2008年9月9日(火)「しんぶん赤旗」
主張
汚染米転売
食の安全への恐るべき無責任
外国からの輸入米のうち、残留農薬やカビで汚染された「事故米」を、工業用のりなどの原料にするといって購入した大阪のコメ卸売加工企業「三笠フーズ」が、実際には焼酎などの原料として、食用にも転売していたことが明らかになり、国民に衝撃を与えています。
これらの事故米には、発がん性の強いカビの成分「アフラトキシンB1」や毒ギョーザ事件で有名になった殺虫剤「メタミドホス」に汚染されたものも含まれています。食の安全に対する恐るべき無責任さであり、企業の責任はもちろん、農林水産省の監督責任がきびしく問われます。
非食用をなぜ食用に
事故米は、日本が輸入している輸入米のうち、日本で使用できない農薬が使われていたり、カビの発生、異臭などによって、食用に適さないと判断されたものです。コメの輸入は、日本国内では必要ないのに、WTO(世界貿易機関)の取り決めで日本に押し付けられているもので、輸送中や消費されない分の長期間にわたる在庫によって、カビなどが発生することも多いといわれています。
本来、事故米は食用として販売してはならないものです。発がん性のある物質や人体に有害な農薬まで含まれているとなればなおさらです。非食用として安く仕入れながら、価格の高い食用として転売し利益を上げた企業の行動と、それを見過ごしてきた農水省の態度は、絶対に許してはならないものです。
「三笠フーズ」による転売は、社長自身が指示し、伝票や帳簿まで偽造して不正が発覚しないよう工作していたといいます。まさに計画的であり、もうけ第一で人命をかえりみない態度は、どんなに批判しても批判し足りません。
「三笠フーズ」から事故米の転売を受けていたのは、焼酎メーカーなど多数に上ります。農水省はその一部を公表しましたが、購入企業は事故米だと知って買ったのか、事故米はどう処理されたのかなどについて、農水省と各企業は速やかに調査し、結果を公表すべきです。
見過ごせないのは、「三笠フーズ」が、直接農水省から事故米を購入していただけでなく、事故米を仕入れた双日と住友商事という大商社からも購入していた事実です。双日が「三笠フーズ」に販売した事故米には基準の三倍もの殺虫剤成分が含まれていました。日本を代表する大商社の責任は、きびしく追及される必要があります。
農水省が事故米として販売したコメが工業用として加工される際には、農水省が立ち会うことになっています。しかし実際には立ち会いは不十分で、「三笠フーズ」が転売した事実もつかんでいませんでした。国民の食の安全を守るという原点から大きくかけ離れていたことは明白です。農水省は食の安全を確保するという根本に立って、事故米の処理について見直し、対策を講じるべきです。
コメ輸入体制見直しを
問題の根底には、コメ輸入の問題があります。日本が必要のないコメの輸入を続けるために、残留農薬やカビなど、事故米の発生に甘い態度をとってきたことがあったとすれば、それこそ重大です。
農水省はこの機会に、コメ輸入の是非とその体制についても根本からメスを入れるべきです。
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