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日本共産党の農業委員選挙政策

農業を壊滅させるTPPに反対し、農地と地域農業をまもる農業委員会に

2011年3月 日本共産党農林・漁民局


 今年七月、全国の六割弱の市町村で農業委員選挙がおこなわれます(沖縄は九月)。地域農業や農地利用に致命的な影響を及ぼすTPP(環太平洋連携協定)問題が、国政の大きな争点になるなかでの選挙です。農家の声をしっかりと集めて行動する農業委員会にし、政府にTPP参加を断念させ、地域農業と農地をまもる力を強める機会にしようではありませんか。

“究極の自由化” TPP参加を許さない

 「またしても農業を犠牲にするのか……」、「大規模農家もやっていけなくなる……」――。

 いま、農業関係者のなかにTPP参加に突き進む菅内閣に激しい憤り、不信がひろがっています。例外ない関税撤廃が原則であるTPPに参加すれば、農業と農村は壊滅してしまいます。食料自給率は四〇%から一三%へ低下し、国土や環境が破壊され、国の安全も危うくなります。日豪EPA(経済連携協定)も畜産や畑作物などに甚大な打撃をあたえるのは必至です。

 世界は、「食料はいつでも輸入できる」時代ではありません。崩壊の危機がひろがる日本農業の再生、食料自給率の向上はまったなしです。TPPへの参加はそれとは絶対に相容れません。多くの国民も、農業の現状を憂え、「安全な食料は日本の大地から」を切実に願っています。農林漁業者や関連業者、消費者、労働者などが連携したTPP反対の運動も急速にひろがっています。

 日本共産党は、農業の再生と食料自給率の向上を国政の柱にすえることを一貫して訴えてきました。その立場から、自由化一辺倒ではなく各国の「食料主権」を保障する貿易ルールを確立する、価格保障と所得補償を組み合わせて農家の経営条件を抜本的に改善する、などを内容とする総合的な「農業再生プラン」を提案しています。その実現をめざすとともに、地域農業の深刻な現状を打開し、農地や農家、農業をまもる、地域で可能なとりくみを発展させるために、生産者や消費者、自治体・関係団体と力を合わせて奮闘します。当面、農業や地域、環境や国土を壊すTPP参加に断固反対し、国民的合意と共同をひろげるために全力をつくします。

 農業委員会はこうしたとりくみをすすめる上で大事な組織の一つです。

求められる「農家の代表」としての農業委員会の役割

 農業委員会は、農地法による農地の権利移動、転用などにかんする許認可の権限をもつ行政委員会です。委員の大半が農民の選挙で選ばれ、国や自治体に農民の意見を反映させる役割をもっています。農家の声をまったく無視し、地域農業を壊滅させる企てが強まるもとで、農家の要望をしっかりつかみ、政府に届ける農業委員会の役割がとりわけ大事になっています。

 一昨年、農地法が「改正」され、一般の株式会社への農地の貸し借りが自由化されました。耕作農民が農地を持つのが基本という戦後の農地制度の原則をほり崩す内容ですが、それにともない、進出した企業の農地の利用状況の把握、遊休農地の解消などの権限と役割が農業委員会に加えられました。また、地域農業の担い手の確保・育成が急務になっているもとで、新規就農者への総合的な支援という面でも、農業委員会の役割は重要になっています。

 農地制度をめぐっては、菅首相が農地法のさらなる見直しを言い出し、財界などは、一般企業の農地の所有権取得まで認めさせようとしています。政府の行政刷新会議では、農業生産法人の要件をさらに緩和し、農家の共同という性格を変質させ、農業委員会制度については解体する議論まで出ています。いまこそ、農業委員会が、地域農業や農地の実態をふまえて積極的に発言し、農家の代表、農地の守り手として役割を発揮することが求められています。

 近年、市町村合併にともなう農業委員会の再編・統合と委員定数の大幅な削減などによって、弱体化している委員会も少なくありません。それだけに、今年のいっせい農業委員選挙で、政府の農業つぶしに立ち向かい、農家の代表として、地域農業や農地を守るために真剣に努力する委員を一人でも増やすことが重要になっています。

