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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

日本弁護士連合会が会長名で「派遣法の抜本的見直しを求める意見書」を発表するなど、派遣法めぐって、規制強化への流れ

  28人のメールを読ませてもらいました。「朝8時から夜11時・12時まで働いて給料17万円、社会保険もないひどい状況に思い悩んでいる」「結婚もできず、低賃金・不安定雇用の男性は生きている価値がないのかと思ってしまう」「学生だが、働いている人の悲惨な実態を目にすると『働きたい・就職したい』という気持ちが沸かない」など、雇用と労働の厳しい実態を告発し悩む若者の声がたくさん寄せられています。

 さらに、「春に大学を出たが、就職先が決まらず今も就活中で、本当につらい。一時は自殺も考えた。今の日本では普通に生きていくことすら難しい」や「派遣で働いているが、差別されるうえに、1・2カ月ごとに派遣先が変わり、とてもつらい。自殺して、規制緩和を推し進めた大企業・国に抗議したいと思っている」というメールもありました。本来は未来に対する希望と自分自身の成長の喜びの中で働いているはずの若者たちが、自殺を考えるところまで追い詰められていることに、強い憤りを感じます。しかし、自殺では今の日本は変えられません。行動するなら、彼らが一番恐れている方法をとるべきです。それは、若者たちが学習し、連帯し、大企業・財界批判の声を挙げ、代弁者である自公政権を選挙で少数派にしてしまうことです。

 今回は、派遣法にかかわるメールもたくさんありました。「派遣で働いているが、契約書もなく、連絡の通信費も自腹、支払額が勝手に減らされているなど無茶苦茶。このままではネットカフェ難民に戻ってしまいそう」「今の派遣業界は人身売買業・奴隷商人と変わらない。派遣は以前のように専門職種だけにしてほしい」という実態の告発や要求とともに、「派遣で苦しめられるのはもう限界だ。派遣撤廃を求めて自民党に抗議し、たたかおう」という呼びかけもあります。長年、若者を苦しませてきた「派遣」問題もいよいよ国会で論議されようとしています。7月25日には、派遣法改正を求める集会に4野党代表が出席し「原則自由化した1999年以前の状態に戻すべき」で共産党・社民党・国民新党が一致し、民主党も「4野党で共同できるよう協議したい」と表明しました。8月1日には、日本弁護士連合会が宮崎会長名で「派遣法の抜本的見直しを求める意見書」を発表し、8月6日の労働政策審議会では「自由化前に戻すべき」の意見が労働者委員から相次ぐという状況になっています。労政審は10月初めにも法案を提出する予定ですが、今、派遣法に関しては規制緩和から規制強化へ潮目の変化が起きています。

 また、「フリーターや派遣を自己責任と切り捨て格差社会を放置する政治では、日本という国に未来なんかない」「若者の希望を奪うような国のあり方は間違っている」「非正規、細切れ雇用、低賃金、無年金、無保険を蔓延させたのは国政の失敗だ」「国内総生産がヨーロッパより高い日本がこんなに不安定なのは、自民党・公明党の政府与党が失策をしているのは明らか。消費税増税や社会保障縮小は筋違いだ。非正社員を増やす大企業は改善すべき」など、自分自身の問題から若者全体、そして日本のありかたの問題へとつないで考える声が多く寄せられています。当面の利益のために若者と日本の将来を食いつぶしている大企業・財界と自公政権の政治を変える機会である総選挙も近づいています。若者が元気に働ける社会、明るい日本の将来を作るために、学習して知恵をつけ、仲間をつくり、声をあげていきましょう。 

プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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