みなさんの苦しみと怒りの気持ちをそのまま受け止めながら、二つのことを述べたいと思います。
一つは、若者の就職問題がここまで深刻な事態になった背景です。1996年に、「年次改革要望書」がクリントン米大統領から当時の宮沢総理に提出されましたが、その中に「人材派遣の自由化」の項目があったのです。1985年当時は、24歳以下の非正規の率はまだ15%ぐらいでした。ところがいまは男女とも約50%近くになっています。つまりアメリカからの圧力で派遣対象の業務をどんどんひろげ1999年原則解禁にしたため、正規雇用が激減し、アルバイトや派遣など不安定な雇用で働きはじめる以外になく、多くの若者が自分の選択でなくやむを得ず非正規労働者として働くことになったのです。若者の多くが失業、非正規という大変な事態です。一人ひとりの若者が、「自分だけ」とか「負け組みだから仕方がない」という意識をもつのでなく、この相談コーナーに書き込みされるみなさんのように、日本中の若者が怒りを持ち、それを訴えることを期待します。一緒に立ち上がりましょう。すでに就職している仲間は職場に労働組合を組織し(相談はフリーダイアル0120-37-8060)、活動をはじめましょう。あきらめず、学び準備し行動しましょう。
二つ目には、現在就職活動中のみなさんが、働くことを憲法27条にある「権利」としてとらえ、行政に迫りましょう。「官から民」の「改革」のなかで驚くべきことに、ハローワークの職員(公務員)まで市場化テストとして派遣社員に置き換えているところがあるのです。派遣社員が派遣会社に若者を紹介するという異常さです。企業は責任もって正規雇用を、行政は企業に正規雇用の徹底指導を、自治体や国自身が不安定雇用をやめ定数を増やし正規で雇用し若者の雇用を促進するようあらゆる方法で運動をすすめてみませんか。
フランスの若者の立ち上がりで政府は「2年以内なら解雇自由」という悪法を断念しましたが、ドイツも同じものを狙っていましたが断念したということです。若者のたたかいが世界を動かすとは感動ですね。
ジョブカフェが全国の都道府県にできてもう2年。厚生労働省・経済産業省・内閣府などが行っている事業で、「若者自立・挑戦プラン」の中核的施策に位置付けられたもので、「地域の実情に合った若者の能力向上と就職促進を図るため、若年者が雇用関連サービスを1ヵ所でまとめて受けられるようにしたワンストップサービスセンターです。「ワンストップとは、ここ一ヶ所で仕事に関する様々なサービスが受けられるということです。ジョブカフェでは、多くの関係者が使命感と意欲を持って、一人でも多くの若者が自分の将来を見出し、就職できるように全面的に支援しています。まずはコーヒーを飲む感覚で気軽に立ち寄って下さい。『どんな仕事がむいているのかな?』『あの仕事をするにはどうすればいいの?』『面接の必勝法は?』『履歴書の特技って何を書くの?』・・・・進路に関する様々な疑問・質問をぶつけに来てください。スタッフが親切に対応します」という説明です。ところが現実はみなさんの声に「せめて、例えばハローワークなど公的なところで証明書を出してくれて、証明書を見せれば、勉強に必要なパソコンソフトや参考書が安くなるなどして欲しい。ジョブカフェを作っているお金があるならそっちのほうが断然いいと思う。ジョブカフェには行ったが、あまりに当たり前のことしか言われなくてガッカリした。唯一良かったのはインターネットがただで使えたことくらい」とあるように、若者の切実な要求に応えていません。確かに喫茶店のように円いテーブルがあり、あったかい飲み物もサービスしてくれ、それなりの雰囲気がありますが、講座で訓練を受けても、資格をとっても、肝心の採用がすすまないこの現実を変えるために、ハローワークやジョブカフェに正規雇用促進の「たたかい」をいどみませんか。仲間とともに考え、一歩ふみだしましょう。
■プロフィール
なかた・すすむ
1937年、京都に生まれる。関西勤労者教育協会講師。京都府立大学卒業後、大阪の中学校教諭を経て、勤労者教育に専念。労働学校、労働組合、民主団体、青年女性団体、公民館、高等学校、各種団体で講演、 政治経済情勢、哲学、「暮らしと経済」「二一世紀どう生きる」「学ぶこと、生きること」「働くこと、生きること」「自分らしく輝いて」「学ぶことは生きる道しるべ」 などをテーマに、分かりやすく語りかける。
主な著書「働くこと生きること」(学習の友社)。「自分らしさの発見」(新日本出版)。 「人間らしく自分らしく」(学習の友社)
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