 日本共産党は、農業委員会の制度が発足して以来、その役割を一貫して重視し、委員に積極的に立候補し、政策もあきらかにし、活動してきました。現在、日本共産党の公認・推薦、議会などからの選任を含めて約五百人の農業委員が活動しています。今度の選挙では、次の政策を掲げて奮闘するものです。


TPP参加反対の共同をすすめます

 地域農業を壊滅させるTPPへの参加は、遊休農地の解消や農地の集積、新たな担い手の確保・育成など、農業委員会が力を入れているとりくみを台無しにしてしまいます。TPP参加を許すかどうかは、農業委員会の存在意義にもかかわる重大な問題です。

 TPP参加を許さない、地域での世論づくりと運動の先頭に、農協や漁協、消費者団体などとともに農業委員会が立てるよう力を注ぎます。TPP参加による地域への影響や農業「開国」論の誤りなどを学習し、全農家に宣伝するとともに、全国すべての委員会でTPP参加反対の意見書・建議を採択し、政府に提出します。農業委員会として署名運動をすすめます。

農地の荒廃を防ぎ、有効利用をはかるために努力します

 農業委員会の日常の大事な仕事は、農地をまもり、有効利用をはかることです。これは、農地法などにもとづく行政権限のある農業委員会でしかできないことであり、地域農業の維持や環境の保全に欠かせない役割です。農地を積極的に活用し、農業生産を続けることの意義を訴え、農家を励ましながら、農地にかんする農業委員会の責任が果たせるように努めます。

 農地の有効利用、荒廃農地の復旧にとりくむ――遊休農地の解消には、根本的には農業経営が成り立つ条件の整備が不可欠ですが、農業委員会が可能な役割を果たすことも大事です。「改正」農地法で強化された農業委員会の役割も生かし、行政や農協などと連携して遊休農地の再生にとりくみ、都市住民など就農希望者への農地のあっせん、市民農園としての活用、作業受委託などもすすめます。

 近年、農村に住まない人が農地を相続し、耕作しない例が増えていますが、農業委員会が遊休農地を近隣の農家によって適正に耕作されるよう援助を強めます。

 農地にたいする重税を軽減する――多額の固定資産税、相続税が農地つぶしに拍車をかけています。市街化区域であっても現況が農地の場合、農地課税を基本とするよう政府に求めます。当面、市街化区域内農地にたいして、生産緑地の新設と追加指定を市区町村に求めます。農業施設用地の固定資産税は農地並みを基本とし、宅地並みにされている施設用地・畜舎などの課税額の是正を求めます。

 違法な農地取得、無秩序な転用をきびしく規制する――農地法は、農地の効率的な利用を義務付け、それが保障されない者への権利移転を禁止し、転用をきびしく規制しています。そのために、農業委員会には、農地の売買・貸借や転用にたいする許可、違反した場合の告発や原状回復命令などの権限が与えられています。農地の権利移動の審査にあたって、農家以外の青年や高齢者が「むら」に定住してみずから農作業をおこなう場合に積極的に支援するとともに、農外の企業による不法あるいは無秩序な農地の取得、転用は厳格に規制します。

 株式会社などの農地利用をチェックする――一昨年の農地法「改正」で一般の株式会社に貸借による農地利用が認められ、二〇一〇年には全国で二百九十六法人が参入しています。農業委員会には、参入企業に定期的に報告を求め、調査や勧告するなどの権限が与えられました。それらを厳格に行使し、農地の投機・荒廃を防ぎます。そのために必要な体制や予算の充実を求めます。

 産廃や建設残土の投棄をきびしく監視する――産業廃棄物や建設残土の無秩序な埋め立てにより、各地で農地の汚染や周辺環境への悪影響が出ています。自治体や議会、住民運動などと連携しながら、農地や環境をまもるよりきびしい規制を確立し、対策を強めます。茨城県古河市の日本共産党の農業委員は、産廃不法投棄の“実績”のある業者(農地も所有)が新たに取得した農地について、きびしく監視し、産廃の埋め立てを許さないとりくみを強めています。

地域農業の振興策を提案し、実現の先頭に立ちます

 自治体などに農業振興策を提案・建議し、実現に力をつくすことも農業委員会の重要な仕事です。各地ではじまっている消費者や都市住民、関係団体が共同した農林業を重視した地域づくりの経験をひろげるために、農業委員会が積極的なイニシアテブを発揮します。

