多数の偽装請負を告発する声
今回のかき込みを拝見していると、派遣労働や偽装請負を告発する声が多く見られました。官庁の中でも偽装請負があるという声もありました。法律をもっとも厳格に順守するはずの、公務職場でも、違法な偽装請負がある。にわかには信じがたいことですが、私も実務を通じて残念ながらそういう事実がたくさんあることを見てきました。実は、公務の職場こそ、積極的に非正規雇用が活用され、違法な就労実態が蔓延しています。
行政改革会議の最終報告(1997年12月3日)
自治体における非正規化は、行政改革会議の最終報告に、その考え方が端的にあらわれています。
「戦後型行政システムを改め、自立的な個人を基礎としつつ、より自由かつ公正な社会を形成するにふさわしい21世紀方行政システムに転換する」ために、
「行政が国民生活の様々な分野に過剰に介入していなかったかに根本的反省を加え」、
「徹底的な規制の撤廃と緩和を断行し、民間にゆだねるべきものはゆだね」、
「官から民へ」「国から地方へ」という「原則が、その基本とならなければならない」。
つまり、保育園や学童保育など、社会福祉の分野は、「国民生活に過剰に介入」する余計な分野であり、「国から地方へ」財源なく社会保障が押しつけるので、コストカットのために、「官から民へ」と考えなければならないということです。
この構造のために、国は、指定管理者制度や、市場化テストといった、民間が公務職場により参加できる仕組みを作ってきました。
このように、公務職場が市場として、民間に開放されると、コストカットを考える自治体は、勢い安く受注できる法人への受注を決めます。法人側は、人件費を抑えるため、有期契約を要素とする派遣社員などを活用せざるを得ないわけです。その中で、労働者派遣法の脱法をするために、偽装請負を使うということは、容易に想像がつくところです。
国が雇用を増やすべき
これだけ多くの労働者が、仕事がないという状況に苦しみ、いざ働くと偽装請負をはじめとした違法な就労状況に置かれて働かざるを得ないのです。異常というほかありません。
この状態を解決するには、結局、国が責任を持って雇用を創出するようにして対応することが必要となります。大企業に対する雇用創出の働きかけ、自治体における財源の交付といった手法を用いて雇用を創出するのです。
しかし、国は、上記の行政規制改革会議の報告にあるように、非正規雇用を活用しやすいようにする、規制改革ばかり考えています。まるでベクトルが逆である、ということを世論にして追い込んでいくことが必要でしょう。
■プロフィール
ささやま・なおと
1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。
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