働いても、見習いなので給料がないという相談がありました。
労働基準法は、労働者としての最低限度の労働条件を定めて、これを下回る労働契約は無効だとしています(第1条2項、第13条)。
この法律で保護される「労働者」とは、職種の種類を問わず、事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます(第9条)。使用されるとは、判例上「一定の時間使用者の指揮監督を受けて労務の提供を行なうもの」をいうとされています。
あなたが、見習として、使用者に指揮監督されながら働いており、業務指示を拒否できない、時間で拘束されている、という状況にあるのであれば、見習いであってもりっぱな「労働者」にあたりますので、その労務の対価として賃金を受け取る権利があります。無給で働かせるというのは、明らかに労働基準法違反でありそんな契約は無効となります。
その場合、どのような賃金を請求することができるのでしょうか。最低賃金法という法律があり、国は労働者についてその金額を下回ってはならない最低賃金を地域別及び産業別に、定めています。
例えば、地域別最低賃金は、都道府県ごとに最低賃金が定められ、1時間あたり608円(青森、岩手、沖縄など)〜714円(東京)となっています(金額は、2005年10月1日発効)。産業別最低賃金は、都道府県別、産業別に最低賃金が定められており、東京の場合、765円(各種商品小売業)〜鉄鋼業(804円)となっています(金額は、2005年12月31日発効)。
したがって、最低賃金法の定める基準に従って地域別最低賃金と産業別最低賃金の高い方を基準にして、未払い賃金を請求することが可能です。
但し、具体的に請求するには、何月何日に何時から何時まで働いたかを特定して請求することが必要でしょう。手帳やメモで労働時間を記録しておくことが大切です。1日の労働時間が8時間を越える場合や深夜労働をした場合には、時間外労働手当(残業代)の請求も可能です。
まわりに、同じようにおかしいと思っている人がいたら是非一緒に、請求をしてください。労働基準監督署に相談されるのもよいでしょう。職場の現状を変えるには、その職場でおかしいとおもっている当事者が立ち上がって変えるしかありません。是非、具体的な行動で未権利の状況を変えて下さい。
■プロフィール
はら・かずよし
弁護士、東京法律事務所所属
(略歴)1963年12月 佐賀県有田町生まれ
1989年3月 早稲田大学法学部卒業
1992年 司法試験合格
1995年 東京弁護士会登録〜現在にいたる
(主な事件)
労働事件(労働側)、公害事件、マンション紛争、痴漢えん罪その他刑事事件、交通事故(民事、刑事)、不動産、家事(離婚・相続)、債務整理・破産事件その他民事一般
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