今回拝見した書き込みの中に、早朝割増金に関するお尋ねがありました。ここに言う割増というのは、時間外であるか否かに関わりなく、午後10時から午前5時の時間帯に就労する場合に、2割5分増しの賃金を支払わなければならないとする割増制度(労基法37条)のことではないかと思われます。通常この制度は、深夜労働割増と言われていますが、午前3時、4時といった早朝と言われる時間帯にも適用があります。お尋ねのケースの場合、就労それ自体が午前6時30分からですから、法の定める深夜労働のことではなく、その企業独自の早朝割増制度の問題なのであり、その制度からして、新しい店長が行った賃下げが不当な賃下げで賃金未払いになるのかどうかという問題なのだと思います。
パート等を正社員登用する考え方について
今回拝見した中では、就職それ自体がなかなか見つけることができない、パートや派遣で働いていても、正社員に登用されることがないということを問題にされるものがありました。
非正規雇用を拡大してきた政策によって、これだけの労働者の悲痛な声があふれる結果となったのです。私も、労働者派遣法の規制の強化や、労基法における有期契約に関する規制の強化等の政策が必要と思います。そして、フルタイムのパートタイマーとして当該企業に一定年数就労した者については、正社員として登用することを義務づける法令の整備が必要ではないかと考えています。
この点、今年改正法が成立し、来年4月から施行予定のパートタイム労働法では、正社員と実質的に変わらないパートタイマーについて、労働条件等における正社員との差別が禁止される内容が盛り込まれました。これ自身は、大変重要なことですが、「正社員と実質的に変わらない」という部分が厳格に過ぎます。また、この法令では、使用者の差別という行為が禁止されるだけで、積極的にパートタイマーを正社員化するようにという内容までは盛り込まれていません。
今後この法令の規制強化も含め検討していかなければならないと考えます。
■プロフィール
ささやま・なおと
1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。
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