1 もともとは、あらかじめ他人のところで働かせる予定で集めた人を派遣することなどは、単なる口ききであって、業者が労働者の給料から中間搾取をすることになるため、労働基準法第6条で禁止されていました。
2 ところが、派遣というのは、派遣先は命令ばかりして使用者としての責任をほとんどとらない、派遣元は「派遣料金」から派遣労働者に給料を支払い、後は派遣先の会社任せで、派遣社員が首を切られても、「派遣契約が切られたんだからしょうがない」と責任をとろうとしません。こんなうまみが盛りだくさんなため、財界の強い要求で労働者派遣法が制定され、1999年には派遣のできる業種を原則としてあらゆる業種に解禁し、それ以降爆発的に派遣という働き方が広がってきました。パートやバイトにしても、本来は部分的な業務のための就業形態のはずですが、実際は、正社員がつく業務をやらせて人件費を浮かせたりするわけです。そして、「有効求人倍率が上がっても非正社員ばかり」という状態です。
3 このように、派遣・パート・バイトが増えているのは、「人件費」を減らしたいという「雇う側の事情」です。いまの新卒の就職難も正社員から非正社員へという雇用政策の変化に起因しています。そして、財界はこの傾向をさらに推し進めようとしています。政府は、若者の雇用支援としてジョブカフェなどをうたっていますが、「規制緩和」を旗印にしており、根本のところには手をつけません。むしろ、いま厚生労働省で検討されている「労働契約法」のなかには、新卒を3年の有期社員として、そこで打ち止めにできるような「試用雇用期間制度」が盛り込まれようとしています。ですから、大きくは、今の「もうけの自由」にばかり目を向けた政治を変革することが必要です。
4 では、今現在の生活はどうするか。いま、労働者派遣法40条の3,同4,同5(派遣可能期間をこえて同一の業務について同じ派遣労働者を用いる場合の派遣先の直接雇用義務を定めた規定)を活用することによって派遣社員を正社員にしていく取り組みが始まっています。また、しんぶん『赤旗』でも報じられているように、パートやバイトや派遣でも、労働組合の団結の力で時給をあげさせたり、雇用をつなげたりしている経験もあります。裁判例では、長年パートで働いてきた方たちが正社員との待遇差別が違法だと訴えた丸子警報機事件で、均等待遇の理念を打ち出して、同じ仕事をしている正社員と比べて8割を下回る給料にした場合には、その差別は公序良俗違反となるとした判決があります。こうした先例や団結の力で一歩でも二歩でも前に進んでいくことが大事です。みなさんの周りには必ず思いを同じくする‘仲間’がいるはずです。そうした仲間と一緒に声をあげていくことが大事です。日本共産党は、実際の青年の雇用実現の取り組みと同時に、おおもとの歪みをただす活動をしていますが、こうした動きがより大きく強くなることが求められていると思います。
■プロフィール
ひらい・てつふみ
1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。
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