日本共産党

2002年10月2日(水)「しんぶん赤旗」

北京の五日間(16)

中央委員会議長 不破哲三

28日 中関村科技園区(下)


急成長の巨大企業「連想集団」

 続いて訪問したのは、中国最大のパソコン製造企業「連想集団」である。中国科学院が出資し、一九八四年に研究者が中心になって創業した企業で、さきの三分類によれば、「官製ベンチャー」ということになる。最初はごく少ない投資で出発したが、急成長をとげ、現在ではパソコンでは中国で抜群の第一位、売上高では、世界でも第七位の巨大企業になった、という。

 またビデオを使っての概要説明のあと、展示室を案内された。子ども向け、家庭向け、企業向けなど、用途を考えた斬新なデザインが目立つ。案内の女性が「デザインは専門のセンターがあってそこで開発しています」という。「若い人が多いんでしょう」と聞くと、もちろんといった顔でうなずく。

若い研究者、技術者の活気が目立つ

 さきほどの説明では、社員の平均年齢二十八歳とあった。とにかく若さがみなぎって見える企業である。私たち一行が歩いている社内のあちこちに、丸テーブルがあり、そこに三人、四人とたむろして話しこんでいる。筆坂さんがのぞきこむように様子を見ていたが、休憩しての雑談などではなかった、ノートにメモしながらの議論の最中で、この企業の、自由で活気に満ちた雰囲気を強く感じた、という。

 「連想集団」は科学院がつくった企業だが、大学がつくった企業も多く、北京大学は「北大方正」などの企業群をつくり、清華大学は「清華同方」、「清華紫光」などの企業群をもっている。ここは訪ねる機会はなかったが、おそらく、若い研究者、技術者の集団が、生産と経営の中心に立って、企業を動かしている点では、共通の特徴をもっているのではないだろうか。

感じたこと、考えさせられたこと

 正午からは、唐家セン(とうかせん)外相主催の昼食会が予定されており、「中関村科技園区」の視察は、そのごく一角に触れただけに終わったが、短時間の接触のなかでも、いろいろなことを感じたし、また考えさせられた。

 感じたことの第一は、若さに満ちた活力と、それにささえられた中国ハイテク産業の急成長ぶりである。

 また、考えさせられたのは、「社会主義市場経済」のるつぼのなかから、何かたいへん新しいものが生まれつつあるのでは、という予感である。

 「連想集団」の視察を終えての車のなかで、同乗している中連部の人たちに、「中国は、いまの中国経済の構成を『公有制を中心にした多所有経済』と特徴づけている。科学院や大学が創業したこれらの企業は、所有制としては、何にあたるのか」と聞いたが、的確な答えはえられなかった。

 科学院にしろ、北京大学、清華大学にしろ、政府が管轄する一部門だから、全額出資かどうかは不明だが、「公有制」に近い企業形態に属することは間違いないだろう。しかし、そこでは、ソ連型の国有企業とは違って、外から配置された官僚集団ではなく、研究者や技術者が創業と経営の中心となり、現場に直結した若い力が経営を動かしているように見える。

 そういう企業がこれからの発展のなかで、どうなってゆくのか、そこには多くの未知の要素があり、飛躍的な前進もあれば、後ろ向きの後退もあるだろうが、少なくとも注意して見てゆきたい新しい問題がここにある、そんなことを考えながら、釣魚台の国賓館に向かった。(つづく)

 


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