 地域に根ざした農業振興計画づくり――地域の実態や農家の声を踏まえた農業振興計画づくりに積極的な役割をはたします。千葉県横芝光町の農業委員会は、「元気な農業めざして」と題して全農家を対象にアンケート調査を実施、その結果をふまえて「地産地消・食育推進宣言の町」をめざした建議や、学校給食への地元農産物の導入、直売所の設立などを求める意見書を採択、町として具体化をすすめています。こうしたとりくみを全国にひろげます。

 地域特産物の振興、農家経営にたいする援助――特産物にたいする価格保障や農業機械・施設・資材費にたいする支援、小規模土地改良への援助など、さまざまな手立てで地域農業を応援する自治体が各地にあります。愛媛県西予市(旧野村町)などでは、地域特産物への価格保障で生産を振興しています。兵庫県丹波市の農業委員会は、集落営農への支援、ハウス・果樹栽培施設、有機農業にたいする助成などを市当局に要請し、実現しています。こうした自治体独自の支援措置を提案し、具体化するために農業委員会としても積極的な役割をはたせるようにします。

 多様な家族経営をできるだけ多く維持する――地域農業の担い手を育てることは、農業委員会の重要な役割の一つです。近年、きびしい情勢のなかでも農業に生き生きととりくんでいる地域の多くは、専業農家とともに兼業農家や高齢者、女性など、多様な家族経営を大事にし、その知恵や力を引き出しています。農業委員会として、多様な農家が自主的に参加する集落営農を地域農業の担い手として重視し、農地の集積やあっせん、機械の導入・更新などを支援します。

 新規就農者、定年帰農者などを支援する――新規就農者が定着するためには、当面の生活費、農地・住宅・施設のあっせん、技術援助など、地域の手厚い支援が不可欠です。奈良県明日香村の日本共産党農業委員は、新規就農者への農地・住宅・技術・資金・販路などで相談に乗り、可能な支援をおこない、定着・育成に力を入れています。各地で、新規就農者に月十万円〜十五万円を支援する制度などを実現しています。こうした経験をひろげるとともに、新規就農者に農地保有合理化法人の保有地を長期契約で貸し出し、農地負担を軽減するようにします。

 中山間地域の農業を守る――中山間地域への直接支払い制度について、その充実と地域の実態に合わせた柔軟な対応を求め、適用をひろげます。

 鳥獣害対策を強める――どこでも鳥獣害が深刻化し、農山村の荒廃を早めています。農作物を保護する防護柵の設置、有害鳥獣の駆除、専門家による講習会などにたいする国・自治体の補助を求めます。農業委員会が地域ぐるみの有害鳥獣対策の先頭に立ちます。

 都市農業をまもる――都市の農地には、生鮮農産物の生産とともに、環境の保全、防災空間など市民生活に欠かせない多面的役割があります。農地・農業の守り手である農業委員会の役割は、それだけに重要です。都市計画制度を抜本的に見直し、農業を都市づくりに位置づけ、集出荷施設、温室・ハウスなどを整備し、市民農園・体験農園のとりくみをひろげます。東京都内では、各地で直売所マップをつくり、地産地消を推進しています。市街化区域内農地にたいする宅地並み課税を改めさせます。

農家の願いを反映した農政を政府に要求します

 地域農業振興のとりくみは、国にたいする農政の要求と結びついてこそ実を結びます。農家の願いを国政に届ける農業委員会の役割は、この点でも、大きいものがあります。

 日本共産党の農業委員は、各地で、米価暴落を防ぐための政府買い入れ、農家経営をまもるための価格保障・所得補償の実現、日豪・日米FTAなど輸入自由化反対、株式会社の農地取得反対などで建議をまとめ、農協や自治体などとともに政府に迫ってきました。毎月の委員会で、農地案件の審議にとどまらず、国の農政にたいする農家の思いを率直に出し合い、建議として政府に提出できる農業委員会にするために力をつくします。当面、TPP参加反対とともに次の要求や課題にとりくみます。

 食料自給率の向上を農政の基本にすえさせる――穀物価格が過去最高を更新し、世界の食料の外国依存の危うさはいよいよあきらかです。食料の海外依存を転換し、食料自給率の向上を柱に据えた農政の確立を求めます。

