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日本共産党は、社会のあらゆる面で憲法に保障された基本的人権が保障され、一人ひとりが大切にされる社会をめざします。とりわけ、社会的マイノリティとされる人びとの人権が尊重される社会をめざします。
憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」と指摘し、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めています。これはどんな人でも人間らしく、安心して、幸福にくらす権利があることを宣言したものです。
しかし、現状はどうでしょうか。長く続いた自民党政権のもとで国民切り捨ての政治がおしすすめられ、経済的な格差が、そのまま学力の格差や、ひどい場合は命の格差にまでつながる社会になってきました。いまだに思想、信条による差別もなくなっていません。
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と宣言し、国がそのための責任を果たすことをもとめています。ところが、この十数年のあいだに貧困と格差が広がり、「市場原理主義」と「個人責任」の名のもとに、国民にたいする最低の責任さえ投げ捨てられてきました。その結果、生活保護の打ちきりや、その申請さえも認めない異常な「水際作戦」がすすめられ、あちこちで食べるにこと欠いたまま餓死同然で亡くなる事件もおきています。
一方で、マンションや団地に共産党のビラや戦争反対のビラを配布したというだけで、不当に逮捕・拘留されるだけでなく、有罪とされる事件もあとをたちません。
こんな状況は、憲法で「すべて人間は、個人として尊重される」と明記された社会に百八十度逆行するものです。いま必要なのは、憲法に明記された人権の規定を、社会のすみずみに根づかせるとともに、国民が主権者にふさわしく政治に参加できるように制度を整備・改善することです。
性的人権を守ります……一人ひとりの人間の性的指向や性自認(心の性)は、実に多種多様です。社会のなかには、「異性愛者」のほかにも、「同性愛者」や「両性愛者」もいれば、心と体の性が一致しない人(性同一性障害)、両性具有(インターセックス)の人もいます。これらの人びとは、「性的マイノリティ」と総称され、現在の日本では、約500万人にのぼると推定されています。日本共産党は、性的マイノリティの人権保障につとめます。
社会のなかには、いまだに性的マイノリティへの誤解や偏見が根強く存在します。そのもとで、自分の自然な性的指向や性自認を否定的にとらえ、強い疎外感や社会不信、自己否定の気持ちにかられる人もいます。こうした人たちも、同じ一人の人間として、自分らしく豊かに暮らせる社会をつくることが求められています。
性別や性自認、性的指向を理由とした、就労や住宅入居などのあらゆる差別をなくし、生き方の多様性を認め合える社会をつくります。公的書類における不必要な性別欄を撤廃するよう求めます。未成年の子どもがいても性別の変更が可能となるよう、「性同一性障害特例法」を見直します。保険適用に性同一性障害をくわえ、治療のできるクリニックの拡充を求めます。
公営住宅、民間賃貸住宅の入居や継続、看護・面接、医療決定の問題など、同性のカップルがいっしょに暮らすにあたっての不利益を解消するため力をつくします。
アイヌ民族の生活向上と権利の擁護のために……08年の通常国会では「アイヌ民族を先住民族とする国会決議」が全会一致で採択されました。これは、国連総会での決議「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年9月13日)を踏まえたものです。従来、アイヌを「先住民族」と認めてこなかった日本政府も、国会決議をうけ、「政府として先住民族として考えている」(町村官房長官談話)と表明しました。これまでの政府によるアイヌ政策は、文化振興に対して一定の焦点があてられてきただけで、アイヌの人々の生活向上には正面からとりくんできませんでした。しかし、09年7月29日に政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」は、アイヌの生活向上と権利を回復するための新法制定を求める報告書を提出しました。日本共産党は、アイヌ民族の生活と権利を擁護するために、こうした新法を含め、施策の抜本的拡充を要求します。
(※ 「日本共産党北海道委員会の総選挙政策」の「10アイヌ民族の生活と権利を守ります―先住民族権利宣言の全面的実効と46カ条の諸権利の確立を―」をご覧ください)
在日外国人の生活と権利向上……厚生労働省の調査によれば、わが国で合法的に就労する外国人労働者(派遣、請負含む)は、9万5000カ所以上の事業所に、56万人います。(2009年10月末現在)。外国人労働者が人間らしい生活を営めるよう、労働条件の改善をはかることを要求します。永住外国人(特別永住資格を含む)に地方参政権を保障する立法の実現に全力をつくします。地方自治体の運営は、本来、すべての住民の参加によってすすめるのが憲法の保障する地方自治の根本精神です。永住外国人を地方自治の担い手としてむかえ、日本国民と等しく参加する政治を実現することは、わが国の民主主義の成熟と発展につながります。
