今回のかき込みの中に、大手企業や歴史ある企業でも法律違反をしている会社は多いのかという質問がありました。
私がこれまで仕事を扱ってきたケースでは、大企業や、歴史ある企業はたくさんありました。ですから私は多いのではないかと思っています。
そうした企業も、訴訟などの場面では「法律違反などしていない」と言ってはばかりませんでした。日本経団連も昨年12月に発表したある文書の中で「法の遵守を大前提」と記しています。
どなたかが書かれていましたが、きれい事ばかり言って汚いことをする企業が多いな、というのが私の率直な感想です。
また、別の方のご質問に、仕事で身体をこわして休職していたところ、復職にあたって今までの仕事は無理だから事務職で復帰するなら非常勤と言われたというものがありました。
常勤の職員を、強制的に非常勤にすることは、就業規則の変更を通じても実行できることではありません。事務職にするということについては、厳密には労働条件の不利益変更とは言えないことで、ご質問者は、「事務職でも仕方ない、でも今までどおり常勤で」と回答されればよいことになります。しかし、現実にはその職場で事務職で復帰しようと思えば、非常勤にならざるを得ないのでしょう。そのようなことを事実上強制するという意味では、不利益変更と同視してよい事態と思います。
これも、法律では強制できないことを、現場では無理矢理強制するという意味で、法律を守らない企業の一つのあり様です。
今回も多数のご指摘にあるように、派遣法の改悪や労基法の規制の弱さなど、労働法そのものが、労働者保護の内容に貫かれていないというそもそもの問題もあります。その上で、今ある労働法自体もしっかり守られていないという問題点もあるのです。
企業は、これを守ろうとするどころか、逆に積極的に踏み破って行くにはどうしたらいいかということに汲々としているようにも感じられます。
その一つが「名ばかり管理職」問題です。
「店長」や「マネージャー」などという「管理職」になったら、労基法41条2号に言う「管理監督者」だから残業代の支払いは不要であるという扱いにする企業が非常に多い。しかし、その実態は、労働者そのものであって、法が予定している「管理監督者」では全くないというケースが大変多いのです。
私自身、「SHOP99」の裁判を担当しておりますが、この裁判では、会社側は、原告の元店長が、管理監督者であって残業代の支払いの必要はないと裁判の中で堂々と主張しています。
このような状況ですから、まずは、一人一人の労働者が、「労働法を守れ」の声を大きく上げることを、太く強く行っていく必要があるのではないかと考えています。
なお手前味噌で恐縮ですが、一人一人の労働者が、「労働法を守れ」の声を上げることの大切さ、その実践の経験、具体的なやり方などを紹介する書籍として、最近、「人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か」を出版しました(光文社新書、税込み798円)。良かったらみなさんにもぜひお手に取って頂きたいと思います。
■プロフィール
ささやま・なおと
1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)、『人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か』(光文社新書)。
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