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■林真由美さん(弁護士)
職場でのいじめは会社も「就業環境配慮義務」違反として
給料の遅延(声11)、残業代の不払い(声12)などの明確な労基法違反については、使用者の自主性に任せず、積極的に労基署に通告してください。
募集の際に20万円という給与を提示しながら、契約時には15万円とする(声7)という行為は許されません。募集広告の内容が当然に契約内容になるわけではありませんが、職安での求人票の記載内容はそのまま契約内容になることもあると解されていますので、この内容が守られていないことを職安に通告して改善指導を求める、場合によっては裁判を行うことも考えられます。
パートと正社員の賃金差別(声5)、非常勤教員と常勤教員の待遇の違い(声9)なども前回も述べたとおりです。なお、アルバイトやパートも当然に国民健康保険・国民年金となるのではなく、労働時間が正社員の四分の三以上であれば、正社員同様健康保険・厚生年金に加入することになりますので、社会保険庁に問い合わせてみるとよいと思います(声8)。
アルバイトやパート等非正規雇用の身分は、残念ながら法律での保護は十分ではありません。しかし、不合理な差別は憲法十四条が禁止しており、これまでたくさんの人々が自ら声をあげることで不合理な差別を改善させてきました。非正規雇用が増えつづける今、多くの人に声をあげてほしいと思います。
職場でのいじめ(声13)は、いじめを行っている本人はもちろん、会社に対しても「就業環境配慮義務」違反として法的責任が問われるものです。メモ、写真、録音など証拠を残して法的手段に備えておくことが重要です。その上で、やめるように通告を出してみる、法務省や弁護士会に人権救済申し立てをする、仮処分や訴訟などの法的手段に出る、などの方法を考えることになると思います。毅然とした対応・態度で、違法な行為を許さない状況を作ることが大切だと思います。「スキルアップ」を建前とする退職強要(声15)のように、それ自体違法といいにくい手段に対しては、運動で対抗することがより重要になると思います。
■プロフィール
はやし・まゆみ
1975年岐阜県生まれ
2003年弁護士登録
岐阜合同法律事務所勤務
中国残留孤児国賠請求(東海訴訟)、じん肺根絶訴訟、県内の解雇事件等の弁護団に参加。
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