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政府は、来年2011年7月にアナログ放送を停止し、テレビ放送のデジタル化への完全移行に固執し続けています。
しかしこの期限が目前に迫り、「どう準備したらいいのかわからない」「費用が高くて準備が大変」「電波が届いていなかった」など、デジタル放送対応の困難さが明らかになっています。国民の側の準備は、到底期限までには終わりません。放送局側の送信の準備も期限までに終わらないことも明らかです。政府はこれらの事情を承知の上で、完全移行に踏み切ろうとしており、責任は重大です。
このままでは、テレビを見ることができない「テレビ難民」を多数生むことになります。日本共産党は、2011年7月のアナログテレビ放送の停止を見直し、普及率や買い替えのサイクルに見合った時期に延期することを求めます。
また、政府の支援のあり方も問題です。相談窓口であるテレビ受信者支援センター(デジサポ)の体制は不十分です。きめ細やかな相談ができるよう、抜本的な強化をもとます。さらに、国民の負担軽減のための支援策の拡充もかかせません。
政府は、経済的に対応困難な人にたいして、アナログテレビのままでデジタル放送が受信できるデジタル受信機の無償給付・改修を開始しました。しかし、この対象は、NHK受信料全額免除世帯(生活保護受給世帯、市町村民税非課税の障害者世帯、社会福祉事業施設入所者など)に限られており、不十分です。住民税非課税の世帯や低年金の高齢者世帯などに対象を拡大すべきです。
ケーブルテレビでデジタル放送を視聴する場合、NHKや民放以外の有料チャンネルを含めた料金設定(月額4千円から5千円)がほとんどであり、「料金が高すぎる」、「地デジ放送のみの料金設定をしてほしい」という声があがっています。こうした方法も移行の選択肢の一つとするのであれば、地デジのみの低料金設定(数百円程度)の確保が欠かせません。
マンションなどのビル影による「受信障害対策共聴施設」、山間部等でのテレビ視聴障害に対応する「辺地共聴施設」、「集合住宅共聴施設」のデジタル放送対応がおくれている背景には、政府が当事者まかせにしてきたことや大きな費用負担があります。政府は共聴施設改修のための支援制度等をつくっていますが、抜本的に強化が必要です。
デジタル技術や光ファイバの活用など、多様な情報通信サービスや放送サービスが発展してきました。画像や動画も送受信できるブロードバンド通信や携帯が、固定電話とともに生活の必需品となっています。ユニバーサルサービスとして国民にあまねく提供することが法律で保障されているのは、固定電話と公衆電話、110番などの緊急通報だけですが、これを携帯やインターネットなどに拡大し、全国どこに住んでいても、これらのサービスが享受できるようにします。
また、高齢者にも使いやすい情報通信端末や、視覚障害・聴覚障害などのハンディキャップに対応した情報通信端末の開発を支援し、情報格差(デジタル・デバイド)の解消をすすめます。
現在、過疎地域などに電話サービスを提供しているNTTの赤字分を補填するために、電話番号あたり7円のユニバーサルサービス料金が利用者から徴収されていますが、これを事業者が負担する制度に変更します。
技術革新の負の側面への対応も重要な課題となっています。電話からブロードバンド通信への移行が進展する中で、インターネットを活用した電話や通信が全国規模で長時間にわたって使用できなくなるなどの「重大事故」が増加しています。こうした事故の報告制度を強化し、通信事業者の対策を促進します。
政府・総務省は、通信のユニバーサルサービスのあり方、NTTの組織再編などの検討を行っていますが、国民が必要とする通信のあり方、サービスの確実な確保のための担保などの観点から慎重な検討をすべきと考えます。
インターネット上の有害情報については、政府の介入によらない規制のあり方を検討・具体化します。
通信・放送分野におけるデジタル化の進展に対応した制度改編として、通信と放送に関する法体系の総合的な検討が行われ、放送法等改定案が国会に提出されました。その内容は、放送番組を編集・作成する事業者の認定制度や放送と通信の両者をおこなうための規制緩和など、規制の在り方を大きくかえるものです。日本共産党は、認定や取り消しなどで政府・総務省の権限が強くなることや、放送内容への介入の懸念があることなどから、反対しています。
これまでも、「命令放送」などによる放送内容への直接的な介入だけでなく、日常の行政指導を通じた介入も強められています。放送の「表現の自由」の確保、権力を監視する報道など行う放送の役割を果たすうえでも相反するものです。
国民の共有財産で貴重な資源である電波を利用するテレビ放送に法律に基づく規制が行われるのは当然のことですが、放送局の許認可や放送内容に対する規制を政府・総務省が直接行っているのは、先進国では日本ぐらいしかありません。言論・表現の自由にかかわる放送行政の規制は、政府から独立した規制機関が行うのが世界の常識です。総務大臣の監督ではなく、新たに「放送委員会」(独立行政委員会)を設置し、放送行政を規律するように制度改正を行います。
また、実際に放送番組を制作している番組制作会社やプロダクションの振興について、制作者としてふさわしい権利を行使できるように、権利関係を整理していきます。放送事業者による下請業者に対する劣悪な制作環境の強要をやめさせます。
NHKの改革では、何よりも、政治権力からの独立、不正経理の根絶など、公共放送として信頼を回復することが必要です。放送法等改定案には、NHKの経営委員会に、NHK会長が出席し、議決にも加わるようになる規定がありますが、国民の代表としてNHKの執行を監督する役割をもつ経営委員会の機能を弱めるものであり問題があります。
NHK受信料の義務化は、受信料の税金化となり、NHKを公共放送から国営放送と変質させるものであり、反対します。