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岸 松江さん(弁護士)

「うつ病になる奴が悪い」のではなく、うつ病になるまで働かせる会社が悪いのです。

 初めまして。

 初登場の岸です。このコーナーの存在は知っていたのですが、今回初めてみなさんの書き込みを読みました。そして、その生々しい声に正直、とても衝撃を受けています。

 「毎日自殺も頭をよぎる」「不安で不安で仕方がない」「朝が来るのがこんなに辛い」「このまま消えていなくなりたい」・・・おもわず涙が出てきて最後まで読み続けることができませんでした。若い皆さんが、これほどまでに打ちのめされ、苦しんでいるのかと・・・。

 不安定雇用やワーキングプアの実態については、報道や統計などを通じて知っているつもりになっていた自分の「無知」を思い知らされました。

 「声」を寄せてくださった方々、ありがとうございます。お役に立てるか少し不安もありますが、これからがんばりたいと思います。

労災について。 

 さて、仕事上精神的・肉体的にとても追いつめられ、体調を壊している方がいます。そこで「労働災害保険」についてお話したいと思います。

 労災保険は、業務上の病気・ケガや通勤中に災害にあって病気・ケガをした場合に、医療費や休業補償、障害補償などの給付が受けられる制度です。「労災保険」は、適用事業所に働く全ての労働者(パート、派遣労働者も含む)が対象となり、仮に使用者が保険料を支払っていなくても給付が受けられます。

 また、労災が原因で療養している休業期間とその後30日間は、使用者はその労働者を解雇できません(労働基準法第19条1項)。

 給付を請求するのは、労災を被った本人(または遺族)です。請求書は会社の所轄の労働基準監督署にあるので、詳しいことは問い合わせてください。

労災防止は会社の責任

 仕事のためにうつ病になるケースが増えています。うつ病が「労災」として認められる場合もあります。

 「うつ病になる奴が悪い」「精神的に弱い」のではなく、うつ病になるまで働かせる会社が悪いのです。労働者が仕事のために病気になったりケガを負わないように、職場の環境を整備する義務があります。ですから、会社がこうした「職場環境整備義務」を怠った結果、労働者が病気になった場合には、義務違反として、会社の責任を追及することもできるのです。

 不当な扱いに対して、黙っていないで声をあげてほしいです。誰かに相談してほしい、労働組合や相談窓口など探してほしい。一人一人は弱いけど、みんなが手をつなぐことができれば、状況を変える「力」になると信じています。


プロフィール

きし まつえ
東京弁護士会両性の平等に関する委員会副委員長、日弁連両性の平等に関する委員会委員。
東京法律事務所所属。
好きな言葉は「真実の力」。

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