 食料主権を保障する貿易ルールを求める――わが国の農業の再生にとっても、世界の食料問題の解決にとっても、自由貿易一辺倒の貿易ルールの転換は急務です。農産物の輸入自由化の拡大が避けられない日豪・日米のFTA(自由貿易協定)EPA(経済連携協定)などに反対し、各国の食料主権を尊重する貿易ルールの確立を求めます。

 大規模農家も、中小農家、兼業農家も成り立つ農政を求める――民主党・菅政権は、「競争力ある農業」の育成と称して、マニフェストで批判した大規模化路線を強調しはじめています。しかし、大多数の中小農家を切り捨てては、地域や環境は維持できず、食料自給率の向上など不可能です。地域農業を支える大規模農家や集落営農を支援するとともに、大多数の農家が営農をつづけ、農村で暮らしていける農政を求めます。

 米の市場まかせを改め、農産物価格の安定を求める――政府による米価の下支えや農産物価格の安定は農家の最大の願いです。農業委員会が、この願いの実現をめざし、生産コストに見合う価格保障の確立を政府に堂々と求めます。民主党政府の戸別所得補償は、補償水準が低く、全国一律であることや価格下落を放置したままなど、多くの問題があります。所得補償の改善とともに、価格の下支えを求めます。

 米の需給と価格の安定は、政府の責任です。生産調整をおこなう場合は、転作条件を思い切って有利にし、農家が自主的に選択できる条件を整えることを求めます。

 飼料や資材価格の高騰対策を強める――飼料や燃油、資材価格の高騰が農家経営を窮地に追い込んでいます。畜産経営を維持するため、飼料安定基金への国の支援を強めるとともに、新たな特別な基金を創設するなど、飼料価格の安定対策の強化を求めます。

「農民が主人公」の運営に努めます

 農業委員会が「農民の代表」にふさわしい役割をはたすためには、運営の面でも「農民が主人公」を貫くことが求められます。農地事案だけではなく、日ごろから農家の声や地域の農業問題、農政問題などが議論できるよう、積極的に役割をはたします。

 農業委員会の体制・予算の拡充――「改正」農地法のもとで農業委員会の役割が重視され、新たな業務も追加されました。農地相談員の設置など、それに必要な体制、予算の確保を政府に求めます。政府の行政刷新会議で議論が出ている農業委員会の廃止や、農外の委員を多数にするなどの制度見直し・弱体化には強く反対します。

 合併で農地面積が大きくなった市町村では、地域をわけて複数の農業委員会を設置できる規定を適用します。また農業委員協力員制度をつくります。

 農民の要求を運営に反映させ、実現のために行動する――集落での座談会や要求アンケートなどを随時おこない、地域農業の実態や農家の要求を委員会運営に反映できるようにします。

 建議で取り上げた要求を実現するために行動する農業委員会をめざします。市町村長や行政担当者と定期的に協議し、議会との連携、関係団体との共同などをすすめます。

 「農業委員会だより」など、独自の広報紙を発行するように努めます。農業委員個人としても「農業委員だより」、地域民報などで農業委員の活動を報告するようにします。

 農地や税金問題で農家の相談にのる――農業委員は、委員会や各種の会議などで農家の営農や暮らしにかかわる各種の制度を知りうる立場にあります。事務局や関係者の知恵も借りながら、農地の貸借や転用、相続や贈与、融資や補助金の活用、所得税・住民税・固定資産税・相続税など各種の税金などで農家の相談にのります。

 女性、青年の委員への選出を重視――農業就業者の六割を占め、食の安全などにも切実な関心を持つ女性の農業委員への進出を重視します。政府も、女性農業委員の登用の目標を定めてとりくむことを掲げ、農水省も、「女性が一人もいない農業委員会の解消、平成二十七年三月までに二人以上の選出」を目標とする旨の通達を出しています。各地の農業委員会で、女性委員が地産地消や学校給食への地場産の供給などで大きな役割をはたしています。千葉県船橋市の日本共産党の女性農業委員は、「千葉県女性農業委員の会」の会長として、県内の農家女性の地位向上や要求実現の先頭にたっています。女性とともに青年農業者の委員選出も重視します。


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