2008年5月31日(土)「しんぶん赤旗」
「食の安全」どう確保
共産党「農業再生プラン」で考える
輸入食品をはじめ食の安全・安心の課題に、人々の関心が集まっています。この問題で総務省が、輸入食品を検査している検疫所で検査の実施件数が規定を下回っていたことなどで、厚生労働、農水両省に改善勧告を出しました(二十三日)。三月に日本共産党が発表した「農業再生プラン」がこの問題にどのように応えようとしているか、食の安全問題に詳しい党国会議員団事務局の小倉正行氏に聞きました。
輸入検査
検査率50%以上にし安全確認後に市場へ
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日本は、食料自給率が39%と、食料の六割以上を輸入に依存している世界最大の食料輸入大国です。そのため、食の安全の確保のうえで、輸入食品の安全性の確保が極めて重要になります。
食品の安全性を確保している中心的な法律は、食品衛生法です。食品衛生法に基づいて、残留農薬基準や残留抗生物質基準、食品添加物の規格基準などの食品安全基準が定められており、日本に流通している食品は、それらの安全基準をクリアしていることが前提となります。しかし、それらの食品安全基準が守られているかどうかは、食品を検査しなければ分かりません。
では、輸入食品の検査はどのような状況なのでしょうか。現在、輸入食品は、年間三千四百九万トン(二〇〇六年)輸入され、輸入届け出件数は、百八十五万件以上となっています。この輸入食品の輸入検査に従事しているのが、検疫所に配置されている食品衛生監視員ですが、全国に三百四十一人配置されています。
問題は、検査率ですが、二〇〇六年の輸入食品の検査率は、わずか10・7%で、九割の輸入食品が無検査で輸入されていることになります。要するに、九割の輸入食品が食品衛生法の安全基準に合致しているかどうか分からないまま、輸入されているのです。この検査率は、一九八九年の18・1%から低下を続けています。輸入件数が急増して、検査が追いつかないのです。
さらに問題なのは、国が行っている輸入食品の検査が、モニタリング(監視)検査といって、輸入流通を止めない検査なのです。本来、水際での検査である検疫検査は、検査結果がでるまでは輸入を認めず、検査で問題のないものだけを輸入させます。動物検疫でも植物検疫でもこの原則が貫かれています。しかし、国が行う輸入食品のモニタリング検査は、この原則を守っていません。
ですから、検査結果が出たときは、当該の輸入食品が食卓に上っているか、最悪の場合は、私たちの胃袋の中ということになりかねないのです。
このような事態に対して、「農業再生プラン」では「輸入食品の水際での検査率を50%以上に引き上げるとともに、厳格な検疫・検査を実施し、その結果が明らかになるまで市場に出回らないようにします」と、検査体制の抜本的改善を提起しているのです。
偽装表示
製造年月日復活させ違反への罰則を強化
食の安全・安心にとってもう一つの課題は、偽装表示が横行する中で、食品表示をどう確立するかという問題です。
食品の偽装表示が集中するのは、期限表示と原産国表示についてです。期限表示は、JAS(日本農林規格)法と食品衛生法で規制され、消費期限と賞味期限に分かれています。ともに食品製造者の責任で表示することになっていますが、期限表示が偽装されているかどうかは、商品を検査しても分かりません。内部告発がなければ、偽装をチェックできないのが現状です。
このような期限表示になったのは、一九九五年からですが、それまでは、日本では製造年月日表示が定着していました。消費者は、製造年月日を見て食品の鮮度を自ら判断して商品を購入してきました。それがアメリカの非関税障壁攻撃で廃止され、現在のような期限表示になったわけです。
これに対して「農業再生プラン」では、「食品に関する表示制度を一本化し、製造年月日表示を復活させます」と、分かりにくい食品表示制度の一本化と、期限表示の偽装を防ぐための製造年月日表示の復活を打ち出しています。
また、偽装表示が横行する背景には、JAS法による食品表示制度がメーカー寄りになっている点が指摘されています。現在のJAS法では、偽装表示を行っても直ちに罰則はかかりません。食品製造業者が、農林水産省の表示改善指示に従わず、さらに改善命令にも従わなかった場合になってはじめて罰則がかかるのです。
もう一つの問題は、食品表示の監視体制です。原産国表示の偽装は、科学的検査で偽装を摘発できるようになりました。その検査を行っているのが、独立行政法人・農林水産消費安全技術センターです。このような機関は、予算が毎年削減される独立行政法人ではなくきちんと国の機関に位置づけ、拡充されなければなりません。
「農業再生プラン」においても、「監視体制を強め、違反者にたいする罰則を強化します」として、食品表示違反の罰則強化と監視体制の強化を打ち出しているのです。
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