算をとり、教育環境をととのえます。あらゆる段階で、必要に応じた支援をおこない、障害のある子どもの教育の権利を保障します(詳しくは教育の障害児施策をご覧ください)。
鉄道駅の安全確保のためのホームドア、可動式ホーム柵の普及などをはじめ、交通や建物などのいっそうのバリアフリー化をすすめます。障害者用・オスメイト対応のトイレのいっそう普及や、ユニバーサルシートをあわせて設置します。障害者や高齢者にも使いやすい金融機関にするために、障害者対応のATMの拡充や、窓口対応の改善をすすめます。
障害者の参政権を保障するため、手話や字幕をすべての政見放送に義務づけるとともに、選挙広報などの改善、在宅投票制度の拡充、投票所の整備などをすすめます。障害者などに成年後見人がつくと失われてしまう投票の権利などを見直します。
情報バリアフリーをすすめ、障害があることによる情報格差の解消をすすめます。