1 事前面接
今回のかき込みの中に、労働者派遣における「事前面接」について指摘されているものがありました。
労働者派遣法26条7項は、派遣先事業主が、事前に派遣労働者を特定する行為を禁じております。派遣労働者について、派遣先事業主が、事前に面接して、その派遣労働者の採否を決定する手続きをしている場合、この特定行為に該当し派遣法違反となります。
これは、労働者派遣法が、一時的臨時的なスキルの補充として構想されているため、どのような人が派遣労働者として勤務するかについては派遣先に利害がなく、また、そこで選別が働くような事態は、派遣労働者の福祉を損なうという観点から設けられている規制です。
しかし実態としては、「面接」ではなく、「打ち合わせ」だと称して、事前面接は広く行われている実態があります。また、この実態を受けて、事前面接を可能にするよう派遣法改正を求める経営者側団体の声も多く見られます。
派遣労働者にとっても、派遣先を事前に確認できるというメリットはあるものの、事前面接は実際上雇用の不安定に結びつくことの不利益のほうが実害は大きいでしょう。派遣労働者をより使いやすくする制度の改定には、労働者側は反対すべきだと思います。
2 試用期間
また、今回のコメントの中には、試用期間に関するご質問もありました。
試用期間とは、「本採用の前に行われる正規従業員としての適格性判断のための試みの使用」を行う期間のことをいいます。
この試用期間については、試用期間中といえども、労働契約はすでに成立している状況になるため、14日どころか、1日であっても、解雇をするにあたっては解雇の法規制が働きます。したがって、労働契約法第16条によって、解雇をするには、使用者側に合理的な理由が存在することが必要になります。
おそらく14日というのは、解雇するに当たり、解雇予告手当は試用期間中の者で14日以内の場合は支給する必要がないとされていること(労働基準法21条)から出てきていることと思います。 解雇予告手当の支給の要否と、解雇そのものが出来るかは別問題です。解雇できるか否かというレベルでは、1日雇っただけでも、解雇の法規制が働くのです。
ただし、解雇の法規制にいう「合理的な理由」については、試用期間の趣旨に鑑み、本採用後の解雇の場合に比べ、理由の存在について緩やかに解して良いと考えられています。
従って、試用期間中に解雇をされた場合は、解雇に納得がいかないこと、就労を求めること、未払いとなる賃金を支払うよう使用者に伝え、求めることが基本となります。あとは具体的な問題ですので、労働組合や弁護士に相談されるといいでしょう。
3 最後に
今回拝読したコメントも、非常に鋭く現状を告発する内容に満ちていました。中には、法律は無意味というコメントもありました。確かに法律が機能していない職場も多い実態があります。
しかし、私は、今ある法規制を、生かしていくだけでも、職場は相当程度改善できると考えています。どのようにしたら改善していくことができるかを共に考えていきたいと思っています。
■プロフィール
ささやま・なおと
1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。
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