世界景気

経済成長のあり方が問われる

　世界的に景気後退の懸念が強まっています。

　ＩＭＦ（国際通貨基金）の世界経済見通し（四月九日）によると、　二〇〇八年の世界全体の経済成長率は前年比１・２ポイント低くなり、さらに国際的金融不安が深刻化すれば「世界不況が起こる可能性がある」と警告しています。

　サブプライムローン（低信用者向け住宅ローン）破たんに発する金融危機に揺れる米国は、〇八年の成長率が前年の２・２％から０・５％に大幅減速し、一九九一年以来十七年ぶりの低成長となっています。

　ＩＭＦは､欧州と日本も｢緩やかな景気後退入り｣とみていますが､中国など新興国は引き続き高い成長を続け､とりわけ中国は減速するものの9･7%成長と予測しています｡

　いま重視すべきことは、世界的な景気循環の動向だけでなく、世界経済の構造的矛盾が拡大・累積していることです。

　たとえば世界的な信用膨張、金融バブル、投機マネーの横行など、カジノ（賭博場）化した資本市場のゆがみの問題です。これらは、実体経済の景気後退の大きな要因ともなっています。

　米国の大幅赤字、中国など新興国の大幅黒字という経常収支の国際的不均衡のゆがみは、基軸通貨ドルへの不安とドル離れに拍車をかけ、国際通貨体制を不安定なものとしています。

　投機マネーの流入による原油価格や食料価格の高騰は、世界的な物価上昇、インフレ懸念を増強しています。一九七〇年代に世界経済を襲ったスタグフレーション（不況とインフレの同時進行）に落ち込む危険すら生まれています。

　地球環境を守る課題は、温暖化による異常気象や洪水などが年々頻発するようになっているもとで、最優先で取り組まねばなりません。世界は、ＣＯ２の排出量を二〇五〇年までに５０％以下（一九九〇年比）に削減する、そのうち発達した資本主義国は６０％―８０％を目指すという大幅削減が求められます。

　環境問題とともに、世界的な食料危機、貧困と飢餓の問題も喫緊の課題です。現在の食料危機の背景には、投機マネーによる価格暴騰、主要生産国での干ばつや洪水などの悪天候とともに、各国の食料主権を踏みにじって農産物貿易を自由化し、農業生産力を荒廃させたことなどが重なっています。

　二〇〇八年は、こうした世界経済の構造的ゆがみを是正するために、景気後退への当面の政策的対応とともに、各国がこれまでの経済成長のあり方を見直して、経済政策の転換をはかることが必要です。

　具体的には、投機マネーの規制、国際金融体制のルールの確立、地球環境の重視、食料・農業重視のバランスある経済成長をめざすことです。

　とりわけ、金融危機を世界に広げている米国は、最大のＣＯ２排出国でもあり、世界経済の構造的矛盾を是正するうえでも、その責任はまぬかれません。

　日本は、輸出頼みの外需型成長から内需型成長への転換をめざして、「家計に軸足を」の視点から経済政策の見直しが求められます。

　また、七月に予定される洞爺湖サミットの議長国として、温暖化対策の国際的合意、投機マネーへの国際的規制などの実現のために、日本の責任はきわめて大きいといえるでしょう。

■関連キーワード