2002201.08
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全国各地で、信用金庫・信用組合(信金・信組)の破たんが相次いでいます。昨年一年間で、全国で九つの信用金庫、三十七の信用組合が破たんし、過去最高の破たん件数となりました。とりわけ十一月から十二月にかけて破たんが集中、地域の中小業者の経営を支えてきた信金・信組が短期間に大量につぶれるという、まさに異常事態です。さらに昨年末には、第二地方銀行である福島銀行に「早期是正措置」が発動され、石川銀行も破たん申請、今年一月には中部銀行にも「早期是正措置」が発動されました。地域金融機関の破たんの不安は今も続いています。
こうした事態に日本共産党国会議員団は「地域金融対策委員会」を発足させ、昨年一二月より、破たんした信金・信組の実状と地域経済への影響を把握するため、六都道府県(北海道、栃木、東京、愛知、大阪、大分)に入り、実態調査をおこないました。
以下、これらの調査にもとづいて明らかになった信金・信組の破たんの原因と影響をふまえ、その対策について提案するものです。
破たんした信金・信組からお金を借りていた中小業者の多くは、ただでさえ不況のもとで資金繰りが苦しいときに、「手形の書き換えができない」「運転資金が借りられない」など、日常的な借り入れすら困難になり、文字通り経営の危機に直面しています。
破たん信金・信組の大部分は、譲渡先となる「受け皿」金融機関に営業が引き継がれますが、その借り手のすべてが「受け皿」金融機関に引き継がれるわけではありません。きちんと返済をおこなっていても、赤字経営が続いている場合や、返済が少しでも滞ったことがある借り手は、整理回収機構(RCC)に送られて強引な回収(借入金の一括返済など)を迫られ、倒産に追い込まれる危険性があります。いま借り手の大部分をしめる中小業者は、自分が「RCC送り」になってしまうのではないかという不安で眠れぬ毎日を送っています。
信金・信組を連続破たんに追い込んでいる最大の要因には、小泉内閣の不良債権の「早期最終処理」の方針があります。この方針のもとで、金融庁は金融機関の「健全化」をはかるためとして、国際的な活動をおこなう都市銀行と同じ「金融検査マニュアル」で信金・信組の検査をおこなってきました。都市銀行の場合には、国際的な金融ネットワークで活動しているため、自己資本比率八%以上などの国際基準(BIS規制)が定められています。これに対し信金、信組は、信用金庫法や中小企業等協同組合法にもとづいて、「国民大衆のために金融の円滑を図り」、中小業者や勤労者の「公正な経済活動の機会を確保し‥その自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ること」を義務づけられています。
この信金・信組を都市銀行と同一の「金融検査マニュアル」で検査をおこなうことに、なんの道理もありません。
党国会議員団の調査の中でも、地域の各中小企業団体から、こうした金融庁検査のあり方に対し大きな怒りの声が寄せられました。わずか二ヶ月たらずで六つの信金・信組が姿を消した栃木県の商工会議所連合会会長は、「地域経済に根ざしている金融機関にたいし大銀行と同じような検査を押し付けてくること自体が問題」、愛知県や北海道の商工会の役員も、「信金・信組は一生懸命やっている。大手(銀行)と同じように見てもらってはわれわれが困る」と金融庁のやり方への不満と怒りをあらわにしています。
大銀行が中小企業への融資を縮小しているなか、信金・信組は、少々赤字が続いたり返済が遅れても、長年の取引の実績や経営者の人柄、商売の可能性などを総合的に判断して融資に応じ、不況のもとで必死にがんばる中小業者を支援してきました。
ところが「検査マニュアル」では、信金・信組の自己査定によって正常な取引先と判定されていても、経営が赤字であることや、返済条件を緩和したなどの理由だけで、「要注意先(回収に問題あり)」にされたり、それまで「要注意先」とされてきたところが「破たん懸念先(回収できない危険性あり)」に、さらに「破たん懸念先」はその下の区分へと落とされてしまいます。同時にこの「検査マニュアル」では、その借り手区分の「リスク」に見合った貸倒引当金を積むことが求められます。
破たんした信金・信組の多くは、金融庁の検査の結果、それまでの引当金の何倍もの金額の積み増しを強要され、それに応ずることができず、破たんに追い込まれたものです。