「従軍慰安婦」への謝罪と名誉回復……「慰安婦」問題は、日本がおこした侵略戦争のさなか、植民地にしていた台湾、朝鮮、軍事侵略していた中国などで女性たちを強制的に集め、組織的継続的に性行為を強要したという非人道的行為です。その数は8万人から20万人以上ともいわれます。1993年の河野官房長官談話、1995年の村山首相談話などで政府は強制連行の事実を認め、謝罪はしています。しかし、国による賠償はおこなわれておらず、いまだ未解決です。国連やILOなどの国際機関はもとより、海外の議会から、被害女性への公的な謝罪や国による賠償を求められています。被害者は高齢化し、亡くなった方もおり、一日も早い解決が必要です。
政府に「慰安婦」問題の真の解決と、国による謝罪・賠償、教科書への記載をおこなうことをもとめます。国会の責任として、これを促す「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律」の成立のために力をつくします。
児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
第1に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
第2に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。
個人情報とプライバシーの保護のために……個人情報保護法に、自己情報の取り扱いに本人が関与し選択できる「自己情報コントロール権」を明記するよう要求します。思想・信条や病歴・犯罪歴などの収集・取り扱いは、原則禁止すべきです。個人情報の漏えいが心配される住民基本台帳ネットワークの中止を要求します。個人情報保護措置の策定や、漏えいの恐れがある場合のネットからの切断措置など、自治体として可能な対策をとらせます。
住民基本台帳の閲覧制度を改善し、個人情報は原則非公開とすることを求めます。
公共サービスの窓口業務の民間委託化に反対し、住民のプライバシーを守らせるようにします。
2009年の日本の自殺者は3万2845人にのぼります。1年間に3万人以上が自殺するのは、これで12年連続となります。日本のどこかで、1日あたり100人近くの人が自殺をしていることになり、1000人近い人が自殺をしようとしていることになります。自殺問題は、なによりも本人や家族にとって痛ましいことであるとともに、社会にとっても重大な問題です。現状のまま放置することは、絶対に許されません。
日本の自殺は、世界的にみても突出して異常な高さとなっており、「自殺大国ニッポン」という不名誉な言葉さえ生みだされています。しかも、日本の自殺者は働き盛りとされる40代、50代で突出して高いことが問題視されてきましたが、とりわけ09年の場合、それにくわえて20代、30代の自殺者が過去最高となったことが、大きな社会問題として注目されました。
個々の自殺の背景と事情には、さまざまな理由があり、1つにはくくれないとされています。しかし、最近、自殺について社会的問題として解決しようとするなかで、日本社会のあり方――とくに憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」――との関係がクローズアップされています。とりわけ、自殺の原因としてもっとも多かったのは「健康問題」であり、つづいて「経済・生活問題」とされていることで、このことがいっそう注目されています。医師の立場から自殺問題を考えてきた埼玉済生会栗橋病院の本田宏・副院長は、「日本の医療は長年の低医療費政策と医師養成数抑制によって、各地でドミノ倒しのような崩壊状態になっている」として「自殺の動機として医療や介護や福祉の未整備による苦悩が増大することは火を見るより明らか」と指摘しています。また、国が「経済復興・発展優先で、25条を保障するための社会保障整備がおろそかにしてきたことがある」と指摘しています。(「毎日」2010年5月28日付)
自殺を誘発しかねない「社会的要因」をとりのぞくためにも、「人間に温かい社会」に変え、それに必要な施策をすすめることが重要です。そのために政治と行政ができることは無数にあります。なによりも、まず、この間の「貧困と格差」を拡大してきた路線を根本的に転換し、社会保障や医療制度を改悪してきた政策を改め、すべての国民が、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営める」生活を送れるような施策を講じる必要があります。税率を2倍に引き上げるような消費税増税は、自殺問題をさらに深刻にすることにもなりかねません。菅首相は「最小不幸社会」などといいますが、ただでさえ生活苦にあえぐ低所得者層を「最大不幸社会」に投げ込む消費税引き上げは、絶対にすべきではありません。
自殺問題の解決にむけて、日本共産党は当面、以下のような施策をただちに実行に移していくことを求めます。
――不安定雇用の急速な拡大に歯止めをかけ、非正社員の権利を守る。長時間・過密労働やサービス残業を根絶する。
――大企業による下請けいじめや身勝手を規制し、中小企業の経営を守るルールを確立する。
――年金・介護・医療など社会保障の負担増、サービス切り捨てをやめ、社会保障を予算の主役にすえる。生活保護が必要な人には、無条件で保障するようにする。
――競争と管理の教育から、子どもの発達と成長を中心にすえた教育に転換する。
警察が収集し、内閣府が保有している地域別、職種別などの詳細な自殺をめぐるデータが非公表とされています。自殺対策をすすめるために、プライバシーに配慮しつつ、データの公表を求めます。
こうした施策の充実、拡充とともに、うつ病対策などのメンタルヘルス(心の健康)の問題にも、政府や行政が積極的に対応するようにしなければなりません。心の病を患っている人にたいし、適切なケアを施す体制を、職場や地域に確立することが求められています。