先頃、昨年度の所得税納付額による「長者番付」が発表されました。今回は、史上初めてサラリーマンが全国トップになったことがマスコミの話題をさらっていました。今回の相談内容は、その対極にある悲惨な若者の就労実態に関するものばかりです。就職できない、休みが取れない、正社員になれない、ホームレスになりそう(なってしまった)とどれも深刻です。
日本で一番稼いだ上のサラリーマンは、投資顧問会社の営業部長で、物を何一つ生産していません。お金持ちや大企業から持てあましているお金を預かって、それを右から左へ転がしてその利ざや(株などを安く買って高く売ってその差額で稼ぐ)で預かったお金を増やすことにより巨額の報酬を上げたのです。それ自身は、世の中の幸福には何も役に立っていません。
何で、何も生産しないでお金が増えるのか。それは、働いて努力しても報われない無数のみなさんがいるからに他なりません。投資顧問に集まってくるお金の大半は、みなさんの低賃金、不払い残業、リストラでかすめ取った汚れたお金なのです。
今、所得の格差がどんどん広がってきています。根拠のない不公正な経済格差は、社会不安を呼び新たな格差を拡大し、長期的に見れば日本の経済にとって大きな損失にもなります。みなさんの状態悪化は、放置できない問題で、政治の責任は重いものがあります。
他方、悲惨だからといってあきらめてはいけません。あきらめと沈黙は、悪政の容認とみなされてしまいます。「会社に文句を言ったら辞めさせられる」――でも、文句を言うべきなのです。違反事実を告発したことをもって労働者を不利益に扱うことは、労働基準法や雇用契約の本質からして違法かつ無効な行為です。労働条件はたたかわなければ向上しませんし、今の日本の労働者の労働条件の水準は先輩の労働者達がたたかってはじめて勝ち取ってきたものであることを忘れてはなりません。中小企業の場合には、経営者自身が大企業の締め付けで苦しんでいるケースもありますので、経営者への理解も必要となりますが、意見はどんどん主張すべきです。声を上げて見ると周りにも同じ思いの人がたくさんにて、支援も広がるし、打開の方向は見つかるものです。まず足を踏み出してみましょう。
■プロフィール
はら・かずよし
弁護士、東京法律事務所所属
(略歴)1963年12月 佐賀県有田町生まれ
1989年3月 早稲田大学法学部卒業
1992年 司法試験合格
1995年 東京弁護士会登録〜現在にいたる
(主な事件)
労働事件(労働側)、公害事件、マンション紛争、痴漢えん罪その他刑事事件、交通事故(民事、刑事)、不動産、家事(離婚・相続)、債務整理・破産事件その他民事一般
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