自民・公明の与党が、悪法をつぎつぎと16回も強行採決した第166回大会は、7月5日に幕を閉じました。この国会のなかで、ワーキングプアーに象徴される「貧困と格差の拡大」が大きく議論されました。そして、この貧困と格差拡大の根本に、短期間雇用のフリーターや偽装請負・違法派遣などの非正規雇用がおびただしくひろがっていること、さらに最低賃金方をも下回る低賃金、有給休暇さえとれず、残業代も支払われない労働基準法違反の長時間労働の蔓延が原因になっていることが、国会論戦やマスコミの「ネットカフェ難民」の報道でいまや「国民的認識」となりました。
キャノンなど、世界的に有名な大企業の職場の、偽装請負や労働者派遣法違反が国会でつぎつぎと追求されるなかで、政府は、「残業代ゼロ法案」と厳しく批判されたホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラー労働者への労働時間の上限の規制からの適用除外)の導入を断念した労働基準法案しか出せませんでした。
5000万件の年金記録が「宙に浮く」という大問題が発覚するなかで、労働関係3法案(労働基準法、最低賃金法、労働契約法)はいずれも審議未了で、つぎの国会で議論される継続法案となりました。
今回は37人の方からのメールを読まさせていただきました。正社員の採用がなく、アルバイトで、月に10万円の収入のなかから奨学金の返済を始めねばならない、セクシャルハラスメントによるメンタルヘルス・ケアが必要になっているかたなど、本当に深刻で劣悪な労働実態がつづいています。
私は、このような青年の雇用実態を変えていくために、普段は労働者問題とは無縁な委員会である衆議院の外務委員会で論戦を開始しました。国連の専門機関であるILO(国際労働機関)は、2005年6月の第93回総会で、「若年雇用に関する決議」をあげています。このことを5月16日の委員会でとりあげたのがその最初の質問でした。
「若者がなぜ貧困になってるのか、それは若者にディーセントワーク、つまり人間らしい仕事、労働が保障されないからだ。ILOの諸文書では、若い人たちは明日の社会にとっての財産である、いかなる国も、その財産である若者を使い捨てにしてはならない、若い人たちへの投資というのは、その国の未来への投資というのは、その国の未来への投資となるものだ、として、大企業がその機関的業務や恒常的な生産業務であるにもかかわらず、それに従事する労働者には、2〜3ヶ月という短期の雇用契約しかしない、これはまったく合理性を欠く、不公正な契約の押しつけではないか」と追及しました。
厚生労働省の担当局次長は、短期の雇用をよぎなくされ、フリーターなどの若者が増加することは、将来の格差の固定化、あるいは人的資本の脆弱化につながる恐れがあるとして、若者が安定した職業につくよう支援していきたい、と答弁しました。
若者の雇用をめぐっては、このILO決議にみられるように、人間らしい仕事をめざすことが世界の流れです。世界の流れに確信をもって、日本でも運動を強めていこうではありませんか。
■プロフィール
かさい・あきら
2001年まで参議院議員を勤め、05年の総選挙で東京比例ブロックから衆議院に選出され、国会では、厚生労働委員会、憲法調査特別委員会などに所属。参議院時代より、小泉首相まで歴代4人の総理を相手に論戦を繰り広げ、テレビでもしばしば実況中継された。日本共産党中央委員・国際局次長として野党外交の現場に臨んで奮闘。「非核の政府を求める会」常任世話人など。
1952年、大阪生まれ、東大経済学部を卒業後、同農学部でも学ぶ。青年学生運動以来、国際活動で30数カ国を訪問。家族は妻と母。母親は広島で被爆している。趣味 料理、ウォーキング。
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