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日本で禁止されているアメリカの遺伝子組換食品スターリンクや、ダイオキシンに汚染された輸入豚肉、鶏肉が、国民の知らない間に食卓に乗ってしまう事件が相次ぎ、輸入食品に対する消費者の不安が高まっています。ところが政府は、安全確保の対策をとるどころか、輸入食品の水際検査を1995年の食品衛生法「改正」で廃止するなど、まったく逆のことばかりやってきました。また国内でも、1万4千人に近い被害者(死亡1人)を出した雪印乳業の乳製品による集団食中毒事件、学校給食による食中毒で子どもたちに重大な被害が出たO-157事件、ダイオキシン・環境ホルモンによる食品汚染など、深刻な食品汚染問題が相次いで起こり、食品の安全に関する消費者の不信感が広がっています。
こうした状況をかえ、食品の安全性の向上を求める国民の期待にこたえるために、食品衛生法の改正・強化が急務になっています。
政府の食料輸入依存政策のもとで、日本の食料の60%、7200万人分が、海外からきています。こうした実態を打開し、食料自給率の向上をはかることが、食品の安全確保のうえでも重要です。同時に、大量の輸入食品が入っているにもかかわらず、95年の食品衛生法「改正」で、輸入食品の行政検査を水際検査からモニタリング検査に切り換え、輸入食品について国が実施する検査が、全体の3%程度にまで減らされてきたことは重大です。しかも、モニタリング検査は、消費者が食べてしまってから検査結果がでるもので、これでは安全確保は図れません。
輸入食品の安全を確保するために、水際検査の復活、検査率の引き上げは待ったなしの課題です。当面、水際検査の検査率を2〜3割程度に引き上げるため、検査体制を抜本的に拡充、整備する必要があります。また、市場に出まわっている食品の安全チェックのために、食品衛生監視員を増やし、国内の検査体制を強化することが必要です。
政府は、95年の「改正」で、食品添加物、農薬、動物用医薬品などの食品への使用基準を大幅にゆるめ、国内基準のない農薬や動物用医薬品の食品への使用は野放しにし、489品目もの天然添加物を安全試験なしで一挙に認めるなど、アメリカの圧力に屈して、食の安全規制を大幅に緩和してしまいました。食品の安全に関する規制緩和を見直し、食品添加物や残留農薬等に対する規制を行うべきです。
雪印乳業事件は、規制緩和を目的として95年「改正」で導入したHACCP(ハサップ制度--国が企業の食品衛生管理の安全性について御墨つきを与え、行政による安全チェックを省略する制度)のもとで引き起こされたものです。HACCPを経て製造・加工された食品の安全性が保障されない実態がある以上、これについても食品衛生法による食品安全確保のための手続きを履行させる必要があります。
食品添加物や遺伝子組み換え食品などの「表示」は、消費者の知る権利として欠かすことができないものです。ところが政府は、遺伝子組換食品に対する消費者の不安の高まりにもかかわらず、「安全」を主張し、当初は表示すら認めようとはしませんでした。しかし、例えば、微量でもそば粉の混ざったコショウは、「そばアレルギー」の人にとっては生死を分ける原因にもなります。消費者の知る権利、選択の権利を保障する「表示」を制度化することは不可欠です。
また、環境や人の健康に及ぼす影響が懸念される場合には、因果関係が科学的に解明されていなくても、食中毒や健康被害などの予防的観点から販売を規制できるようにする仕組みが必要です。
97年5月にマイアミで開かれた8ヵ国環境大臣会合では、環境汚染の子どもへの影響の深刻さから、化学物質の規制を子どもを基準に厳しく見直す方向が確認されました。アメリカの「食品品質保護法」にも、子どもに配慮する条項があります。その考え方に立って、子ども、妊婦、病弱者の特別の対策(基準)をとることが強く求められています。
アトピーやアレルギー疾患の人にとって、正確で適切な情報は生死に関わる重要問題です。国民の健康を守るうえで、リスク管理や評価に関する情報、危害が発生した場合の情報などは速やかに公開される必要があります。行政から国民への情報公開とともに、消費者からの情報や意見を政策に反映させることは食品の安全確保の上で不可欠です。相互の情報交換とともに、意思決定する場に、消費者団体の代表が意見を述べる機会を法的に保障することが、国民の健康に重点をおいた食の安全管理をすすめる上で不可欠です。そこで、日本共産党は、現行の食品衛生法を抜本的に改正し、「食品安全確保法」として、食品の安全確保のための法的枠組みをつくることを提案します。
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