大銀行には公的資金の投入や「株買取機構」の創設、RCCによる不良債権の「時価」買取などいたれりつくせりの公的支援をおこなう一方で、地域金融の血脈の役割を果たしている信金・信組には、不良債権の「最終処理」を口実にわざわざ破たんに追い込む。こんな金融庁の乱暴なやり方は、地域経済にも大きな打撃を与えるものです。
金融庁は、信金・信組にたいする一斉検査の目的について「ぺイオフの解禁にむけて、地域金融機関の選別をおこなうため」(森昭治金融庁長官・二〇〇一年十二月四日参議院財政金融委員会)とはっきり述べています。金融機関の破たんを未然に防ぐことが仕事のはずの金融庁が、ペイオフが解禁される前に体力の弱い信金・信組をあらかじめつぶしておこうなどというのは、きわめて粗暴な本末転倒の所業であって許されるものではありません。
そもそも、この深刻な不況と信用不安のもとでペイオフを解禁する条件はありません。それどころか、経済にいっそうの混乱をもたらすだけです。しかも、ペイオフ解禁によって国民の預金については全額保護しないとする一方で、大銀行へは公的資金の投入を引き続きおこなうのですから、こういうやり方自体まったく道理のないものです。
政府、金融庁のやり方は、たんに力の弱い信金・信組を破たんに追い込むだけでなく、これからの地域金融のあり方を一変させ、中小業者の経営にも大きな困難をもたらすものです。
今後は「検査マニュアル」を基準に、借り手の厳しい区分とそれに見合う引当金の積み増しを前提に融資をせよ、ということになれば、信金・信組の融資姿勢も「担保がなければ貸せない」「少しでも延滞をしたら貸せない」「運転資金の融資も渋る」というものに変わらざるをえず、不況にあえぐ中小業者の金融の道が閉ざされ、大量の倒産、廃業を招く結果になりかねません。
同時にこのことは、信金・信組にとっても「貸したくても貸せない」状況を強いられることになり、資金の運用に苦しんだあげく投機的な債券の購入に走ったり、いっそう経営が苦しくなって破たんに追い込まれる事態がさらに増加することになってしまいます。
政府、金融庁のやり方そのものが、不良債権の最終処理をすすめ金融機関を「健全化」するどころか、ますます不良債権を発生させ、金融機関の破たんを増やし、地域の金融を崩壊に導く危険なものであると言わざるをえません。
信金・信組の役割を守り発展させることは、地域経済の再生と景気の回復にもつながるものです。破たんに追い込んだり、実態に合わない「マニュアル」を押し付けるのではなく、信金・信組を地域の金融を守る要(かなめ)として位置づけ、必要な支援をしていくことこそ、政治の本来の仕事ではないでしょうか。
日本共産党国会議員団は、そのために以下の「緊急要求」を発表し、その実現のために全力を尽くすものです。
「検査マニュアル」が中小業者への融資実態と合わないことは、柳沢伯夫金融担当大臣も認め、改訂の可能性に言及する答弁をおこなっています(二〇〇一年一二月六日、参院財政金融委員会)。ただちに必要な措置を取るとともに、信金・信組を地域金融の要として育成・発展させために、次のことを求めます。
政府、金融庁の方針で信金・信組の破たんを引き起こした以上、何の落度もない借り手の中小業者を保護するのは政府の当然の責任です。
この点でも柳沢金融担当大臣は、わが党の質問と要求(一二月六日、参院財政金融委員会)を受けて、中小業者の融資に「格別の配慮」をするよう各地方の財務局にたいし緊急の連絡をしています。しかし、それだけでは不十分です。ただちに次の措置をとるよう求めます。
党国会議員団の全国調査の中でも、銀行や国民生活金融公庫などの政府系金融機関の貸し渋り、信用保証協会が保証を厳しく抑えていることに対する中小業者の不満の声が、数多く聞かれました。なかには、銀行が自治体の制度融資の窓口になることさえ拒否するというひどい事例もあります。
地域の金融が危機に瀕している今こそ、政府の責任で、銀行に公共的責任を果たさせ、政府系金融機関や信用保証協会にも、「一般の金融機関から融資を受けることが困難なものへの資金供給」や「信用力、担保力の不足する中小業者を支援する」という本来の目的にふさわしい役割を果たすよう指導し、少なくとも以下のことをただちにおこなわせるよう求めます。
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